2019年12月8日に東京・阿佐ヶ谷ロフトAにて、Onion Gamesによる公式飲み会イベント、“タマネギ大忘年会 勇者たちの宴”が開催された。このイベントは、同社の2019年の活動を振り返るもの。おもに『勇者ヤマダくん』と『moon』に関するトークがくり広げられ、ファン歓喜の『moon』リマスターサントラ発売発表のほか、『勇者ヤマダくん』2枚目のサントラリリースや、『勇者ヤマダくん2』の無償アップデートの話題なども飛び出した。本稿ではその模様をお届けする。

2019年のOnion Gamesの歩みと『勇者ヤマダくん』の開発運営振り返り

 3部構成となったイベントの第1部では、フリーライターのローリング内沢氏司会のもと、Onion Games代表の木村祥朗氏と同社デザイナーの倉島一幸氏が登壇し、まずは2019年のOnion Gamesの活動を振り返った。

画面左より、倉島氏、木村氏、内沢氏。まずは会場のファンとともに乾杯!

 Onion Gamesの今年の大きな動きとしては、同社の次回作となる『MonAmour(モナムール)』に関すること、Nintendo Switch版とSteam版『勇者ヤマダくん』のリリース、Switch版『moon』の発売などが挙げられた。

 木村氏がとくにたいへんだったと語ったのは、1月から4月について。これは4月の『MonAmour(モナムール)』のプレイアブル出展と、6月の『勇者ヤマダくん』リリース、10月の『moon』リリースのための作業が並行したため。「いままででいちばん作品を発表したり、発売することが多かった年」と、同社の2019年を総括した。

 ここで司会の内沢氏が、2019年の夏に実施予定だったSwitch版『勇者ヤマダくん』の大型アップデートがまだ行われておらず、年表にも記載されていないことを指摘。会場が笑いに包まれる中、木村氏はこの件について、『moon』のせいではなく、『勇者ヤマダくん2 幻の花嫁』の作業量が多く難航したからと説明。

 『勇者ヤマダくん2 幻の花嫁』は、もともとスマホアプリ版『勇者ヤマダくん』内で2016年に配信され、件の大型アップデートでも追加予定だったコンテンツ。スマホアプリ版では、実装後もアップデートをくり返し、さまざまなタイトルとのコラボダンジョンを実装しており、「それらすべてのコンテンツをSwitch版『勇者ヤマダくん』用に調整するのがたいへんだった」と木村氏。さらに最終ダンジョン“天国への階段”を木村氏のイメージどおりに仕上げるため、現在作業を進めているという。

 ここでその調整中である99階ダンジョン“天国への階段”をSwitch実機でお披露目する展開に。ゲストとして、Swtich版『勇者ヤマダくん』のリードエンジニアであるmic氏と、アシスタントディレクターのLuCK氏が登壇してプレイを披露、解説した。

LuCK氏(画面中央)とmic氏(画面中央左)。

 『勇者ヤマダくん』をあらためて説明するなら、5×5の25マスからなるダンジョンフロアを、スタート地点からゴール地点まで一筆書きでつなぎ、途中にある宝物やアイテムを手に入れたり、魔物を倒したりしながら、ダンジョンの最深部まで攻略していくRPGだ。

 実装予定である“天国への階段”は、ゲーム内のルールや出現するアイテム、モンスターの強さは本編と同様に設定されているにもかかわらず、プレイヤーキャラであるヤマダくんは装備のない裸の状態。テストプレイを行ったmic氏とLuCK氏によれば、「本編とは別ゲー」と感じるほど難度が上がっており、それゆえプレイフィール自体も大きく変わっているとのこと。

 実機プレイを務めるのはLuCK氏。さっそく挑むも、難度の高さに加えて多くのファンの前でのプレイする緊張もあるのか、低い階層で体力が尽きてしまう。3度目の挑戦で、プレイとダンジョン内で入手したアイテムがうまく噛み合い、会場のファンたちもスクリーンに釘付けになる中、ボスが登場する15階に到達(※)。ここでもアイテムを巧みに駆使して順調にボスを攻略し、ついにボスの残り体力を大幅に上回るダメージ量を与える……が、ボスの持つスキルなのか、残りHP1で耐えられてしまい、そこで反撃を喰らったヤマダくんは悶死。ここで実機プレイが終了した。終わってみれば、本編よりもさらに歯応えのあるダンジョンであることの片鱗を見せつけられた形となった。

※本来ならボスは30階で登場予定だが、イベント用に15階で登場するように調整されていたとのこと。

 実機プレイを終えたところで、あらためて木村氏から、Switch版の大型アップデートの時期が2020年初春であることが告げられた。“天国への階段”やコラボダンジョンがすべて収録され、無料で行われるという。

『勇者ヤマダくん』ファン必見、怒濤の運営史を披露

 続いて『勇者ヤマダくん』の歴史を振り返りつつ、同作の音楽にまつわるさまざまなエピソードを振り返る、“勇者ヤマダくん珍曲事件簿”のコーナーに突入。続くゲストとして、本作の音楽を担当したスタジオカリーブの杉山圭一氏が迎えられた。

写真中央左が杉山氏。

 モニターには『勇者ヤマダくん』の歴史年表が映し出されたが、これがとにかく細かく、膨大な数の出来事が記載されたというシロモノ(記事末尾にテキスト掲載)。年表の中から、とくに目立った2016年以降の出来事についてのトークとなった。

 ひとつ目は、『ファイナルファンタジー』シリーズの作曲家として知られる植松伸夫氏とのコラボについて。同コラボで実装されたダンジョンには、植松氏による楽曲のほか、植松氏本人がダンジョン内のボスとして登場。さらにラブデリック系ゲーム特有の不思議な音声、通称“ハナモゲラ語”を植松氏の声で再現するため、植松氏のスタジオに杉山氏が出向き、ボイス収録を行ったというエピソードが語られた。

植松氏には『ファイナルファンタジーV』のボス戦のようなイメージで、と曲の発注がなされたが、じつは植松氏と木村氏は、ともに大のオカルト好き。その結果、冒頭は『FF』っぽいが、途中からUFOが跋扈する怪しげな雰囲気となり、しまいには植松氏のラップが始まる楽曲となった。

 また、“音楽界の巨匠とコラボしつつ、『勇者ヤマダくん』の世界観を損なわないで演出する”という点について悩んだ木村氏は、最終的に、とりあえずノビヨ師匠の服を脱がせておけばいいんじゃないかという結論に至ったと話し、会場を湧かせた。

 続いて、セロニアス・モンキースとのコラボについて。木村氏によれば、セロニアスのふたりと当初はゲーム内の音楽について議論していたはずが、いつしか“老後”や“愛”についての話にまで発展したという。

 最後に語られたのは『東方Project』とのコラボについて。木村氏はこのコラボが深く印象に残っているのとのことで、理由として、『勇者ヤマダくん』を知らなかった『東方』ファンがプレイするきっかけとなったことを挙げていた。『勇者ヤマダくん』がどう受け止められるのか不安だったが、『東方』ファンの多くの方に気に入ってもらえたようで、SNS上でも褒められて「とてもありがたかった」と木村氏。一方の杉山氏は、植松氏とのコラボの時と同じように、『東方』コラボでも原作者であるZUN氏の家に向かい、ボイス収録を行ったと語った。

 2017年は、英語版『勇者ヤマダくん』(英語タイトル:『Dandy Dungeon』)がリリースされた年でもある。これにより、国内だけで20万だったダウンロード数が、80万まで増加したことが明かされた。また、同年でもっとも思い出に残っている曲として、3月に実装されたダンジョン“穴掘りバイト現場”に登場する楽曲、『岩井のズンドコ節』が紹介された。

ズンドコ節は、『勇者ヤマダくん』の歌詞入り楽曲としてはごく初期のものだったが、曲へのなじみもあって、スラスラと歌詞が出て来たとのこと。

 続く2018年は“激動の年”だったという木村氏。なぜなら、スマホアプリ版『勇者ヤマダくん』は2018年12月19日に運営が終了しており、この結論に至るまでに、『勇者ヤマダくん』の運営を続けるべきか終わらせるべきか、数多く議論が交わされたからだ。

 また、1月17日に実装されたスマホ版『勇者ヤマダくん2 幻の花嫁』のラストダンジョンに当たる“ダークソリッドタワー”の楽曲の制作に、とても時間を要したエピソードが語られた。というのも、ゲームの持つ雰囲気と同ダンジョンの世界観を合致させるのが難しかったからで、なかでもダンジョン内のイメージに合わせて楽曲内にお経を用いることになったが、お経の詞を書いたことがあるわけもなく、なかなか作詞がうまくいかなかったというエピソードも披露された。

 この年、もっとも印象に残っている出来事として挙げられたのは、1月27日に開催された“タマネギ音楽祭 2018 ~ライブだョ 全員集合!”。企画の主軸として奔走していた杉山氏が、疲れからかライブの数日前から風邪を引いて声が出なくなってしまったという、苦いエピソードが語られた。

 このコーナーの最後には、『勇者ヤマダくん』のサウンドトラック第2弾、『勇者ヤマダくん珍曲アルバム X面Y面Z面』が、『勇者ヤマダくん2』の大型アップデートと同じ2020年初春にリリースされることが発表された。これは2枚組で100曲を収録(大型アップデートにて追加予定の“天国への階段”の楽曲を含む)。中には、このコーナー内で紹介された植松氏やZUN氏とのコラボ楽曲なども含まれている。さらに同梱される描き下ろしブックレットには、収録楽曲の歌詞が全掲載されたうえ、ゲーム内にてヤマダくんが住むマンションの完全な断面図も描かれているとのこと。