2019年6月1日~2日、京都市勧業館みやこめっせにて開催された、インディーゲームの祭典BitSummit 7 Spirits。2日目にステージに登壇した、NIGOROのディレクター・楢村 匠氏に、今月末のコンシューマ3機種版のリリースが控えている遺跡探検考古学アクションアドベンチャー『LA-MULANA 2』に関するあれこれを伺ってみた。

楢村 匠

NIGORO 『LA-MULANA 2』ディレクター

――今月の家庭用ゲーム機版リリースで『LA-MULANA2』も一段落……といったところでしょうか?

楢村とんでもない! これからリリースされる海外版のPRもあるし、Kickstarterのリワードもまだ終わっていないので。『LA-MULANA』以外のこともやらないとねと(NIGOROメンバー間で)少しずつ話はしているけど、まだまだかかりそうです。

――ショップ店員の新規描きおろしに関してはステージ上でお話しされていましたが、店舗限定版用のパッケージイラストの方も、かなり気合が入ったものになりましたね。

楢村あの2店舗はマニアックなので、「こういうことをやりたい」って向こうから言ってきたんです。じゃあ僕が描きますと。この手のことは昔からずっとやっているんで、お手の物ですよ(笑)。

楢村インディ―ゲームやレトロゲーム関連の取り扱いが充実しているゲームショップ“BEEP”と“ゲームショップ1983”の店舗限定版パッケージ用に楢村氏が手掛けたイラスト。それぞれの絵柄・構図の元ネタは、コナミのMSX用ゲームのパッケージイラストだ。気になる人はがんばって調べてみよう!

――PC版がリリースされてから約10か月経ちましたが、その間の推移に関して気づいたことや思うことは?

楢村PC版は急いで出したため、PRも不十分だったという事情もあるのですが、Steamが以前のように驚くほど売れるプラットフォームではなくっているので、セールス面に関しては「手間がかかったわりにこんなものか」という感想です。ただ、僕らは最初から、コンシューマ版が本番になるだろうなとは思ってました。

――ここ数年のコンソールプラットフォームでのインディ―ゲームの扱いを考えると、たしかにそうなりますよね。

楢村PC版で長いことバグが出続けて、ユーザーには迷惑かけちゃったところもあるんですけど、それらを報告してもらったおかげもあって、バグをほとんど潰した状態でコンシューマ版をリリースすることができます。リリースのタイミングで、PC版もアップデートをかける予定です。後日詳しく発表しますが、サウンドやオープニングデモなどにも手を加えています。

――PC版を遊びつくしたユーザーも買わざるを得ない内容になっていそうですね(笑)。

楢村前作もそうだったんですけど、うちのファンて固定された人たちが何度も何度も買ってくれるんです(笑)。それはとてもありがたいですけど新しい人にも買ってもらいたいですね。SNSの投稿を見る限りでは、『LA-MULANA2』から気兼ねなく遊んでくれている人もけっこういるみたいですが。

BitSummit7Spiritsでは、Microsoft JPNブースでの出展となった『LA-MULANA2』。2019年6月末にはXbox One版だけでなくプレイステーション4版、Nintendo Switch版も同時期にリリースされるとのことで、より多くのユーザーの手に届くことが期待されている。

――国内の流通は、前作『LA-MULANA』に引き続きコナミが行うとのことですが……こちらに関してはもう平常心で受け止めているのでしょうか?

楢村そうですね。昨日五十嵐さん(ArtPlay代表の五十嵐孝司氏)に会ったときには、笑いながら突っ込まれましたけど。先ほどの限定版パッケージを企画したゲームショップ2店舗は、ちゃんとKONAMIさんに話を通しているようなので、あらゆる意味で“公認”といえば公認です。

――前作『LA-MULANA』が、KONAMIのMSX用ゲームへのオマージュとして制作されたファンゲーム……という出発点を思うと、いろいろと感慨深いですね。

楢村あそこまでやれたんだから、もうぜんぜん怖くないです(笑)。僕らが今後どういう方向性でやっていくかにもよりますし、今後のKONAMIさんとの関係次第でもありますけど、今回こういういい形で結果が出せたのだから、リリースのおもしろい仕掛けをKONAMIさんといっしょに考えてできたらいいですね。KONAMIにはまだ当時のMSXゲームの開発に関わっていた方もいらっしゃるみたいなので、ぜひそういう方々とお会いして話をきいてみたいですね。

――その際にはぜひ私も呼んでください(笑)。ところでコンシューマ版『LA-MULANA2』の、インディ―ゲームメーカーのコラボに関してですが、皆さんの反応は実際のところいかがだったのでしょうか。

楢村メンバー内では「うちのスタイルとしてどうなの?」って意見も出ました。『UNDERTALE』のトビー・フォックスに依頼したら、周囲からは媚びているように見えるのはしょうがないかもしれませんけど、僕自身はいずれ直接会ったときに「あのときはありがとね」と話すきっかけになればいいかなくらいのつもりでした。声をかけた相手は皆僕らと同じスタンス……自分たちの考えでやっているインディーの人たちなので、コラボの話を振ったらノリノリで資料を提供してくれる人ばっかりでしたね。

――いい話だ。

楢村もともとの『LA-MULANA2』のショップ店員のアニメって“口パク・目パチ”くらいなんですけど、新規で登場する8キャラはめちゃくちゃ動きます。ゲームの表面に出てこないような部分の資料ももらったので、こっちもノリノリになって作りました。それを見せたら向こうも大喜びで、これはやってよかったなって思います。本来コラボってPR目的ではなく、作り手どうしでやって何か違うことができるのが本来のものなので、作者どうしがわーとやって喜ぶのが一番です。

――……こんな話の流れでカミングアウトするのもどうかと思いますが、じつは私(記者)も今回のBitSummitに個人で出展していまして、そのゲームの中に『LA-MULANA』シリーズの登場人物のひとりの名前を使ったキャラクターを勝手に出してしまいまして……。

楢村ああ、どうぞどうぞ(笑)。

――事後報告なのにあっさりと!

楢村うちのゲームのキャラの名前がほかのゲームで出るっていうのは、大体ノーチェックです。ただ、うちのゲームの中にほかのメーカーのキャラを出す……たとえばプチデポットさんに「『メゾン・ド・魔王』の魔王をボスキャラとして出してよ」って言われたら、さすがにそのままでは無理です。出すとしても絶対こちらで描き直しますね。自分の中で作った世界は練りに練ったものなので、そこを壊すのは嫌がりますけど、外に出るぶんにはぜんぜん好きにどうぞって言います。

――使われることに関しては寛容なんですね。

楢村そういうのがおもしろかったりするじゃないですか。昔のゲームだと『リンクの冒険』(任天堂)の“ユウシャ ロト ココニネムル”みたいな(※ゲーム内のとあるお墓を調べると表示されるメッセージ。ロトは、『ドラゴンクエスト』に登場する伝説の勇者の名前と思われる)。楽しいことをやろうと思ってやっている部分だったら、権利がどうとかって怒る人はいないんじゃないかなと思います。

――それがインディーであればなおさらですよね。こんな調子で、『LA-MULANA2』との付き合いは、続いていきそうですね。

楢村インディーは1本しかラインを持てないので、一度作ったゲームに4~5年付き合いが続くのはなんだかんだで覚悟しています。それとともに、ゲームを残していく必要性も感じています。

――ゲームを残す……ですか。

楢村ゲーム保存協会とか海外主導でゲームを後世に残していこうっていう動きがあるじゃないですか。数年後、各プラットフォームのオンラインショップにインディ―ゲームがアーカイブ化されるかどうかわからないし、“そのときどきの現行機用にリリースし続ける”っていうのも、ゲームを残すひとつの形だと思っています。新機種が出るたびにわざわざリメイクはしませんが、初代『LA-MULANA』でさえ現行機で遊びたいと言ってくれるファンもいるので、そういう機会があればフレキシブルに対応していきたいですね。

――考えていかなければならない問題は、まだまだ山積みのようで。

楢村一度世に出したゲームとのつきあいは絶対続くし、そのたびに遊ぶ人が増えてくれれば、それが一番いいと思っています。