2019年7月26日に発売を迎えた『ファイアーエムブレム』(以下、『FE』)シリーズ最新作『FE 風花雪月』。発売当日から楽しみ、すでにクリアーを迎えた人もいるのでは? 本記事では、『FE 風花雪月』の開発を手掛けたメインクリエイター2名へのインタビューを掲載。12年ぶりに据え置き機で開発することになった経緯に加え、プレイのアドバイスを掲載。両氏いわく“大河ドラマ”と表現する本作への想いとは? コーエーテクモゲームスも加わり、3社合同開発にいたった理由とは? ここでしか読めない貴重なインタビューだ。刮目して読むべし。

※本記事は週刊ファミ通2019年8月8・15日合併号(2019年7月25日発売)に掲載したものの再録です。

草木原俊行氏

本作のディレクター。シリーズ第1作から開発を手掛けるインテリジェントシステムズに在籍。贔屓のキャラはいないが、フレンが少し気になるそうだ。 (文中は草木原)

横田弦紀氏

『ファイアーエムブレム 覚醒』から、シリーズのディレクターとして開発に携わる。イチオシキャラクターはシャミア。 (文中は横田)

草木原氏(写真左)と横田氏(右)。

――据え置きハードでは、Wiiの『FE 暁の女神』以来、じつに12年ぶりの新作となりますが、本作の開発にいたる経緯からお聞かせいただけますでしょうか。

横田 『FE if』を発売したあたりのタイミングから、本作の構想を練り始めていました。最初は、もう1本ニンテンドー3DSで新作を作ろうかと考えていたのですが、それより先に『FE Echoesもうひとりの英雄王』を作ることに決めて、いったん新作の開発を止めていたのです。

草木原 構想段階では、こちらにはまだニンテンドースイッチの話は下りてきていませんでしたよね。

――時期的には、『FE Echoes』と同時開発だったのでしょうか?

横田 本格的な開発は『FE Echoes』を発売してからですが、中盤からはニンテンドースイッチ向けの開発に切り換えたうえで、並行して作業を進めていました。

――本作は『FE無双』に引き続き、コーエーテクモゲームスとの3社合同開発となりました。

草木原 コーエーテクモゲームスさんに開発をお願いしたのには、『FE無双』が大きく関係していたんです。

横田 ニンテンドースイッチで『FE』を出す場合、遅くても2019年内にはリリースしたいと考えていました。ですが、通常の開発ですともうちょっと時間がかかりそうだったため、開発期間を短縮するために、開発をしていただけるメーカーさんを探していたんです。ちょうどそのころには『FE無双』をコーエーテクモゲームスさんに作っていただいていたので、早矢仕さん(※1)にご相談させていただいたところ、シブサワ・コウブランドのチームをご紹介いただけた、というのが経緯です。

※1……早矢仕洋介氏。コーエーテクモゲームス“Team NINJA”ブランド長。『FE無双』ではプロデューサーを務めた。

草木原 シブサワ・コウブランドといえば、名だたる歴史シミュレーションゲームを作ってきた老舗中の老舗ですから、ここにお願いするのであればという想いで、さらに企画を練り込んでいきました。三国が均衡するという世界観も、シブサワ・コウブランドにお願いすると決まった後に考えたものなんです。

――なるほど。三国が争うという設定は、まさに三国志ですよね。

草木原 今回のスタッフィングについては、インテリジェントシステムズは私以外にデザイナー数名とサウンドクリエイターに加え、プログラマーをアドバイザーとして加えているという最小構成になっていて、基本的なゲーム開発はコーエーテクモゲームスさんにご担当いただいています。

――こういった体制での開発になってよかったと思った点はありましたか?

草木原 単純に楽しかったですね(笑)。コーエーテクモゲームスさんにも、『FE』が大好きという方をたくさん集めていただけて、終始モチベーションが高い状態で取り組んでいただきました。最初はどのくらいのペースで開発ができるかなと手探りで進めていたのですが、シブサワ・コウブランドの皆さんの開発力は底なしで(笑)、ついつい欲張ってしまい、ゲームボリュームがすごいことになりました。

横田 最初はこんなボリューミーになる予定はなかったんですけどね(笑)。当初の倍くらいにはなっていると思いますよ。

――ディレクターも驚くレベルのボリュームなんですね。改めまして、本作の開発におけるコンセプトなどもおうかがいできますか?

横田 ひさびさの据え置きハードでの発売になるので、据え置き機での『FE』はどうあるべきだろう、というのを考えました。ニンテンドー3DSですとドット絵とかデフォルメチックなグラフィックがマッチしますが、恐らくニンテンドースイッチでは表現が難しい。据え置き機で作るなら、まずはリッチなグラフィックに挑戦してみたいと考えて、こういったデザインのゲームにすることを決めました。

――本作は“風花雪月”というタイトルを冠していますが、これにはどういった意味が?

横田 タイトルは開発の終盤になってから決定したのですが、本作には重要人物として、主人公と3人の級長がいます。4人の登場人物を中心に物語が進むので、タイトルにも四字熟語が入ってくるといいのでは、というアイデアから来たものになります。

草木原 私個人としては、風花雪月という言葉にすごく季節感を感じるんです。士官学校編では、1年を通して仲間たちとの絆を深めていくことがテーマのひとつになっています。その季節をともにするというイメージにピッタリはまっているのではないでしょうか。

――海外版だと副題が『THREE HOUSES』となっていますが、こっちはわかりやすいですね。

横田 3つの学級という構成が三国志をモチーフにしているので、海外の担当者が「これが最高にカッコいいんです!」と言っていたのをよく覚えています。直訳にしちゃうと日本ではちょっと使えないですね(笑)。

――本作は士官学校で生徒に技能を教えるというシステムですが、このアイデアはどういったところから出たものなのでしょうか。

草木原 最初は冗談で言っていたんです。“FE学園”って(笑)。そういったアイデアがありつつ、コーエーテクモゲームスさんが加わってきて、それなら三国志をモチーフに……とアイデアをパズルのように並べていったら、バチッとピースがはまっていまの形になりました。

横田 『FE』っぽさを意識して、カッコよく“士官学校”って言っています。『FE 聖戦の系譜』では、士官学校を卒業したシグルド、キュアン、エルトシャンが、運命のイタズラによって衝突してしまうストーリーになっていましたが、本作とちょっと似ているところがありますね。

草木原 『FE 聖戦の系譜』では過去の出来事だった士官学校的な要素をゲームで体験できたら、おもしろくてドラマチックなものになるんじゃないかなと思っていました。

横田 本作では時間軸にも注目していただきたいです。士官学校で知り合った仲間がいて、最初は味方だったけど、戦争編ではお互い敵勢力として再会してしまう。本作は、そういった大河ドラマのような物語になっています。

――中盤に大きく時間が経過するというのも、『FE 聖戦の系譜』と似ていますね。

横田 そうですね。『FE 聖戦の系譜』では親世代から子世代にキャラクターが大きく切り換わっていましたが、本作では当人たち全員が成長していくことで時間経過を示しています。

――と言いますと?

横田 生徒たちは基本的に成長途中の少年少女なので、5年後はしっかりと成長させて顔グラフィックや声を変えました。そこが本作の魅力のひとつです。3人の級長は5年後の姿を公開していますが、それ以外の生徒についてはまだなので、ぜひプレイして確かめていただきたいです。

――ゲームもう1本分くらいの手間がかかっていそうですね。

草木原 ボリュームだけで言うなら、いままでのシリーズの2~3本分の内容が入っていると思います。大人の姿のデザインも全員かなり作り込んだので、注目してほしいです。

お茶会のアイデアはまさに悪魔的!?

――いよいよ発売を迎える本作を遊ぶ人に向けて、プレイするうえでのアドバイスなどもお伺いできますでしょうか。

横田 いちばん最初に担当する学級を選ぶというもっとも大きい選択をすることになります。学級によっては特徴の差はありつつも難度は変わらない調整をしているので、これは見た目などの好みで選んでいただいていいと思います。

草木原 他学級の生徒はスカウトすることもできるので、ほかに気になる生徒がいたら仲間に加えてプレイしてほしいです。

――スカウト可能な他学級の生徒全員を引き抜くことは可能なのでしょうか。

横田 できるのですが、かなりたいへんだと思います。ひとつも取りこぼさない完璧なプレイを心掛けてくださる人も多いと思うのですが、初回プレイではなかなか難しいと思うので、まずは気楽に遊んでいただくのもおすすめです!

――キャラクターと仲よくなる手段としてお茶会がありますが、これがかなり作り込まれているなという印象でした。

草木原 お茶会については、開発の途中で思いついたんです。

横田 草木原さんから「横田さん、悪魔的なアイデアを思いつきました」って言われたのを覚えています。見てみたら本当に悪魔的で(笑)。これを導入したらキャラクター好きな人は喜んでもらえるだろうなと思いつつも、開発がたいへんだろうな……と。

――お茶会の選択肢ですが、選ぶうえでヒントのようなものはありますか?

草木原 名簿のプロフィールがヒントになるように選択肢が作られているので、お茶会に誘う前には名簿をしっかりと見ておくことをオススメします。また、選ぶ茶葉はキャラクターごとに好みがありますが、これも名簿を見ておくとヒントになると思いますよ。

――名簿は重要ですね。また、支援リストを見ると、一部に支援レベル“S”の文字が見えるのですが、これは恒例の結婚が……?

草木原 そこに気がつきましたか(笑)。最初に言ってしまうと、結婚して子どもが産まれるシステムは、本作では採用していません。クリアーするとひとりの相手とだけ支援レベルSの関係になることはできます。

――能力を引き継いだ子どもは登場しないということですね。

横田 子世代は登場しませんが、士官学校編から戦争編へと続くドラマをしっかりと描こうと決めました。ですが、『FE 覚醒』や『FE if』で好評だった要素を完全になくすのもちょっと寂しいので、お楽しみ要素として支援レベルSを入れています。

――なるほど。クリアーしてからのお楽しみですね。そのほか、クラスチェンジに関する仕組みがガラリと変化しましたが、これについても何かアドバイスをいただけますか?

草木原 いつもだと、下級職でレベルをマックスまで上げてからクラスチェンジするのがセオリーでしたが、本作では早々に転職してしまったほうがいいです。

――それはなぜでしょう?

草木原 上位の兵種は、戦闘したときに得られる技能経験値のボーナスが多く設定されていて、同じ回数戦闘をしても上位の兵種のほうが早く成長できるからです。それに、各能力の成長率なども、上位の兵種のほうが高い値が設定されています。

横田 このクラスチェンジの仕組みは開発の早い段階で草木原さんが盛り込んでいましたよね。士官学校だから、技能と試験をと。

草木原 じつは、この技能の育成は、コーエーさん(当時)が発売した『ジルオール』の育成システムにヒントを得て思いついた部分があります。その痕跡として、兵種の名前とかに『ジルオール』要素がちょっと入っていたりします。コーエーテクモゲームスさんにちゃんと許可をいただきました(笑)。

――基本的にはそれぞれの得意な技能を伸ばしていく方針でいいでしょうか。

横田 そうですね。まんべんなく育成するよりも、ある程度絞って技能を育てたほうが上位の兵種にも就きやすくなります。

――生徒のほうから目標を変えたいと提案してくることがありますが、方針を変えると何かが起こるのでしょうか?。

草木原 あれは先生の立場に感情移入していただく仕掛けのようなもので、ゲーム的な効果の差はないのですが、そのキャラクターが得意な方向性を指し示してくれるので、育成方針が決まらない場合は提案を聞いてあげるのがいいと思います。

――なるほど。自分で考えてきてくれた提案には乗ってあげたくなりますよね(笑)。

横田 そういうふうに感情移入していただけるとうれしいですね。

――そのほかに、新規のファンに向けてアドバイスがあれば、教えてください。

草木原 序盤はなんでもいいので早い段階から騎士団を全員にセットさせたほうが戦いやすくなります。あと、これはシリーズ経験者の方に向けてですが、従来のような支援効果は隣接している味方ではなく、連携に参加している味方から受けるようになっています。そこを覚えていただけるとかなり効率よく戦えると思います。

――なるほど。隣接させたユニットから支援を受けられるとは限らないんですね。覚えておきます。話題は変わりますが、本作の発売と同時に、追加コンテンツがセットになったエキスパンション・パスが発売されます。そちらについても気になるところですが。

横田 また、まず発売日には、主人公を生徒の制服姿に変えられる衣装をダウンロードできるようになります。最初は主人公だけですが、いずれはほかの仲間も衣装を変えられるようにする予定です。

――エキスパンション・パスの追加シナリオは、どういったものになるのでしょうか。

横田 こちらは外伝的シナリオで、本編のその後のストーリーが描かれるわけではありません。新キャラクターも考えているところです。けっこうなボリュームがあるので、楽しみにお待ちいただければと思います。また、エキスパンション・パスとは別に、無料のアップデートとして、発売後に難易度“ルナティック”を配信予定です。すこしお待ちいただくことになりますが、熟練プレイヤーの方はそちらでもぜひ遊んでいただければと思います。

――かなりのボリュームなので、なかなか遊び尽くせなさそうですね。最後に、ファミ通読者に向けてひと言ずつお願いします。

草木原 発表からだいぶお待たせしてしまいましたが、ようやく最新作を世に送り出すことができます。皆さんのご期待に応えられる内容になっていると思いますので、ぜひ楽しんでいただきたいです。

横田 3つの学級のうちどれを選ぶとか、修道院でどう過ごすのかといったいろいろな選択が待っていますが、気軽に選択肢を選んでいただいて問題ないと思います。人によってプレイにすごく差が出るゲームになっていると思うので、ほかのプレイヤーと「ここどうだった?」みたいな会話で盛り上がっていただけると、我々としてもとってもうれしいです。ぜひ、自分だけのフォドラの歴史を作り上げてみてください。