さまざまなサービスをいち早く取り入れ、多くのプラットフォームで展開してきた、カプコンのオンラインゲーム『モンスターハンター フロンティア』。多くのファンに支えられ約12年にわたって運営されてきた本作が、惜しまれつつも2019年12月にサービスを終了。プロデューサーの宮下輝樹氏と名誉プロデューサー(元アシスタントプロデューサー)の砂野元気氏に、これまでの歴史を振り返っていただき、『MHF』ならではの開発スタイルや、開発・運営の裏側を聞いた。

宮下輝樹(みやしたてるき)

『MHF』プロデューサー

砂野元気(すなのげんき)

『MHF』名誉プロデューサー(元アシスタントプロデューサー)

12年の歴史に幕を閉じる

――サービス開始から約12年。その歴史に幕を閉じますが、現在の率直な感想を。

宮下率直に言うと、さみしいです。もう少し何とかできなかったのか? と、ずっと思っていましたし考えました。とはいえ、ここまでやってこられたことに対してユーザーさんに感謝しています。サービス終了までの1ヵ月間は、逆にユーザーさんたちが「最後まで遊びつくすぞ」と盛り上がってくれたおかげで、DAU(※)が倍以上になったりして、うれしかったです。

砂野本当に多くのユーザーさまに支えられていたんだなと、改めて実感しました。最後にこれだけ多くのユーザーさまがログインしてくれているのを見て、それだけ愛してもらっていたんだということを感じました。

――サービス終了が決定した背景は、どのようなものでしたでしょうか?

宮下そもそも『MHF』は『モンスターハンター2(ドス)』を基盤としていますので、システムが古いんです。その基盤の上で「まだできるかな?」と、つねに議論していました。

砂野2010年代後半になるにつれ、東京オリンピックまでいけたら、と話をしていましたね。

宮下“ZZ”のアップデート後、翌年の開発を進るにあたり、どうするかを改めて社内で話し合い、このままのシステムでいくのはきびしいと判断し、サービス終了を決定しました。

――システム面の影響が大きかった、と。

宮下そうですね。12年前の仕組みなので、セーブデータの持ちかたなども古いんです。新しいものを継ぎ足すことで、古いものに不具合が起きたりしていたので、このまま継ぎ足していくのは危険だと判断しました。何年か前にデータの持ちかたを大きく変えようとしたのですが、検証範囲が膨大で、それ自体が年単位のプロジェクトになるレベルでした。

――それは……よくここまでできましたね。

宮下 開発メンバーががんばってくれました。

砂野そのうえで複数プラットフォームで展開したので、ハード固有の制限や問題が多くなってきたというのも大きな要因でした。

――そんな状況の中、“ZZ”のタイミングでマグネットスパイクを実装したのはすごいですね。

宮下あれは、かなりギリギリでしたね。その前年の、エルゼリオンもエフェクトがバリバリで、とてもたいへんでした。あの手この手を尽くして、やれることを最大限やっていましたね。

砂野サービスが後半になるにつれて派手さが増しましたね。エルゼリオンは10周年のタイミングだったので、思いっきりやろうという思いがありました。マグネットスパイクはほかの武器種の2倍以上のアクションを入れたんですが、あれでもだいぶ削っているんですよね。

宮下いろいろ言えなかった話があります(笑)。やはり、メモリの問題や全体的な構造が古いことが大きかったですね。

砂野だからと言って、クオリティーを下げることはしたくはありませんでした。10年を過ぎて、いつか終わりが来るだろうという思いが、心の片隅にありましたし、僕が『MHF』の最後を看取るのだろうと覚悟していました。

宮下言いかた!(笑)。

一同 (笑)。

砂野でも、やはりさみしいですね。

――サービス終了を発表した後の、ユーザーからの反応はいかがでしたか?

砂野Twitterの世界トレンド上位に入ったり、日本のトレンドトップ15に5個ぐらい関連ワードがあって、それだけ『MHF』に触れてくれた方が多かったんだと実感しました。終了発表のツイートにも800件ほどのリプライが来ていて、愛情に溢れた声を多数いただきました。

先駆け的存在だった『MHF』

――オフラインイベントや配信を通じて、ユーザーとのやりとりで印象に残っていることはありますか?

宮下僕はいちばん多くイベントに行かせていただいていますね。印象に残っているのは、“MHF感謝祭 2012”ですね。『モンスターハンター フロンティアG』が発表された瞬間の、会場の盛り上がりは鳥肌ものでした。いま思い出しても鳥肌が立つほどで、一生忘れられないですね。全国でいろいろなイベントをして、ときには怒られたり、ときには褒められたりと直接意見を聞くことができ、とてもありがたかったですし、僕にとって最高のひと時でした。

砂野僕はカプコンバーのイベントのときに、意見をメモするために持参したノートに、ユーザーさんがびっしりと要望を書いていたことが印象的ですね。

宮下砂野くんは、愛されキャラだったよね。「宮下より有能」みたいな感じで(笑)。

砂野最初は金髪をいじられましたけど(笑)。

――全国のネットカフェを巡るというのは、なかなかハードではなかったですか?

宮下スケジュール調整がとてもたいへんでした。アップデート前の土日で計4回ずつやっていたのですが、連休のときは5.6回になり、移動がもはや高難度クエストでした。東京や大阪だけだと、地方の方が参加できないので、「よし! 全国を回りましょう!」となって始めたんですよね。各会場で皆さん盛り上がってくれたので、やってよかったなと思います。

――ネカフェと提携して特典をつけたりするといったことは『MHF』が先駆けでしたよね。

宮下わりと早めにやらせてもらいましたね。家で黙々とひとりでプレイするのもいいですが、ぜひ顔を合わせて遊んでほしかったので。ユーザーさんどうしのコミュニケーションがより取れる場所を提供しようというのが始まりでした。いまでは多くのメーカーさんがネカフェ特典を
つけたりしていますね。

――『MHF』では、オンラインゲームで先駆けとなったものやサービスが多い感じがします。

宮下パッケージ販売もそのひとつで、プーギー型のアニバーサリーパッケージはとても苦労しましたね。

砂野アニバーサリーのグッズでは、フィギュアやぬいぐるみ、かばんなども作りました。

宮下コラボも非常に多くやらせていただきました。最初の“ピザハット”コラボのときは、僕はまだユーザーでした。グリコさんの“アイスの実”ハンマーのときは、全色集めるためにどれだけアイスの実を食べたことか(笑)。懐かしい思い出です。

砂野はりきり具合でいうと、僕は『彼岸島』コラボを思い出しますね。

宮下できあがってきたものを見たときは、「え
え! やりすぎじゃない! ?」と(笑)。

砂野「開発陣ノリノリすぎでしょ!」って(笑)。

――プロデューサーが顔出しをして、動画を配信するのも、当時はあまりなかったことですね。

宮下かなり初期からでしたね。こういう理由や考えでこれを実装します、といったことを直接お伝えすることが大事だと考えていました。

『MHF』のオリジナリティー

――『MHF』では、数々のオリジナル要素が実装されていましたね。

砂野オリジナル武器種として、穿龍棍、スラッシュアックスF、マグネットスパイクがありました。マグネットスパイクは発表段階からかなり大きな反響がありましたね。

宮下それと、全武器種に“型”と呼ばれる新アクションを3つずつ追加しましたが、とくに“極ノ型”はとてもいい反応をいただけました。

砂野モンスターはモンスターで、単体のよさがありますが、アクションや武器種はどのクエストでも楽しさが味わえるので、そこの反響がいちばん大きかったのかなと思いますね。

――モンスターだと、ラヴィエンテは多人数で挑む、『MHF』ならではのモンスターでした。

宮下最大32人で挑むモンスターですが、『MH』の世界観に即して、4人パーティーが複数出撃という形で実装しようということになりました。

――やろうと思えば、5人以上のパーティーを組むことができたのですか?

宮下できました。『MHF』では、『MH』としての新しい挑戦をがんばっていましたね。

――モンスターを1体を制作するのに、どれくらいの時間を要したのでしょうか?

砂野1年ほどです。新モンスターだと、3つ前のアップデートのタイミングぐらいから開発をスタートする感じでした。2019年1月のアップデートが終わったタイミングでモンスターの開発を終了したので、すべて出しきりましたね。

宮下実装を進めていたものはすべて実装した感じです。新モンスターのアイデアやデザイン案という段階ですと、まだまだありましたが。

魔改造と呼ばれた『MHF』流アレンジ術

――デザインやギミックを含めて、好きなモンスターを1体選ぶとしたら、どれでしょうか?

宮下僕は2009年に入社したのですが、シーズン6.0のアップデート直前でしたので、まだ世の中に出ていないカム&ノノ・オルガロンを見たときの印象が強いですね。そのつぎが、ラヴィエンテですね。ラヴィエンテの開発をオルガロンと並行して行っていたのですが、そのときのインパクトはいまでもよく覚えています。

砂野僕はUNKNOWNですね。ハンターの皆様も大好きですよね! レイア型の飛竜で王道ですし、行動が変化して狩っていて楽しいです。『MHF』ならではの楽しさが詰まっていると思います。直接携わったモンスターの中では、グァンゾルムのデザインが好きですね、かっこいいです。

宮下かわいいのもいますね。パリアプリアはめちゃくちゃかわいいと僕は思います。

砂野あとは、開発メンバーみんなが好きなのは、バルラガルですね。

※公式サイト“MHFに登場したオリジナルモンスターたち”

――ナンバリングの『MH』シリーズのモンスターも多数登場しました。

宮下『MHF』オリジナルのアクションやエフェクトを入れたりしたので、もとのモンスターとはまた違った味があると思います。

砂野極み吼えるジンオウガとかはその筆頭ですよね。ユーザーさんからはよく“魔改造”と言われていました(笑)。

宮下開発している立場としては、魔改造と言われるほどテンションが上がりましたね。

砂野ゴアマガラの真・狂竜化なんて「いったい何が起きた?」という感じでしたね(笑)。

宮下2(ドス)』ベースですし、そのまま持ってこれるわけでもなく、ほぼ1から作っています。決して簡単ではありませんが、ユーザーさんに喜んでいただけてよかったです。

――いままで実装したものの中で、ユーザーの反響が大きかったものは何でしょうか。

宮下やはり新モンスターやハンターのアクションは反響が大きいですし、喜んでもらえていたと感じています。細かいところですが、初期の頃はアイテムボックスがひとつしかなくて、ボックスを増やしたときは、すごく喜んでもらえましたね。

砂野どんなに力を入れても、リファインの部分で爆発的な反響を得ることは少ないんですが、ちょっとずつでもプレイを快適にするためのリファインは、とても大切にしていました。

――ユーザーのプレイで、開発の想定を上回ったものなどはありますか?

宮下そもそも、僕らが想定しているよりも、ユーザーさんたちは驚くほどに上手なんですよね。秘伝防具などの装備も、こちらが想定した作成時間の何倍もの早さで完成させられてしまいましたし。

砂野キーボードでプレイしている方はすごいと思いましたね。しかも上位ランカーの方だったりして。プレイ動画を上げてくれている方もいたりして、それを見たときは衝撃的でしたね。

宮下狩煉道では2000層を超えたというユーザーさんも出現して、腰を抜かしましたね(笑)。