2019年10月31日にサービスインした、スクウェア・エニックスの新作タイトル『インペリアル サガ エクリプス』(Yahoo!ゲーム ゲームプラス、DMM GAMESにて配信。PC/スマートフォンにてプレイ可能)。同作は、2015年にリリースされた『インペリアル サガ』(以下、『インサガ』)の続編に当たる。

 『インサガ』は、さまざまな『サガ』シリーズのキャラクターが登場するオールスターゲーム。その『インサガ』のエンディング後、キャラクターたちは元の世界に帰らずに、新たな世界で生きることとなった――そこからの物語を描くのが『インサガ エクリプス』だ。

 本記事では、プロデューサーを務めるスクウェア・エニックス奥州一馬氏と、メインシナリオを担当するベニー松山氏のインタビューをお届け。4年のあいだ運営してきた前作『インサガ』、その想いを受け継ぎ新たなスタートを切った『インサガ エクリプス』について、ストーリーに焦点を当てて語ってもらった。

奥州一馬氏(おうしゅう かずま)

スクウェア・エニックス プロデューサー。前作『インサガ』から引き続き、プロデューサーを担当。生放送やオフラインイベントなどにも出演し、開発スタッフの熱き声をユーザーに届けている。

ベニー松山氏(べにー まつやま)

ゲームライター/小説家。前作のシナリオの大半を担当し、本作でもメインシナリオを手掛ける。これまで、何冊かの『サガ』攻略本に小説を寄稿しており、『サガ』との関係は深い。

元の世界に帰ることは幸せか? そこから始まる新たな物語

――前作『インペリアル サガ』のサービス開始から4年以上が経ちました。これまで運営してきて、皆さんが見出した『インサガ』らしさとは何でしょうか。

奥州この4年の中で、いろいろなゲームシステムや、ベニーさんに書いていただいたシナリオを追加してきました。自分たちなりに『インサガ』らしさを出してきたつもりですが、最終的に『インサガ』らしさをどう受け止めるかというのはお客様次第だと思います。プレイされてきた方が、「『インサガ』らしさって、こうだよね」と感じてくださるものがあったのなら、開発者冥利につきますね。

ベニーせっかくの“各シリーズからキャラクターが集まってくる”という舞台なので、本来ならばあり得なかった別作品のキャラクターたちのやり取りを描いて、そこをユーザーの皆さんに楽しんでもらえれば……と心がけて、ずっとシナリオを書いてきたつもりです。

――それにしても、4年という月日はかなりのものですよね。

奥州そうですね、あっという間でしたけど……。

ベニー時間はいくらあっても足りなかったなあ、と。なんで「ルート追加しよう」なんて言っちゃったんだろう、と思ったり(笑)。

奥州イベントシナリオを後から読める“回想モード”も、ベニーさんの発案で実装したものでしたね。いろいろなルートに分岐していくシステムも、ベニーさんからアイデアをいただいて作ってきたものですし。結果、シナリオのボリュームはすごいことになったんですけど……。

ベニー自分で自分の首を絞めながら書いていました(笑)。

奥州そのおかげで、いろいろなバリエーションのあるシナリオを提供できたと思っています。

ベニー回想モードが入ったことで、「あの話で、こういう展開だったのが、じつはこっちにつながるよ」というシナリオを書けるようになったんですね。ゲームによっては、過去のイベントシナリオは、時間が経って復刻してからでないと読めないじゃないですか。でもそれだと、伏線を入れてもわかってもらえないんですよね。ですので、回想モードを実装してもらえたのは、シナリオ制作のうえでは非常にありがたかったです。

奥州ベニーさんのモチベーションを、少しでも上げようと思いまして(笑)。

ベニーいやいや、つねにモチベーションは青天井ですよ(笑)。

――(笑)。シナリオを追加する際、新しい続きの物語を書くのではなくて、途中から分岐させるのは、開発上、たいへんだったのでは?

奥州キャラクターひとりひとりにスポットを当てて掘り下げていくためには、シナリオを分岐させる必要があったんです。キャラクターの数がとにかく多いので。

ベニー当初は光ルートがあって、その後に闇ルートやエッグルートが追加されていきましたが、「どんな話なら、このルートの中で起こりうるのか」と考えながらイベントを作っていった結果、だんだん「描かれていないけれど存在する無数の“可能性”のルートがあるんじゃないか」と思うようになったんですね。そこから膨らませて並行世界が折り重なるシナリオを作っていきました。

――そうして4年の長きにわたってシナリオを紡いできた『インサガ』ですが、Flashのアップデート・サポート終了にともなって、『インサガ』自体のサービスも終了せざるを得ない状態になりました。そこから、『インサガ エクリプス』という新たなタイトルを生み出すにいたるには、どのような経緯があったのですか?

奥州『インサガ』ならではのシステムやシナリオを気に入ってプレイしてくださった方がたくさんいる中で、外的要因によって閉じてしまうのはすごくもったいないと思っていました。なんとかこれを、つぎの展開につなげられないかと思い、ベニーさんも交えてお話を進めていったんです。

ベニーFlash終了というのは、もう自分たちではどうにもならないことでした。それなら逆に、ひとつの機会を与えられたと考えよう、と。まず考えられるのは、すべてをリセットすることですよね。集まったキャラクターたちが、それぞれの世界に帰っていくという。でも、そうではない立脚点から、新しいゲームを作れないだろうかと思ったんですね。4年間遊んでくださった方の蓄積を活かしたストーリーを展開したら、おもしろくなるんじゃないか。4年もやってきたんだから、きっとできるだろう! ……という流れで、『インサガ エクリプス』のシナリオが生まれました。

――集まったキャラクターたちが散らないままの物語を作る、ということが根幹にあったんですね。

ベニー突き詰めて考えると……たとえば『サガ フロンティア2』は、ゲームの中に時間の流れがあって、その中で命を失うキャラクターもいます。そのことを知っているキャラクターと、知らないキャラクターが、『インサガ』の世界では同じ場所にいました。じゃあ、『インサガ』の世界で、いずれ自分が死ぬことを聞かされた場合、その運命を知ったまま元の世界に帰るのかというと……。

――自分の死を、簡単に受け入れられはしないですよね。抵抗するかもしれません。

ベニーそうすると矛盾が生じるから、もし元の世界に帰るのなら、記憶も何もかも失う必要があるのでは……? と考えると、もうそれは、“消滅”を意味するのではないかと思いました。ならば、元の世界にはキャラクターは残っているままで、『インサガ』の世界にいるのは、元の世界から分かたれた“if”の存在なんじゃないかと。そんな彼らにとって“帰る”ということは、必ずしも大団円を意味しないのでは……というところから、今回のシナリオを作っていきました。

――そこで『インサガ エクリプス』の主人公リベルは、彼らの受け皿となる新しい世界ディミルヘイムを作ったと。でもキャラクターの中には、帰りたかった人もいますよね?

奥州おっしゃる通り、「俺は帰りたかったのに」と考えている勢力もいますし、「この世界を作ってくれてありがとう」と考えている人たちもいます。

ベニー折り合いを付けられる人、付けられない人は当然出てきます。彼らが織りなす、新しい人間模様を描きたいと思っています。

『インサガ エクリプス』の主人公リベルは、前作『インサガ』の物語の“観測者”だった。リベルは『インサガ』で集まった英雄たちを救うため、彼らの新たな住まいとなる新世界を創造。ジニーなど『サガフロ2』のキャラクターたちは、そのことを有難く思っているようだ。

『インサガ エクリプス』の物語はいわば“大河ドラマ”

――新主人公リベルが歩む道は順風満帆とはいかなそうですね。

ベニー最初にリベルが出会うキャラクターは、『サガ フロンティア2』に登場するジニー・ナイツとミーティアなのですが、そうしたのは若干「明るい話にしよう」という気持ちが……自分にあったからなんですけどね。おそらく。『インサガ』のときも、ジニーたちが出てくるシナリオは、明るく楽しい展開を心がけていたので。

奥州もともと、リベルは理想の世界としてディミルヘイムを作っていますから。目覚めたリベルにとっては、世界は明るいものなんです。徐々に、そうではないところが見えてくるのですが。

――『インサガ』と比べると、物語の冒頭は明るいと言えるかも?

ベニー『インサガ』なんて、もう詰んでる状態から始まってましたからね。いきなりミカエルが「兵士ザールは見捨てていけ」とか言うし。

奥州撤退戦から始まりましたからね、『インサガ』は。

ベニーその兵士ザールですが、『インサガ』では初っ端に死ぬのですが、『インサガ エクリプス』では、じつは後々出てくるんです。

奥州今回は、前作ではあまり出番のなかったキャラクターにもスポットを当てていたりします。リリース時に楽しめる範囲のシナリオでは、その全貌は見えないのですが、前作からプレイされている方には、楽しみにしていただければと。

ベニーこの記事を読んで、「兵士ザールって誰だよ!?」と思う人が大半だとは思うんですが(笑)。ほかにも、『インサガ』では実装できなかった『サガ』キャラクターもいるので、彼らも活躍させていきたいです。

クロニクルモード冒頭にて、リベルに救われる兵士ザール。ついに生き残ることが出来た彼の行く末は!?

――活躍が気になると言えば、新キャラクターであるアモル、そして敵対勢力の皆さんもです。

奥州謎の生物であるアモルは、「マスコットキャラクターが欲しいな」という、プロデューサー的な願いから生まれたのですが……『サ・ガ2 秘宝伝説』でいう“せんせい”、『ロマンシング サ・ガ2』でいうコッペリアのような。前作にはそういう立ち位置のキャラクターがいなかったので、『インサガ エクリプス』ではぜひ登場させたいと。

ベニーそう言うと、後から付け加えたキャラクターのように思われるじゃないですか(笑)。そんなことはないですよ。アモルにはシナリオ上の、とある重要な役割を託しています。

キュー、キューという鳴き声がかわいいアモル。彼(?)の正体は?

奥州敵勢力に関しては、『インサガ』の設定資料集(『インペリアル サガ 公式設定資料&画集 アルタメノス伝書』)を読み込んでいる方なら、その正体がわかるかもしれません。『インサガ』の世界の歴史は、『インサガ エクリプス』にも関わっているので。

ベニー敵キャラクターに関しては、単純な敵役にはしたくないと思っています。そこはぜひメインシナリオで確かめていただければ。

――『インサガ』は周回プレイを前提とするシナリオでしたが、本作ではどうなるのでしょうか?

ベニー今回、イメージしているのは大河ドラマです。

奥州前作には皇位継承というシステムがあり、皇帝が移り変わりましたが、今回はリベルというひとりの主人公の物語を追っていく形になっています。

ベニーメインシナリオはリベルの一人称視点で進みますが、“そのころ、ほかのキャラクターはこんなことをしていた……”というエピソードを、イベントストーリーで語っていくつもりです。

――ところで本作には、メインシナリオのほかに、『インサガ』の物語を追う“クロニクルモード”も収録されていますね。

奥州もともとは、メインシナリオとクロニクルモードは分けてはおらず、前作の世界にリベルがどう関わっていたのかは、メインシナリオの冒頭でお伝えするつもりでした。ただそうすると、前作をプレイしていない方が、物語に入り込むのが難しくなってしまいます。そこで、『インサガ エクリプス』からゲームを始めた方でもメインシナリオを追いやすいように、過去のお話は別モードに収録しました。クロニクルモードをプレイすると、“リベルはあの場面で、じつはこういう活躍をしていた”ということがわかるようになっています。

――クロニクルモードのお話は、リリース時に、最初から最後まで体験できる?

奥州はい、『インサガ』のメインシナリオで何が起きていたかを、リベル視点で新世界誕生まで見られます。プレイすることで、リベルの人となりを、さらにわかってもらえると思います。

スマホで遊べる快適さを実現。まずは気軽に遊んでほしい

――前作はPCブラウザ専用ゲームでしたが、今回はスマホでもプレイ可能ということで、新たなユーザーも多く入ってくると思います。新規ユーザーを意識して調整した部分はありますか?

奥州シナリオ面では、“キャラクターが急に出てきて、その性格や背景などが語られることなくお話が進行するのは避けてほしい”とベニーさんにお願いしています。遊んだことのない『サガ』作品のキャラクターがたくさん出てきて、説明もなしに物語が進むと、プレイヤーを置いてきぼりにしてしまうので。

ベニー新規ユーザーの方でも楽しめて、お話に入り込めるような構成を心がけています。

奥州逆に、『インサガ エクリプス』をきっかけにそのキャラクターに興味がわいて、原作のゲームを遊んでもらえたら、すごくうれしいですね。

――ところで、シナリオ面以外で、スマートフォンに対応するうえで気を使ったところは?

奥州ユーザーインターフェースも、スマホで遊びやすいようにしっかり作り込んでいます。バトルシステムも、スマホで遊ぶことを前提に、軽くサクサク遊べるように調整していますし。とはいえ、遊び応えがなくなったわけではなく、能動的にプレイヤーが考えるバトルを目指しています。属性や連携、キャラクターの組み合わせによって戦いかたも変わってきますので、ぜひプレイして、いろいろと試してみてほしいなと。

ベニー前作を遊んだことがない方も、まずは気軽に遊んでみてほしいですね。

――では最後に、今後の展望をお聞かせいただけますでしょうか。

奥州まずは『インサガ エクリプス』のメインの物語を皆さんに楽しんでいただけるように、定期的にアップデートをしていきたいです。当然、皆さんがより快適にプレイできるようなバージョンアップも行う予定です。

ベニー「期待を裏切らず、でも予想を裏切ろう」ということを心がけてシナリオを書いていきます。つぎが楽しみになるように、ストーリーをうねらせていきたいと思います。