インディーゲームだからこそできる、インディーゲームならではの魅力。それを強く持つタイトルが毎年のように現われてヒット作が登場するようになり、ゲームファンなら誰もが注目するようになった。そんなインディーゲームの存在が当たり前になった“つぎのフェーズ”とはどんなものだろうか?

 小人数チームによるインディーマインドで手掛ける自社パブリッシングタイトル『戦場のフーガ』を制作中の、サイバーコネクトツー代表取締役である松山洋氏と、インディーゲームをパブリッシングするレーベル、ディライトワークス インディーズのプロデューサーである林真理氏に、それぞれの取り組みや、これからのインディーズゲーム市場について、そして、インディーズゲームに抱く熱い想い。それらをたっぷりとお話しいただいた。(聞き手:週刊ファミ通編集人 林克彦)

松山洋氏(左)

サイバーコネクトツー 代表取締役
数々のゲーム開発にゲーム業界お仕事マンガ『チェイサーゲーム』、さらにインディーマインドで手掛ける自社パブリッシングのゲーム『戦場のフーガ』も進行中

林真理氏(右)

ディライトワークス インディーズ プロデューサー
同レーベルからは、『タイニーメタル 虚構の帝国』と『紙謎 未来からの想いで』がリリースされている。

『紙謎』が取り持つサイバーコネクトツーとディライトワークスとの縁

――今日の対談は、松山さんがディライトワークス インディーズの『紙謎 未来からの想いで(以下、『紙謎』)』を遊んだことがきっかけでまとまったということですが、どういった流れで『紙謎』を遊んだのですか?

松山私はゲーム以外にもマンガやアニメの制作などもやっていますが、いろいろな取り組みの刺激になればと思って“交流会”を頻繁に開いているんですね。その交流会はマンガ界隈の人の集まりだったり、ゲームクリエイターの集まりだったりとさまざまですが、そこでNintendo Switchを持ち寄って、ゲームを遊ぶんです。そこでは、デジタルゲームだけではなくて、アナログゲームや脱出ゲーム、最近だとマーダーミステリー(殺人事件を題材とした推理ゲーム)とかもやっています。
 そういう集まりのなかでも、とくにゲーム偏差値の高いメンバーが集まる会で、定期的にインディーゲームを遊ぶんですよ。「おもしろそうだけど、まだ触っていなかった」というゲームを持ち寄って。そのゲームはどこがおもしろそうだと感じたといった点をプレゼンテーションをしてから、みんなでプレイしてみるんです。

――それ、おもしろそうですね。

松山はい。それで、その集まりで今年の正月にプレイしたのが、ディライトワークスさんの『紙謎 未来からの想いで』だったんです。

――なるほど。

松山それで『紙謎』について、「めっちゃオモロイ! これもディライトワークスかよ!」ってツイートしたら、ディライトワークスさんから「ツイート拝見しました、『紙謎』遊んでいただいてありがとうございます!」って連絡がきたんです。そこからゲームの感想を話したりしているうちに、うちも『戦場のフーガ』という社内インディー的な取り組みをしているし、インディーゲーム界隈の話やこれからのゲーム業界の話をできたらおもしろいのではないか……ということで、話がまとまりまして。

弊社には松山さんをフォローしている人が多くて、「サイバーコネクトツーの松山さんが『紙謎』を遊んでいる! ツイートしてくれている」っていう連絡がいっぱいきましたよ(笑)。

松山 (笑)。

――そういう流れだったんですね。ちなみに、林さんと松山さんとのお付き合いはどれくらいになるのですか?

松山さんとの最初の出会いは、10数年前に、私が福岡の各ゲーム会社さんにご挨拶にまわったときだったと思います。そのときに松山さんはジャージ姿で現われて、開口一番「林さんはアニメどのぐらい好き!?」と、おっしゃったんです(笑)。僕があっけに取られてふわっとした返事をしていると、「林さん、そんなんじゃ、ボクと仕事するのは難しいよ!」って言われて(笑)。

一同 爆笑

松山えーっ、そんな言いかたしたかなあ?

しました(笑)。でもそれは、松山さんの熱量がすごいという話なんですよ。初対面でそれだけ熱く語ってくれる人なんて、そうそういないですから。

――なるほど、濃い出会いだったんですね(笑)。そんな縁がありつつも、今回松山さんが『紙謎』をプレイされたわけですが、いかがでした?

松山おもしろかったですよ。おべっかでもなんでもなく。ただ、後半の難易度が異常に高いですよね!『紙謎』って印刷した紙を使って遊ぶんですけど、あまりにその紙を酷使するので、最後のほうはぐしゃぐしゃになってしまう(笑)。「ここまで細かく紙を使わせる!?」って言いたくなるくらいです。さすがにあれはやり過ぎでは(笑)。謎解きの難易度そのものもプレイヤーに対する挑戦状というか、けっこう燃えるぐらいの辛口の難易度でしたね。

難易度については、最初のうちはゲームに慣れてもらう意味でも優しいですけど、徐々に高めていって、後半は相当難しくしています。脱出ゲームって、終盤は脱出できるかどうかがギリギリきわどくて緊張感がありますよね。あの緊張感に近いものをゲームでも味わってほしくて。『謎紙』自体には時間制限はないので、そのぶんひたすら悩んでもらうぐらいの難しさにしています。考えて考えて「やっと解けた!」という快感を味わってもらいたいです。

――『謎紙』を開発されているのはどんな人たちなのですか?

マドリカ不動産』というゲームなどを作られているギフトテンインダストリというスタジオです。企画&プログラムの濱田さんとアーティストの村瀬さんのふたりでゲームを開発されています。
 じつは、僕は『マドリカ不動産』のテストプレイヤーをしていたりして、濱田さんとは長くお付き合いをさせていただいているんですよ。そういう縁もあって、今回の『紙謎』をいっしょに作っていったという流れです。

――もともとご友人だったんですね。

そうなんです。ですので、今回の『紙謎』は、濱田さんとは会社どうしの付き合いというよりは、友だち付き合いの延長線上で、濃厚な意見のぶつけ合いをしながら作っていきました。

松山そういうのはすごくいいですね。

制作中はFacebookやSlackをずっと繋ぎっぱなしで、お互い、時間や状況を問わずひたすらにゲームへの意見をやり取りしていました。

――『紙謎』はどういうプレイヤー層をターゲットに考えていたのですか?

コアなターゲット層は、“脱出ゲームなどに足を運んで楽しんでいる人たち”です。ああいうイベントは都心部でしか開催されないことが多いので、そういうものを誰もが自宅で楽しめたらおもしろいのではないか、というのがスタート地点でした。そのため、そうした脱出ゲームと同じぐらいに終盤は本格的な難しさにしているんですよ。

――脱出ゲームの体験を再現しようとしているから見た目以上に本格派の難しさになっているんですね。けっこう見た目と歯応えとのギャップがあるようにも思います。

おっしゃるとおりですね。でも、もちろん幅広く多くの人に遊んでもらいたいという気持ちがありますので、入り口やビジュアルは柔らかなものになっています。ちなみに、『紙謎』に関しては、キービジュアルやイラストレーションはディライトワークスのほうで担当しています。ストーリーも両社で協力して制作しています。ギフトテンインダストリさんはふたりで作っていらっしゃるので、そのあたりを深く作り込むのが難しくて、ディライトワークスと組むのなら、「ストーリーやビジュアル作りを助けてほしい」という要望をいただいていたんですよ。さらには、『紙謎』では、ディライトワークスのほうで声優さんの調整などもしています。そのような形で、開発スタジオだけではできないことを、私たちがお手伝いして、さらにひと味違ったゲームにしていきましょうというのが、ディライトワークス インディーズの身上ですね。

松山ディライトワークス インディーズ側でも開発をしているんですね?

はい。『紙謎』は、協業です。社内に開発部隊を持っているのでいろいろな協力ができます。

――ディライトワークス インディーズでは、立ち上げから約1年で2タイトルをリリースされましたが、今後はもっと拡大してパブリッシングされていくのでしょうか?

そうですね。ただ、弊社そのものは7年目ですし、その中のインディーレーベルだけで何十タイトルも抱えて動かしていくことは、まだまだできる状態ではないです。いまはプロデューサーが「このタイトルの責任は私が持ちます!」と、手を挙げることが、プロジェクト立ち上げの必要条件になっています。プロデューサーがそういう形で責任を持てるくらいのインディーゲームが出てきたら、初めて動き始めるということです。ですので、“年間○本リリースする”といった計画で動いているわけではなくて、プロデューサーとインディー作品とのいい出会いがあったら動くというやりかたで、着実に1本ずつよい作品を出せるよう挑戦しています。

『紙謎 未来からの想いで』は、印刷した“謎用紙”に文字などを書いたり切ったりすることで謎を解き、物語を進めていていくデジタルとアナログを融合させた新感覚の“謎解き紙ゲー”。
『紙謎 未来からの想いで』公式サイト

日本のインディーゲームのこれから。「2本目、3本目を作るために成功してほしい」

――そもそものお話ですが、なぜディライトワークスでインディーゲームのレーベルを立ち上げたのですか? けっこう多くの人がその疑問を感じるのではないかと思います。

松山思いますよね。俺も『紙謎』をやったときに「え、ディライトワークスなの!?」って思ったくらいですから。

そうですよね。ディライトワークスは、“ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。”という企業理念を掲げているんですよ。ソーシャルゲームでもコンシューマーでもアーケードでもいいですし、アナログゲームやボードゲームもやっています。もちろんインディーゲームでも同じことです。本当におもしろいゲームを作るという挑戦をするのが、弊社の課題なんです。大きなタイトルでも、小規模なタイトルでも、プロデューサーが「これはおもしろい! 絶対に世に出したい!」と思うなら、規模もジャンルも問わないんです。

松山そういう垣根なくよいモノを目指す姿勢や取り組みも、またいいですね!

――松山さんはまたアプローチがまた異なるというか、インディー規模の挑戦を自社でやっていくという試みをされていますよね。自社で、少人数のチームを組んで自分たちが作りたいものを作って世に出すという。それは、いまの時代の大規模なプロジェクト以外の取り組みもやっていかないとダメだという発想があるのですか?

松山そういう気持ちももちろんあるのですが、実際のところサイバーコネクトツーでは、受諾の開発会社として版権物のタイトルなどを手掛けていますが、どれも全部うちから企画を提案して開発しているんですよ。それで、うちが企画を作るときは、いずれも“部活動”から始めているんです。

――“部活動“ですか?

松山土日に紙袋にマンガの単行本をたっぷり入れて集まって、ひたすらそれを読んで、どういう企画にするか一気にまとめるんです。ここで熱量や信念を入れていかないといい企画にならない。そうして、ゲームのプロトタイプとまではいかないですが、簡単なモックや動画ぐらいまでを作ってしまうんです。それを作ってから企画をパブリッシャーさんに提案するんですよ。ですので、我々はやりたいことができているというか、企画を通すことはできているんです。

――つまり、自分たちで作りたいものは作れているということですね?

松山はい。ただ、この10年で大きく変わったのは、そうやって熱量を持って提案をして、その企画が通ると、そこから3年はそのプロジェクトが続くんです。1本作るのに短くて3年、長いと5年くらいはかかります。大規模開発のタイトルは世界中のたくさんの人たちから注目されるし、それはクリエイターとして誉れです。でも、拘束時間がすごく長いからクリエイターとしての成長が遅くなるんですよ。大規模になればなるほど、人数が増えてひとりあたりは歯車のようになってしまうので。
 そこで、10年前ぐらいのプレイステーション2とかニンテンドーDSのころの、予算は1億円くらいで期間は1年。人数は20人くらいで作っていたあたりにもう1回戻って、なるべく若手とベテランを組み合わせて、それで成長を促して……という、元気な作品を作っていきたいんです。

――なるほど。人材育成という側面も強いのですね。

松山その代わり、「何でも入っている全部入りのラーメンじゃなくていい、ひとつの味だけのラーメンでいいよ」と話しています。それでちょっと尖った辛い作品を作ってほしいと。さっき『謎紙』を遊んだときのプレゼンつきゲーム勉強会みたいなことをやっているのも、その一環ですね。

――なるほど。それぐらい数をこなしているとインディーゲーム界隈のトレンドも掴めそうですね。

松山“イケてる、イケてないの境界線”というのは、けっこう難しいですけどね。ここ最近で本当に感銘を受けたのは『Katana ZERO』です。あれはローカライズも含めてお見事でした。そこまでテキスト量があるわけではないのですが、一撃必殺の剣士の“頭のなかの妄想”をプレイして、うまくいったら“ヨシ”っていうあの流れを、もとは英語版のものをじつにうまいこと日本語に変換していますね。
 アクションアドベンチャーの『GRIS』もよかったです。こちらは逆に、テキストはほとんどないのですが、レベルデザインを含めてゲームとしてすごくよくできていて、圧倒的に美しいと思えます。美しいというひとつの魅力にすごくこだわっているところが、じつに清々しいです。
 うちは、「タイプ的には『Katana ZERO』みたいな尖りかたをしていくのがいいよね」という話をしていますね。

――インディーゲームにはよい作品がたくさんあり、ここ数年で話題にのぼることが本当に増えましたよね。ただ、インディーゲームで食べていけるようになった人が増えたのかどうかは微妙なのかも……とも思えます。そうしたインディーゲーム開発者界隈のいまの状況は、どのように見ていますか?

4~5年ぐらい前からインディーゲームが盛り上がってきたかなと思うのですが、そのころに作り始めたインディーゲームが、ちょうど去年ぐらいにひと通りリリースされたかなと思うんです。そういう意味ではひとつのフェーズが終わったようには思います。
 ひと区切りがついた一方で、新たなクリエイターも出てきているなと感じています。もちろんここ数年に作品を出したクリエイターも新しいゲームを作っていますが、そうではない、より若いクリエイターさんが登場してきています。そういう人たちの発想はとてもおもしろいなと思えるものが多々あります。

――新鮮な発想は出てきているように思いますね。

ただ、若いから“がんばれる”という面があるんですよね。収入面が辛くてもがんばれちゃうというところがあると思うのですが、この先のことを考えると海外のインディーゲームクリエイターの人たちの姿勢を学ぶ必要があるのかなと思っています。海外のインディーゲームクリエイターの人たちと話をしてみると、彼らはインディーという言葉を“ベンチャー企業のチャレンジ”のような意味で捉えていて、ゲームで成功して億万長者になってプール付きの豪邸に住むという夢を見てゲームを作っているんですよね。

――趣味の延長ではなくて、ビジネスのスタートアップ的な位置づけなのですね?

そうなんです。作りたいものを作って終わりではなくて、おもしろいゲームを作ることで商品としての価値が出て、利益が自分に返ってくるというところまで見据えている。それこそ『Cuphead』なんかも開発中は実家を抵当に入れて借金をしながら作ったという逸話もありますが、そうしながらも成功する夢を追い求めてゲームを作ったんですよね。
 私はインディーゲームクリエイターの人たちには、2本目、3本目を作るために成功してほしいんです。1本目で作りたいものを作ったものの商売としてうまくいかなかったら、2本目や3本目は作れずに、ゲームクリエイターを辞めて別の業種に行ってしまう。それが一番よくなくて、ゲーム業界として辛いことです。

――ユーザーに見つけてもらうのを待つより、もっと商業的なアプローチや発信が必要なのかもしれないですね。

そうですね。いまのインディーゲームクリエイターは海外の人たちとも距離が近いですし、イベントでちょっと会った人とも繋がりやすいです。そういう繋がりを広げていくと、海外のお客さんにアピールすることができると思いますね。

――なるほど。松山さんはインディーゲーム開発者界隈のいまの状況についてどう思いますか?

松山日本人はあまり明確にアピールしないのですが、ゲームソフトが売れたらめちゃめちゃ儲かるということを、もっと大きな声で言ってもいいのかなと思うんです。たとえばベストセラーの本が国内で50万部突破ということで話題になったりしますが、ゲームソフトは世界中で何百万本も売れるんです。『NARUTO-ナルト- ナルティメット』シリーズはワールドワイドで2000万本出荷しています。それだけの本数が売れる可能性があるということなんです。
 ぶっちゃけた話、ゲームは成功したときのお金がえぐいんですよ。だから、みんなゲーム業界に夢を見るし、夢があっていいんです。自分の人生を賭けてモノを作る、やりたいことをやっていくというのは、勝率の高いところでやったらいいと思うんです。もっとも得意な分野で、成功できる可能性があって、勝算を持って取り組むのがモノ作りだと僕は思っています。弊社のスタッフにも「これが売れたらみんなにとてつもないボーナスを払える! だから夢見てやってくれ!」って実際に言っています。クリエイターだったら、「お金なんて二の次です。やりたいことがやれればそれでいいんです」なんて言わないでほしい。やりたいことをやってお金も掴め! それがクリエイターです。そして、自分の子どもにおいしいものを食べさせてあげればいいんです。

(笑)。昔と違ってゲームの開発環境も整えやすいですしね。今日この座談会をお読みいただいて「ちょっとやってみようかな」と思ったら、すぐに始められますよ。僕らの若いころに比べたら夢のような環境ですね(笑)。

サイバーコネクトツー初パブリッシャー作品『戦場のフーガ』は3度目の作り直し中

――サイバーコネクトツーがインディーマインドで挑む第1弾の『戦場のフーガ』ですが、現在の開発状況はいかがでしょうか?

松山もう開発が始まってから1年過ぎますかね。当初は「1年で作る、1億円以内で作る」と言っていたのですが、どちらも破ってしまっていますね(笑)。でも、小人数なのは変わらないんですよ。20人以下でやっていますから。もうぼちぼち、アフレコも終わってシナリオも最終調整に入っていて、物量はほぼオールインに向けて動いている最中です。ただ、ゲーム性のチューニングにもう少し時間をかけたくて、いまは3度目の作り直しをしているところです。

――3度目ですか!? それはどのあたりを作り直しているのでしょう?

松山最初に自分たちで決めた通りのものを作って、試遊会などでお客様にプレイしてもらったのですが、ゲームとしては“ふつう”だったんです。「もう少しサイバーコネクトツーらしくならないとダメだよね“という話になったんです。それで1度作り直したのですが、それも、「これでもないよね」となってしまって。それでまた作り直しをしていて、いま3度目です。

――ちょうど1年くらい前にプレイデモを拝見させていただきましたが、あのころとは変わっている?

松山ぜんぜん違います(苦笑)。

――では、完成が見えてきたら教えてください(笑)。

松山はい。『戦場のフーガ』はリソースも出揃ってきていて、あとはチューニングをかけてエッジを尖らせいくことになるのですが、それと同時に、『戦場のフーガ』のつぎには、2作目と3作目、そして4作目も控えているんです。『戦場のフーガ』が遅れてはいるけれど、2~4本目も、もうある程度触れるプロトタイプができているんです。しかも、4本目のプロトタイプは、スタッフが勝手に作ってきたものだったりします(笑)。

――勝手にですか!?

松山うちは、本来ならばまず企画を作ってもらって、そこから正式なプロジェクトにするには2カ月ぐらい練り込むのですが、そのスタッフたちは勝手にプロトタイプ的なものを作って持ってきたんです。それで、「お前ら裏口にもほどがあるぞ!」とぼやきつつも、その強引なやりかたを含めて気に入ったので、「(プロジェクトを)やっていいよ」ってゴーサインを出しました(笑)。いまは3人くらいでやっていますね。

――その人たちは本来の業務がありつつも、こっそり企画を作ったわけですよね?

松山そうです。休みの日とかに、会社に忘れ物を取りに来て、なぜかほかのスタッフも同じじように忘れ物をしていたりして。

なかなか忘れ物が見つからないやつですね(笑)。

松山そうです。それであんまり見つからないもんだから、休憩がてら廊下で雑談したりして。

――(笑)。松山さんが『戦場のフーガ』のプロジェクトを立ち上げたから、そういう動きが社内に出てきたわけですね。

松山そうですね。よかったと思っています。

『戦場のフーガ』は、イヌヒト、ネコヒトといったケモノたちが暮らす浮遊大陸を舞台にした世界設定“リトルテイルブロンクス”の系譜を受け継ぐシミュレーションRPG。“復讐三部作”の幕開けを飾る1作。
サイバーコネクトツー“ネクストプラン”公式サイト

覚悟と力を示すのがクリエイターの仕事。「みんな、ゲームを作ろう!」

――インディーゲームは作ったあとの売りかたというか、届けかたが難しいですよね。そもそもタイトルのことを知ってもらうことがなかなか難しいですし、プロモーションのお金もないでしょうし。どうするべきだと考えますか?

松山インディーゲームって、大型のパッケージゲームと違って、旬や時期を選ばず売れるところにすごく可能性を感じています。ある一定の存在感があれば、ちょっとしたきっかけでいつだって売れるゲームになる。いまさらながら、誰かがプレイしているみたいなことがちょっと話題になると、「私もやってみようかな」とクチコミ的に買う人が増えたりしますよね。

――たしかにそうですね。

松山インディーゲームの原点としては、“プロモーションをしなくても話題になるゲーム”を目指すしかないですよね。ふわっとした、いくらでも代わりがあるようなゲームを作ったところで、話題にはならないです。1方向へと、エグいくらいに尖っていて、後ろにはもう誰もいないような……。そういう目立ちかたをするゲームを作りさえすれば、あとは自動的に世の中が騒いでくれるはずなんです。そういうことを考えずに何となくゲームを作って、「もっとたくさんの人に知ってもらえたらいいんですけどね」なんて言っているようではダメです。
 クリエイターなのだから、「やりたい!」、「作りたい!」、「こういうアイデアがある!」という熱量に任せて作るしかないんですよ。覚悟と力を示すのがクリエイターの仕事です。それをしないままにふわっとしたものを作って、「もっと売れてくれないかな」なんて言っているだけではダメです。自分の人生に対して不真面目と言っていいですよ。

――アツいですね。でも、そうですよね。

よくわかります。私も、『紙謎』を作った濱田さんが情熱のある尖った人だから、いっしょにやりたいと思ったんです。濱田さんと最初に知り合ったころ、彼は“眼が見えない人でも遊べるボードゲーム”を作っていたんです。そういうユニークな発想を持っているし、とにかく作ったものを人にプレイしてもらいたいという情熱が強いんです。そういう意味では、彼の作品は私たちがプレゼンテーションをしなくても「濱田さんの作品だ」という反応が先にでて、あとから「あ、パブリッシャーはディライトワークスなんだ」と言われるんですよね。クリエイターさんには、そういう牽引力がないとダメですよね。

――林さんも組むクリエイターさんには、尖った魅力を求めているんですね。

そうです。ちなみに、濱田さんはふたりで会社をやられてるんですけど、忙しそうだったので、人数を増やさないかと聞いたら、「3人になると俺の知らない話が出てくるから嫌だ」と言うんですよね。「ふたりならマンツーマンだけど、3人だとどちらかに伝わっていない話とかが出てくるのでコミュニケーションコストが無駄なんです。ふたりがやりやすいんです」と。

松山なるほど(笑)。独特の感性を持っていますね。

ふたりのほうが、小回りが利いて、自分の作りたいものが作れるというんです。そういう独特なチームで作ることができるのも、インディーゲームのおもしろさだと思うんです。従来のゲーム開発だと、ディレクターがいてプランナーがいてデザイナーがいて……と役割が細かく分かれていますが、インディー界隈の人は「エンジニアがいないなら僕がエンジニアをやるし、デザイナーがいないなら自分がやってみる」といった感じで、とくに枠にこだわらない。そのくらいの感覚で動ける人が、おもしろいものを生み出すんですよね。

――そうですよね。クリエイターさんっていい意味でピーキーな人が多いというか。だからこそ、おもしろいものが作れるんですよね。大規模開発だと、そういうピーキーな人の才能というのはどうしても埋もれる傾向がありがちだったかもしれないですけど、個人単位でできるインディーゲームならば、個性を活かしやすいですよね。

そうですね。そういう人たちと組んでいきたいです。

――ディライトワークス インディーズでは、今後はどのようなタイトル予定していますか?

焦って出しても仕方ないので、クリエイターさんが満足できるところまでいっしょに二人三脚で進んでいこうというのが、私たちの考えかたです。ひとつひとつ着実に……ですね。ですので、いつ何を出すとかも、すべて流動的です。いまは発売中のタイトルに注力しており、1作目の『タイニーメタル 虚構の帝国』では、『Wargroove』という海外でヒットしているインディーゲームとコラボさせてもらったり、『紙謎』では、SCRAPさんが謎を制作したコラボステージを追加したりと、積極的に展開していますよ。長く、いろんな人に知ってもらいたいと思っているので、定期的にこうしたコラボなどをしつつ大切にタイトルを育てていきたいです。そうして、来年や再来年とかでも、「初めてプレイした」という人が現われてくれたらいいなと思っています。

――いいですね。いずれにせよ、インディーゲームがさらに盛り上がっていってくれるといいですね。

そうですね。ディライトワークス インディーズもそのお手伝いをしたいです。

松山みんなで、いいゲームを作りましょう!