新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、“ステイホーム”によりおうちでゲームをする時間が増えている昨今。ことさら利用者を伸ばしているゲームプラットフォームがあるという。BlueStacks(ブルースタックス)だ。
ご存じでない方のために説明しておくと、BlueStacksというのは、Android向けのゲームアプリが、PC上で快適にプレイできてしまうというプラットフォームだ。ネクソンのMMORPG『TRAHA(トラハ)』が、同プラットフォームとコラボしていることからもわかる通り、もともとは重めのモバイルアプリを自宅でじっくり遊びたいという方によりニーズが高かったBlueStacksだが、ここに来て“家で落ち着いてモバイルゲームを遊びたい”というユーザーにも支持が広がっているようだ。まさに、昨今の風潮に合致したのだ。
そのあたりの事情を、BlueStacksを展開する、BlueStack Systems カントリーマネージャー 松本千尋氏に聞いてみると……。「利用者数としては、Q4(2019年10~12月)とQ1(2020年1~3月)の対比において、20以上の地域で、DAU(※)プラス30%の成長が見られました。この期間、とくに好調だった地域は、アメリカ、カナダ、ブラジル、イギリス、ドイツです。日本の状況としては、緊急事態宣言発令後、とくに5月の伸びが顕著でした。DAUとBlueStacksにおけるアプリのインストール数は、それぞれ前年同期比プラス60%ほどの伸びが見られましたね」(松本氏)とのこと。
※DAU……1日にサービスを利用したアクティブユーザー数
前年同期比+60%の伸びとは相当なものだ。対応タイトルの多さも、普及に拍車をかけている側面はあるかもしれない。ちなみに、BlueStack Systemsの創業者は、IT企業に造詣の深いローゼン・シャルマ氏。記者は何回かシャルマ氏にお話をうかがったことがあるが、とにかくストイックに技術を追い求めるエンジニア気質の方だなあという印象。2018年のローンチ以降、“より軽く、より速く”をコンセプトに、“技術”を持って磨かれてきたBlueStacksだが、さほどスペックの高くないPCでも快適にモバイルゲームが遊べるのも、その鍛錬の成果と言えるだろう。
松本氏は、BlueStacksの普及に対して、「“使いづらい”と思われてしまえばそこで終わってしまうので、ユーザーの皆さんに快適にご利用いただけたことが継続的な利用に繋がったものと思われます。この背景には、CPU使用率の軽減、アプリの互換性向上によるパフォーマンス最適化を、アップデートのたびに改善してきたことが挙げられます。また、従来アプリプレーヤーはそれなりのスペックのPCがないと快適に遊べないという偏見がありますが、この点も改善を重ねてきた甲斐があって、幅広いユーザーの方々にご利用いただけるようになったことも大きいと感じています」と、やはり技術に裏打ちされた快適さが大きかったと分析している。
その“技術”は、遊びやすさの面でも遺憾なく発揮されていて、BlueStacksにはゲームを快適に遊ぶための数々の新機能が実装されている。たとえばキーボードやマウスへの対応。もちろん、PCでのプレイにあたっては、キーボードやマウスでの操作が必須になるのだが、主要タイトルに関しては“キーマッピング”により、初期設定で操作が割り当てられている。ユーザーがみずから設定する手間を省けてすぐにゲームを楽しむことができ、使いこなせば、アクション性の高いタイトルでも、相当快適なプレイが可能になるのだ。
さらに、一部タイトルではゲームパッドにも対応しているというのも、PCゲームや家庭用ゲーム機のユーザーにとってはうれしいところだ。対応コントローラーはXboxとプレイステーション4のものなので、家庭用ゲーム機ユーザーでも違和感なく楽しめるだろう。
さらにうれしい機能が、“マルチインスタンス”。こちらは複数のウィンドウズで別々のゲームを同時にプレイできるという便利機能で、タイプの異なるゲームを同時に遊ぶといった熱心なゲーマー向け機能で、プレイのさらなる効率化が図れそう。
また、これは“遊びやすさ”と言っていいのかどうか、BlueStacksには“ボスが来た”機能も搭載されている。これは何かというと、指定したホットキーを押すと、BlueStacksの画面を即座に隠すことができるというもの。つまり仕事中にちょっとサボってBlueStacksで遊んでいるときに上司が近づいてきても、すかさず隠すことができるという、遊び心のあるネーミングの機能だ。昨今のテレワーク主体の仕事だと、“ボスが来た”という状況もあまりなさそうだけど、唐突に部屋に入られたときに家人をごまかすにはいいのかも……などとふと思ってしまった。
なお、BlueStacksはこのコロナ禍で、ゲーム以外での用途でも大いにニーズがあったようだ。「BlueStacksはゲームプラットフォームですが、Androidアプリであれば基本的にどのようなアプリでも動作することが可能で、この2月以降は非ゲームのインストール数にも増加が見られました。Zoomを始めとする配信系アプリや、無料コンテンツの提供増による影響と思われるマンガ系アプリ、お仕事をしながら利用すると便利なニュース系アプリなど。また、K-POPアーティストがバーチャルライブを開催した日には、該当の配信アプリも急上昇し、BlueStacksのコアユーザーとは異なる新たな層にも利用していただく機会に恵まれたようです」(松本氏)とのこと。
まあ、「マンガを大きな画面で読みたい」、「お気に入りのアーティストのライブを大画面で楽しみたい」といった気持ちはよくわかる。やはり迫力のあるコンテンツは大画面で満喫してみたくなってしまいますよね! というわけで、ビジネスに趣味にと、BlueStacksはフル活用されているようだ。
ちなみに、上記非ゲームアプリ利用率の上昇を受けて、BlueStacksでは、コアゲーマーだけでなく、より幅広いユーザーに使っていただくことを意識して、直近でUIのリニューアルを実施している。たとえば、トップページである“ゲームセンター”では、人気やおすすめのゲームの一覧性が高まり、遊びたいゲームを探しやすくなった。また、インストールされたアプリが一覧となっている“マイゲーム”では、アイコンサイズや配置変更が可能になっている。こういったふうに、ユーザーのニーズに合わせて適宜サービスを更新していくところも、技術に裏打ちされたフットワークの軽さと言えそうだ。
直近で行われたアップデートでは、BlueStacksの起動時間が圧倒的に速くなったほか、長時間の連続プレイでも高FPS(フレームレート)の維持が可能となったりといった、改善が施されている。とくに起動時間に関しては、以前と比較すると圧倒的なスピードとなっている。
【重要】BlueStacksを [4.220.0.1109] にアップデートいたしました。添付のとおり、今回パフォーマンスの大型アップデートが反映されています。データ引継ぎ等はご自身で管理いただいた上で、ぜひ最新版をお試しください… https://t.co/wMFfXjoBHE
— BlueStacks日本公式アカウント (@bluestacksjp)
2020-07-31 18:11:06
BlueStacksで人気のゲームアプリは……?
というわけで、最後にせっかくの機会なので、いまBlueStacksで遊ばれているアプリTOP10をお届けする。集計期間は前述のとおり国内における伸長が顕著だった5月で、所感は松本氏のもの。
『Fate/Grand Order』や『モンスターストライク』、『アズールレーン』といった超人気作が並ぶなか、BlueStacksならではのタイトル動向がうかがえるのも興味深い。“スマホでもそれなりのスペックが要求される”、“大画面で堪能したい”といったところにニーズがありそうだ。また、『LINE』が上位に入っているのも非ゲームアプリ利用率の上昇の一環と言えそうだ。
1位『TRAHA』
「4月末にリリースされた大型MMORPG。BlueStacksは、リリース当日にゲームへの最適化をアナウンスし、『TRAHA』公式サイトでもBlueStacksで遊べることをご紹介いただいています。このようなMMORPGはスマートフォンにもそれなりのスペックが要求されるため、スマートフォンで快適に遊べない方への救済措置としてBlueStacksが活躍するとともに、PCの大画面で迫力あるプレイをお楽しみいただけます」(松本氏)
2位『アークナイツ』
Yostarより配信中のタワーディフェンスゲーム。2020年1月の配信以降、高い人気を誇っている。BlueStacksでの人気も順当な結果と言える。
3位『東方LostWord』
「“上海アリス幻樂団”原作の大人気ファンタジー『東方Project』の二次創作RPG。このように人気のイラストやアニメをベースとしたタイトルは大画面で堪能したいとの需要が高く、BlueStacksでよく遊ばれています」(松本氏)
4位『ラストオリジン』
「Android先行リリース。先行リリース期間、自分の端末で遊べないiPhoneユーザーも、BlueStacksを利用すれば、すぐにプレイできるということから多くの利用がありました」(松本氏)
5位『Fate/Grand Order』
配信5周年を迎えた、言わずとしれた人気タイトル。BlueStacksでも常連タイトルとなっている。
6位『人狼ジャッジメント』
「テキストチャットで遊ぶ人狼ゲーム。スマートフォンよりも、PCのキーボードでタイピングするほうが圧倒的に楽なため、BlueStacksでプレイする方が多いです。また、ほかのプレイヤーの発言をメモするのにもPCが便利。なお、5月にBlueStacksの宣伝大使を務めるゲーム実況者の加藤純一さんがBlueStacksを使って配信したため、5月はとくにインストール数に増加が見られました」(松本氏)
7位『アズールレーン』
Yostarによる横スクロールシューティング。大画面で遊びたいというユーザーも多そうだ。ゲームパッドに対応しているのも利用者を増やしている一因かも。
8位『LINE』
BlueStacksでも常連。
9位『プリンセスコネクトRe:Dive』
人気タイトルだけにBlueStacksでも上位に来るのは順当な結果。美麗なグラフィックを大画面で見たいというニーズも高そう。
10位『モンスターストライク』
BlueStacksでもつねにランキング上位に。スマホ版とはまた違った操作感覚が味わえる模様。