綺麗事では済まさない物語。あなたはどう受け止める?

 2020年6月19日にソニー・インタラクティブエンタテインメントより発売予定のプレイステーション4用ソフト『The Last of Us Part II』。前作『The Last of Us』から5年後の世界を舞台にし、19歳となったエリーの復讐劇が描かれる。

 本稿では、前作にもまして重く、深い物語が描かれる本作の魅力を、より詳しくお伝えするべく、ふたりのスタッフによるプレイレビューをあわせてお届けする。ひとりは、30代の妻子持ち男性ライター。もうひとりは、20代の独身女性編集者。それぞれゲーム経験も人生の立ち位置もまったく異なるふたりは、本作の重く深い物語を、どのように受け止めたのだろうか……?

 なお『Part II』の物語については極力ネタバレなしで執筆しているが、物語への感想がつづられている部分もあるので、「物語についての情報は一切知りたくない!」という方はご注意を(前作『The Last of Us』の物語について触れている部分があるので、前作をこれからプレイする予定の人もご注意ください)。

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不安を抱えながら30代子持ちライターは旅に出た/text by ジャイアント黒田(担当ライター。30代妻子あり。男性)

 エリーと出会った7年前に生後4ヵ月だった息子は、小学2年生に成長した。「(せまいから)パパとお風呂に入りたくない」、「(いびきがうるさいから)パパといっしょに寝たくない」と、生意気なことを言うようになったが、我が子の成長を見守る中で、ジョエルがエリーを愛おしく思う気持ちにますます共感できるようになっていた。そして、我が子にもエリーのようにたくましく成長してほしいと考えて、女の子が生まれた“エリ(漢字は文字の意味や画数などを考慮して決めたい)”と名付けようと妻に内緒で画策しているが、残念ながら実現する予定はない。

 少し話がずれてしまったが、だからこそ、エリーを主人公に抜擢した本作の旅の目的が“復讐”だと知ったとき、正直、プレイするのが怖かった。19歳に成長したエリーには会いたい。その一方で、復讐に手を染めるエリーの姿は見たくない……。父親として子を思う立場で言わせてもらうと、復讐なんて考えずにジャクソンで平和に暮らしてほしい。だが、エリーがやり返さずにはいられない人間なのは、前作の旅を通して理解している。エリーは大好きなキャラクターだからこそ、筆者は葛藤を抱えていた。

平和なジャクソンを旅立ったエリーは、ターゲットを追ってシアトルへ。エリーの過酷な戦いが始まる……。

エリーを辛い旅には出したくない。けれど……

 それにエリーは、『The Last of Us』を手掛けたノーティードッグの開発スタッフにとっても、大切なキャラクターであるはずだ。にも関わらず、なぜエリーを再び過酷な旅に送り出すことにしたのか。作品のテーマに復讐を選ぶことに、葛藤はなかったのか。2020年5月29日に本作のディレクターを務めるNeil Druckmann(ニール・ドラックマン)氏にインタビューを行う機会をいただいたので、率直な疑問をぶつけてみた。するとドラックマン氏は、下記のように答えてくれた。

 もちろん葛藤はありました。前作は長い時間をかけて作りましたし、本作の開発も長期間にわたっているので、ふたりには強い愛着があります。ただ、前作のエンディング後、「このあとふたりは永遠に幸せに暮らしました、悪いことは何も起こりませんでした」という物語にしたのでは、彼らに敬意を示せないと思うんです。ふたりに対する最大の敬意は何かを考えたときに、それは人の心をしっかりと動かせるような、それでいてジョエルとエリーらしい物語を通して、ふたりをリアルな人間として描き切ることだと思ったんです。だから、葛藤を抱きつつも、復讐をテーマにしています。 (ドラックマン氏)

 この回答を聞いたとき、ノーティードッグの開発スタッフはすごいなと、改めて感動した。人気作で、しかも前作のキャラクターを引き続き登場させる続編ともなると、“復讐”という凄惨なテーマは、本来は選びにくいはずだ。

 少なくとも、筆者がクリエイターの立場だったら二の足を踏む。だが、ドラックマン氏たちはジョエルやエリーをリスペクトしているからこそ、考え抜いた末に旅のテーマを復讐に決めて、本作のストーリーを生み出したのである。ちなみに、ドラックマン氏のインタビューの全文は、2020年6月18日発売のファミ通に掲載される。ファンの方は、こちらもぜひチェックを。

不安はやがて驚きへ! 本作でしか味わえないハイクオリティーのゲーム体験

 時間の都合上、インタビューを行った段階では、中盤の頭までしかプレイできていなかった。ドラックマン氏の話を聞いて俄然やる気が出た筆者は、エンディングまで夢中になってプレイしたのだが、いい意味で驚きの連続だった。

 確かに旅の目的こそ復讐だが、ストーリーは単なる復讐劇ではない。エリーに旅を行う強い動機があるように、敵対する人間にもまた、自身の行動を決定づける明確な動機があったのだ。前作にはデビッドという生存者の敵が登場したが、彼は残忍な性格をしていたので、命を奪うことにためらいはなかった。むしろデビッドを倒したときは、「うちの子(エリー)に手を出すからだ! ざまあみろ!!」と、胸がスッとしたのを覚えている。

 だが、本作に登場する敵は、デビッドのようにはいかない。本当に殺す必要があったのか。ほかに解決する方法はなかったのか……。エリーがひとり、またひとりとターゲットを始末する中で、気持ちを整理できないでいた。敵側のストーリーをしっかり描くことで、前作よりも物語に深みが増していて、非常に考えさせられる内容になっているのだ。

シアトルを訪れたエリーは、この地の豊かな物資を求めて対立する、ワシントン解放戦線(通称WLF)とセラファイトの勢力に遭遇。ふたつの勢力と敵対しながら、ターゲットを追い詰めていく。

 数々のイベントを盛り上げる、ビジュアルもすばらしいできばえ。笑う、泣く、怒るといった、あらゆる表情がリアルに表現されていて、キャラクターの感情がダイレクトに伝わってきた。さらに、眉や口もとの動きなど、表情のわずかな動きからも感情の変化が読み取れるので、イベントによっては、セリフがなくても演技が成立するほどだ。

 ビジュアルはもちろん、エリー役の潘めぐみさんやジョエル役の山寺宏一さんなど、キャラクターに命を吹き込む声優陣による巧みな演技も秀逸。前作以上に、エリーたち登場人物が実在する人間のように感じられた。

ノーティードッグ製の最新エンジンで生み出された世界も本作の見どころ。謎の寄生菌で荒廃した美しくも危険な世界を、前作よりも細部までリアルに表現しており、探索するのがとにかく楽しい。とくに廃墟マニアにはたまらないはず!
本作では馬に加えて、ボートに乗れるようになった。とあるチャプターでは、敵から奪ったボートに乗って目的地を目指すことに。

戦略性の増した戦闘はプレイヤーの数だけ攻略法がある

 ストーリーやビジュアルだけではなく、戦闘システムも大幅な進化を遂げている。回避や伏せる(ほふく)、ジャンプなどの新たなアクションが加わり、戦略性が大きく増しているうえに、これらの新要素はエリーの成長を感じさせる要因にもなっていると感じた。

 敵の攻撃を回避して反撃する。ビルからビルにジャンプで飛び移る。新アクションを駆使することで、よりたくましく成長したエリーの姿を堪能できるのだ。とくにお気に入りだったのは、回避のアクション。敵の攻撃を避けた後、カウンターを狙うのはじつに爽快だった。

本作には、生存者と感染者が同時に出現することも。感染者と生存者を戦わせて漁夫の利を狙うなど、ふだんとは異なる攻略ができるのもおもしろい。

 また、敵と戦闘を行うフィールドが広くなったり、使える武器とアクションが増えたりしたことによって、戦闘にも深みが増している。弾薬が貴重な本作の世界において、敵との戦闘は避けるのがセオリー。敵に見つからないように目的地にたどり着くのが理想だが、フィールドが広くなり、武器とアクションが増えたぶん、ルートや攻略法がいくつも考えられるのだ。徘徊する敵の行動パターンや地形、手持ちの武器と相談しながら、自分なりの攻略法を導き出すのがとにかく楽しくて、前作の戦闘よりも夢中になった。

 とはいえ、強くなったのはエリーだけではない。新たな感染者のシャンブラーや、エリーの匂いをたどって執拗に追跡してくる犬が実装されており、前作以上の緊張感をもたらしてくれている。とくに犬はやっかい。猫よりも犬派な筆者は、攻撃をためらって何度も返り討ちにあった(苦笑)。

シャンブラーも強敵! 前作に登場したブローターのようにタフなので、倒すならショットガンや火炎瓶など、強力な武器が頼りになった。

 アクションゲームが苦手な人は尻込みしてしまうかもしれないが、易しい難度が用意されているうえ、チェックポイントからすぐにやり直せる便利な機能があるのでご安心を。復讐の旅の果てに、エリーがどのような結末を迎えるのか。全編を通して、本作でしか味わえない感動が待っている。ぜひ体験して、復讐は是か非か、自分なりの答えをみつけてほしい。

歳の近いエリーへの共感。でも、だけど……/text by 亀井ライダー(ファミ通.com編集者。20代女性。独身)

 前作をプレイしたときには、操作キャラクターかつ主人公であるジョエルの気持ちに同調することが多かった。しかし本作の主人公はエリー。しかも、19歳に成長していて、いまの私と歳も近い。当然、終始エリーの目線に立ってプレイを進めた……かというと、じつはそうでもなかった。

ギターを弾いている時間は、復讐の旅が描かれる本作でも数少ない平穏な瞬間だ。

 最初、本作がエリーの復讐の旅を描いた物語だと知ったときには、前作での過酷な旅を経て平和な暮らしを手に入れたのだから、復讐の旅になど出ないで、そのまま留まってほしいと思ったし、正直なところ完全には共感できなかったのだ。

 「私だったらいくら復讐のためとはいえ、安全なジャクソンからは出ないなあ」とか。本作で初登場の感染者・シャンブラーや、感染が進んだブローターに対して、エリーが“化け物”と言っているのを見ても、「たしかに化け物ではあるけど、もとは人間で、もしかしたら私もそうなっていたかもしれないと思うと、そういう言葉は使えないなあ」……などと思ったりして。

 考えてみると、こうした序盤に抱いていた気持ちは、“エリーを操作しているプレイヤー”という立場から見ていたのだろうと思う。でも、本作を最後までプレイし、エリーという人物を深く理解できるようになったいまでは、私が同じ立場だったとしたら、エリーと同じように復讐のため旅立つだろうと思える。プレイ前後で考えがガラリと変わるほど、本作の物語を深く体感できたのだ。

仲間もいて、ある程度平和に暮らせて……前作での過酷な旅に比べれば、ジャクソンでの暮らしは幸せだと言えるだろう。
感染者に哀れみを抱くような甘さがあれば、生きていけない世界。実際、対峙したら無意識にでも“化け物”と呼んでしまうだろうと、いまなら理解できる。

エリーにとっては憎むべき相手でも……

 それほどまで物語に没入できた理由のひとつに、キャラクターの感情がこれ以上ないほどに伝わってきたことが挙げられる。表情の変化や少しの動作で、感情の起伏が見事に表現されているのだ。

 とくに本作では、エリーの敵にあたるキャラクターたちの物語も丁寧に描かれている。ひとつの出来事でも、エリーの視点と敵側の視点だと、感じ方も当然違う。そうした細かい描写が積み重なっていることが、物語の深みを増しているし、エリー含めさまざまなキャラクターの気持ちを深く考えさせられずにはいられれなくなる。

 ときには、キャラクターの感情がそのままぶつけられているようで精神的にしんどい部分もあった。ゲームをプレイしていて、キャラクターの気持ちを察して、少なからず共感することはあれど、キャラクターの感情が伝わってきてしんどい、というのは初めての感覚だった。

エリーにとっての敵だが、相手にとってはエリーこそが敵だ。

 戦闘においても、ステルスアクションで敵を倒すとき、エリーの表情はもちろん憎しみに満ちているのだが、敵の表情にも注目してほしい。巡回中の険しい表情、エリーの存在に気づきそうなときの訝し気な表情、背後から首を絞められているときの苦しそうな表情。敵もかなり表情豊かだ。楽しそうな表情はあまり見られないが、気の抜けない緊迫した状況を物語っている。だからこそ、笑顔を見ると驚くほど安心できるのだと思う。

敵対しているキャラクターでも、エリーに対して憎しみなのか、怒りなのか、抱いている感情はそれぞれ違う。

グラフィックの美麗さ、表現力に圧倒

 ビジュアル表現の格段の進化は、物語の表現のみならず、ゲームプレイの楽しさという点でも、大きく貢献していると感じた。

 まず何より、景観の描写がすばらしい。しばらく立ち止まって景色を眺めて、美しさを堪能したこともある。とにかく美麗で、細部までの作り込みが圧倒的だ。

 隅々まで探索すれば、武器を強化できる素材が見つかったりするため、とにかく探索しまくった。ストーリーには直接関係ない場所でも、探索することで、いっしょに行動しているキャラクターとの会話が楽しめたり、弾丸が見つかったりとメリットが多い。物語の先を知りたくて急ぐ気持ちもあるだろうが、本作の魅力は、ゆっくり寄り道しながら遊んだほうがより深く味わえると思う。

高層ビルが立ち並ぶさまは、どこか美しくも感じる。

攻略の選択肢がとにかく豊富!

 戦闘時には、その場の状況を判断してどう切り抜けるかを考えなければならない。多数の敵が巡回している場所を抜ける必要があるときに、まったく見つからずに進めるルートを見つけて気配も残さずに通り抜けるか。あえて音を立てて、敵の注意を特定の場所に引きつけて裏から抜け出すか。それとも、密かにひとりずつ倒し、全滅させてから悠々と進むのか……。草むらや、建物、障害物など現地の地形を利用したルート選びも重要だ。

背の高い草に隠れて、できるだけ見つからないよう進みたいところだが、見つかってしまった場合は応戦しよう。一度逃げて態勢を整えてもいい。

 本作では、敵のAIもかなり進化しており、ひと筋縄ではいかない。敵組織のひとつである、ワシントン解放戦線(通称、WLF)が連れている訓練された犬もかなり厄介だ。犬はエリーの匂いをたどって追跡するため、その場に留まっていられない。とはいえ、犬を倒すのは気が引ける。倒すか、倒さず進むか、犬が登場するたびにかなり悩んだ。

 こちらには厄介な犬でも、敵にとってはパートナーのような関係でもある。そう考えると、どうしても倒さずに進みたい気持ちになるのだが、そうも言っていられないのがつらいところだ。

敵にも、親友や恋人どうしだという人もいるかもしれない。エリーの敵は、誰かにとっての大切な人かもしれないが、それでもやらなければいけない。

 戦闘だけでなく、選択肢はさまざまな場所に存在している。たとえば、同じ素材で工作できる治療キット、火炎瓶のどちらを工作するのか、単純にどちらの道を進むのか、など本当に選択肢が豊富だ。

 行きつく先は同じでも単なる1本道でなく、何通りかの進み方があるため、よりリアルに、本当にそういう場所があるのだと感じられた。エリーやほかのキャラクターたちが、その世界で生きているのだ、と。

水中も道のひとつ。陸路と水中をうまく使って、敵を欺くことも必要だ。

 エリーが復讐の旅の果てに、何を得たのかは、エリーのみが知ることだろう。いずれにせよ、とにかくぜひ自分の手でプレイし、自分のこととして本作の物語を体験してみてほしい。この旅の意味はなんだったのか。復讐の是非や、善悪の問題など、簡単には答えの出せないテーマについて、深く考えさせられることと思う。

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