『FIFA 19』のリードゲームプロデューサー、サム・リベラ氏にお話を聞いた。

 2018年8月21日~25日(現地時間)ドイツ・ケルンメッセにてヨーロッパ最大規模のゲームイベントgamescom 2018が開催。ヨーロッパに来て改めて実感するのは、やっぱりサッカー人気。とくに賑やかだったのが、サッカーと言えば……の『FIFA 19』で、エレクトロニック・アーツブースで、例年通りとんでもない存在感を放っていた。

 そんな注目の『FIFA 19』に関して、リードゲームプロデューサーのサム・リベラ氏にお話を聞いた。

――『FIFA』シリーズには、いつごろから関わっているのですか?

サム 約10年になりますね。テスターから始まって、6~7年前にプロデューサーになりました。

――『FIFA 19』の注力ポイントを教えてください。

サム チャンピオンズリーグです。ファンの皆さんからもっともリクエストが多かったフィーチャーです。本作では複数のモードと統合することができました。たとえば、“The Journey”では、アレックス・ハンターがチャンピオンズリーグで勝つことを目指します。“キャリアモード”では、チャンピオンズリーグに進めたときに、本格的な経験ができるようになっています。また、独立したチャンピオンズリーグだけのモードもあります。ソフトを購入して最初から遊べるのです。ライセンスとゲームモードについては、チャンピオンズリーグがもっとも重要なものになりますね。

――チャンピオンズリーグを搭載するにあたって、苦労したことは?

サム まずはライセンスです。これは簡単に取れるものではありません。そしてチャンピオンズリーグでプレイしているときは、自分は本当にチャンピオンだと感じられるようにすることです。ちなみに、『FIFA 19』では、チャンピオンズリーグだけの新しいコメンテーターとして、デレック・レイとリー・ディクソンが登場します。チャンピオンズリーグをゲームに取り込むための素材を集めるのは、たいへんでした。ディテールがきっちりして、本物らしく見えるのには苦労しました。

――グラフィックに関しては、もう言うことはない?

サム いえいえ、毎年改善しています。Frostbiteエンジンでは、まだまだ改善の余地はあります。比較すると、毎年どんどんリアルになっています。大切なのは、グラフィックだけでなく、それを使ってどうするかです。観客の描写も大きく改善されています。たとえばウェーブなどの細かい描写を盛り込むことで、より本物らしく見えるようにしているのです。

――グラフィック改善の大きなポイントは観客の描写ですか?

サム いえ。もちろんライティングなども含めて、すべてが本物らしく見えるようになっています。昼夜の変化や雨などの天候の変化、すべてが改善されています。監修はそのひとつの例ですね。数多くの要素が、毎年すべて前年より改善されていることを確認しています。

――選手の動きについてはどうなのですか?

サム とても大切なことです。アニメーションの滑らかさは『FIFA 19』でもっとも重要なポイントのひとつです。“アクティブタッチシステム”という新しいフィーチャーがありまして、プレイヤーがボールに近づいてパスやゴールするために蹴る動きの計算が、より賢く正確になっています。プレイヤーがどの場所にどの角度で入っていかなければならないかを、正確に算出できるんです。これによってアニメーションがより滑らかになり、ゲームを見たときに本物らしい動き、自然な動きになっています。
 また、アニメーションのバラエティーも豊富になっていますので、本作ではこれまでの『FIFA』シリーズにはなかったような動きを見ることができます。私たちは、毎年プレイヤーの動きがよりリアルになるように努力しています。

――『FIFA 19』のesportsへの取り組みを教えてください。

サム esports は年々成長しており『FIFA』にとっても大切なものです。私たちがゲームをデザインする際には、多くのプロプレイヤーと話をして、彼らの要望や好みを把握します。その上で彼らにとってよいフィーチャーを検討しますが、そこに新しいプレイヤーやカジュアルプレイヤーへの考慮を加えて、すべての人に楽しんでもらえるようにデザインします。
 たとえば、今年は“Times Finishing”という要素があります。プロプレイヤーやesportsプレイヤーが実力を出すには、このフィーチャーを使う必要があります。これは、よりよくシュートするために追加したフィーチャーです。しかし、カジュアルプレイヤーは楽しくプレイすることが主目的なので、 “Times Finishing”を使う必要はありません。“Times Finishing”はメニュー画面でオフにできます。このように、『FIFA』シリーズは、すべてのプレイヤーが楽しめるようにデザインしているのです。

サム ともあれ、esportsはとても重要です。バンクーバーには専門のチームがいて、すべての試合をオーガナイズし、すべてのプレイヤーがフェアに戦えるようにしています。このチームは、全世界のトーナメントや予選プロセス、ルール、不正防止など、『FIFA』に関する試合をすべて管理しています。

――NBAでは各チームがesportsチームを持っていますが、FIFAにはそのような動きは?

サム サッカーでもそれは始まっています。昨日はドイツのesportsチームがここにきていました。実際のサッカーチームが、esportsプレイヤーも雇用しているのです。彼らはそのチームを代表して戦います。アメリカのニューヨーク・レッドブルズなど、数多くのチームが『FIFA』のプロプレイヤーを擁していますし、メキシコのクラブ・ティフアナも同様に、プロプレイヤーを抱えています。この動きは今後もさらに拡大していくでしょう。

――『FIFA』シリーズが、さらにesportsで成功するために必要なことは?

サム ゲームプレイはとても重要です。今年はそのために多くの新しいツールを追加しています。プレイの仕方をコントロールしやすく改善し、よりよいプレイヤーになれるようにしているんです。また、動作にも深みを加えています。さきほど“Times Finishing”のお話をしましたが、動作を適正に使えば、ほぼ完璧なシュートが打てるんです。プレイヤーがシュートすべくボールにコンタクトした瞬間に、シュートボタンを押します。シュートをリクエストしてもう一度タップする際のタイミングが正確であれば、よりパワルフで正確なシュートが打てるのです。タイミングを外すと、ひどいシュートになるといった具合です。
 トップレベルの試合がしたいのであれば、このフィーチャーを使う必要があります。負けていて絶対に得点が必要というときに、チャンスを狙えるのです。当然のこと、練習を重ねればこのフィーチャーの使いかたがうまくなります。“Times Finishing”は、『FIFA 19』の試合に大きなインパクトを与える新しい要素となります。
 戦術面も改善されましたが、これも重要な要素です。メンタル面もカスタマイズできます。自分でゲームプランを立てて異なる戦術を使うことができますし、負けていたらゲームプランを変更して、流れを変えることもできるのです。戦術のコントロールは、esportsプレイヤーにとっても、極めて重要なことになるでしょうね。

――10年間『FIFA』シリーズに関わってきたとのことですが、どんな10年でしたか? 何を追求してきたのですか?

サム 『FIFA』シリーズは、私にとって人生そのものです。毎日ゲームをプレイしています。私だけでなくて、『FIFA』シリーズを作っている人たちはつねにサッカーに触れています。家に帰ってもサッカーのビデオを見てコラムを読み、『FIFA』のゲームをプレイして、翌日仕事に戻ってまた『FIFA』に触ります。さらに、スタッフで『FIFA』について討論して……。私たちにとっては私たちの“世界そのもの”なのです。24時間『FIFA』ですね。

――それはすごい……。ファンを喜ばせるために心掛けていることは?

サム ビデオゲームにおけるサッカーの最高の表現や描写をできる限り実現し、それを楽しいものにすることです。『FIFA』はサッカーシミュレーターですから、実際のサッカーを再構築しています。サッカーの試合を見ているときにも、選手の細かい動きなどに注意して、それをゲームに取り入れますが、これはとても重要なポイントです。これによって、どうやったら何がうまくできるのかがわかります。なぜメッシがピケよりドリブルがうまいのか、なぜクリスチアーノ・ロナウドはメッシにジャンプで勝るのか、などが理解できます。こうした細かいことに気づいてゲームに取り入れるわけです。こうしたことを積み重ねてシミュレーションを作れば、より楽しめるゲームになるのです。

――なるほど、サッカー好きじゃないと務まらないかもしれませんね。ところで余談で聞くのですが、好きなサッカーチームは?

サム メキシコ出身なので、クラブ・アメリカが好きなのですが、いまはカナダに住んでいて、テレビ放送をみることができないので、きっちりとはフォローできていません。そのつぎに好きなのは、レアル・マドリード。子どものころからすばらしいチームだと思っていました。ロベルト・カルロスやロナウドなどの活躍に感動しました。いまもよく見ていますよ。

――プレイヤーでは?

サム ロナウドが好きですが、ドウグラス・コスタはすばらしい選手だと思います。ボールを持つと非常に攻撃的になり、アスレチックで強烈なプレイをします。ロナウドとメッシ以外では、彼が一番好きですね。

――最後に、日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

サム 『FIFA』シリーズには、日本人も開発チームに入っていて、日本のプレイヤーの動向など参考になることをいろいろと教えてくれます。ワールドカップ ロシアでは日本チームが活躍しました。ゲームは全世界の国に配慮して作っています。日本のプレイヤーからのフィードバックももちろん取り入れていますので、ぜひプレイしてみてください。