フロム・ソフトウェアが2019年中期に発売予定の『メタルウルフカオス XD』は、同社がXboxで2004年に発売したアクションゲーム『メタルウルフカオス』の現行環境への移植版。

ファミ通.com“E3 2019情報まとめ”特設サイト

 大手インディーゲームパブリッシャーのDevolver Digitalのラブコールによりスタートした本プロジェクトは、2018年のE3期間中のDevolver Digitalのカンファレンスで発表され、ゲーム移植を得意とするスタジオGeneral Arcadeにより開発が続けられてきた。

 しかし一度発売が延期され、今回のE3のカンファレンスでも正式な発売日は発表されず。日本以外でのパブリッシングを担当するDevolverは「発売日はE3後に発表する」と宣言したが、いったい何が起こっているのか?

 そこでE3会場近くに出ていた同パブリッシャーのイベント会場で、本作のゲームプロデューサーを務めるフロム・ソフトウェアの竹内将典氏と、Devolver側でマーケティングディレクターを務める(そしてそもそもの発端の張本人である)ナイジェル・ロウリー氏に話を聞いた。

竹内将典(たけうち まさのり)

本作のゲーム・プロデューサー

ナイジェル・ロウリー

本作のマーケティングディレクターにして張本人。

――ズバリ、発売日はいつなんでしょうか? 公式サイトには“MID 2019”と書かれていますが……。

竹内 今まさに、正確な発売日をお届けできるように頑張っています。ただあまり遠くはないです。マスター(※)はもう出したので大丈夫です。(※編注: 各プラットフォームなどに提出する、製品版予定のプログラムのこと)

――いい情報をありがとうございます! では“LATE 2019”にはならない、かき氷がまだおいしいあたりで。

竹内 本当にもうすぐです。暖かい間には。

――何に時間がかかってしまったのでしょうか? 移植では「ここの処理がうまくいかない」とか起こり得ると思いますけども。

竹内 一番大きかったのは、やはりオリジナルのゲームが初代のXboxのゲームなので、そこで使われているのは2世代前のテクノロジーなんですよね。

 移植をやっているGeneral Arcadeというチームは若くてすごく優秀なんですけども、オリジナルに使われているような15年前のテクノロジーまではそう知らないので、どうしても結構調べないと難しいんですよ。それに時間がかかってしまったという所です。

――逆にマスターが出たということは、そのあたりの障害はもう片付いていると。

竹内 はい、一応片付きました。なので、やっとという感じですね。

――昨年のPAX WESTに出展されたバージョンを遊んだ時にはレーダーが見当たらなかったのですが、あの辺りは変わっているのでしょうか。

竹内 基本的にはオリジナル版ベースで作られているものなので、オリジナル版にあったものは全部入ります。

 PAX版のデモはそのあたりがまだ間に合っていなかったのですが、最新の製品版に関してはそのあたりもちゃんと機能するようになっています。

発表当初のスクリーンショット。本文中で言及しているように、この時点ではまだレーダーが実装されていない。

――16対9の画面に合わせてそのあたりのユーザーインターフェースも位置が調整されたりする感じでしょうか。

竹内 そうですね。オリジナル版は4対3の画面比率で作られたものなので、16対9の画面比率に合わせてユーザーインターフェースの位置などの最適化も行っています。

――1080Pになって4K解像度にも対応とのことなのですが、フレームレートはどうなるのでしょうか。

竹内 基本は30です。元々のオリジナル版が30なので。

――開発はどう進んでいったんでしょうか。この手の移植ではたまに「目コピで作った」という話があったりしますが、ソースコードがあったんですか? 

竹内 基本的には全部ソースコードもあるし、各種データも、その元になるDCCツール(※)のファイルなどもあったので、まとめて渡していますね。(※3Dモデルなどのデータを作るツールのこと)

 ただプリレンダ―のムービーについては結局SDサイズのデータしかなくて、そこを完全にHDにするのは難しかったので、解像度を引き伸ばすような技術で無理やり作っていたりはしますね。

――海外のフィードバックなどはどうでしょうか? 輸入して遊んでた人とかもいると思いますが。

竹内 そういう人ももちろんいるんですけども、一番多いのはYouTubeなどに上がっているプレイ動画を見て興味を持ったりプレイしたいと思っていたという人がすごく多いので、「それで今回遊べるようになって嬉しい」という声をたくさんもらっていますね。

――パッケージ版の発売予定などはありますか?

竹内 日本ではその予定はないのですが、Devolver Digitalさんはたまにファンアイテム的な位置づけでパッケージ版を出しているそうで、それで今回も確かプレイステーション4のワールドワイドバージョンを出すと聞いています。日本語にも対応します。

――じゃあ気合の入った人はそちらを入手すればディスクでプレイ可能ということで。本作での追加のコンテンツ的なものはないのでしょうか?

竹内 基本的にはないですね。予定としてはオリジナルにもあったスキンをXD用に追加を用意したいなぁと思ってはいるんですけども、まぁそれぐらいで、ゲーム自体の追加コンテンツを用意しようといった予定はないですね。

――基本的には当時のものを今の環境でやってもらおうと。

竹内 そうですね。やっぱり最初からそういう風に考えていたんですよ。

 それは、日本ではオリジナル版を楽しんでくださった人もいると思うんですが、アメリカやヨーロッパの人にしてみれば初めてプレイするという人が多くて、オリジナルのままを遊べるという所を期待されている所が大きいので、あえて手を入れないほうがいいだろうという判断をしています。

――なにかこれ以上の展開があるかどうかは、まず本作の反響を見てからという感じでしょうか。

竹内 そうですね、基本的にはそういう風に考えています。“いま実は次のものに取り掛かっている”といった話は残念ながらなくて。

――“実は2が動いているから、その前に現世代バージョンを出しておく”みたいなケースではないと。

竹内 はい、そういうパターンではないです。

――Devolver Digitalが突然現世代機版について言いだしたのが発端だったと聞いていますが、連絡が来てどうでしたか?

竹内 最初はこのプロジェクト、あんまり気が進んでいなかったんですよ(一同笑)。というのも、やっぱり古いゲームじゃないですか。今それをHDにして出してもどういうことになるか、まったく想像がつかなかったんです。

 売れるか売れないかもわからないし、プレイしたいというユーザーがいるのかどうかもわからない。それを正直にDevolverに話したら「そんなことはない、待っている人がいるんだ」と。

 そのさらに前、フロム・ソフトウェアにまったく伝手もない状態で「フロム・ソフトウェアがやる気なら『メタルウルフカオス』をより多くのゲーマーに届けるの手伝うよ」ってツイートしたら反応がちゃんとあったと。

――僕もそれはリツイートしましたけど、あれ本当にノープランでツイートしてたんですね! てっきり話自体は始まっていて、材料作りのためにやっているものかと。

竹内 そうではなかったんですよ(笑)。まぁそれで「あのツイートにも結構反応があったから行けるはずだ」という話をされて、他にもいろいろ説得されて、それじゃあやろうかという話になったんですけども。(※ここで押していた前の取材が終わってロウリー氏が登場)

――なぜあの最初のツイートをしたんですか?

ロウリー ふーむ……。実際本当に実現するとは思っていなかったし、フロム・ソフトウェアに知ってる人もいなかったけど、言ってみないと何も起こらないからね。

 でも半分ジョークみたいなものだけど、シリアスなジョークっていうか、そうなったら面白いなという思いはあったんだ。それでああいう反響があったんで「真剣に動いたほうがいいなコレ。絶対スゲぇことになるじゃん」となったんだ。

 っていうのは、自分自身スーパーファミコンの頃、雑誌とか見てまだアメリカに来ない日本のゲームにヨダレ垂らしてたんだよ。あの頃は輸入ショップに直接行くかメールオーダーするしかなかった。

 『ストリートファイターII』がスーパーファミコンで出るっていう頃、自分と友達は日本版の方が3ヶ月先に出るっていうのを知って、雑誌を通じて本当に注文したからね。コンバーターなんかもちゃんと付いてるヤツだった。その頃と比べたら、現在はどんなゲームでも手に入れるのはそう難しくない。ほぼ間違いなくデジタル販売があるし。

 そんなことを思い出しつつ、「もしあの頃やっていたことを復活させて、まだ出てない日本のゲームを世界に“輸入”できたら?」って思ったんだ。遊べなかったものを遊べなかった人に届けられたらそれはすごいクールなんじゃないかってね。

――オリジナルの頃に遊んだことは?

ロウリー 実は契約するまで遊んだことはなかったんだ。自分自身、YouTubeのプレイを見て「うわーコレ遊びたいな」って思ってたんだ。日本のXboxは持っていなかったし。

――XDの開発バージョンは遊んだわけですよね。どうでしたか?

ロウリー 気に入っているよ! よく聞かれる質問に「なんでフルリメイクにしないんだ」というものがあるんだけども、答えはこのプロジェクトの目的から逸れてしまうからだ。

 その目的とは15年前に日本のXboxでしか遊べなかったあのゲームを今度こそ遊ぶんだってことだ。フルリメイクにしたらその本来の目的を残ってしまう。今の環境で動くようにして、ある程度グラフィックを改善して、16対9の画面比率ぐらいには対応して、それで十分だ。仕上がりには満足しているよ。

――もし予算もソースコードも気にしなくていいとしたら、他に同じようなことをやってみたいソフトはありますか?

ロウリー フロム・ソフトウェアのゲームもいくつかあると思うけど、本当に何も条件がないとしたらサテラビューのゲームが気になるな。ものすごく限定的にしかプレイできなかったゲームがいろいろあるから。それと『バーチャルボーイワリオランド アワゾンの秘宝』の現行機種に合わせたリメイクとか。バーチャルボーイは2台持ってるんだよ。一個はまだ箱入りだ。

――あなたにとってこのゲームの最高の部分は?

ロウリー 自分にとっては、まずプロジェクトとして届けられることがまず一番大きい。

 ゲームそのものについては、マンガみたいなノリで描かれるアメリカの描写が妙なことに現在の状況と繋がる部分ができてきちゃっている所が面白い。エキセントリックな所もいいね。ぶっ飛んでて……ウチの『Broforce』と精神的に似ている所があるよね。

――フィギュアを作っているそうですが、パッケージ版と関係があるんですか?

ロウリー パッケージ版とは別で、フィギュアの方はまだ進めている最中なので、うまくいけばいいなと思っている。

――ところで日本のゲーマーでも遊んでことがなかったり、15年も経つとそもそも当時を知らなかったりする人も相当いるはずですよね。

竹内 そうですね。当時出した時はXbox独占だったので、Xboxを持っていないと遊べなかった。それがある意味いいところでもあったと思うんですけど、今回はプレイステーション4/Xbox One/PCと3つのプラットフォームでリリースされるので、当時プレイしたいと思っていてもできなかった人にこの機会に遊んでもらえると嬉しいですね。

 また結構前なので知らなかった人も今のゲーマーにはたくさんいるでしょうし、僕らは最近はファンタジーのゲームばっかり作っているのでそういう会社と思っているかもしれないですけど、このゲームでフロム・ソフトウェアのまた違った側面を見てもらえると思うので、楽しんでもらえるといいかなと思っています。

――ではDevolverからも何かありますか。

ロウリー 日本のみんな愛してるよ! 買って、遊んで、なんだったら2回買ってくれ!