『新サクラ大戦』開発者に徹底インタビュー。気になることを全部聞いてきました。

気になるギモンの答え、ここにあります!

 2019年3月30日に開催されたセガフェス2019にて、ついに詳細が明かされたシリーズ最新作『新サクラ大戦』。ファミ通ドットコムでは、セガフェス当日に、最速で本作の開発者へのインタビュー記事を掲載している。以下の記事は、すでにご覧になった方も多いだろう。

 しかし、「まだまだ知りたい!」という方は多いはず。そこで本稿では、最速インタビューに大幅な追記を加えた、ロングバージョンのインタビュー記事をお届けする。現時点で知りうる情報はすべてここにある、と言っても過言ではない! 最後までじっくりご覧いただきたい。

片野 徹氏(かたの てつ)

プロデューサーとして人員や予算の管理、宣伝施策や情報発表のコントロールなどを行う。元プログラマーで、代表作に『ソニックアドベンチャー』など多数。

寺田 貴治氏(てらだ たかはる)

ファンには“T隊長”としておなじみのシリーズディレクター。設定面やシナリオの統括を担当。代表作に『サクラ大戦』シリーズや『ファンタシースターポータブル』シリーズなど。

大坪 鉄弥氏(おおつぼ てつや)

開発ディレクターとして、寺田氏と二人三脚で開発現場の統括に携わる。代表作に『サクラ大戦3 ~巴里は燃えているか~』、『初音ミク -Project DIVA- X』など。

スタッフの悲願だった新作がファンの後押しでついに実現

――まずは『新サクラ大戦』のプロジェクトが立ち上がった経緯について教えてください。

寺田最終的なきっかけは2016年の“セガフェス”でのファン投票で1位を取った(※)からです。ただ、じつはそれ以前から、新作の企画は、毎年のように提出していました。内容は京都編とか未来編とか、さまざまなものがありましたね。だいたい夏になると話があがるので、まわりの人間からは“夏の風物詩”なんて言われていたみたいです(笑)。

片野つまり、毎年のように不採用が続いてきたということでもあるのですが、セガフェスでの結果を受けて、社内の風向きが変わりまして……。

大坪今回のプロジェクト自体はその少し前から動き出していたのですが、ファンの皆さんのおかげでかなりの追い風を受けた状態で新作の開発を進められたので、感謝してもしきれません。

――社内の追い風を受けてとのことですが、プロジェクト全体でどのくらいの人数が投入されているのでしょうか?

大坪途中で入ったり離れたりする人もいれば、外部の会社さんにお願いしているところもあるので正確な数はお伝えするのが難しいですが、少なくとも3桁以上の人数が携わっています。

寺田『3』の時の人数も超えていると思います。シリーズ史上最大規模だと思います。

――そんなところからもセガゲームスの気合いの入り具合がわかりますね! そして今回、タイトルを『サクラ大戦6』ではなく、『新サクラ大戦』としたのは、どんな理由からなのでしょうか。

大坪前作から10年以上も空いてしまったこともあって、今回はチームとしても“続き”ではなく“リブート”という意識を強く持っていました。それに加え、スタッフなども大きく様変わりしていますし、プラットフォームもプレイステーション4になった。それらすべてをひっくるめて、“新”という言葉に集約した結果、このタイトルになったわけです。

――『2』以降、おなじみとなっていたサブタイトルがついていないのは……?

大坪それは『サクラ大戦』新シリーズの第1作だからです。それで原点回帰をしてシンプルなネーミングとしました。

―― “新”以外のタイトル候補案も挙がっていたのでしょうか?

寺田それはもう、ものすごい数が挙がりました。何個出てきたかも覚えていません。ロゴ案も数え切れないくらい見てきました。

大坪『新サクラ大戦』のロゴだけで300個以上作りましたからね。開発スタッフ全員でさまざまなアイデアを出しながら、このプロジェクトを進めてきたんですよ。

寺田従来と似たようなロゴも作ったのですが、“新”という感じがしないからと、まったく違うものを作ることにしました。

大坪『サクラ大戦』であることは、その文字の力で十分伝わりますからね。ですから、過去に囚われずにとにかく新しいものにしようと試行錯誤してこうなりました。

――スタッフの皆さんも“愛”が強い人が多いでしょうから、どの案を採用するかで相当揉めたりしていたのではないですか?

寺田メチャクチャ揉めました!

大坪荒れに荒れましたよ(笑)。

片野ロゴを決めるときも寺田、大坪は早い段階からこのロゴを推していたのですが、僕は従来のものに近いロゴ推進派だったので、そのときは喧々諤々の争いが続きました。でも、そこで思い切り意見をぶつけ合ったのがよかったですね。最終的には皆が納得してこのロゴになったので、揉めたことも作品作りのステップとしてはよかったと思っています。

各界の実力派スタッフが集結

――メインスタッフも顔ぶれが大きく変わりました。それぞれの起用理由、そして開発を進めてきての感触などを教えてください。まずは久保帯人先生からお願いします。

大坪久保先生については、セガフェスより前の、私がプロジェクトに参加した段階で、すでに名前が挙がっていました。

寺田真宮寺さくらもそうですし、今回のヒロインである天宮さくらの姿を見ていただいてもわかると思うのですが、『サクラ大戦』のメインヒロインと言えば“和装と刀”ですよね。その組み合わせで真っ先に思い浮かんだのが久保先生だったんです。

大坪それで今回、プロジェクトが本格始動するにあたって、集英社さんを通して打診をしてみたんです。すると、興味を持っていただけて、キャラクターデザインを担当していただけるという話になりました。本当に運がよかったな、と。

寺田しかも、キャラクターデザインだけでなく、各キャラクターが持っている刀のデザインなども手掛けてくれているんです。

大坪そのほかにも、久保先生からいろいろと提案いただいたアイデアを採用しています。

片野ひょっとして、僕に隠れて刀が変形する仕様を入れていたりしない?

寺田してません(笑)。

大坪久保先生には“原案”のデザインを描いていただいていますが、それを3Dモデルにする際のキャラクタービジュアル設定を別途、アニメ版『BLEACH』でキャラクターデザインを担当された工藤昌史さんにお願いしています。

寺田前シリーズにおける藤島康介先生と松原秀典さんのコンビもそうだったのですが、原案をうまく“翻訳”できる方に入っていただくことで、よりスムーズに作業できるようにしたんです。久保先生からも「工藤さんがやってくれるなら」とお墨付きをいただきました。

――ちなみに、久保先生の筆の早さはどのくらいなのでしょうか?

大坪早いです! 先方で打ち合わせをして、会社に帰ってきたら、もうラフ画が送られてきていた、ということもありました。週刊連載をやられていた方なので、そのあたりのスピード感は驚異的なものがありましたね。

――続いて、ストーリー構成のイシイジロウさんについてはいかがですか?

大坪イシイさんとは、『428 ~封鎖された渋谷で~』でセガ側のプロデューサーを務めて、その後『新サクラ大戦』も手伝ってくれていた弊社の下村(一誠氏)を通じ、今回プロジェクトが本格始動する前から声を掛けさせていただいていました。

寺田構成力であるとか、シナリオに加えるエッセンスなど、ほかの誰にもないものを持っている方で、「ここはもう少し驚きがいるんじゃないか」とか「引っ掛かる部分はどこなのか」など、足りないところを的確に指摘して直していくのはさすがだな、と思いました。

――シナリオ自体はすでに完成していると伺ったのですが、今回はどんな物語になっているのでしょうか?

寺田全体としては『サクラ大戦』らしい“王道”な進行という印象です。ただ、あかほり(さとる)先生もそうだったのですが、どこかハチャメチャというか、意外性があるんですよ。それが“作家性”というものなのかもしれませんが、イシイさんの構成にも、そういった性格が出ていますね。

――イシイさんはストーリー構成ということですが、脚本自体はまた別の方が担当されているんですか?

大坪脚本は『ガールズ&パンツァー』などを手掛けた鈴木貴昭さんにお願いしています。時代考証の提案もしていただいているのですが、脚本自体かなり肉厚なものになったと思います。

――工藤昌史さん、鈴木貴昭さんと、意外な名前が出てきて驚きました。スタッフもかなり豪華な顔ぶれになっているんですね。

寺田まだいろいろ隠し球がありますよ。

片野今後少しずつ発表していくので、今回はこのくらいで勘弁してください(笑)。

――一方で、音楽は引き続き田中公平さんが担当していますね。これはどんな意図が?

大坪公平さんが作曲された、主題歌の『ゲキテイ(檄!帝国華撃団)』は、いまや『サクラ大戦』そのものよりも認知されているところもあるというのがひとつ。それから、シリーズが休眠しているあいだも、歌謡ショウを始め、さまざまな場所での活動を通じて『サクラ大戦』の火を絶やさずに続けてくれたのが公平さんですので、公平さん以外の方に曲をお願いするのは考えられませんでした。
寺田 『サクラ大戦』シリーズは音楽への印象が圧倒的に強いので、スタッフ間でも「変えるべきではない」という意見が強かったですね。

大坪ご自身でも「誰よりも『サクラ大戦』愛がある」とおっしゃっていましたから。

片野今回またいっしょにお仕事させていただいて、その愛をあらためて感じました。

大坪実際、新主題歌である『檄!帝国華撃団<新章>』を聴いて「やっぱり公平さんの曲はすごいな」と心底思いましたしね。

3Dになってシステムも進化! 主人公の“振れ幅”にも注目

――続いて、ゲーム内容について詳しくお聞きします。まず、舞台設定について、これまでと変わった点を教えてください。

大坪作中でも10年の月日が流れていますが、“蒸気文明”ですとか、“太正浪漫”といった作品の根幹を成す時代設計は変わっていません。一方で、これまで作中では“裏”の存在だった華撃団が広く知られるようになったのが、過去作品ともっとも異なるところですね。

――そんな中行われる“世界華撃団大戦”とは、どんな大会なのでしょうか?

大坪もともとは世界規模のスポーツの祭典のようなもので、本作の舞台となる太正二十九年の時点で第3回大会が行われるところです。帝都に世界各地の華撃団が集まり、トーナメント形式で技を競うことになるのですが、平和なはずの大会がシリアスな方向に向かっていき……。というのが、全体の話の流れですね。

――体育会系な流れですが、恋愛要素はどうなるのでしょうか?

寺田この質問をいただくたびに申し上げているのですが、『サクラ大戦』は“ドラマチックアドベンチャー”であって、恋愛ゲームではないんですよ!(笑)

大坪“恋愛要素のあるドラマチック3Dアクションアドベンチャー”です。話を戻すと、今回も花組隊員たちとの“信頼度”が存在し、その増減で、バトルのパラメーターに影響を与えたり、合体攻撃が使えるようになったりします。もちろん個別エンディングも用意してあります。あと、次回予告などゲームとしての基本的な枠組みは変えていません。

寺田その代わり、過去作を遊んでいるとニヤリとしてしまうような仕掛けや、あえてシリーズの“お約束破り”をするなど、そこかしこに“これまでと異なる遊び”も盛り込んでいます。シリーズファンなら気づいていただけるのではないでしょうか。

――グラフィックはフル3Dなのでしょうか。

大坪ハードがプレイステーション4になり、グラフィックもすべて3Dで表現することにしました。大帝国劇場を始めとしたマップはすべて新たに描き起こし、建物内も自由に歩き回れるようにしています。

寺田これまで建物は一枚絵で表現していたので、改めて3Dで見ると「ここはこんな風になっていたのか!」と驚くこともあると思います。あとは銀座のデパートの屋上などの細かい部分も、今回新たに制作しました。

――キャラクターによる会話シーンも3Dマップ上で行われるのでしょうか?

大坪アドベンチャーパートでの移動、イベントや会話は、すべて同じ3Dマップ上で行われるようにしました。マップを移動して誰かに話し掛けると、そのままシームレスで会話が展開します。もちろん、マップの切り替えなどのロード時間については、ほとんどストレスを感じないくらいに短くするように開発を進めています。

寺田なお、会話はシームレスで移行しますが、移行時にキャラクターの立ち位置やカメラアングルが変わるなど、よりドラマチックに見えるような演出を盛り込んでいます。

大坪これまでは一枚絵で表示していたため、ユーザーに脳内で補完してもらっていたところもきちんと描く必要があるのでたいへんでしたね。イベントチームも「どれだけイベントシーンがあるんだ!?」とずっと悲鳴を上げています(笑)。

――画面写真を見ると“スマァトロン”という単語が出てきているのですが、これはシリーズおなじみの“キネマトロン(※)”の進化版なのでしょうか?

※キネマトロン……『サクラ大戦』のヒロインのひとり、李紅蘭が発明した、蒸気で動く携帯型通信機。シリーズが進むごとに小型化しつつラジオ機能やカメラ機能なども搭載されていった。

大坪その通りです。名称から中身は想像していただけるかもしれませんが、マップを表示するほかさまざまな機能を持っています。

――もちろん、動力は……?

寺田はい、“蒸気”です(笑)。

――画面右上に、ガイドのような文字も表示されていますが……。

大坪これは、現在進行中のミッションの名称や、シナリオを進めるためにすべき行動などを表したものです。システムが変わって画面内に表示される範囲が近視点になったうえ行動範囲も大きく広がり、いま自分がどこへ行くべきか少し迷いやすくなっているので、こういうガイドも必要かなと。

寺田マップ上でイベントが発生するキャラクターにはそれとわかるアイコンをつけるなど、“わかりやすさ”に関してはかなり気を付けています。

――シリーズおなじみのLIPSや、通称“おさわりモード”とも呼ばれたクリックモードなどは、本作でも登場するのでしょうか?

大坪3Dならではの要素を盛り込み、形を変えつつも用意はしています。たとえば、アナログLIPSでカメラワークを連動させて、下からなめるような視点で何かをのぞき込む……みたいなことができるようになっていたり。クリックモードも新しい仕掛けがあります。

片野CEROの審査に大きな影響が出ない範囲でがんばっています(笑)。

――ムービーもすべて3Dなのでしょうか?

大坪アニメムービーも用意しています。いま勢いのある“サンジゲン”さんが手掛けていて、総計で40分以上になります。それ以外のシーンは、基本的に3Dですね。