サッカーファン毎年の楽しみともなっている『FIFA』シリーズ。その最新作である『FIFA 20』が、エレクトロニック・アーツより2019年9月24日に発売される。“より本物らしく”をテーマに、年々進化を遂げている『FIFA』シリーズだが、今年の大きな特徴は“VOLTA Football(以下、VOLTA)”。ストリートサッカーのフィーチャーを盛り込んでいるのだ。

 2019年8月下旬にドイツ・ケルンにて行われたgamescom 2019の会場で、『FIFA 20』のクリエイター陣3名に、同作の魅力を語ってもらった。取材に対応してくれたのは、リード・ゲーム・プロデューサーのサム・リベラ氏、ゲームプレイ・プロデューサーのトーマス・カラピ氏、VOLTA Football担当のユノ・スタネスク氏。

サム・リベラ氏

『FIFA 20』リード・ゲーム・プロデューサー(写真中央)

トーマス・カラピ氏

『FIFA 20』ゲームプレイ・プロデューサー(写真右)

ユノ・スタネスク氏

『FIFA 20』VOLTA Football担当(写真左)

とにかく、より本物らしさを求めて……

――『FIFA 20』の大きな特徴のひとつに“VOLTA”があるとのことですが、まずは“VOLTA”以外に『FIFA 19』との違いをお教えください。

サムまずはコミュニティーやプロプレイヤーからのフィードバックをもらい、希望や不満点をピックアップして検討しました。シリーズを進化させるうえで一貫して変わらない姿勢ですが、“本物に近く、より現実的に”にしています。
 たとえばドリブラーですが、より多くの時間と空間が与えられたので、いろいろなことができるようになりました。
 ポジショニングシステムにも変更を加えていまして、プレイヤーがいつも動き回っているのではなくて、ひとつのポジションに少し長く留まるようにしています。
 これによってプレイヤーに落ち着いたサッカー経験を提供できるようになりました。より現実的な経験をもたらすわけです。ボールを受け取って、すぐにパスを出すのではなくて、ちょっと待ったり、さらにドリブルをしてマークされていないチームメートを見つけてロングパスを出したり……。以前はパス、パス、パスでつないでいたものが、『FIFA 20』ではよりサッカーらしい動きを実現しています。

サム私たちが目指すのは、プレイヤーが本当にサッカーをしていると感じてくれることです。いまのところ、プレイヤーはそう感じてくれているようです。全員が走り回っているのではなくて、プレッシャーを与えに寄ってきたり、時間を取ったりするなど、リアルなサッカーを実現しています。サッカーでも1対1の局面が多く、1対1ではスキルが問われます。ときにディフェンダーの動きを読むなど、本物らしい経験になっています。

――昨年、サムさんにお話をうかがったときは、Frostbiteエンジンは年々よくなっているとのことでしたが、『FIFA 20』でもさらに進化している感じですか?

ユノその通りです。Frostbiteエンジンのおかげで、環境が生き生きとしたものになりました。“VOLTA”には17の環境があるのですが、リオ・デ・ジャネイロのファべーラ(貧民街)や東京のスカイスクレーパーの屋上など、ユニークな環境を作ることができましたよ。

――では、いまお話にでた“VOLTA”について聞かせてください。なぜ、“VOLTA”を導入したのですか?

ユノ私たちはかつて『FIFA ストリート』シリーズをリリースしていたのですが、同シリーズの人気が高くて、「いつ再登場させてくれるのか?」とのご要望が多いんですね。今回、FIFAのゲームプレイのひとつとして、フットサルやフリースタイルサッカーを入れるいい時期がきたと判断したんです。
 “VOLTA”でやりたかったのは、『FIFA ストリート』で提供した感覚をさらにつぎのレベルに上げることです。11vs11のゲームプレイで作り上げたユニークなフィーチャーの多くは“VOLTA”にも入っていますが、微調整をして、本物のフリースタイルサッカーの経験を提供できるようにしています。“VOLTA”のプレイにはいろいろな環境やシチュエーションがあります。フィールドには壁があったりなかったり、ゴールキーパーがいたりいなかったり、3vs3だったり、4vs4だったり……。ゲームプレイはとにかくバラエティーに富んでいます。これらを細かく調整してきたのは本当にすばらしい。

“VOLTA“では、世界17のロケーションを再現している。こちらはロンドン。

――『FIFA』シリーズで培ったものが“VOLTA”にも活かされているということですね?

トーマスそうですね。“VOLTA”のすべてのゲームプレイは、11vs11のプレイと同じ基盤で作られています。モードは違うのですが、ゲームプレイは同じチームが作っているんですよ。
 “VOLTA”の目標は、よりアクセスをよくすること。つまり、プレイヤーがすぐにプレイに入っていけることです。さらに、“VOLTAを理解してプレイしたあとで、フルサッカーに入ってもらえるように……ということも考えています。初めて『FIFA』でフルサッカーをプレイすると、11vs11ということでとまどうこともあるかと思うのですが、“VOLTA”は比較的わかりやすく、シンプルです。サッカーの基本的なことを理解しやすいのではないかと思っています。

――サッカー初心者にも楽しんでもらいたいということですね?

トーマス『FIFA』をより親しみやすくしたいと思っています。“VOLTA”には、フットサルや3vs3、ラッシュなど、多様なモードを取り入れています。私はブラジル出身ですが、ストリートでプレイするときは、それこそいろいろな環境でプレイしてきました。ひと言でフリーサッカーといっても、それぞれの国でやりかたが違います。“VOLTA”を導入することは大きなチャレンジでしたが、結果とフィードバックにはかなり満足しています。

――“VOLTA”の導入で『FIFA』シリーズも変わりそうですね。

サム“VOLTA”を導入して達成したかったのは、その複雑さから『FIFA』に気後れしてしまうユーザーたちに自分の居場所を見つけてプレイしてもらうことでした。ベーシックなメカニズムなので、ゲームにアクセスしてすぐにプレイして、それからフルサッカーに移行できるんです。

ユノそれだけではなくて、“VOLTA”の経験には深さがあり、“VOLTA”だけをプレイしていくという選択肢もあります。多様なゲームモードに満足していただけると思いますし、新しいナラティブも体験できます。“VOLTA”ならではのストーリーがあるんです。『FIFA』シリーズで初めて男女どちらのアバターも作れるようになっていますよ。

トーマスゲームをプレイしてキャラクターを成長させて、“VOLTA”ワールドをクリアーする。これはPvEの経験になりますが、コミュニティーのほかのプレイヤーが作ったスクワッド(AI)と対戦することもできます。さらに極めたい場合は、オンラインでの1vs1による“VOLTA”に挑戦することもできます。このように、“VOLTA”はゲームプレイだけでなく、モードも多岐にわたります。世界のさまざまな場所から選手をリクルートすることもできるんです。モードを深みのあるものにできたことに満足しています。

ユノ“VOLTA”は、コミュニティーを育て、強化することになるでしょうね。競争心旺盛にプレイしたい人もカジュアルに遊びたい人も、幅広く“VOLTA”を楽しんでくれると期待しています。コミュニティーが、よりゲームを親しみやすいものにしてくれるでしょう。サッカーを知らない人もプレイしやすいので、入ってきてくれると思います。

トーマス世界でサッカーをプレイしている人たちの多くは、ガレージでプレイしたり、ストリートでただボールを蹴ったりしています。親や友だちとボールを蹴って遊んでいるんです。ゴム草履をゴールにして遊んでいる人も多い。“VOLTA”のようなものがあって当然だと思います。

――“VOLTA”の選手はどうなるのですか?

ユノ“VOLTA”のすべてのゲームプレイで『FIFA 20』に含まれる選手でプレイできますよ。レアル・マドリードvs バルセロナをファべーラ(貧民街)でプレイできます。一方で、“VOLTA”のモード中だけで、自分の分身となるアバターを作り、自分のスクワッドを作り、ほかのスクワッドから選手をリクルートして、“VOLTA”のクラブを構築できたりもします。

トーマスさらには、数人のストリート・フットボール・レジェンド(現実のプレイヤー)として、フリースタイルチャンピオンの徳田耕太郎さんがフィーチャーされているんです。耕太郎さんは、ストーリーを進めていく過程でアンロックできますよ。

――お話をうかがっていると、“VOLTA”でeスポーツ的な展開もありそうですね。

ユノ競争要素はとても重要です。現時点では予定していませんが、将来どうなるかはわかりません。

こちらはアムステルダム。

――昨年サムさんにお話をうかがったときは、「個人的にはクラブ・アメリカが好きだけど、いまはカナダに住んでいるので追いかけきれていない。つぎに好きなのはレアル・マドリード」とおっしゃっていましたが、ユノさんとトーマスさんはいかがですか?

ユノ私はルーマニア出身なのですが、リーガ2でプレイしているホームチームを応援しています。インターナショナルレベルだと、私もレアル・マドリードをサポートしていますよ。

トーマスブラジルではグレミオのファンですね。子どものころから応援しています。インターナショナルレベルだと、バルセロナですね。ロナウジーニョが行ったからね。自分の町の自分のチームのスタジアムでプレイしていたロナウジーニョがバルセロナに行ったということで、勢いフォローすることになったんです。いまは私のクラブからバルセロナにたくさんの選手が入っているので応援していますよ。

――開発者どうしで、好きなクラブを巡って討論することはあるのかしら?

トーマスまあ、好きなクラブでプレイするのは楽しいですよね。

ユノレアル・マドリード好きとしては、バルセロナと対戦するときは燃えますよね。以前は、レアル・マドリードのほうがバルセロナの選手よりもずっと背が高かったので、パワープレイでヘディング勝負に持ち込んでいましたね。「それはオーバーパワーだ」と言われました(笑)。

サムフレンドリーなライバル心はあるので、いっしょにプレイをして楽しんでいますよ。

――和気あいあいとしていていいですね! 最後に、日本のゲームファンにひと言お願いします。

サム『FIFA』の開発チームには日本人がたくさんいます。いろいろな国籍の人たちがいて、とても和気あいあいと働いていますよ。

ユノ“VOLTA”で東京をプレイするときは、メッセージボードやエアボードをチェックしてみてください。これは、チーム内の日本人のエンジニアたちに監修してもらったものです。日本語のニュースや声を張り上げている人も出てきますよ。

トーマスいつもサポートしてくれてありがとう! つぎの『FIFA』もサポートしてくれるとうれしいです。東京の屋上で対戦できるのを楽しみにしています。

東京も舞台になっている。日本人スタッフが監修しているという看板。

――ちなみに、『FIFA』シリーズは、チーム全体で何ヵ国くらいの人が参加しているのですか?

サムここだけでも3ヵ国ですよね。拠点はバンクーバーですが、ルーマニアにもスタジオがあります。プロデューサーは全員違う国から来ていますね。じつはケルンにはライセンスチームがあります。『FIFA』は、まさに真のグローバルプロダクトだと言えるでしょうね。ゲームプレイを担当している人たちはさまざまなバックグランドを持っています。プレイの仕方も違うし経験も違う。それぞれが応援するチームの試合を見るので、異なる時間にいろいろな試合を見ています。そうした多様性が、『FIFA』シリーズの本物らしさを形作る一端になっているのかもしれません。