2020年8月よりAmazon Prime Video(アマゾンプライムビデオ)に、アニメ映画『プロメア』が追加された。
本作は、2019年5月24日に劇場公開され、公開直後から評判を呼び、“応援上映”や4DX上映も実施されるなどして興行収入10億円越え、観客動員数は80万人以上を突破。昨年、多くの人を熱狂させた。アマプラに追加されたこの機会に、本作の魅力をあらためてご紹介しよう。
映画『プロメア』のあらすじ
舞台は、突然変異によって生まれた炎を操る人種“バーニッシュ”の誕生で世界の半分が焼失してしまった事件“世界大炎上”から30年後の世界。バーニッシュは市井の人々から危険な存在とみなされ迫害されていた。バーニッシュの一部攻撃的な人々は“マッドバーニッシュ”と名乗り、世界に襲いかかるのだった。
そんなマッドバーニッシュに対抗して結成されたのが、対バーニッシュ用の高機動救命消防隊バーニングレスキュー。その新人隊員で燃える火消し魂を持つガロ・ティモスは、ある事件をきっかけにマッドバーニッシュのリーダーであるリオ・フォーティアと出会い、世界を巻き込む戦いを繰り広げることに……。
熱い火消し男ガロと、クールで人類に害なす(と思われている)リオ。『プロメア』は、そんなふたりの、魂のぶつかり合いを描いた物語となっている。
今石洋之×中島かずきのタッグ再び! とにかくアツすぎるアニメーション映画
本作は、テレビアニメ『天元突破グレンラガン』、『キルラキル』を手掛けた監督・今石洋之氏と脚本・中島かずき氏のゴールデンタッグが贈る、初めての劇場長編オリジナル作品。アニメスタジオTRIGGERが、その実力をいかんなく見せつけた仕上がりとなっている。
何よりの見どころは、その画面構成。明るい蛍光色を基調としたビビッドな色使いで描かれる映像美は、これまでのアニメでは見られない斬新さを放つ。CGと手描きアニメが組み合わさった映像は、背景やオブジェクトをあえて直線的に描くことで、立体的なキャラクターの存在感、躍動感を強調していたりと、今石洋之監督による画面作りの手腕が発揮されている。映像に多くの観客が度肝を抜かれたことだろう。
松山ケンイチ、早乙女太一のW主演! 豪華キャスト陣の圧巻の演技に注目!
本作のメインキャラクターたちの声を担当したのは、松山ケンイチさん(ガロ・ティモス役)、早乙女太一さん(リオ・フォーティア役)、現在TBS系列で放送中のテレビドラマ『半沢直樹』でも話題の堺雅人さん(クレイ・フォーサイト役)たち俳優陣。
彼ら有名俳優陣がアニメ映画出演することも話題となった。この起用は単なる話題作りというわけではなく、彼らは中島かずき氏が座付き作家を務める劇団☆新感線での舞台出演経験があり、中島かずき脚本が持つ独特の魅力を理解している面々でもある。セリフの節回しや掛け合いなどへの理解の深さがあったからこその起用なのだ。
その結果、ガロは松山さん、リオは早乙女さんではないといけないと感じさせるほどキャラクターとマッチしており、ふたりの演技がキャラクターの魅力をさらに深めている。また、クレイという冷静でいて心に闇を抱えている難しいキャラクターを見事に演じきる堺雅人さんの演技は圧巻! とくに、作品後半での迫力のある演技は、劇場で観ていた筆者も思わず息を呑んだ。
さらに、脇を固める声優陣もじつに豪華。小西克幸さん、小清水亜美さんといった、『天元突破グレンラガン』、『キルラキル』でもおなじみの声優が多数起用されており、本作でも彼らの声を聞けるのかと歓喜したアニメファンも多いことだろう。そんな声優陣が演じる個性的なキャラクターたちは、(出番こそさほど多くないものの)ふたりの主人公に負けないほど、“らしい”キャラクターで、前述の作品のグレン団や、本能字学園のキャラクターが好きな人も満足できるはず。
『プロメア』だから感じられる“アツさ”!
今石洋之監督×中嶋かずき脚本の作品といえば、『天元突破グレンラガン』も『キルラキル』、なんといっても“観る者の心を揺さぶるアツさ”が魅力だが、本作は過去最高との呼び声も。それくらいアツすぎる作品となっている。
ではその熱はどこからきているのか……。
本作は“炎”がテーマとなっており、炎を操るバーニッシュ、レスキューカーや火消しの纏などをモチーフにした武器を持つロボットなどが登場し、まずは映像的な派手さに目を奪われる。さらに、それだけではない。火消しとしての魂を常に燃やし続けるガロ、クールながらも内に秘めた魂を燃やすリオのふたりの主人公が魂をぶつけあうストーリーから感じられるアツさ、さらには、キャラクターのセリフ、迫力のある戦闘シーンすべてに熱がこもっている。画面、キャラクター、セリフ、すべての要素から作り手の“熱”を感じずにはいられない。
それらの熱が組み合わさることで、多くの人を惹きつける熱量を生み出しているのではないだろうか。
また、本作は冒頭から最後まで終止アツい展開が繰り広げられ、最後まで興奮が冷めず一気に進行する。観終わった後は、あまりの興奮状態で、自分の体温まで上昇するような気さえするのだ。
トップクリエイターたちが生み出す突き抜けた“かっこよさ”
本作の制作は、『リトルウィッチアカデミア』『BNE』などを手掛けるアニメスタジオTRIGGERと、XFLAGのタッグが手掛けており、美術監督はアニメ映画『メアリと魔女の花』の久保友孝氏が担当している。
技を繰り出したときのカットインや、画面上に文字を使うTRIGGERらしい演出は健在で、とくにバトルシーンは迫力がありダイナミックだ。さらに、高層ビルが立ち並ぶ近未来的な街並み、色鮮やかな炎などひとつひとつが緻密に描きこまれており美しく仕上がっている。“バーニングレスキュー”のメンバーのロッカーは、それぞれの持ち物までしっかり描かれていたり、同じ炎でもピザを焼く普通の炎は明るいオレンジ色、バーニッシュが放つ炎はどこか悲しみを感じさせる薄紫色で彩色されている。このように、細かいところまでこだわりが詰め込まれた絵作り、色彩設計までぜひご注目いただきたい。
さらに、本作で欠かせないのが作品を盛り上げる楽曲。劇半を手掛けたのは、アニメ『機動戦士ガンダムUC』や『進撃の巨人』の音楽にも携わった作曲家の澤野弘之氏。本作では、全体的に明るく疾走感のある楽曲で構成されている。作品冒頭から澤野サウンド全開で、音楽も本作を鮮やかに彩っているポイントだ。
主題歌を歌うのはパワフルなボイスが本作にぴったりのSuperfly。主題歌『覚醒』は、作品の世界観をイメージして描き下ろされたものということもあり、とくに終盤のバトルシーンでこれが流れたときは、思わず「かっこいい!」と声が出そうになったくらい、本作にぴったりで魂を揺さぶる楽曲となっている。
本作は曲が流れ始めるタイミングが秀逸で、ここしかないというタイミングで、そのシーンにあった曲がドンピシャで流れ始めるのでテンポがよく、気持ちよさもある。
今石洋之監督、脚本の中島かずき氏、松山ケンイチさんを始めとする豪華な出演陣、さらにサウンドも当代随一の作曲家や一流のアーティストを起用し、本作にはトップクリエイターたちのこだわりが詰め込まれている。だからこそ、アニメファンという垣根を超え、多くの観客を魅了したのだろう。
この夏の暑さを忘れるくらい“アツい”、いやアツすぎる『プロメア』。まだ観たことがない方も、すでにそのアツさを体感した方も、ぜひ観てみてはいかがだろうか?