『The Outer Worlds』などのパブリッシャーとして、最近記者が気になるメーカーPrivate Division。gamescom 2019前夜祭の“gamescom Opening Night Live”では、宇宙船を作り上げていくシミュレーションゲーム『Kerbal Space Program 2』などが初公開された。

 『Disintegration(ディスインテグレーション)』も、“gamescom Opening Night Live”で発表されたPrivate Divisionの最新作の1本。新規スタジオV1 Interactiveが開発を担当する本作は、“Gravcycle”という飛行するビークルを駆使して戦う、新感覚のFPS。『Halo』のクリエイティブ・ディレクターをつとめたマーカス・レート氏が手掛けていることでも話題を集めている。

 本作の舞台となるのは、異常気象や食糧不足、人口過剰などにより世界規模のパンデミックが発生し、国家が崩壊した未来。人類の絶滅を懸念した科学者たちは、解決策として人間の脳を取り出してロボット化することを考案。このプロセスを“integration”と呼ぶらしい。ロボット化は一時的な対策で、問題解決後はもとの人間に戻すはずだったのだが、一部の者は“integration”こそを人類の未来と考え、体制に反旗を翻すこととなる。彼らは自分たちのことを“レイヨン”と呼ぶようになる。

 主人公となる ローマー・ショールは、このレイヨンに対抗するアウトロー。ローマーが属する小グループには、メカニックや教師、ジャーナリストなどが所属しており、人間に戻るためにレイヨンと戦うことになる……という、何ともワクワクするような設定だ。

 ちなみに、タイトルの“Disintegration”は“崩壊”という意味で、人間をロボット化する“integration”を破壊するといった意味合いもあるのではないかと思われる。

『Disintegration(ディスインテグレーション)』は、『Halo』のクリエイターが贈る地上ユニットを率いて戦う新機軸のFPS【gamescom 2019】_02

 前述の通り、本作では低空を飛行する“Gravcycle”というビークルを駆使して戦うことになるのだが、さらなるアクセントとなるのが、地上のAIユニットを率いる点。各ユニットは、プレイヤーの指示のもとでユニークなアビリティーなどを発動させる。「このプロジェクトを立ち上げたときは、ほかとは違う一線を画するFPSを作りたいと思っていました。直感的なゲームプレイにFPSの要素です。“『Halo』のクリエイターが作ったゲーム”として期待されるものに、『SOCOM US Navy Seals』での経験が活かされて、RTSの要素も加わっているんです」とは、プレゼンに登壇した担当者のコメント。そう、V1 Interactiveには、『Halo』のほかに、『SOCOM US Navy Seals』などにも関わったクリエイターが参画しているという。「プレイヤーの能力の延長としてユニットをうまく使うのがカギ」とのことだ。

『Disintegration(ディスインテグレーション)』は、『Halo』のクリエイターが贈る地上ユニットを率いて戦う新機軸のFPS【gamescom 2019】_04

 本作では、ローマーの視点から展開されるキャンペーンのほかに、5 vs 5のマルチプレイヤーも用意されている。プレゼン時に明かされたマルチプレイヤーモードのひとつは“シューグル”で、これは攻撃と防御に分かれて行われ、攻撃側のチームはマップ上のふたつのポイントにあるエネルギーコアを見つけて防御チームのテリトリーに置くという、いわゆる“キャプチャー・ザ・フラッグ”に近いモードとなっている。

 プレゼン後、『Disintegration』のクリエイティブ・ディレクターをつとめるマーカス・レート氏にインタビューをする機会を得た。Xboxの専門誌だった記者のような身からすると、『Halo』のクリエイティブ・ディレクターを担当していたクリエイターの新作というのは、とても気になって仕方がない。

まさにFPSの発展系。幅広いユーザーに遊んでほしい

『Disintegration(ディスインテグレーション)』は、『Halo』のクリエイターが贈る地上ユニットを率いて戦う新機軸のFPS【gamescom 2019】_01

マーカス・レート氏

V1 Interactive 社長兼クリエティブ・ディレクター

――まずは、『Disintegration』を開発することにした経緯を教えてください。

マーカスバンジー時代に手掛けた『Myth: Fallen Lords』(1997年)が大きいです。『Halo』は、『Myth: Fallen Lords』をベースとして、当初はRTSとしてスタートし、それにサイエンス・フィクションの“スキン”をかぶせ、TPSからFPSになりました。本作も同じようなアプローチをたどっています。
 少し皮肉な話ですが、当初は地上ユニットを管理するRTSとしてスタートしたのですが、プレイヤーを積極的にバトルに参加させたいと思うようになったんです。それで、プレイヤーは “Gravcycle”という攻撃・防御可能な乗物に乗り、地上ユニットの指揮を執るというゲーム性になりました。より滑らかでスムースなアクションとなっているんです。

『Disintegration(ディスインテグレーション)』は、『Halo』のクリエイターが贈る地上ユニットを率いて戦う新機軸のFPS【gamescom 2019】_03

マーカス『Halo』がスタートしたときは、私とジェイソン(ジェイソン・ジョーンズ氏)ふたりだけだったので、クリエイティブディレクター兼アートディレクターとして、クリエイティブをすべてハンドリングしました。『Halo』は、自分のアートスタイルといっていいでしょう。
 『Disintegration』を見ると、「『Halo』かな?」と思う部分があるかもしれません。しかしこれは別のものです。V1 Interactiveは30人ほどの小さなスタジオで、チームひとりひとりが異なる嗜好を持ち、違った視点でのゲームに対する見かたを持っています。『Disintegration』には、私たちひとりひとりの意見がすべて反映されているんです。そういった意味では、スタッフは『Disintegration』を自分のゲームにしていると言えるでしょうね。

――地上のユニットを率いることができるというのは興味深いですね。

マーカス彼らはグループとして動いて、ひとまとまりとして行動します。プレイヤーは“コマンドパルス”を送って、フィールドの移動してほしい場所に指令を出すのです。彼らはそこに移動して、カバー体制に入り自動的にプレイヤーのために戦うことになります。一方で、彼らは独自のアビリティを持っていて、バトル時に戦略的に使うこともできますよ。

――FPSの発展系という印象ですね。

マーカス ほかにはないFPSなので、そう言っていいと思いますね。プレイヤーはビークルを操縦して飛行し、FPS視点でバトルをしていきますが、同時に地上のユニットも操作します。プレイヤーは“Gravcycle”のパイロットであり、ビークルが右手、地上ユニットは左手と考えてもらえばいいかもしれません。両者はいっしょになって戦うので“クルー”と呼んでいます。

『Disintegration(ディスインテグレーション)』は、『Halo』のクリエイターが贈る地上ユニットを率いて戦う新機軸のFPS【gamescom 2019】_06

――世界観も独特かと思いますが、どのような発想で?

マーカスそれぞれの“クルー”にはテーマがあります。さまざまな個人が共通の興味を持っていると考えればわかりやすいかもしれません。それがいっしょになってグループを作っているんですね。ある意味では、未来のバイクギャングのような感じです。社会のいろいろなところから、それぞれの“クルー”がテーマやアイデンティティーを持って集まっています。“クルー”には、できるだけ多種多様な人たちを取り入れようと思っていました。現在の“クルー”も、今後、数やカスタマイズとも拡張していきます。プレイヤーが、自分の“クルー”をよりユニークにしていくのです。

――“クルー”の数はどれくらいなのですか?

マーカス現時点では6つの“クルー”を明らかにしていますが、リリース時には9つを予定しています。リリース後も増やす予定でいます。カスタマイズ要素としては、課金でスキンやマテリアル、エモート、バッジ、バナーなどを購入できるようにして、自己表現をサポートします。カスタマイズのアイテムは、アチーブメントやゲームプレイを通して入手できるものもあります。

『Disintegration(ディスインテグレーション)』は、『Halo』のクリエイターが贈る地上ユニットを率いて戦う新機軸のFPS【gamescom 2019】_05

――キャンペーンモードのことをちょっとだけ教えてください。

マーカスローマーというキャラクターの視点で物語は展開されます。世界観はとにかく広いので、どこまで説明したらよいかしら……。ローンチトレーラーでは、シングルプレイヤーの一部のキャラクターも紹介しています。言ってみれば、プレイヤーはローマーの変化に富んだストーリーを追って、キャンペーンを進めることになります。その過程で多彩な登場人物たちに会います。彼らは全員もともと人間であり、中身は人間です。ローマーも、彼が出会うキャラクターも、みんな人間に戻りたいと思っているんです。
 彼らは、もっかのところは レイヨンと戦うことになりますが、レイヨンもより大きな世界紛争のほんの一部に過ぎません。

――ローマーのデザインがとてもクールで気に入りました。

マーカス飛行機のパイロットをモチーフに考えていて、なめらかな流線型でシンプル、かつアイコニックなデザインにしたかったんです。マスターチーフをデザインしたときも同じようなアイデアを持っていました。キャラクターのフォームとしては、あくまでもシンプルにしたかったんです。
 ちなみに、ローマーはジャケットを着用します。それは彼がもともと人間だったからです。ロボットなので必要はないのですが、着用しているんです。人間のときに使っていたものをいまでも持っていて、「もとは人間だった」と思い返すんです。

『Disintegration(ディスインテグレーション)』は、『Halo』のクリエイターが贈る地上ユニットを率いて戦う新機軸のFPS【gamescom 2019】_07

――マスターチーフも顔が見えませんが、ちょっと似ていますね。

マーカスローマーも、彼が人間だったときの姿は見られません。脳だけしか残っていないんです。ほかすべて機械なので。まあ、ミステリアスなところが気にいっているよ。

――日本でのリリース予定はありますか?

マーカスPrivate Divisionといっしょにアジア市場で出せるように努力しています。『Halo』を愛してくださったように、このゲームも愛してもらえるといいなと思っています。『Disintegration』は、幅広い層の方々にプレイしてもらいたいと思って作りました。スキルの高いプレイヤーだけでなくて、このようなゲームをプレイしたことのない人にも試していただきたいです。プレイをし始めるのは簡単ですが、マスターするのが難しいゲームです。

 『Disintegration』は、海外ではPC、プレイステーション4、Xbox One向けに2020年発売予定。国内発売も期待される。