2020年3月11日、日本マイクロソフトよりXbox One、PC用ソフト『Ori and the Will of the Wisps』が配信される。同作は、2015年にリリースされた2Dアクションゲーム『オリとくらやみの森(Ori and the Blind Forest)』の続編。いわゆるメトロイドヴァニアにあたる同作が、確かなゲームデザインや美麗なグラフィック、そしてストーリーテリングなどで世界中から称賛されたのはご存じの通り。

 そんな『Ori』シリーズ5年ぶりの新作がついにリリースされるということで期待も高まるところだが、ここでは、『Ori and the Will of the Wisps』制作のキーパーソンとも言える、Xbox Game Studios シニアプロデューサー ダニエル・スミス氏と、開発スタジオであるMoon Studios リード・コンポーザー ギャレス・コカー氏のおふたりにメールインタビューを行った。日本のゲームファンに向けてアツいメッセージをいただいているので、熟読してみてほしい。

Daniel Smith(ダニエル・スミス)

Xbox Game Studios シニアプロデューサー

Gareth Coker(ギャレス・コカー)

Moon Studios リード・コンポーザー

ユーザーの意見を受けつつ「ゲームをどのように大きくするのか」を考えた

――世界的に高い評価を獲得した前作の続編ということで、制作にあたってはプレッシャーも相当なものがあったかと思われますが、どのようなコンセプトを持って開発はスタートしたのですか?

ダニエルまず、プレイヤーにもっと楽しみを提供したいと考えました。多くの人が8時間ほどで『オリとくらやみの森』をクリアーしたと思います。その際の一般的な感想として、「このゲームが大好きだ。 もっと長ければいいのに」と「『Ori』をもっとつくってほしい」というものが多く見受けられました。そこで、私たちは最初に、「ゲームをどのように大きくするのか」ということを考えました。これは、規模(scale)だけでなく、範囲(scope)も含みます。この段階で、私たちが子どものころから大好なゲームから多くのインスピレーションを受けたと思います。その結果、『Ori』にかなりの深みが加わりました。

 もう1点、ストーリーの継続性を確保するように心がけました。『オリとくらやみの森』の 終わりのほうでは、セインが戻ることで精霊樹が回復しました。この、セインが精霊樹の心臓部であることが、実際に『Ori』の戦闘メカニックの一部でした。この背景を考慮し、続編を作る際、「セインを精霊樹から切り離したから、またセインを動かせるよ!」というような安直なことはしたくありませんでした。

 そういった意味では、私たちは継続性の問題を抱えていました。そして、『Ori』をもっと大きくしたいという願望が、問題解決の一助になったと思います。「もし、オリが精霊の武器を持っていて、戦闘がより近接戦闘であり、発射物が存在し、オリが狙撃しなければならない機会があったらどうだろうか」と考えるようになりました。私たちが進みたい方向に向かうために考えていた新しい要素の多くや戦闘自体が、ストーリーを進化させる際に重要でした。

――開発にあたって、とくに注力したポイントは?

ギャレス続編の制作に着手すると、すべての部門が、前作で何をしたかを思い浮かべ、「最初のゲームをどのように改善できるか」と考えます。ここで言う改善を定義すること自体、とても難しい作業です。たとえば、「アートをよりよくする」とはどういう意味でしょうか? 前作のアートが悪かったわけでは決してないため、すべての部門内でそれを定義し、概念化したうえで、新しいアイデアが機能するかどうかを確認することが大切です。その後、すべての要素を統一する必要もあります。

 そのため、最初に、私たち全員がまず内面を見据え、「どうすれば改善できるか」と考えました。 その後、考えついた基本的な構成要素を念頭に置いてゲームの構築を開始し、そこから作業を進めました。

ダニエル『オリとくらやみの森』を制作したときの目標は、「できる限り最高のデザインをタイトルに取り入れたゲームを作ろう。できる限り最高のビジュアルを、最高の音楽を、最高のあれそれを入れよう」というものでした。『Ori and the Will of the Wisps』の目標は、「それらの式を覚えているか? それをやろう、ただし、もっとよくしよう」というものでした。

前作の好評だった要素は踏襲しつつ、新規に大規模なボス戦などを導入

――前作から踏襲した点と、逆に前作からあえて変えた点をお教えください。前作からとくに進化した点を教えてください。

ダニエル最初の質問に関して言えば、『オリとくらやみの森』でプレイヤーに愛されていた要素が複数あります。 まずは、ストーリーテリング。ストーリーテリングに関して、続編を前作と同じくらいインパクトのあるものにしたいと思い、それを達成しているとも思います。もうひとつは、人々が特定の能力を好んでいたことです。とくに、“Bash”は、おそらく前作でもっとも愛されていたスキルだと思います。そのため、“Bash”を含む、人々に本当に人気だった能力がいくつも、『Ori and the Will of the Wisps』にも実装されています。

 また、ほかの改善点として、なじみのある能力は多く引き継がれており、特定の能力をレベルアップまたはアップグレードできるようになりました。前作から引き継がれているいくつかの能力が、異なるアップグレードや要素を備えている場合もあります。これは、とてもクールなことだと思います。

 まったく新しい要素としては、大規模なボス戦が挙げられます。ボス戦のいくつかはとても壮大で劇的であり、多くの人々が心を刺激されると思われる場面もあります。加えて、“Spirit Trials”と“Spirit Shrines”も新たな要素です。“Spirit Trials”は、前回のgamescomにて展示しました。これは、非常に中毒性のあるレースモードであり、人々がタイムを改善し続けたいと思うようなゲームプレイが可能です。これに関しては、『Trials Evolution』のようなゲームから大きく影響を受けました。

 以前、プレスツアーで話題になったモードとして、“Spirit Shrines”があります。作中のさまざまな場所で、オリは“Shrine”を見つけることができます。これを起動すると、敵の波が、難易度を上げながら押し寄せてきます。これらの敵を乗り越えることができれば、非常に強力な報酬を獲得できます。

 ほかにも、さまざまな新要素があります。新しい3Dパイプラインが追加され、ビジュアルが改善されており、規模(scale)と範囲(scope)が大きくなっています。アート要素や音楽も山のように増えています。それぞれ専門分野が異なっていても、細部への注意は私たち全員が細心の注意を払った要素です。

ギャレス前作は、かなり予算の限られた小さめなタイトルでしたが、今作では録音品質が豪華になり、音楽がプレイヤーに与える影響がさらに大きくなりました。今回、映画の『インセプション」や『インターステラー』などが録音されたロンドンのAir Studiosで録音しました。個人的には、あそこは世界でもっとも素晴らしいsounding studioのひとつです。

 フィルハーモニア管弦楽団(The Philharmonia Orchestra)とともにレコーディングできたことを嬉しく思います。楽団は前作のときよりも大きく、今作では72人もの演奏者いました。加えて、今作では前作と違い、生の合唱もありました。音楽の全体的な“荘厳さ”は制作品質にも表れており、プレイヤーがゲームをする際に感じとってくれることを願っています。

――続編の制作はすんなりと進んだのですか? それとも2転、3転があったのでしょうか?

ダニエルゲーム制作はとてもチャレンジングです。『Ori』のケースで言えば、ゲームの世界が完全に相互接続されている、メトロイドヴァニアスタイルのゲームであるため、制作はとくにチャレンジングでした。ゲーム内で何かを変更すると、それはほかの何かに影響を与えます。また、まったく異なる環境から別の環境に、すべてがうまく流れるような形で視覚的要素を構成することは本当に難しかったです。

 同じことがレベル設計にも当てはまります。すべてがうまく流れ、相互接続されているようにプレイヤーが感じられなければなりません。 これらが、最大の課題の一部であったと思います。

ギャレスダニエルが指摘する通り、制作の際はすべてが相互接続されているため、何かを変更すると、ほかのすべてのパートに影響を与えます。そのため、制作進行中のすべての要因に、全員が注意を払う必要があります。 このサイズのゲームでは、すべての要因を追跡することは難しい場合もありますが、最終的には、それらの要因は固定され、固まり始めました。その後、「よし、この領域は完了したから、先に進もう」と思えるようになりました。

 制作開始時、とくにまだ内容を構築している段階では、あらゆる要因が固まっていません。つなげられるものを見つけることは、初期の段階では非常に難しいこともあります。しかし、いったんそれが見つかると、制作を開始するための出発点ができます。

ダニエル ゲームを制作する上でもっとも難しいことのひとつは、何が楽しいかを見つけることだと思います。これが見つかることはいつもトリッキーです。エキサイティングなメカニックなどは頭にあるかもしれませんが、「果たしてそれが本当に楽しいか?」という点です

 さまざまな要素を私たちが望むように洗練して適切に構築するという観点で言うと、去年、このゲームは飛躍的に成長したように感じます。私にとってこのゲームは楽しく、8年前から『Ori』に取り組んでいるため、とてもエキサイティングだと感じています。家に帰ってもっとプレイすることが待ちきれませんでした。これは、本当によい兆候だと思います。

前作をさらに超えるような感情的で衝撃的な物語が待っている

――本作のストーリーのメッセージをお教えください。どのようなストーリーが展開されるのでしょうか? ユーザーさんの楽しみを阻害しない範囲でお教えいただけるとうれしいです。

ダニエルそうですね、おそらく、プレイヤーの皆さんは再び涙を落とすことになるでしょう。前作のストーリーには、多くの喜びや悲しみの場面がありました。これにより、メトロイドヴァニアのジャンル全体に影響を与えたように感じます。『オリとくらやみの森』より前のメトロイドヴァニアのゲームが、実際に人々に、とくに特定のキャラクターに感情移入している人々に、感情的に大きな影響を与えたことはあまりなかったように思います。

 私たちは、『オリとくらやみの森』を通して、たった4人のキャラクターだけでこれを成し遂げました。続編である『Ori and the Will of the Wisps』は、私たちにとって、より深く、そしてより大きくこれを成し遂げるよい機会となりました。『オリとくらやみの森』をプレイしたすべての人に、前作と同等以上に、感情的で衝撃的な物語を作ることが私たちにとって重要でした。私たちは、彼らが『オリとくらやみの森』の特定のキャラクターまたは場面にどのように感情移入したかを聞くことが好きでした。愛する人を失い、ゲームやキャラクターに癒されたことを教えてくれる人々が大勢いました。『Ori and the Will of the Wisps』でも、こういった要素を含めており、とてもエキサイティングな内容になっていると思います。

 ストーリーとしては、『オリとくらやみの森』の続きとなります。『オリとくらやみの森』の終わりでは卵があったかと思いますが、『Ori and the Will of the Wisps』の始まりでその卵が孵ります。『オリとくらやみの森』をクリアーしたファンの場合、ストーリー展開が非常に明確に続いていることがわかります。

 また、今作を『Ori 2』と名付けなかった理由はあります。フランチャイズを初めてプレイするすべての人にとって、今作が新鮮なアプローチになることを私たちは望んでいます。事前知識なしでも、人々が『Ori and the Will of the Wisps』をプレイできるようにしたいと考えました。そういった意味では、プレイする上で前作からの参照や法則を知っておく必要はありません。

――本作のストーリーを伝えるにあたって、音声やアートスタイルが重要とのことですが、とくにこだわったポイントは?サウンドも本シリーズの魅力ですが、本作の音楽のコンセプトをお教えください。

ギャレス前作のサウンドトラックは極めてユニークな出来であったため、続編にもその性質を持ち込むことが重要だと考えました。今作でも増やしていますが、前作では、すべての環境にユニークな音や楽器の演奏が存在し、それがとても特徴的でした。サウンドトラックで曲を聞いたプレイヤーに、「あ、いまプレイした環境の曲だ」とすぐに認識できるようにしたかったのです。

 今作には、新しいキャラクターが複数存在するため、より多くのテーマを表現する機会がありました。前作では、プレイヤーはゲーム全体を通してオリとしてプレイしましたが、プロローグ後は周辺のキャラクターとほとんど接触していませんでした。前作は作品の根幹が『Ori』のテーマに大きく依存していたため、ほかのテーマを表現する機会が限られていました。

 一方、今作では、サブキャラクターと多くの時間を費やすため、より多くのメロディーを提供できます。つまり、オリのテーマ(私はこのテーマを“Golden Bullet”と呼んでいます。前作をプレイしたことのある人にとって、乱用しない限り、とても強力であるため)を本当に使用する必要がある場合のみ、これを使用しました。これは、私とデザインチームが早い段階から合意に達したものでした。「オリのメインテーマの乱用は避けよう、最大の効果が得られる場合にのみ使用しよう」と考えたのです。

ギャレス楽器に関しては、木管楽器を例に使用します。ほとんどの人は木管楽器をオーケストラの伝統的な管楽器であるフルート、オーボエ、クラリネットなどであると考えていますが、実際には世界中に何百もの木管楽器があり、同じような木管風の品質を持っているものの、それぞれ音が独特です。

 サウンドトラックの演奏者のひとりである友人がいます。 彼女は、約300から350種類の楽器を持っています。彼女にいくつか楽曲を渡し、「このメロディーをいろいろな楽器で演奏してみて。どれがベストか判断するから」と伝えました。彼女は、最終的にサウンドトラックで21種類の楽器を演奏することになりました。これは、作品の中で音楽をユニークなものにする際、「どの楽器を使いたいか」という選択肢を増やすことができる、素晴らしい長所です。

 とくに、物語が森の中で展開される『Ori』のようなゲームでは、木製の楽器を使用する機会が非常に多くあります。今作では、プレイヤーがゲームをプレイし、サウンドトラックを聴く際、楽器の種類以外にも多様性を感じることができると思います。新しいテーマを拡張して使用したり、前作の元のテーマと組み合わせたりしているからです。

――Xbox One Xでのゲームプレイ体験を提供するために心がけたことをお教えください。

ダニエルXbox One Xで強化された機能の一部として、4KとHDRの両方が備わっていることが挙げられます。私たちは、このハードウェアの特徴を適切に活用しており、プレイ時にゲームがどのように表現されるかに満足しています。とくに、『オリとくらやみの森』で好評だった点のひとつとして、シネマティックな場面の数々があります。『オリとくらやみの森』制作の途中で、 シネマティックな表現がいかにインパクトを持つかに気づいたため、前作よりも予算を少し増やし、より多くのシネマティックな場面を入れるようにしました。『Ori and the Will of the Wisps』には、ゲーム全体においてシネマティックな場面がずっと多くあります。また、ゲームプレイから抜け出し、本当に特別なものを見せてくれるシネマティックな場面以外にも、数百ものビネット(止め絵)もあります。

――前作の開発スタイルは、決まったオフィスを設けずに世界各地に散らばるクリエイターが遠距離で連絡を取り合って作ったものだったと思いますが、本作も同じスタイルを踏襲したのですか?

ギャレス決まったオフィスを設けないスタイルの最大の利点のひとつは、つねに誰かがゲーム制作に取り組んでいることです。オーストラリアで誰かが働いているとき、アメリカの誰かがゲーム制作に取り組んでいる可能性は低いでしょう。これは、とても素晴らしいことです。私自身、朝起きると、たくさんのアップデートやお知らせが届いていました。ゲーム制作に取り組んでいる世界中の人々にとって、このようなことはとてもクールだと思います。目を覚まし、ゲームに追加されたクールな更新を確認することは、非常にモチベーションの向上にもつながります。

 決まったオフィスを設けないスタイルでは、制作する人々には自発性が必要であり、コンテンツのアップデートやお知らせが入ってくると、自発性が向上します。もちろん、グローバルに制作する人々が散らばっていることには課題もあります。たとえば、誰かが早起きしなければならないという点で、会議やミーティングの開催は難しいです。しかし、これらは克服すべき比較的小さな課題です。

 このスタイルの最大の心配事のひとつは、開発チームが前作より大きかったことでした。前作では、ピーク時でも開発チームの人数は約20人でしたが、今作では約80人になりました。正直に言えば、当初チームが正しく維持できるかはわかりませんでしたが、実際には大きな問題にはなりませんでした。これは、前作の経験から得られた、決まったオフィスを設けないスタイルに関する知見のおかげだと思います。また、長所のひとつとして、取り組みたいときに、ゲーム制作に取り組むことができることも挙げられます。たとえば、突然インスピレーションが湧き上がり、ハードワークをしたいと考えたときにも対応できます。

 もちろん、休みをとりたい場合、それも可能です。チームで制作する人、とくにこのような視覚的におもしろくてさまざまなことを行っているタイトルを制作する人と毎日仕事をすることは、非常に刺激的です。

ダニエルもうひとつ大きなメリットとして、前作でオリが大きく成功した後、Moon Studiosは多くの注目を集め、その結果、多くの才能のある人々が続編に取り組むことを望んでくれました。そういった人々が、根ざしている地域から離れる必要なく、“いまいる場所から、家族の近くで、自宅の中からパジャマで仕事をすることもできる”スタイルを提供できます。

――最後に、日本のゲームファンに向けてのメッセージをお願いします。

ダニエル個人的に、このタイトルが3月11日にリリースされることをとても楽しみにしています。私たちはこの続編に多くの労力を注ぎ込んでおり、制作する際に多くの情熱を注ぎました。このゲームが多くの人々にとって非常に特別になるよう願っています。また、私たちは日本のコンテンツから多くのインスピレーションを得ました。たとえば、私たちが子どものころから慣れ親しんできたゲームやジブリ映画などが挙げられます。日本のゲームファンがこのゲームを楽しんでくれることを本当に願っています。

Xbox Game Studios シニアプロデューサー ダニエル・スミス氏(左)とMoon Studios リード・コンポーザー ギャレス・コカー氏(右)。