12月6日は『ICO』と『人喰いの大鷲トリコ』が発売された日。どちらの作品もゲームデザイナーの上田文人氏が手掛けた作品で、2001年に『ICO』が、2016年に『人喰いの大鷲トリコ』がそれぞれ発売された。

 『ICO』は、ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)から発売されたプレイステーション2用ソフト。生贄として捧げられた角の生えた少年イコと檻に囚われていた少女ヨルダが、手を取り合って霧の古城から脱出を試みるアクションアドベンチャーゲームとなっている。キャッチコピーは「この人の手を離さない。僕の魂ごと離してしまう気がするから。」

『ICO』と『トリコ』が発売された日。手を繋ぐ、巨獣と力を合わせるといった、いままでのゲームにはなかった珍しいシチュエーションに心が熱くなった作品【今日は何の日?】

 本作最大の特徴は、主人公のイコがヨルダの“手を引いて”冒険することにある。ヨルダは一般人程度の身体能力しか持ち合わせておらず、自発的に何かをすることはほとんどない。そのため、イコが手を引いて移動を促したり、先回りして段差の上から手を差し伸べたり、「おーい(?)」と呼びかけて誘導したりするなど、パズル的なギミックを解きながら通り道を確保してやらねばならない。しかもヨルダは言葉が通じず、たびたび影のような魔物に連れ去られそうになるという境遇に置かれているのだから、多くのプレイヤーたちは「守ってあげたい」という庇護欲が掻き立てられてしまったのではないだろうか。

 ゲーム全体に漂う切なげな雰囲気も特徴的で、基本的にBGMはなくふたりの歩く足音や風の吹く音などの環境音に限られていることが多く、それがより気分を盛り上げてくれた。HPなどのUI表示が排除されていることも没入感を高める一因となっていたのだろう。筆者はメインテーマである『ICO -You were there-』が大好きで、たまに思い出しては聴いている。いまはSpotifyなどで聴けてしまうのが非常にありがたい。また、小説家の宮部みゆきさんが本作の大ファンで、後にノベライズ作品を発売したことも当時話題をとなっていた。

『ICO』と『トリコ』が発売された日。手を繋ぐ、巨獣と力を合わせるといった、いままでのゲームにはなかった珍しいシチュエーションに心が熱くなった作品【今日は何の日?】
こちらの画像は2011年にプレイステーション3で発売されたHDリマスター版。

 もう一方の『人喰いの大鷲トリコ』は、ソニー・インタラクティブエンタテインメントより発売されたプレイステーション4用のアクションアドベンチャー。上田氏が手掛けた前作『ワンダと巨像』から約11年ぶりということもあって、ファンにとっては真に待ちに待った完全新作となった。テレビCMもファンのそういった心情を表す複数のシチュエーションで描かれ、「あと○日」というカウントダウンも行われていたため、印象に残っている人も大勢いるだろう。まとめて視聴するとなかなかグッと来るのでおすすめだ。キャッチコピーは「思い出の中のその怪物はいつも優しい目をしていた。」など。

『ICO』と『トリコ』が発売された日。手を繋ぐ、巨獣と力を合わせるといった、いままでのゲームにはなかった珍しいシチュエーションに心が熱くなった作品【今日は何の日?】

 本作でも『ICO』同様に主人公と協力してゲームを進める相棒がいるのだが、今回はなんと人喰いの大鷲の“トリコ”。人間ではなくグリフォンのような巨獣ということで、最初のトレーラーを見たときは驚いたゲームファンも多かったことだろう。主人公の少年を丸呑みできるくらい大きな体をしているのでパッと見は恐ろしいが、次第に愛着が湧いてかわいく見えてくるから不思議。それぞれの体格を利用して二人三脚で仕掛けを解いていくのがユニークだ。

 驚くのはAIによるトリコの挙動。水浴びをしたりゴロンと寝転がったりと、まるで現実に存在する生物と錯覚してしまうような仕草に思わずにやり。体を動かさず目だけで少年の動きを追っているときなどは、大型のイヌなどがよくやるなぁなどと思ったり。仕掛けを解く際も思い通りに誘導できず、想定外の動きにやきもきもしてしまうが、かえってそこがリアルに感じてよかったのかもしれない。まともに戦えない少年に代わって戦ってくれるのも熱いシチュエーションだった。

『ICO』と『トリコ』が発売された日。手を繋ぐ、巨獣と力を合わせるといった、いままでのゲームにはなかった珍しいシチュエーションに心が熱くなった作品【今日は何の日?】
『ICO』と『トリコ』が発売された日。手を繋ぐ、巨獣と力を合わせるといった、いままでのゲームにはなかった珍しいシチュエーションに心が熱くなった作品【今日は何の日?】

 ちなみに、『ICO』と『人喰いの大鷲トリコ』の発売日が同じになったのは、インタビューによれば「たぶん偶然だと思います」とのこと。

これまでの今日は何の日?

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