太陽が奪ってしまった受話器を取り返しに、風船に掴まって“金のうんこ”や“花”や“口”が空高く上がっていく。
『塊魂』や『のびのびBOY』で知られる高橋慶太氏の新作『Wattam』は、そんなゆるくておかしな光景が、なんとなくいい感じで楽しく、そして時に感動的にすら見えてくるゲームだ。
先月末にボストンで行われたゲームイベントPAX EASTでプレイを体験したが、ゲーマー親子やゲーマーカップルから年配ゲーマーのコンビまで、幅広い人がニコニコとプレイしていたのが印象的だった。
すべてが一度吹き飛んだ世界から、何気ないモノの存在を再発見する
『Wattam』のオープニングは、争いで世界のすべてが吹き飛び、たったひとり残された“市長”が途方に暮れているところから始まる。
何もないように見えた場所で市長が最初に発見するのが“小石”だ。しばらく小石と追いかけっこをして遊び回ると、今度はさっきまで腰掛けていた“岩”がその輪に加わり、やがて市長たちの周囲にふたたびさまざまなモノたちが集まってくる。
これは、大爆発で一度すべてが失われた世界から、子供のような好奇心と遊び心で、それまで気に留めもしなかった何気ないモノの存在を再発見する物語でもあるのだ。
ゲームは1Pプレイにも2P協力プレイにも対応しており、共通するのはキャラクターたちを協力させて、彼ら(?)のユニークな能力を使って問題を解決していくこと。
種のキャラクターは土に埋まることで木となり、木は吸い込んだ他のキャラクターから果実を生み出し、口は果実キャラをうんこにして、トイレはうんこキャラを流せる……といった塩梅で、キャラの姿や能力が変化していくこともある(名前は変わらない)。
またプレイヤーは使用キャラを切り替えることが可能で、それぞれのキャラクターをよじ登ったり、手を繋いで同行できたりもする。“みんなで集まって爆弾で吹っ飛べ”とか“このキャラと同じ高さを作れ”といったお題をクリアーするには欠かせないアクションだ。
ゲームには時間制限や得点減点といったペナルティがないので、ひたすらゆるくプレイ可能。気がつくとキャラがうんこだらけになっていたりもするが、それはそれとしてゲームが続くのがなんだかスゴい。
大きさや形状の異なるキャラクターそれぞれの間でちゃんとこれらの機能を動作させるのは相当大変らしいのだが、このゲームにとっていろんなキャラクターが相互に繋がったり作用できるのはそれだけ大事なことなんだろう。
『Wattam』は、海外インディーパブリッシャーのAnnapurna Interactiveから2019年にプレイステーション4/PCで配信予定となっている。なお本誌では以前高橋氏へのインタビューで本作の背景やメッセージなどを聞いているので、気になった人はそちらもチェックしてみて欲しい。