2020年11月11日、『キングダム ハーツIII』(以下、『KHIII』)本編の楽曲だけでなくDLC 『KHIII リマインド』に含まれる楽曲や、これまでにサウンドトラック化されていなかった楽曲も収録したオリジナル・サウンドトラック『KINGDOM HEARTS - III, II.8, Unchained χ & Union χ [Cross] -』が発売される。
KINGDOM HEARTS - III, II.8, Unchained χ & Union χ [Cross] -
発売日:2020年11月11日(水)
品番:SQEX-10794-801
価格:12000円[税抜]
仕様:CD8枚組、クリア三方背ケース入り大型デジパック(約26×29cm)、カラーブックレット
本稿では、オリジナル・サウンドトラックの発売を記念し、サウンドスタッフの方々へのインタビューをお届け。また、オリジナル・サウンドトラック以外にも、シリーズの“音”に関するさまざまな秘話もうかがった。
河盛慶次(かわもり けいじ)
Music Supervisor
『ファイナルファンタジー』シリーズを初めとするスクウェア・エニックスの各タイトルでシンセサイザー・オペレーターとして活動後、現在では音楽ディレクションも手掛けるなど活躍の場を広げている。近年の担当タイトルは『ファイナルファンタジーVII リメイク』、『キングダム ハーツIII』など。
廣瀬裕貴(ひろせ ゆうき)
Sound Director
『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』の効果音を担当後、『キングダム ハーツII』に携わり、以降『キングダム ハーツ』シリーズのサウンドデザインを担当。また、『ファイナルファンタジー』シリーズのタイトルにも参加し、『ブレイブリーデフォルト』『ブレイブリーセカンド』ではダイアログエディットを担当。
谷山輝(たにやま ひかる)
Audio Programmer
『ファイナルファンタジー』、『キングダム ハーツ』シリーズを中心としてコンシューマ・モバイルのサウンドドライバ開発、デザイナツール開発を担当。
須賀麻子(すが あさこ)
Dialogue Editor
『キングダム ハーツ』シリーズや『ファイナルファンタジー』シリーズなどのボイスに関する全般を担当。
──まずは、皆さんが『KHIII』 でどういったお仕事を担当されていたかお教えいただけますか?
谷山オーディオプログラマーの谷山です。私はサウンドまわりのプログラムを担当していました。各ゲーム機に対応するサウンドドライバー(ゲーム機の中で動くオーディオのミドルウェアのようなもの)を作ったり、サウンド面で、ほかの開発スタッフがやりたいことを実現できるようにしたりと、技術寄りの人間です。
廣瀬サウンドディレクターの廣瀬です。効果音を作成する仕事がメインで、サウンド全般の仕様を考えたり、サウンド以外のスタッフとのやり取りもしていました。
──一部楽曲のアレンジも担当されていますよね?
廣瀬はい。何曲かアレンジをやらせていただきました。20代のころは作曲もしていたこともありますが、自分の才能に限界を感じました(苦笑)。
谷山廣瀬は、プロの口笛師でもあります。いろいろなタイトルで吹いているんですよ。
──口笛?
廣瀬『KHIII』だけではなく、『FFVII リメイク』や『ライトニングリターンズ FFXIII』などでも口笛を吹かせていただきましたね。
──『KHIII』ではどういったところで使われているのですか?
廣瀬キングダム・オブ・コロナ(『塔の上のラプンツェル』のワールド)でフィールド曲が鳴っている場面で、鳥がやって来ると口笛で吹いた曲が鳴るようになっているんです。安江(安江 泰氏。『KHIII』のCo.ディレクター)から「鳥が歌っているようにしてほしい」と言われたので、口笛で表現しました。サントラには入っていない部分なので、ゲームで体験してみてください。
──ゲーム内だけのお楽しみですね。
須賀ダイアログエディターの須賀です。私はボイスに関わる作業の全般に関わっていました。収録に立ち会うのはもちろん、編集データを作ったり(収録したボイスデータの音質やボリュームを調整、加工したり、ノイズ取りなどの作業)、英語音声の収録にも足を運びました。
──『KHIII』はとくに登場するキャラクターが多いですし、収録はたいへんだったのでは?
須賀すごくたいへんでした(苦笑)。キャラクター数に比例して、ボイス量も膨大で、収録時間もかなり長かったですし。声を担当する役者さんや声優さんは人気のあるお忙しい方ばかりなので、スケジュールの調整も難しかったですし、収録の終盤は修羅場でした。私は1作目からずっとボイスを担当しているのですが、いちばんたいへんでしたね(笑)。
──1作目からとなると、もう20年近く『KH』シリーズに携わってらっしゃるんですね。
須賀そうなりますね。入野くん(ソラ役の入野自由さん)や内山くん(ロクサス役の内山昂輝さん)の声変わりも見てきて、「大きくなったね~」という近所のおばさんみたいな感覚です(笑)。
──ボイス収録では『KH』シリーズならではの難しさ、みたいなものはありますか?
須賀初登場のワールドの場合、ディズニーのキャラクターを『KH』の世界にいかになじませるかというのは毎回の課題になっていました。
──では続いて音楽チームのまとめ役である河盛さん、お願いします。河盛さんはスクウェア・エニックスの多くのタイトルに関わられているので、もはや『KH』シリーズだけではなく、『ファイナルファンタジー』シリーズほかスクウェア・エニックス作品のファンの方々にはお馴染みだと思いますが。
河盛ミュージックスーパーバイザーとして、BGM全般の進行管理やカットシーンのBGMのディレクションなど、音楽(BGM)にまつわること全般を担当していました。
──今回のサウンドトラックでもまとめ役を?
河盛まとめ役って程ではなくて、ゲームでループ状態になっている波形をCDでちゃんと聴ける長さにし、マスタリングスタジオでエンジニアさんに音質や音量を調整してもらう前の下準備をしていました。
シリーズの集大成的なサントラに
──今回のサントラに関して、とくに意識したことはありますか?
河盛チームのほうで収録曲を選曲してもらったのですが、なるべくたくさん収録したいということで、『KHIII』の収録曲のディスク分けは、意識したというか苦労しました。
──その結果、すごいボリュームになりましたね(笑)。
河盛CD1枚にはだいたい80分くらい入るんですけど、ディスクのほとんどが収録時間75分超えになり、CDの容量的に限界に近いディスクばかりになりました。
廣瀬『KH』シリーズでは13というのが重要な数字のひとつなので、「13枚組でいこう!」という話も出たくらいです(笑)。
──その割には、といってはおかしいですが、しっかりとディスクごとにカテゴリー分けできているように感じました。
河盛ありがとうございます。ほかのゲームのサントラでもそうですが、ストーリーの順番に並べるというのが基本で、今回のサントラもそれに準じています。最近では、PCやスマホに取り込むと、その区切りをあまり意識せず聴いたりすることが多いですが、CDではしっかりと流れに合わせて区切られているようにこだわりました。ただ、「このままでは、このワールドのこの曲だけ別のディスクになってしまう!」ということも少なくありませんでした。
廣瀬ミニゲーム系の曲の入れ場所や曲間の秒数の調整など、細かいところまで工夫しています。
河盛でもこれは『KHIII』に限らず、『KH』シリーズのサントラはいつもそうですね。時間との戦いです。
廣瀬必ず2ループ入れるというルールもありますからね。
河盛サントラはしっかりと曲を聴いていただくものなので、2ループ以上を、ほぼ死守しています。
──サントラに収録する際、ゲームとは違う調整も必要だと思いますが、どんな調整をしているんですか?
河盛ゲームでは効果音やボイスといっしょに曲も流れるので、曲のボリューム調整は頭を悩ませる部分ですね。一方で、サントラはいろいろな曲が鳴るので、全曲の統一感がとれているということが重要で、マスタリングエンジニアさんが、曲の質感、ボリュームをしっかり調整してくれています。
廣瀬ゲームでは、シーンに合わせてボリュームを調整するので、すべての曲が同じボリュームではないんです。自分が好きな曲は少し音量を上げ気味になります(笑)。後は、ゲーム中は曲がループしますが、サントラではしっかりと締め括られている曲もあるので、そこは聴きどころですね。
──そうしたループする曲は、サントラ収録の際はどうするんですか?
河盛ループしている曲は実時間分の長さの波形にするという処理で問題ないのですが、インタラクティブミュージックの曲は、一曲がバラバラになっていたりするので、それをひとつに纏めて曲として聴けるようにするという作業が必要でした。
──『KHIII』は集大成的な作品になっているので、シリーズの楽曲のアレンジも多く、聴き応えもたっぷりですね。
廣瀬そうですね。ギガースに乗って戦うシーンの『Shrouding Dark Cloud -Gigas Blast-』は『KH』の『Shrouding Dark Cloud』のアレンジですが、すごく印象に残っています。カットシーンの中ではいちばん最初に実装された曲、というのもあるかもしれませんが(笑)。
河盛ひとつの曲の中にいろいろなキャラクターのテーマ曲が組み込まれていたりするアレンジもあるので、サントラでは新たな発見ができる部分はあると思います。ゲーム中は操作に集中することも多いでしょうから。
──たしかに、この曲にあのキャラのフレーズがチラッと入っている、というアレンジもありますからね。設定的にも納得、みたいな。
廣瀬シナリオの設定に合わせて作られたBGMもありますからね。
──そういったアレンジは野村さん(野村哲也氏。『KH』シリーズのディレクター)からオーダーがあるんですか?
廣瀬たまにありますが、アレンジに関しては、基本的には河盛からの指示が多いです。
河盛カットシーンに関しては僕が出すことが多いですね。基本的に『KHIII』では、全体的な雰囲気と変化をつけたいシーンなどを決め、アレンジャーと相談しつつ作業を進めることが多かったです。
廣瀬インタビュー前に谷山とも話していたのですが、ロクサス復活のシーンは我々はもちろん、ユーザーの方々にとっても大きな山場のひとつだろうということで、とくに気合いが入りましたね。そこで流れる『Roxas's Return』も含め、いいシーンに仕上がったと思います。
河盛あのシーンのため『KHIII』があると言っても過言ではない重要なシーンのひとつですからね。
須賀あのシーンは、ボイス収録でもかなり時間をかけましたし、私もとくに印象に残っていますね。ボイス収録の際は、ゲームで動いているところを想像しながら収録するのですが、BGMがついた実際のシーンでは想像を遥かに超えたものになっていて、すごく感動しました。
河盛そのあとのサイクス戦の『Hearts as One』もすごくいいんですよね。
谷山あそこはロクサスとシオンがいて、すごく盛り上がるアレンジになっていますが、バトルが上手いプレイヤーほどすぐに倒せてしまって曲はじっくり聴けてないかもしれないですね(笑)。ポーズにして聴いていただいた方もいらっしゃったようですが。
廣瀬あと、『The Key of Light』のアレンジ曲『Rise of the Union』も好きですね。
──キーブレード墓場でエフェメラが登場して、ソラがキーブレードの波に乗って戦う一連のシーンで流れる曲ですね。
廣瀬最初、アレンジ前のものが実装されていたんですけど、アレンジしたほうを聴いたら、さらによくて。BGMを聴かせるためにそれまで実装されていたSEのバランスを調整し直したほどです。あのシーンを観るたびにウルウルしてしまいます。
──ゲームエンジンがUnreal Engine4になったことによって、音楽面で変わったことはありますか?
谷山Unreal Engine4だからというわけではないですが、タイミング的に、インタラクティブミュージックという機能が活かせるようになりました。これは、おもにフィールドからカットシーンへのつなぎなどに活用されていて、きれいに音楽を繋げることができます。
河盛この効果はオリンポスのロックタイタンとのバトルシーンが顕著ですね。
谷山岩が降ってくる場面、崖を登る場面など、シーンが変わるときに曲も切り替わるのですが、綺麗につながって変化するようになっています。『KH』シリーズとしては、『KH0.2』がUnreal Engine 4を使う初めてのタイトルで、その流れで『KHIII』の制作に入ったのですが、 技術屋としてはそもそもそこが挑戦でしたし、たくさんのことが学べてサウンドチームは大きく成長できました。そのノウハウは同じくUnreal Engine 4を使っている『FFVII リメイク』にも活かされています。
『KHIII』の開発で印象に残った出来事は?
──『KHIII』の開発での思い出や印象に残っている出来事を教えてください。
河盛カットシーンの多くにBGMがつけられたことがうれしかったですね。
廣瀬そこは『KHIII』の大きなテーマとして取り組んでいました。
谷山私はデザイナーが作った音を、よりよく聞こえるように鳴らすというのを、廣瀬と相談しながら進めていき、個人的にかなり楽しかったです。
廣瀬谷山はいろいろなところで尽力してくれましたね。「サウンドデザイナーの気持ちが知りたい!」と言って、ザ・カリビアン(『パイレーツ・オブ・カリビアン』のワールド)の環境音を付けたりもしてくれましたし。
──音を実装するといった技術的なことだけではなく、実装する音までデザインしていたと。
谷山ザ・カリビアンはそういったこともやらせてもらいました。たくさん島があったので必要な音も多く、とにかくたいへんでしたけれど(笑)。上空だと空気の音を変えていたり、水中ではDSP(デジタル信号処理)エフェクトを使って音の効果を変えていたりもしています。Unreal Engine 4は、非常にイテレーティブな開発性能の高いエンジンなので、何度も確認してはやり直すような細かい調整がしやすいです。なので、デザイナーと討論しながらこだわりを込めていくことができました。
──高度の違いによる音の変化まで考えられているんですね。『KHIII』には、たくさんのワールドが登場しますが、音作りに違いはありますか?
谷山『KH』シリーズは、ワールドごとに大きく絵作りや雰囲気が変わり、さらにワールドならではの遊びもきちんと作っていく特徴があります。ワールドごとに“音を使った遊び”もあったりします。たとえば、トイ・ボックスだったら音に合わせて踊る花がいたり、先ほど話に出た通りキングダム・オブ・コロナでは、鳥が近づくと口笛が鳴ったり。
廣瀬ドナルド・ダックやグーフィーは、敢えて衣擦れの音は鳴らしていないのですが、リアルな姿になるザ・カリビアンでは衣擦れの音が出るようにしています。キャラモデルが変われば足音や衣擦れも変えているので、姿だけでなく、発する音にも注意を向けていただくと楽しいかもしれません。
谷山姿や雰囲気が変わると、それに合わせて音を変えないと違和感を覚えてしまうんですよね。何も気にせず遊べているというのは音作りとしては成功です。
廣瀬あと、『KHIII』でダークシーカー編が完結するというのはわかっていたので、各所にソラのテーマを散りばめるようにしました。モバイルポータルの着信音やトイ・ボックスのレコードで流れる曲などがそうですね。そのほか、トイ・ボックスは、仕掛けがたくさんあってかなりたいへんでした。
──叩くとヘリウムガスが噴射して声が変わる仕掛けもありましたね。
須賀ボイスに関して、ああいった仕掛けが用意されていると知ったときは、新鮮に思うと同時に「本当にいいの?」という感じでビクビクしていました。声の加工というのは、『KH』ではやってこなかったので。でも、世界観にマッチしていてよかったです。
谷山あれは再生速度を変えているわけではなくて、リアルタイムで声を加工しているんです。
──あれはリアルタイムなんですか!
谷山はい。なので、そのままバトルになっても変わったままですし、効果が切れるとともにだんだんと声が戻っていく感じも再現できています。
──そう言われるとたしかに。
廣瀬それ以外の仕掛けとしては、『KHIII』の終盤で、PS4のコントローラのスピーカーからドナルドとグーフィーが呼び掛ける声が聞こえるという仕掛けを用意してあるんですけど、PS4版でしか聞けませんし、コントローラのスピーカーをオフにしている人も多かったようで、あまり気づいてもらえなかったのが残念でした(笑)。
──これもそう言えば、びっくりしました。
廣瀬ちなみに、レストランのミニゲームでもコントローラから音が出ます。
──開発中に野村さんから受けた指摘で印象的だったものはありますか?
廣瀬初期の『KHIII』のトレーラーを作っていた際、「デスティニーアイランドのカモメを鳴かせすぎ」と言われたことを覚えています。なんとなく寂しかったので、つい環境音を強めにしてしまったんですよね。
──そんな細かい指摘が。
谷山その指摘を聞いたときは、「サウンドをよく聴いてくれているんだな……」とちょっと感動しました(笑)。
──『KHIII』以外で印象深いことはありましたか?
須賀『KHII』は印象深かったですね。いまはボイスは日本語と英語しかありませんが、当時はドイツ語、フランス語、スペイン語も収録していたんです。何もわからないままスペインに1ヵ月滞在したりしました(笑)。1作目は手探りだったのが、『KHII』になってお話もキャラクターも一気に広がった、というのも大きかったです。
──以前は、英語ボイス収録の『ファイナル ミックス』も発売されていましたよね。
須賀いまは世界同時発売が当たり前ですし、ディスクの容量的にも英語ボイスも収録して、言語切り換えができますが、『KHII』のころは日本語版の開発後期に海外版を作り始めていたんです。収録作業に日本とは違う制約があったり、日本語の尺に合わせるということに英語圏の方々があまり慣れてらっしゃらないということもあって、苦労したことを覚えています。
いまだから言えるエピソード
──いまだから言える開発中のエピソードはありますか?
須賀ボイスは、絵コンテを見ながら録ることも少なくないのですが、金田さん(チリシィ役の金田朋子さん)がチリシィの登場シーンの音も声で付けてくれたので、「これはゲームでも使いましょう」ということになり、実際のゲームでも効果音に混ぜて使っています。あれは、すべて金田さんのアドリブです。
──あの「ほりゃほりょはりゃ~」みたいな、文字に起こしづらいあれですよね?(笑)
須賀山寺さん(ドナルド役などの山寺宏一さん)は絵コンテからでも3パターンくらい演じて「好きなのを使って」とおっしゃってくれたり。ほかの皆さんも、難しいシーンでも、絵コンテから想像してたくさんのパターンを演じてくださったりすごく助かっています。
廣瀬大塚明夫さん(マスター・ゼアノート役などの大塚明夫さん)にも助けられましたね。
須賀そうですね。もともとマスター・ゼアノートは大塚明夫さんの父親である大塚周夫さんに演じてもらっていたんですけど……。
──大塚明夫さんはアンセムを演じてらっしゃいますよね。でも、マスター・ゼアノートを演じていた周夫さんのほうは2015年にお亡くなりに……。
須賀『KHIII』では、マスター・ゼアノートを大塚明夫さんに引き継いでもらい、周夫さんの声から明夫さんの声へグラデーションさせています。これは野村のアイディアですね。野村は、声優さんに対するリスペクトがすごく強いんです。
──そんな秘密が……。そのほか、何かありますか?
河盛ほかのタイトルでは効果音は発注リストをもらってから音を作っていくんですが、廣瀬は、映像から勝手に効果音を作っていくんですよ。
廣瀬発注前に音ができているので、大阪の開発スタッフからは“妖精さん”と言われていました(笑)。なぜ、先行してやってるかと言うと、わざわざ発注リストを作ってもらうコストが申し訳ないんですよね。その時間はプランニングに割いてもらいたくて、勝手に音をつけていました。
──ある意味、勇み足というか……(笑)。その音に対して「ちょっと違う」などとダメ出しされることはないんですか?
廣瀬もっと派手に、と言われたことはありましたが、ほとんどありませんでしたね。あと、「いい曲ができたんですよ」と動画にして安江に送ったことがあって、そこからさらに野村に送られて、「1カット増やそう 」という話になってしまって、それが開発終盤だったこともあって、開発チームが大慌てになる、なんてこともありました(苦笑)。
──楽曲や効果音など、サウンドがいかに『KH』シリーズを支えているか、影響を与えているかというのがよくわかりました。では最後に『KHIII』のサウンド面やサントラに関して、ひと言いただければ。
河盛『KHIII リマインド』のボスアレンジ曲も収録されていますので、プレイされていない方がいたらぜひサントラで聴いていただき、テンションを上げていただいて、実際にゲームもプレイしていただければ嬉しいです。ボス戦以外も追加している要素があり、楽しんでいただけると思います。
廣瀬『KHIII リマインド』のボスはかなり強くなることはわかっていたので、曲の尺も長めになっています。
谷山一部のボス曲はインタラクティブに曲が変化します。
廣瀬『KHIII』の終盤でソラが鍵穴を繋ぐシーンも、安江に言われて、繋がる鍵穴の数に合わせて曲がだんだん盛り上がるようにしているので、そこにも注目していただきたいですね。
谷山あそこの曲の変化に気付いてくれた方はいるんですかね(笑)?
廣瀬「ああいうアレンジの曲かな?」と思われているかもしれないですね(笑)。
──あそこで使われている『Link to All -Lights of Destiny-』自体、サントラでも途中から盛り上がる感じの曲になっていますが、それがゲーム中ではプレイに応じてインタラクティブに盛り上がっていくと。そうした部分はゲームならではの魅力ですね。
河盛サントラでは、音楽だけをじっくりと聴いていただけます。プレイ中は気付かなかった細かい音符や音色まで感じられると思うので、ソラたちとの冒険に思いを馳せながら楽しんでいただけたらうれしいですね。