『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』を手掛ける、スクウェア・エニックスのプロデューサー陣にインタビュー。リメイクの方針や、生まれ変わったシステムやグラフィックの魅力について話を聞いた。

 E3 2019にて電撃発表された、スクウェア・エニックスのNintendo Switch/PS4/PC(Steam)用ソフト『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』(2020年初頭発売予定)。同作は、1995年に発売されたスーパーファミコン用ソフト『聖剣伝説3』のフルリメイク作だ。

 25年前、スーパーファミコン用ソフトの中でも最高峰の2Dグラフィックで描かれていた『聖剣伝説3』が、完全3D化。しかも、バトルの様子も大きく変わっている……ということで、「いったいどんなゲームになるの!?」と気になっているファンも多いはず。そこで本記事では、本作を手掛けるスクウェア・エニックスの小山田将氏、田付信一氏のインタビューをお届け。大胆なリメイク方針を採用した経緯や、一新されたシステムやグラフィックの見どころをうかがった。

小山田将氏(おやまだ まさる)

『聖剣伝説』シリーズプロデューサー。これまでに『聖剣伝説 RISE of MANA』、『聖剣伝説コレクション』、『聖剣伝説2 シークレット オブ マナ』などを世に送り出してきた。

田付信一氏(たつけ しんいち)

『ガーディアン・クルス』や『デッドマンズ・クルス』、『ガーディアン・コーデックス』などを手掛けてきたプロデューサー。『聖剣伝説』シリーズに携わるのは今回が初。

完全新作としても受け入れられるタイトルにしたい

――初めに、本作における、おふたりの役割を教えてください。

小山田自分は以前と変わらず『聖剣伝説』シリーズのプロデューサーとして、シリーズのさまざまな展開に取り組んでいます。本作に関しては、デザインやシナリオ、設定の監修手伝いという立場で、メインのプロデュースは田付に任せています。

――これまでスマホタイトルを担当してきた田付さんが、家庭用ゲーム機向けの『聖剣伝説』作品をプロデュースするというのは、ちょっと意外でした。

田付自分は、このシリーズに関わるのはもちろん初めてですし、それどころか当社の既存IPのプロデューサーをするのも初めてなんです。いままでずっと、おもにモバイルで新規IP立ち上げばかり行ってきたもので。プロジェクトが動き出したのは2年前ぐらい前なのですが、最初に小山田から「『聖剣伝説3』のリメイクを担当しないか」と話を聞いたときは驚きましたね。

小山田当時、自分は『聖剣伝説2 シークレット オブ マナ』(『2』のリメイク作。2018年2月発売)や、ほかのタイトルで手一杯という状況で、新たなプロデューサーが必要だったんです。自分ひとりだけでは、多展開もしづらかったですし。

田付最初は「これからもずっとオリジナルだけ作っていこう」と思っていたので、一度は断ろうと思っていたんですが、話をもらったのを機に改めて『聖剣伝説コレクション』で『3』を遊んでみたら、「とてもおもしろいな」と、感銘を受けまして。『3』はいままで一度もリメイクされたことがなかったですし、さらに25年も経っているので、やり甲斐がありそうだと思ったんです。

――『聖剣伝説2 シークレット オブ マナ』は、どちらかというと原作に忠実なリメイクでしたが、今回は方向性が逆と言いますか、かなり大胆なリメイクになっているという印象を受けます。

小山田いちばん大きな理由は、『3』はこれまでに海外で出たことがない、というところですね。海外の方に、まったくの新作としても受け入れられるタイトルにしたいなと。『シークレット オブ マナ』への反響もフィードバックしながら、試行錯誤して行きついたひとつの答えが、この『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』です。

田付開発初期は、いまよりももっと原作に近い形で、カメラも俯瞰視点で固定するようなプロトタイプを作ってみたこともあったんです。それはそれでよかったのですが、25年の時を経てのリメイクとしては、ちょっと物足りなかった。そこで、開発現場にがんばってもらって、カメラやグラフィックのテイストを変えた、もうひとつのプロトタイプを作ってもらったんです。それを関係各所で検討したところ、「やっぱり、こっちだよね」となり、いまの形式で作ることになりました。

――「『3』は海外では出ていなかった」とのことですが、海外のユーザーからは、やはり『3』を望む声が数多く寄せられていたのですか?

小山田本当にたくさんいただきました。日本で『聖剣伝説コレクション』を発売したとき、海外の方から、「海外でも出して」と多くの要望が届いたんです(※)。『聖剣伝説2 シークレット オブ マナ』を発表したときも、「『3』はまだ?」という声が多かったですし……その熱はずっと感じていて、「いつか『3』を海外で出さなくては」と思っていたので、ようやくこのリメイク作を発表できてよかったです。

※海外では『聖剣伝説コレクション』は発売されていなかったが、E3 2019に合わせて海外版(配信専用)が発表され、タイトル発表と同時にダウンロード販売が開始された。

――日本はもちろん、海外のファンも待望の『3』リメイクとなりますが、ストーリーとキャラクター以外は、ほぼゼロの状態から構築するということで、かなりの苦労があったのでは? とくにバトルはガラリと変わっていますよね。

小山田もともと田中さん(田中弘道氏。『聖剣伝説2』、『聖剣伝説3』オリジナル版でディレクターを務めた)たちが考えていた『聖剣伝説』シリーズのバトルコンセプトは、「『ファイナルファンタジー』シリーズのアクティブタイムバトルを、シームレスに遊ぶ」というもので、その形を“モーションバトル”と呼んでいたんです。当時は“アクションRPG”だとは謳っていないんですよ。

――そうだったんですね。アクションRPGとして遊んでいた気がしていましたが、じつは違ったと。

小山田『2』は、そのシステムの中で“武器を持ち替える”という戦略性があったのですが、『3』は武器が固定されているので、当時「ちょっと物足りない」という声があった……と聞いていましたので、そこはリメイクの際には改善したいと思っていました。

田付開発初期に、昔のシステムのままでバトルを試作してみたのですが、やはり物足りなくて。見た目が現代風になればなるほど、アクションがともなわないと、違和感が強くなるんです。先ほどおっしゃっていた通り、思い出補正が働いて「アクションRPGとして遊んでいた」と考えている方もいると思うので、コンボやジャンプ攻撃といった要素を取り入れて、きちんとアクション部分も楽しめるように作り上げています。

――これまでの作品と比べて、アクション性が高くなっていそうですね。原作とは違って、敵の魔法をアクションを駆使して避けるといった要素もある?

田付あります。『トライアルズ オブ マナ』は、シリーズの中で、アクション性の高さはいちばんかもしれません。「テクニカルなプレイを楽しむ『聖剣伝説』があってもいいよね」と思いまして。とはいえ、あくまで“アクションRPG”ですので、経験を積めばレベルが上がりますから、プレイヤースキルがそこまでなくても楽しんでいただけますよ。

――おそらく、キャラクターによってアクション性能にも違いがあると思いますが、そうすると、パーティーメンバー選びがより重要になるのでは?

田付いいところに気づきましたね。確かに、メンバー次第で状況が変わってきます。「選んだ3人によって、ゲーム体験が変わる」というのが『3』のよさですから。

――ちなみに、マルチプレイはありますか?

田付今回はひとりプレイ専用です。このリメイクの形では、サードパーソン視点にして、新たな没入感を優先したほうが合っているなと。原作同様、俯瞰視点でのマルチプレイも試したうえで議論を重ねましたが、“二兎を追う者は一兎をも得ず”という状況になるのは避けたく、今回はシングルプレイに注力することにしました。

30人以上のキャラクターが、フルボイスでしゃべる!

――続いてグラフィックについて伺います。完全に3D化するうえで、とくに苦労したポイントは?

田付イベント演出を変えなければならない点です。ドット絵で見るとおかしくないけれど、3Dにすると不自然になってしまうシーンがあるんですよ。たとえばジャドの町で、アンジェラが色仕掛けをして牢から脱出するシーン。原作では、近づいてきたビースト兵とアンジェラが瞬時に入れ替わって、アンジェラが牢に鍵をかけるのですが、これを3Dでやると、明らかにおかしくて。そういったところを、ひとつひとつ調整しています。

――キャラクターの頭身を上げること自体は、スムーズに進みましたか?

小山田個人的には、『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』を見て、「頭身が高いキャラクターと、スライムのような小さな生物の存在は両立できる」という感覚を抱いていたので、『聖剣伝説』でも同じことが出来るだろう、と思っていました。ラビはラビのサイズのままで、キャラクターの頭身が上がっても、世界は成立するはず、と。

田付『3』はシリアスで重い展開が多いので、キャラクターの頭身が高いほうが合うんですよね。頭身が低いと、どうしてもかわいらしいテイストが出てしまいますから。

エルフの血を引いているために成長が遅いシャルロットは、頭身がほかのキャラクターより低い。ゆえに、シーンによっては、シャルロットが登場する場合は別途カメラ位置を調整する必要があるとか。

――イベント演出というと、ボイスの有無も気になるところですが、本作はフルボイスですか?

田付イベントシーンは基本的にフルボイスです。30人以上のキャラクターに、しっかりとボイスが入っています。

小山田キャストについては発表を楽しみにしていてください。収録に立ち会いましたが、「キャラクターのイメージは損なわれていない」と100%断言できます!

6人のメインキャラクターたちが立ち向かう“試練”

――今回のリメイク版の副題を、“トライアルズ オブ マナ”にした理由を教えてください。

田付先ほどもお話しした通り、『3』のストーリーって、なかなかシリアスな内容なんです。主人公たちはみんな厳しい環境に置かれているので、それを受けて、“試練(Trial)”という言葉をタイトルに使いました。

小山田それと、6人の中から3人を選ぶことで展開が変わっていく“トライアングルストーリー”が大きな特徴ですので、「リメイク作に名を付けるなら、“3”にちなんだ言葉を入れたい」と、石井さん(石井浩一氏。『聖剣伝説』シリーズの生みの親)からリクエストをいただいていたんです。そこで海外のスタッフにも相談して、“Tri”というワードを含む“Trials”を選びました。

――“3”は本作のキーワードですからね。ちなみに、おふたりの『3』初回プレイ時のパーティーメンバーは誰でしたか?

小山田デュラン、アンジェラ、ケヴィンで、クラスはそれぞれパラディン、メイガス、ゴッドハンドでした。もう、ポトの油(全体回復が可能なアイテム)必須でしたよ。

――メンバーは、単純に好みで選んだのですか?

小山田そうですね。当時中学生だったので、「剣を持っているキャラクターがメイン主人公だろう」と思い込んで、デュランを選んだんです。あとは、デュランのペアということでアンジェラ、犬が好きなのでケヴィンにしました。

田付僕もけっこうかぶっていて、デュラン、アンジェラ、リースでした。デュランって、デフォルトの主人公っぽく見えるじゃないですか。キャラクター選択画面でも左上にいましたし。自分は初めて入ったラーメン屋では左上の食券を買うので、そういう定番メニュー的存在だと思って選びました。アンジェラを選んだ理由はちょっと忘れましたけど……リースを選んだのは、単純にかわいいからですね(笑)。

RPGの主人公=剣というイメージから、主人公に選ぶ人が多かったであろうデュラン。

小山田当時はデュランを選んだ人が多かったと思いますよ。

田付皆さんが最初に誰を主人公に選んだのか、アンケートをしたいですね。

――そういった企画はもちろん、今後の情報発表も楽しみにしています。たとえばシナリオの新エピソードといった、追加要素があるのかも気になりますし……。

田付まだ言っていない情報はたくさんありますので、『聖剣伝説3』ファンの人も、そうでない方も、楽しみにしていてください。僕は、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』のスーパーファミコン版がとても好きで、あのような“原作経験者も、そうでない人も楽しめるタイトル”にしたいと思って、開発に取り組んでいます。ご期待ください。

E3 2019会期2日目に生放送された“Nintendo Treehouse: Live”では、本作の実機プレイが披露された。主人公選択、フェアリーや仲間との出会い、フルメタルハガー戦などの様子が見られる。こちらもチェック。

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※画面は開発中のものです。