505 Gamesから発売予定の『Journey to the Savage Planet』は、ひと言で要約すると、一人称視点の惑星探索アクション・アドベンチャー。未知の惑星に不時着してしまったプレイヤーは、単身惑星を探索し、ゼロから装備を整えて、惑星からの脱出を目指すことになる。

 記者がひと目で気に入ってしまったのが、そのほんわかとしつも独特な雰囲気のある世界観。プレイヤーは右手に武器を持っており、眼の前に出現する異世界の動物たちを容易に撃つことも可能なのだが、どうにもそんな気にもならずに、「まあまあ、仲よくやろうね」とばかりに傍らを通りすぎてしまう。とはいえ、ときに攻撃してくる動物がいて、それはそれで平和主義を決め込んだ記者にとってはやっかいな存在なのだが、「まあ、そこは……」と、避けるように逃げることに……。当然、人によって楽しみかたはさまざまで、武器を撃ちまくる選択肢もあろうかとは思うが、記者にとってはほんのりと冒険したくなってしまう……そんなゲームだ。

 一方で、以下のようなシチュエーションに遭遇したりもする。眼の前には岩石と茨が融合したかのような植物が道を塞いでおり、その茨を開放するにはプレイヤーが左手に持っている食べ物を、岩石+茨の植物の前に置いて、ほかの動物をおびき出さないといけない。つまり、いたいけな動物を犠牲にすることによって、プレイヤーは己の道を確保できるというわけ。何とも残酷で、正直記者は気が引けたが、喉元すぎれば熱さを忘れるじゃないけれど、「2回目からはさくさく犠牲にしていましたよ?」とは、通訳で同席してくれていたMさんの言葉。かように不思議なゲームなのだ。

 本作を開発したのは、アレックス・ハッチンソン氏。ハッチンソン氏は『ファークライ4』や『アサシンクリードIII』などを手がけた後でユービーアイソフトを退社し、2017年に3人の仲間でTyphoon Studiosを設立。同社の第1弾タイトルが『Journey to the Savage Planet』となる。『ファークライ4』や『アサシンクリードIII』ともまた違った世界観だが……。そんなわけで、ハッチンソン氏に話を聞いてみた。

インタラクティブなドタバタ劇や予期しない驚きを提供したい

アレックス・ハッチンソン氏

Typhoon Studios共同創業者。『Journey to the Savage Planet』クリエイティブディレクター。ユービーアイソフト在籍時は『ファークライ4』や『アサシンクリードIII』のクリエイティブディレクターを務める。

――本作のコンセプトを教えてください。

アレックスファーストパーソン視点のアクション・アドベンチャー探索ゲームです。コメディでもあります。基本は真面目なアドベンチャーですが、その上にコメディが乗せられている感じですね。プレイヤーは真面目に仕事に取り組みますが、この世界は微妙に滑稽という設定になっています。

――コメディ要素を取り入れた理由は?

アレックスこれまで大きなスタジオでチームを率いていたわけですが、小さなスタジオになったので、大きなスタジオと真っ向から競争するのは難しいですよね。600、700人ではなく24人でやっていますので、違うものを作りたかったのです。本作の背景はカラフルで生き生きとしています。大手パブリッシャーが選ぶものとは違うトーンを出したかったんです。ゲームを作り始めると、ゲームそのもののフィーリングがチームに入り込んできます。ホラーゲームやアクションゲームを作っていると緊張感が漂います。会社の運営にはストレスが伴います。それでコメディ要素を入れて和らげたいと思いました。宇宙を舞台にしたのもそのためです。

――エイリアンと撃ち合うわけではなくて、探索調査要素の成分が多いですね。

アレックス武器を持ってガンガン撃ちまくるのなら、優れたシューティングゲームと競合することになります。『Wolfenstein』や『DOOM』などではつねに撃ちまくりますよね。私はユービーアイソフトに入る前は、Maxisにいて『シムズ』や『Spore』を作っていました。個人的には非暴力的なゲームが好きです。本当はまったく武器を入れないようにしたかったのですが、さまざまな意見を聞いて左手におもしろいツールを持って、いろいろなことができるようにしました。右手ではプレイヤーがそうしたければ武器を使うこともできます。武器は最低限にしてほしいところですが……。写真を撮れるのは『ポケモンスナップ』のようなテイストですが、それに『メトロイドプライム』や『ファークライ』が混ざっているような感じでしょうか。ゲームは、もっと注意していれば、さらにすばらしいメカニズムが見つかるはずです。私は、つねに何かとインタラクトするための、より楽しい方法を見つけようと努力しています。

――たしかに、惑星を探索していると、エイリアンを攻撃したくない気持ちになります。

アレックスとてもかわいいですしね(笑)。今日遊んでいただいたのは開発中のバージョンで、完成した際にはもっとたくさんのモンスターが出てきますよ。クリーチャーを殺さずにリソースを見つけられるようになっています。できるだけ殺さないようにして、ほかの場所でカーボンやシリコンを見つけて装備を作ることもできます。

――左手にはいろいろなものが持てるのですか?

アレックス持てますよ。アシッドバルーン(酸が入った風船)を投げると燃えさしを溶かすことができますし、『ゼルダの伝説』のように、種の形の爆弾を投げると壁を破壊できます。左手に持てるアイテムは現在9種類ありますが、これからさらに追加していきます。私がいちばん気に入っているのは、種を投げるとそれが育って木になって、掴めるようになる仕掛けです。

――探索できる惑星はひとつなのですか?

アレックスそうです。手作りで作っていますからね。これは高齢者向けのゲームだと言われたことがあります(笑)。10時間くらい遊べますし、手作り感があります。じつは、私はアルゴリズムを使ったゲームは好きではありません。『Spore』も作りましたが、最終的にはマシンが書いた本は読みたくないと思うようになりました。誰かが書いたものを読みたい。私たちが手でひとつひとつ手を入れたものにしたいと思います。山を作れば、プレイヤーに見つけてもらえるものをそこに入れます。パーソナルタッチ(個人的な味わい)を大事にしたいです。

――なぜ、アルゴリズムを使いたくないのですか?

アレックス個人的な味わいがないからです。そこには意味が見つけられないと思います。誰かの頭に浮かんだアイデアにこそ意味があり、それを表現することに意味があると思うのです。マシンがコンテンツをアレンジしているのでは、人間性が失われてしまいます。

――惑星のビジュアルなどのアイデアはどこから?

アレックスほかとは一線を画する違うものにしたいと思いました。楽観的肯定的なゲームにしたかった。昔のアドベンチャーストーリーのような感じですね。災害から脱出するのではなくて、世界を救うのでもなく、探検家として惑星に行き、冒険を求めていくという肯定的なゲームです。

――私がプレイした限りでは、あまりユーモアの部分は見えなかったのですが、どんなところに表現されているのですか?

アレックスボイスのおもしろさがありまして、それは映画のユーモアのようなものです。あと、私にとって印象に残るおかしさは、『ファークライ4』を開発していたときに、30秒前に投げた火炎瓶が熊に燃え移って、火のついた熊がフレンドを殺したときでした。こういう状況がおかしい。プレイヤー自身がジョークを言えるような状況です。爆弾を投げておいて自分が崖から落ちるのはおかしいですよね。インタラクティブなドタバタ劇や予期しない驚きです。本作では、ツールとクリーチャーがシステムのあいだで衝突して笑わせてくれる状況を、できるだけ多く作るようにしています。

――ああ、人食い植物のような生き物はたしかにそうかも!

アレックスまさにそのとおりです(笑)。

――主人公にバックボーンはあるのですか?

アレックス主人公はプレイヤーなので、完成版ではプレイヤーが性別や出身地を選んでロケットに乗り込んで出発します。惑星で何が起きているかは、プレイヤーが探し続ければおのずと見えてきて、何が起こったのかが理解できるようになっていますよ。

――ちなみに、少人数でゲームを作ることは楽しいですか?

アレックスたいへんです! でも、とても楽しいですし、かなり自由です。大きなブランドやIPの構造の中にいると、予算が大きいので何百万本も売らなくてはなりません。一方で、小さなチームだと多少はリスクを背負うことができるので楽しいです。それにテクノロジーは進化し続けています。Unreal Engine 4はすばらしい。ゲームを市場に出すにしても、私がキャリアをスタートしたころは、ウォールマートに箱で納品しなくてはならなかったのですが、いまはそれを心配する必要はありません。まあ、もちろん両方ともプレッシャーはありますけども、

――いまの開発体制は、個人のアイデアが受けいれられる余地があるのですか?

アレックスそうです。あまり上下関係がないので、テスターが「これはおもしろくない」と言ったり、ほかの人が「いいアイデアがある」と言って意見を出してきたときも検討します。さきほど話しに出た人食い植物はまさにそうですね。餌を投げて、クリーチャーを動かす理由がほしいということで、テスターとアニメーションディレクターが来て、「これがひどい人食い植物だったらどうだろう?」と言ってきたのです。即採用にありました。

――ちなみに、本作は日本で発売されるのでしょうか?

アレックス発売されることを願っています。日本は大好きな国のひとつなのでそうなってほしいです。505 Gamesさんに言ってください。彼らとパートナーになった理由のひとつは、ローカライズとディストリビューションを任せられる会社だからです。日本でも出してほしいですが、最終的にどのテリトリーになるのかは、まだわかりません。

――最後にファンに向けてのメッセージをお願いします。

アレックス私はオーストラリアで、スーパーファミコンやメガドライブなどで、日本のゲームを遊んで育ちました。私たちTyphoon Studiosの最初のゲームを日本の皆さんにプレイしてもらえるのかなあ……と思うと、いまからワクワクします。

 欧米では2020年初頭にリリース予定の『Journey to the Savage Planet』は、インタビュー中でアレックス氏が触れているとおり、本作は現在日本発売は未定。ぜひとも日本語でも楽しみたい1作だ。