『天元突破グレンラガン』、『キルラキル』の監督・今石洋之氏×脚本・中島かずき氏の最強コンビによる、最新にして初のオリジナル劇場アニメーション『プロメア』が、2019年5月24日に公開される。この名コンビに、出会いのきっかけや作品の制作秘話などを語っていただいた。

 『天元突破グレンラガン』を始めとした、観る者の心を揺さぶるアツい作品を世に送り出し、アニメファンのあいだでは黄金タッグと名高い、中島かずき氏と今石洋之監督。TRIGGERが放つ新たな弾丸となる、初のオリジナル劇場アニメーション『プロメア』(2019年5月24日公開)でも、この名コンビが制作の指揮を執り、観客の魂に火をつける。そんなおふたりに、出会いのきっかけや作品の制作秘話などの話を訊いた。

 なお本記事とは別に、TRIGGERの成り立ちに深く関わるキーマンの舛本和也氏と若林広海氏のおふたりに、本スタジオの設立のきっかけとその歴史を、スタジオ設立前夜の『天元突破グレンラガン』制作時から、『キルラキル』など他作品制作の経緯を交えた詳しいお話を訊いている。TRIGGERファン必読のこちらも要チェック!

中島かずき氏(なかしまかずき)

『プロメア』原作・脚本を担当。『天元突破グレンラガン』、『キルラキル』といった作品の脚本を担当し今石監督を支える。アニメのみにとどまらず、実写映画や特撮、舞台などの脚本も幅広く手掛けており、劇団☆新感線の座付作家としても精力的に活動中。(文中は中島)

今石洋之氏(いまいしひろゆき)

『プロメア』の監督。アニメスタジオ・ガイナックスで『天元突破グレンラガン』などの作品を手掛けたのち退社。2011年に演出家の大塚雅彦氏、舛本和也プロデューサーと共同でTRIGGERを設立し、以降同スタジオ作品の監督などを務める。(文中は今石)

ふたりを引き合わせた意外な人物の名前とは

――テレビアニメでは『天元突破グレンラガン』(以下、『グレンラガン』)で初めてタッグを組み、『キルラキル』以来、本作『プロメア』で久しぶりのコンビ復活となるおふたりですが、最初にタッグを組まれたきっかけをお聞かせください。

中島 きっかけは『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野(秀明)さんなんですよ。2004年に庵野監督で『キューティーハニー』の実写映画がありましたよね。そのスピンオフ作品として、OVA(オリジナルビデオアニメ)の『Re:キューティーハニー』を全3話で作るという企画が持ち上がり、そのときに庵野さんからオファーされて、シリーズ構成と1話目の脚本を担当することになったんです。そのアニメの監督が今石さんだったんですね。

今石 それが中島さんとの初仕事だったんですけど、すごく相性がよくて。「今度また作品を作りたいですね」と。

中島 その後、今石さんのテレビアニメ初監督作品として『グレンラガン』をやることになりました。

――『グレンラガン』の制作では、中島さんはどの段階から参加されたのでしょう。

中島 まだ『グレンラガン』として企画が固まる前の段階で、ガイナックスさんからお話はいただいていたんです。でも、正式に動き出したのはそれからけっこうあとでした。

今石 『グレンラガン』で監督が僕に決まるまで少し時間があったのでお声掛けが遅れてしまったのですが、僕が監督を務めることになったあと、すぐに中島さんに声を掛けました。

中島 『グレンラガン』のとき、僕はまだ双葉社という出版社に務めていて、自分で担当できた作業はシリーズ構成と脚本の半分だけでしたね。当時は、書籍の編集かライツの仕事をしていたと思います。

――ええ!? 編集業務と合わせて、脚本執筆を! そんなことができるんですか……。

今石 僕も、いつも「なんでこんな早さで脚本を仕上げられるんだろう」と不思議に思っていました(笑)。『グレンラガン』の前半では、半分くらいを別の方々にお願いしながら作っていたんですけど、後半からはほぼ中島さんひとりにお願いしていたんです。そうすると、人数は減ったのに脚本ができあがるスピードがより早くなったんじゃないかと思うくらいでした。それでいて、その完成した脚本が毎週しっかりおもしろいんですよ。これは異常だなと(笑)。

中島 若いころ、週刊マンガ誌の編集者だったこともあり、“毎週ストーリーを作る”という作業は経験があったんですね。それから、今石さんに修正をお願いされることが少なかったので、そのぶん早く仕上がったというのもあるかもしれません。それにしても、当時は“週刊『グレンラガン』”でした(笑)。

――(笑)。直されるところが少なかったということは、それだけ今石監督の意図を汲み取れていたということですよね。

今石 複数の方に脚本をお願いすると、どうしても僕の思い描く作品のテイストとズレが出てしまうので、それを直す作業が発生するんです。でも、中島さんの場合はそれがないので、すごく楽をさせてもらっています(笑)。

『天元突破グレンラガン』より
『天元突破グレンラガン』より

“いちばんおもしろいもの”を詰め込んだ『キルラキル』

――『グレンラガン』のあとの『キルラキル』は、どういった経緯でスタートしたのでしょうか。

今石 もう、中島さん以外の人と作ることは考えられず、企画時点ですぐに声を掛けました。

中島 今石さんがTRIGGERを立ち上げるとのことだったので、スタジオの名刺代わりになるような作品を作ろうと、意気込んで「やりましょう」とお返事しました。自分たちの中で、『グレンラガン』は、ロボットものとしても、ひとりの少年の成長を描く物語としても、いい作品ができたと思っているんです。だから、『キルラキル』を作るときは「『グレンラガン』を超えなきゃ!」と気合を入れたのですが、落ち着いてくると「この考えかたは失敗するパターンだな」という気持ちになってきて。

――『グレンラガン』を意識するあまり、気負いすぎてしまったということでしょうか?

中島 まさにそうです。それで、今石さんと何度も話す中で「『グレンラガン』のことは忘れて、自分たちがいまいちばんおもしろいと思うものを作ろう」と、考えを変えました。

今石 そこで肩の力が抜けてから、かなり作りやすくなったんですよね。

中島 だから『キルラキル』には、僕が好きな学園抗争少年マンガや、1970年代の東映のピンキー・バイオレンス的な要素を取り入れています。1970年代に連載されていた『男組』というマンガがあるのですが、その女性版はないのか? という発想から、“ライバル関係のヒロインふたりが制服を着て戦う”というアイデアが生まれたんです。それをもとに、今石さんが流子の原型みたいなキャラクターをササッと描いたんですけど、それを見たときに「イケる」と、ふたりでうなずきました。

今石 中島さんは“女性版『男組』”と言いましたが、僕は『スケバン刑事』と『北斗の拳』を合わせた感じだと解釈していました。

中島 世代が10年くらい違う(笑)。それでも僕たちは共通認識として、「男主人公でこの話を作っても自分の中でリアリティーを持てない」と思っていたんです。やるなら『スケバン刑事』のような感じでいこう、と。

――前半1クールのエンディングはまさにそういったイメージですよね。

今石 完全にアレでしたね(笑)。

中島 (笑)。やっぱり、もとのアイデアからキャラクターの原型イラストが描き起こされたときに、そのキャラクターが動いているシーンを思い描けるかどうかなんですよね。

今石 ですね。キャラクターが動くところをイメージできるようになると、完成にグッと近づいたような実感が湧きます。

――ちなみに、中島さんは脚本を書かれるとき、「今石さんが監督だからこうしてみよう」といった特別なことは考えられるのですか?

中島 今石さんは僕のアイデアに乗っかって、さらにおもしろさをプラスしてくれるので、僕もそのことを考えたうえで脚本を書きますね。たとえば、『キルラキル』では制服を着ると強くなるという設定だったはずなのに、なぜか能力が発動すると、裸に近くなるという。それはどういうことかと思いますよね(笑)。

今石 あとで説明すればいいかなと(笑)。

中島 その説明を付け足したのは僕ですからね!(笑) あと、マトモな脚本を書いても今石さんはあまりおもしろがらないと思うので、いつも頭のネジが外れたような要素を詰め込むようにしています。その典型的な例が『キルラキル』で、“自分の信念は揺らがないけれど、他人の意見にはいっさい耳を傾けない”という、クレイジーなキャラクターばかりを登場させたので、脚本執筆がすごく楽しかったですね。最初から、マトモな人は出さないと決めていたんです(笑)。

『キルラキル』より
『キルラキル』より

『プロメア』の生みの親は“ハンバーガー”のおいしさ!?

――今回の『プロメア』も、中島さんは企画の段階から参加されていたのでしょうか?

中島 そうですね。『プロメア』はプロデュースサイドから「つぎは劇場アニメにしましょう」という提案があったので、どういう作品にするべきかをかなり話し合った末にできました。僕としては”レ・ゾンビラブル”という、ゾンビのミュージカル映画を作りたかったんですけど、今石さん以外は賛成してくれなくて(笑)。

――ゾンビとミュージカルの組み合わせは、やや異色すぎるような気がします(笑)。

中島 いや、ゾンビが朗々と歌い上げたらきっと誰でも楽しめますよ!(笑)

今石 でも、歌うとアゴが外れちゃう! ゾンビだから!! とか、おもしろいと思うんですけどねえ……(残念そうに)。

中島 その後、『カメラを止めるな!』もゾンビものでヒットしましたし。あ、題名を“ゾンビアン・ラプソディー”にしたらアリだったかもね(笑)。

――(笑)。その企画をボツにし、考え直して誕生したのが『プロメア』というわけですか。

中島 その後、“炎を題材にする”というアイデアが出てきました。そのアイデアを膨らませて、最初は、『ヒックとドラゴン』のような“少年と異形の出会いと成長”という、ジュブナイル路線で進めました。脚本もかなり練って、3稿くらいまで書いたのですが、今石さんがどうしてもその設定に納得できなくて、その脚本はすべてボツになりました。

――それは……ショックですよね。

中島 もちろんショックでしたよ! 却下されたときの打ち合わせでは机を両手で叩いて、プンプンしながら帰っちゃいましたし(笑)。その脚本がボツになったあとも、僕としてはどう組み直せばいいかわからなくなってしまい……。そこで、「とりあえずご飯でも食べに行こう」と、僕と今石さんとコヤマさん(コヤマシゲト氏。『プロメア』ではキャラクターデザインを担当)と若林(広海)クリエイティブディレクターでハンバーガーを食べに行ったんです。で、食べていたら「これだよ!」、「この“定番のおいしさ”だよ!」という話になって。定番でいいから、みんなが食べて、みんながおいしい味を作ろうと。

――たまたま食べたハンバーガーがきっかけで、原点に立ち返ることになった。

中島 そうです。それまでは、「手くせを封印して、いままで自分たちがやっていないことをやろう」という目標を立てて悩んでいたんですけど、逆に、手くせでいいんじゃないかな、と発想を逆転できました。「僕たちはハンバーガーしか作れないのに、難しいことを考えて、米でハンバーガーみたいなものを作ろうとしていた」と気づいたわけです(笑)。いやもちろん、ライスバーガーもおいしいんですけど、「やっぱり定番がいいじゃん!」と。

――「自分たちの、いつもの持ち味を出していこう」という方向性に定まったのですね。

中島 そのままお店でシナリオについても話し合っていたら、一気にクライマックスの構成までほとんど固まって、その場で今石さんがお店の紙ナプキンにキャラクターを描いたんです。その日、急に完成像が見えるようになりましたね。ハンバーガーは大事ですよ(笑)。

今石 “自分たちの持ち味を出す”ことが決まると、映画全体のコンセプトもしっかりしてきて、最初からアクセル全開で激しいアクションを見せる、という方向性が定まったんです。

中島 以前のジュブナイルの構想だと、自分の中で納得のいかないところも無理して煮詰めていたんですけど、そうした問題点も一気にクリアーになって全体を無理なくスムーズに組み立てられるようになりました。

『プロメア』は集大成であり新たな表現を模索した意欲作

――少年の成長物語ではなく、「すでに成長している青年が主人公になったことで問題が解決できた」ということですが、これはつまりどういったことでしょうか?

中島 いちばん大きなところでは、映画の場合、時間の制約が強いので、主人公にはつねに事件の渦中にいてほしかったんですけど、主人公が少年のジュブナイルでは、それを実現させるのがなかなか難しかったんですよ。

今石 そこで主人公を青年にして、アクション映画にしたところ、その問題が無理なく解決できるようになったということです。

中島 バーニングレスキューとマッドバーニッシュがぶつかる構図にしたときに、作品の全体像も見えてくるようになって。そこからさらに、手くせを詰め込もうという開き直りもできました。たとえば、「バーニングレスキューのメンバーは、いつもの“TRIGGERしてる”感じでいいよね」という具合に(笑)。

――TRIGGERファンなら、顔を見るだけでどんな性格かわかるかもしれない(笑)。

今石 反面、これまで作ってきた30分区切りのテレビアニメとは異なり、2時間でクライマックスまで持っていくバランス感覚を獲得しようと必死でした。2時間の中で物語のジェットコースターを構築するために、かなり手間をかけましたね。脚本をもとにラフの絵コンテを描いて動画を作り、そこに仮の音声も入れて、全編を確認できるようにして。それから、その映像を見て、また絵コンテを描き直し、セリフを作り直し……といった感じでした。

中島 全編を通した絵コンテを見て、足りないところをふたりで相談しながら、2時間にまとめ上げていったんですよね。

今石 中島さんはアイデアが尽きないんですよ。『プロメア』の場合は「このシーンにギャグを入れたいんですけど」と相談すると、「尻に火をつけたらいいんですよ」とか、すぐに言ってくれる。ふつう、そういうアイデアは監督が出すことが多いんですけどね。

中島 思い返してみると、『プロメア』は演劇的な作りかたをしていたと思います。稽古を重ねて、次第に精度を上げていく。

――現場でできあがったものを確認して、また作り直してよりいいものを……と。

中島 これは『グレンラガン』でも『キルラキル』でもやってきたことなんですけど、セリフの収録現場には全部僕が立ち会って、役者さんの演技を聞き、変えたほうがいいと思ったセリフは、できる範囲の中で変えているんです。やっぱり、役者さんの生の演技の雰囲気をセリフでも出したいと思って。

――TRIGGER作品は、「収録したあとで絵が変わる」と稲田 徹さんがおっしゃっていました。やはり“生”の感じを活かしたいという?

今石 それは、幸か不幸か、セリフの収録の段階でアニメーションが完成していないから、まだ直せるという事情もあるんです。あまり大きな声では言えないんですけど、たまたま、いつも間に合っていないだけで……(苦笑)。

――“たまたま、いつも”なのですね(笑)。

今石 ただ、机の上で描いたアニメーションの時間感覚と、生の演技の時間感覚はけっこう違うんです。たとえば、アニメーターは全編同じテンポで描いてしまいがちなんですけど、役者さんによってセリフを読むテンポは違います。だから、先にカッチリとアニメーションを作ると、役者さんの演技のテンポを引き出せなくなってしまうんですよ。

中島 役者さんが、“アニメーターの考えの上でしか演技できなくなる”っていうかね。

今石 そこで、役者さんには自由に演技していただいて、収録後にそれに負けないアニメーションをぶつけるという作りかたのほうが、生の芝居っぽくなるんですよ……と、もっともらしく言っておきます!(笑)。

――最後の質問になるのですが、おふたりはお相手のどういった点がすばらしいと感じられますか? これまでの制作を通してお互いにリスペクトされている点も多いと思いますが。

中島 そうですね、今石さんは“人たらし”なんです。これは僕だけじゃなくてほかのスタッフもそうだと思うんですけど、おもしろいアイデアを出して、今石さんに「いいね〜!」と言われたいんですよ。だから、みんな“今石さんを喜ばせたい”という想いで動いています。その気持ちは“お客さんを喜ばせたい”につながっていると思うんです。あと、ふだんは温厚な人なんですけど、絵を描くと、ブッ飛んだものができあがるんですよ(笑)。「この人からどうしてこんなものが?」と驚くんです。だからまあ……ギャップ萌えですかね。

――まさかの“ギャップ萌え”!(笑)。

今石 中島さんもギャップ萌えですよ。脚本はすごくトガっているけど、会ってみると常識人っていう(笑)。TRIGGERのスタッフの中でも、中島さんの脚本は圧倒的におもしろいと評判です。まず読み物としておもしろいので、それを受け取ったこちらとしては、いつも「最高の絵をつけなくちゃな!」と燃えざるをえない。ただ、そういう脚本に絵をつけるのはたいへんで、「これ、おもしろいけどずっと戦いながらしゃべっているから、動きっぱなしでたいへんだ。どうしよう」って、困りながら喜んでいます(笑)。

中島 今回の『プロメア』もバトルが多い作品になりましたね(笑)。『プロメア』の脚本は僕の集大成ではあるんですけど、「新しいことがあまりできていないんじゃないかな」という不安がありました。でも、今石さんがアニメーションでいろいろとチャレンジングなことをしていてくれたので、作品全体としてはかなり新鮮なものになっていて安心しました。

今石 中島さんのおっしゃる通り、シナリオはあえてひねりすぎていない、王道なものにしているんです。だけど、そのぶん、絵の色味や画面構成など、アニメーションで新鮮味を出して、ひと味違った肌触りを出す工夫を凝らしました。誰にでも楽しめる内容になっているので、アニメが好きな方はもちろん、アクション映画ファンの方もぜひご覧ください!

『プロメア』より
『プロメア』より
『プロメア』より