エレクトロニック・アーツが運営するバトルロイヤル型オンライン対戦FPS、『Apex Legends』(エーペックスレジェンズ)。今月行われた新作発表イベントのEA Playでは、先日開始された期間限定イベント“失われた財宝イベント”に加えて、今秋にSteamでのPC版とNintendo Switch版が登場し、クロスプレイに対応することなどが発表された。

 2年目の節目となるだろう秋に向けて本作はどう進化していくのか? そこで本作のリードレベルデザイナーであるジェイソン・マッコード氏とゲームデザイナーのチャド・アームストロング氏にオンライン経由でショートインタビューを行い、気になる点を聞いた。

ジェイソン・マッコード

『Apex Legends』のリードレベルデザイナー

チャド・アームストロング

『Apex Legends』のゲームデザイナー

クロスプレイはPCとコンソールで基本分離だが合流も可能

――今秋にSteamとSwitch版が出て、クロスプラットフォームプレイも可能になるという発表がありました。さまざまなコントロール方法が混在することになるわけですが、どのようにバランスを取るのでしょうか?

チャドよくぞ聞いてくれました。『Apex Legends』にクロスプレイを導入できることにとても興奮してます。まぁこれはずっと「やらないのか」と聞かれてきたことですから。

 それで実際どうやるかですが、本作の競技性が適切に保たれるようやっていきたいので、PCプレイヤーをいきなりコンソール(家庭用ゲーム機)のプレイヤーと混ぜるわけではありません。

 基本的な形は他のゲームがやっていることと似ていて、コンソールのプレイヤー同士、PCプレイヤー同士(SteamとOrigin)といった形で、そこはデフォルトでは分離されますが、任意にコンソールプレイヤーがPCプレイヤーと組むような事はできます。

――Switch版の解像度やフレームレートなどの仕様はどうでしょう

チャドまだその辺りの詳細は明かせないのですが、今後数ヶ月の間にお話していけると思います。

『Apex Legends』開発インタビュー。今秋対応予定のクロスプレイの仕様や直近のパッチの調整意図、新型コロナの開発への影響などについて聞いた_01
Switch版のイメージ画像。携帯モードでも快適なプレイをお願いしたいところ。

――アップデートでモバイルリスポーンビーコンが入りました。”失われた財宝コレクション”イベントの終了後は通常のゲームモードにも入ってくるそうですが、導入にあたってのコンセプトを教えて下さい。

ジェイソンモバイルリスポーンビーコンはイベント終了後には通常のゲームモードでドロップするアイテムリストに入ります。セミレア級のアイテムなのでどこにでもあるわけではなく、見つけたら嬉しいようなものになります。

 これはゲームの終盤にかけてエキサイティングな瞬間を生み出すものになりうると考えています。「仲間がやられてしまったけどもう近くに利用できるリスポーンビーコンがない」というような状況をうまくやればひっくり返せるわけです。もちろん序盤でも、「仲間を復活させるのにマシな場所を選んで復活させられる」というメリットがあります。

――通常のリスポーンビーコンとの性能的な違いはあるんでしょうか?

ジェイソンいや特に。設置場所を指定してケアパッケージのように投下されるのを待たなければいけないというぐらいですかね。一回きりの使い捨てだし、投下されてしまえば復活にかかる時間なども変わりません。

 ただ投下時に結構な音がしますし、空にビームが見えますので、周囲の他プレイヤーが「あそこで呼んでるな」とわかるので注意した方がいいでしょうね。

『Apex Legends』開発インタビュー。今秋対応予定のクロスプレイの仕様や直近のパッチの調整意図、新型コロナの開発への影響などについて聞いた_02
やられてアウトになった仲間を復活させられるリスポーンビーコンのアイテム版、モバイルリスポーンビーコン。期間限定の“新・危険武装”モードでの導入となったが、イベント終了後は通常モードにもアイテムのひとつとして登場する。

ライフラインのパッシブ変更など、アップデートでの調整意図

――“失われた財宝コレクション”スタートに合わせて行われたアップデートではレジェンドのスキルにも変更がありました。特にライフラインはパッシブスキルの“戦う衛生兵”がダウンした仲間の復活が可能な“戦闘復活”に置き換わりました。この背景を教えて下さい。

ジェイソンいくつかあるのですが、少し前にジブラルタルの改良を行った際にドームシールドの中で高速に復活を行える能力を与えましたが、それによって役割がちょっとかぶってしまったということが背景のひとつとしてあります。(ドローンに復活を任せられるようにすることで)両者の違いをもう少しつけたかった。

 そしてもうひとつ、(旧来のパッシブスキルのサブ効果だった)高速回復もなくなってるわけですけど、これは「撃った相手が隠れて回復を始めた」というようなシチュエーションでの戦闘のペースを調整したかったということもありました。

 試してみたところ、高速回復がないほうが「これぐらいで回復するだろうな」という予測とともにプッシュ(攻め込む)できて流れが良かった。それで「じゃあそれをなくすとして、その代わりにライフラインに何を渡そう?」と考えることになったのがコンバットリバイブ導入のきっかけになりました。

 現況ではチームメートの復活中に透明化できるミラージュのように復活まわりの能力を持った他のレジェンドがいますが、これは開発と運営が続いてきた中で復活関連の能力はパワフルだと気づいたという事もあります。

 それでライフラインの能力を考え直すにあたり、本来の戦うメディックとしての性質を伸ばしたかった。高速回復は自分についてのものでメディックとしてチームに直接貢献するものではなかったということもあり、結果的に戦闘復活へとまとまりました

――でも高速回復はライフラインに取ってかなり大きかったのでは?

ジェイソンコンバットリバイブを発動してもタクティカルスキル(ヒールドローン)のチャージを失うわけではないのと、タクティカルスキルのクールダウン時間自体も短縮しているので、回復はそれでできるという考えです。

『Apex Legends』開発インタビュー。今秋対応予定のクロスプレイの仕様や直近のパッチの調整意図、新型コロナの開発への影響などについて聞いた_03
先日のアップデートではさまざまなレジェンドに比較的大胆な調整が施された。週末までプレイしてなかった人はパッチノートをチェックすべし。

オクタンのジャンプパッドからのダブルジャンプ追加について

――オクタンのジャンプパッドからダブルジャンプができるようになったのがちょっとおもしろかったのですが、これはどうでしょう。

ジェイソンこれはオクタンについてのフィードバックをたくさん受けた中で、なぜオクタンは優れたチームプレイヤーとしてプレイしないといけないのかを見ていったのがきっかけです。

 オクタンはソロとしてはすごく良くて戦闘にも勝つけど、チームとしてはなかなかうまく行かないことが多いんですが。それで能力を見てみるとやっぱりちょっと自分本位のものに寄りすぎていた。これはちょっと変えようというのがひとつ。

 それとジャンプパッドからの挙動はちょっと予測が付きやすかったので、特に高レベル帯のプレイヤーは狙われるのを嫌がって使いたがらない人もいたわけです。それでダブルジャンプを追加することで軌道を変えられるようにして、飛んだ後の調整をできるようにしたという形です。

レイスのフェーズウォーク調整について

――レイスの“フェーズウォーク“の調整も面白いところです。

ジェイソン レイスは常に強力なレジェンドとして君臨し続けてきました。それでほとんど毎パッチのようにどうやって長所を殺すことなく調整できるかこまめにやってきたんですが、問題の捉え方を変えて「どんなことが起こって彼女を強くしているのか」を考えるようにしました。

 そうして見てみると、彼女は逃げるのがとても簡単すぎた。(遮蔽物が遠いような)変な場所にいても撃たれたらすぐ逃げられる。なので今回の変更では、変な場所にいたら他のキャラクターと同じような苦労をするようになっています。

 でも変更や調整によって彼女を楽しくないキャラにするつもりはないので、“虚空へ”の発動までに時間がかかるようにして、その分発動した後の移動速度や継続時間を伸ばし、他プレイヤーを見えるようにしてクールダウンも伸ばすという形でバランスを取っています。

リモートワーク化に対応しつつ、シーズン11までのコンテンツを視野に開発中

――ジップラインの乗り換えにクールダウンが設定されましたが、これは。

ジェイソンこれはパッチノートを見た人の何人かが思っていたほどの悪い話じゃなくて、乗り換えはできます。ただ何度もスイッチしまくることで攻撃をかわすといった手段は塞ぎたかったので、それに制限を設けたというところです。

――ところで今後もユニークな変則モードなどを期待してもいいでしょうか?

ジェイソン現在はもっとも先でシーズン11までのコンテンツを開発してテストしています。その中には新モードもあるし、期間限定イベント用のものもあればもっと大きくて革新的なものもあります。まぁ発表を待っていてください。

――新型コロナウィルスによる開発への影響は?

チャド我々のスタジオは南カリフォルニアとバンクーバーにあって、さらに世界中の外部スタッフとも開発を進めているわけですけど、もう全員が自宅からの作業になってますね。

 最初は数百人がリモートで作業するなんてやったこともなかったんでさまざまなチャレンジがあったし、家からどうやってテストプレイするのかといった技術的なチャレンジもありました。

 ただ障害をひとつずつ潰していって慣れてきたら思ったよりも早くオフィスでやるのとそう変わらないようなスピードが出せるようになりましたね。可能性が広がった部分もあって、プレイテストを拡張できるようになったし、やっていることの画像を出しながらなので効率的な会議になったし。

 このロックダウンの中で、これまでで最大のシーズン5を送り出すことができ、かつもっともいい滑り出しを見せたことからも、なんとかうまくやれているんじゃないかと思います。