コーエーテクモゲームスより、2019年9月26日に発売予定の『ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』(Steam版は10月29日配信予定、DMM GAMES版は発売日未定)。東京ゲームショウ2019のコーエーテクモゲームスには、同作の試遊台が出展されたほか、主人公ライザの等身大フィギュアが展示され、多くのユーザーの注目を集めた。
本記事では、『ライザのアトリエ』のプロデューサーを務めるコーエーテクモゲームス 細井順三プロデューサーのインタビューをお届け。TGS一般公開初日に行われたステージの模様も交えつつ、発売目前の『ライザのアトリエ』の見どころに迫っていく。
ファミ通.com“TGS 2019情報まとめ細井順三氏(ほそい じゅんぞう)
コーエーテクモゲームス ガストブランドのプロデューサー。『アトリエ』シリーズには長く関わっており、『リディー&スールのアトリエ』からプロデュースを担当するように。
『アトリエ』の未来のために、『アトリエ』のすべてを見直した
――今回のTGSで、まず驚いたのはライザの等身大フィギュアですよ。
細井私自身、もちろん監修はしていたものの、彩色が完了したものはTGS会場で初めてみたので、驚きましたね。迫力に。
――『アトリエ』で、こういった大きな造形物を展示するのは初めてではないですか?
細井初めてです。ライザの商用フィギュアを作ってくださっているWonderful Worksさん(※)が、今回、この等身大フィギュアも作ってくださったんですよ。
※ライザの1/7スケールフィギュア(発売日未定)を制作中のフィギュアメーカー。
本日開催のワンダーフェスティバル「Wonderful Works」ブースにて『ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』から主人公ライザのスケールフィギュア、原型展示を行っております!トリダモノさん公式イラストの可愛いライザ… https://t.co/NdesslWOz9
— Wonderful Works@WF1-03 (@Wonderful_Works)
2019-07-28 09:50:04
今日はフィギュア監修のため株式会社WonderfulWorksの原型師さん達と打ち合わせしてきました。なんていい造形だぁ https://t.co/5nS67k0iR2
— トリダモノ (@toridamono)
2019-08-05 21:25:05
――正面から見てもかわいいのはもちろん、横や後ろから見てもかわいくて、こだわりを感じます。さて、今回は試遊台が10台(Switch版、PS4版がそれぞれ5台)用意されていましたが、それでも長い行列ができるほどの盛況ぶりでしたね。
細井今回の試遊版は、戦闘と調合のコアな部分が遊べますし、フィールドの雰囲気も味わえる内容になっているので、10分という制限時間はありますが、楽しんでいただけたと思います。
――今回のTGSの中でも、『ライザのアトリエ』の注目度は高かったと感じます。日本ゲーム大賞 フューチャー賞の受賞もおめでとうございます。
細井ありがとうございます。まさか受賞できるとは思っていなくて、本当にうれしいです。
――久々の新シリーズ始動で、主人公がかわいい! ということで、これまでに『アトリエ』に触れてこなかった人も、本作のことが気になっているようです。ただ、新シリーズであるぶん、生みの苦しみもたくさんあったかと思いますが、開発を終えて、いかがですか?
細井新シリーズを立ち上げるときは、新しいものをどう作ればいいのか、いつも試行錯誤するんですよね。今回は、まずキャラクターデザインの方向性をこれまでと変えたので、発表時に皆さんからどんな反応があるかが怖かったです。『ライザのアトリエ』は『アトリエ』の存続に関わるタイトルで、注目してもらわなければと強く感じていたので、夜も眠れないほどでした。
――その不安は、いままでのシリーズと比べても大きかった?
細井ひとつ前の“不思議”シリーズは、PS4が新しいプラットフォームとして注目を浴びていく時期に展開しましたし、PS Vita版も同時発売するのは初だったので、「これは、いけるんじゃないか」という手応えがあったんですよ。でも今回は、SwitchもPS4も、発売されて年月が経っている状態です。そんな状況でシリーズ展開をして、皆さんに注目してもらうというのは、簡単ではないと思っていました。
――ライザの太ももが大フィーバーする状況は、予想できていなかったと。
細井本当に、ユーザーさんと、ライザというキャラクターを生んでくれたトリダモノさんのおかげですね。ありがたいです。夜も眠れるようになりました(笑)。でも、発売されてお客様の手に届いてからがゲームなので、まだ不安はありますが。
――トリダモノさんも、以前、「発表までは不安で仕方なかった」とおっしゃっていました。
細井トリダモノさん自身も、まだ怖さは抜けないそうです。でも、「ライザというキャラクターにいろいろなものを与えてもらった」、「自分にとって、記念碑的な作品だ」とおっしゃっていますね。かなりライザに愛着を持ってくれて、うれしいです。
――TGSのステージにて、「自信を持って出せるタイトルになった」とおっしゃっていましたが、やはり発売までは怖いものでしょうか。
細井自信を持って出せるタイトルなのは間違いありません。ただ、序盤は世界観の説明を丁寧に行っているので、「早く先に進みたいのに」と、もどかしく思う方がいるかもしれません。世界観とシステムを同時に説明してしまうと、ユーザーさんを置いてきぼりにしてしまうのでは……という懸念があり、今回はまず世界観とストーリーから入り、システムを徐々に解放するという手法を採りました。序盤では、ライザたちの関係性や、街やフィールドの雰囲気をよく感じ取ってもらえると思います。
――ひと足先に完成版をプレイさせてもらっていますが、村の住民ひとりひとりに名前があって、クエストで住民の物語が描かれているのが興味深かったです。
細井そう、今回は“酒場で依頼を受ける”といった形式ではなくて、それぞれの住民に話しかけてクエストを行う形式にしました。ライザは、“クーケン島を構成する一部”なのだということを味わっていただきたくて。
――あと、個人的に驚いたのは、水を汲もうと思ったら、ライザの家の横に井戸がなかったことなんですよ。川で汲むのか! って。そこで、「開発スタッフの皆さん、『アトリエ』の当たり前を見直したのかな」と思ったんです。
細井そう、そうなんですよ。さすが、細かいところまで見ていますね。たとえば、グラフィック面について言うと、とくに見直したのはライティングなんです。それと、フィールドのエフェクト。木の葉が待っていたり、朝もやが周囲を覆っていたりとか。そうして、すべてを見直した結果、全体のクオリティーが上がったのかなと思っています。
――『リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~』や、『ルルアのアトリエ ~アーランドの錬金術士4~』も、クオリティーの高いタイトルでしたが、今回はまたベクトルが変わったと感じます。
細井『リディー&スール』も、『ルルア』も、我々としては完成度が高いタイトルだと思っています。「過去作は、『ライザ』より力が入っていない」というのは誤解で、『リディー&スール』でも『ルルア』でも、1月に発売した『ネルケと伝説の錬金術士たち ~新たな大地のアトリエ~』でも、そのときのガストブランドができる最大限のことをしてきたんです。ですが、ユーザーさんに「『アトリエ』が変わった!」という強い印象は持っていただけなかったのかなと感じました。それは我々の反省点で、だからこそ『ライザ』で、新しい取り組みをしました。ただ、そのぶん調整はたいへんだったので、『ライザ』をプレイした皆さんが「ここが変われば、もっといいのに」と感じる部分もあるかもしれません。そういったフィードバックを受けて、次回作をよりよくしていきたいと思います。
――では、気が早いですが、次回作はどうします?
細井フィールドに干渉するアクションに力を入れたいと思っています。それと、とくにバトルに手を加えたい。ライザはどういう立ち位置になるかはわかりませんが、必ず登場させます。キャラクターやストーリーに関しては検討中なので……まずは『ライザのアトリエ』をお楽しみいただきつつ、お待ちください。『ライザのアトリエ』に関しては、無料アップデートを行いますから、そちらもご期待いただければと思います。
――おお、無料アップデートですか?
細井はい、詳細は後日発表しますが、皆さんに喜んでいただける、いままでにはなかった要素を、無料アップデートでご提供したいと考えています。
――“黄昏”シリーズのDXも楽しみにしています。
細井“アーランド”のDX版が好評で、“黄昏”を望む声もたくさんいただいたので、制作させていただくことになりました。“Plus”シリーズの追加要素や、これまで展開したDLCもたくさん入っていますし、バトルの高速化といった便利機能も入っています。以前遊んでくださった方はもちろん、『ライザ』で『アトリエ』に興味を持って、「“黄昏”をやってみたいな」と思った方も、ぜひ手に取っていただけるとうれしいです。
10月にリニューアルするガストショップに期待!
――ところで、最近のガストショップのグッズ、やたらと充実していますよね。物販情報を見て驚きました。10月1日にはリニューアルオープンしますし、がすとちゃんのキャラクターデザインもリニューアルされて、声まで付いたし……。
細井グッズと、がすとちゃんたちのデザインについては、NOCOさんが本当にがんばってくれました。ガストに愛を持ってお仕事してくださって、ありがたいですね。
――『ネルケと伝説の錬金術士たち』のグッズの絵、すごくいいですよね。ネルケよ幸せになれ……! という感じで。ゲームをプレイして、愛着を持ったキャラクターたちの新しい絵が、こういう形で見られるのはうれしいです。
細井『ネルケ』のグッズで描かれているのは、ゲームのアフターストーリー的なものです。その後の物語を、グッズで紡いでいくのもいいんじゃないかなと思って。今後、『アトリエ』本編でもやってみようかな、と思っているんですよ。
――その後が気になるキャラクターたちはたくさんいますので、ぜひお願いします。それにしても、このガストショップの力の入れ具合からは、ショップ担当の土屋暁さんの気合が伝わってくるようです。
細井めっちゃ気合入れてますよ。ガストショップへの愛がほとばしってます(笑)。ガストショップ社歌『一陣の風』まで作りましたからね。あの社歌の歌詞って、歴代ガストタイトルをモチーフにしているんですよ。昔からのファンの方は、「あっ、これは『アレス王の物語』(ガストのデビュー作)……」と気づくと思いますよ。
――えっ、『火竜娘』(1997年発売。藤水名子氏の小説『色判官絶句』を原作とするアドベンチャーゲーム)とかも?
細井入ってますよ(笑)。わかる人はわかりますよ! ちなみに作曲は阿知波大輔さんです。ちなみに『令和新時代! がすとちゃん音頭 ~お財布握って並んで待つですの~』という曲もありまして、その曲の中の掛け声には、土屋と阿知波さんと柳川和樹さんが参加してます。
――ガストに縁のある作曲家が参加しまくりじゃないですか(笑)。
細井10月のリニューアルオープン後、ガストショップにて社歌が聴けますので、楽しみにしていてください(笑)。
10月のリニューアルオープンが待ち切れない! という人は、TGSステージのアーカイブをチェック!