リリースを間近に控えた『Bloodstained』の五十嵐浩司氏に聞いた。

 2015年のKickstarterの開始から約4年の年月を経て、ついに2019年6月18日にグローバルリリースされる『Bloodstained:Ritual of the Night』(国内はSteam版が6月18日、家庭用ゲーム機版は発売日未定)。本作について、プロデューサーを務めるIGAこと五十嵐孝司氏(ArtPlay代表取締役 プロデューサー)にインタビューを実施。本作の開発の話から、ゲームの内容などを伺った。

五十嵐孝司氏

ArtPlay代表取締役 プロデューサー

ストーリーのもととなっているのは“産業革命の時代にたいへんだったのは誰か?”

――まずは『Bloodstained:Ritual of the Night』のSteam版リリースが6月18日に決定したというところで、いまのお気持ちはいかがですか。

五十嵐やっとここまで来たかという感じですね。

――本作のKickstarterの開始が2015年5月のことでしたが、作品の構想段階から含めるとけっこう長い計画だったのでしょうか。

五十嵐構想自体はいままでシリーズ作品を制作していたので、ある程度のことは考えていたんです。ですので、構想自体に関してはそこまで時間はかかりませんでしたが、世界観を構築する部分は時間がかかりました。いままではシリーズ物としてキャラクターがいたので、そこから世界観やストーリーを膨らませることができましたが、今回はオリジナルなので「どこから手をつければいいのか」という感じでしたね。

――世界観の構築で、とくに時間がかかったところはどこでしたか?

五十嵐もともと温めていた世界観ではありましたが、昨今では「AIが発達すると人の職を奪ってしまう」ということが言われているじゃないですか。それと同じで、産業革命のときも誰か損をした人がいたのではないかと考えて、それはオカルトとか神秘的な分野に携わっていた人だと思ったんです。工業的な波が進んでいくと、神秘学的なものには投資されなくなっていく。そうすると僕が思うに錬金術師というのは、科学的な反面でオカルト的な部分もあって、「そのとき、資金援助が打ち切られたらどうなるのか」ということを発想して、本作の世界観へとつなげていきました。

――主人公となるミリアムは体が結晶化してしまうという設定がおもしろいですが、キャラクターのデザインに関してはどのようにアイデアを膨らませたのでしょうか。

五十嵐主人公にタイムリミットがあるとおもしろいかなというのは早い段階で考えてはいました。最初は錬金術との関係で、主人公をホムンクルス(※)にしようと思っていたんです。でもホムンクルスだと感情移入がしにくいということで、人ではあるけど錬金術師によって自分が望まなかった何かを植え付けられたような、命のタイムリミットがあるほうがいいかなというところで、結晶というアイデアが生まれたんです。

※……錬金術師が作り出した人造人間のこと。

五十嵐あとおもしろかったのは“斬月”という侍のキャラクターですね。最初は世界観に寄せる形でテンプルナイツにしようと思っていたんです。キャラクターの構成としては主人公がいて、その周りにサポートしてくれる人がいて、もうひとり完全に敵対している殺伐とした立ち位置のキャラクターが欲しくて、その位置に置こうと思っていました。でも、ディレクターに「日本人が出ないですよね」と言われて、「じゃあ日本人出すか」って思って、侍として出しました(笑)。

――キャラクターを並べていくと“残月”は異質な存在ですよね。

五十嵐でも刀には魔を払う力もありますし、いてもいいかなと。もちろん侍である“斬月”がいる理由についても、そこまでしっかりではないですが、描かれています。

キャラクターの操作感にはいつもどおりこだわった

――システム周りなどでこだわった部分はありましたか。

五十嵐いつものことですが、キャラクターの操作感にはかなりこだわっていて、なるべく軽やかに動けるようにはしています。バックステップで行動にキャンセルがかかったり、うまく使えばテクニックひとつで敵を倒すこともできます。でも、テクニックが絶対に必要にはならないようにもバランスを調整しました。

――では難易度はそこまで高く設定していないのでしょうか。

五十嵐けっきょくは皆さんに遊んでもらってからでないと分からない部分ではありますが、私たちとしては難易度は下がっているのではないかと思います。

――今回マップも五十嵐さんが手がけられてきたタイトルの中では過去最大のものということですが、トラップなどの新しい仕掛けなのもあるのでしょうか。

五十嵐新しいギミックもありますが、せっかくの3Dの作品なので、塔の外壁を3Dで周るみたいな演出があったりします。あそこもたいへんでしたね。

塔の周りを登る“双竜の塔”はBit Summit 7 Spiritsの五十嵐氏が登壇したステージでも披露された。

――マップデザインは難易度にも関わる部分だと思いますが、バランスを取るうえで考えたことなどありましたか。

五十嵐難しさはいろいろあると思いますが、難易度の設定のひとつとして、セーブ部屋の数だと思っています。今回はけっこう多く設定していると思っていて、難しいトラップがあったとしてもリトライが簡単にできたりするようなイメージになっています。探索型のアクションゲームはとくにセーブ部屋を中心に、どこまで探索できるのかという遊びになるので。あと今回はセーブ部屋ということが分かりやすいようにデザインしたので、そういう意味では楽になっているかなと思います。

――今回出展されていたものを遊ばせていただきましたが“シャード”のシステムが特徴的でした。改めてシャードのシステムについて教えていただけますか。

五十嵐トリガーシャード、エンチャントシャード、ディレクショナルシャード、エフェクティブシャード、ファミリアシャードとスキルシャードがあります。スキルシャードは2段ジャンプとかの能力開放で、スキルシャードを持っているだけで効果があります。シャードは装備することでさまざまな能力を使うことができます。シャードは基本的に敵を倒すことでドロップして、同じシャードをドロップした場合、技の威力が上がっていきます。ほかにも錬金術を使って素材アイテムとシャードを錬金することで、シャードの攻撃距離が伸びたりと効果の質を上げることも可能です。

――スキルシャード以外のシャードは5つの種類に分けられていますが、こちらはどのように違いがあるのでしょうか。

五十嵐たとえばトリガーシャードは単発で打てて、効果の出る方向が決まっているものです。ディレクショナルシャードはRスティックで方向を決めて使うことができる能力で、盾などを出して任意の方向に向けることができます。こちらは使いやすいぶん、トリガーシャードよりも消費MPが多かったりします。あとは押しっぱなしで効果が持続するエフェクティブシャードとか、発生の条件ごとに分かれています。

――シャードは大きな収集要素になりそうですね。続いて、発売日が発表されたタイミングでヴィジュアルがより鮮やかになったことが公開されて話題となりました。こちらはもとからいまの形になるようにブラッシュアップする予定だったのでしょうか。

五十嵐違います。これがKickstarterのよいところでもあり、悪いところでもあると思いますが、バッカーさんに制作過程を見せていくと、僕らはよいと思っていた部分でも皆さんの反応が悪い部分というのが出てくるんです。それが顕著に現れたのがビジュアルで、できる範囲で直していこうと思いました。一部作り直した部分もありますが、基本的にはライティングをやり直しました。光の当てかたで潰れていた部分があって。

――ライティングを変えただけでかなり変わるんですね。

五十嵐変わるんですよ。我々もライティングの重要性を再認識しました。もちろん直したものもありますが、量としてはそこまで直してはないですね。

――ほかにもユーザーたちから届いた意見として、印象的なものはありますか?

五十嵐ジャンプの挙動に関する意見も多くて、これも悩みましたね。今回の『Bloodstained:Ritual of the Night』では“安心感のある遊びを提供する”というのもテーマとしてありました。「昔おもしろかったものは、いま遊んでもおもしろいはず」という部分の安心感を実現するというのが重要だと思っています。そういう意味で、どういうジャンプにするかは細かく調整しました。

――ジャンプというのはかなり大切な部分なんですね。

五十嵐2Dアクションだと、やはり重要ですよ。分かりやすい部分で言うと、ジャンプした時に空中で方向を変えられる場合は足場を複雑に作れますが、変えられない場合は複雑な足場だと難しすぎるんです。そういうゲームの特徴が如実に現れる部分なので、ジャンプは重要ですね。

追加コンテンツやその後のシリーズ化も……?

――追加コンテンツなども予定されているのでしょうか。

五十嵐予定はしています。今回リリースされるものもバッカーさんと約束したものすべてが入っているわけではないので、そういったところを追加していく予定です。

――改めて、今回Kickstarterでの開発というのをされてみて、感想としてはいかがでしたか。

五十嵐やっぱり最初からユーザーの意見を取り入れながら制作できるのはよいところですが、たいへんなところはバッカーとの約束を守るという部分ですね。ゲームってやっぱり作っているなかで変わってしまう部分もあるんですよね。エクストラモード的な部分って余力で作るようなものなので、今回のように最初からコミットしてしまうといろいろな問題が出てきたときにけっこうたいへんなんですよ。もちろんいくつかはオミットしてしまう部分もありますが、それでも約束したものはできる限り盛り込むようにがんばらないといけないので、そういった部分はたいへんでした。

――最後に、いままさに皆さんの手に届く『Bloodstained:Ritual of the Night』ですが、今後シリーズ化していくなどの可能性はあったりしますか?

五十嵐今回せっかく作ったので、もちろんフランチャイズ化していければ……というのは誰もが思うことだと思います。ぜひ今回がうまく行って、つぎにつながればいいなと思っています。