今月ボストンで行われたゲームイベント“PAX EAST 2018”で、ゲームデザイナーの高橋慶太氏に行ったインタビューをお届け。

 『Wattam』は、なんとも説明しにくいゲームだ。帽子の中に爆弾を隠し持った“メイヤー”(町長)を中心に、石や岩にはじまり、草木や果物、口や鼻などの顔のパーツ、フォークにスプーンに、レコードプレイヤーにトイレにと、あらゆる“モノ”がキャラクターとして登場し、一緒に爆弾の爆発でふっ飛ばされてケラケラ笑ったりしながら、友達の輪が広がっていく。

 しかも、ゲーム映像を見るまで「なんのこっちゃ」と思う人も多いだろうこの世界には、妙な引力がある。やたらキュートなキャラクターたちと戯れ、笑っているうちに、どこか優しい気分になってくる。

 本作のゲームデザインを手掛けるのは、『塊魂』や『のびのびBOY』などで知られる高橋慶太氏。この不思議な世界の根底にはどんなものが流れているのか? 今月ボストンで行われたゲームイベント“PAX EAST 2018”に本作を出展し、サイン会も行っていた高橋氏に話を聞いた。

高橋慶太(たかはしけいた)

『塊魂』シリーズや『のびのびBOY』などで知られるゲームデザイナー。現在はサンフランシスコで新作『Wattam』を開発中。

離れ離れになった“モノ”たちが、笑い声に惹かれて帰ってくる

――『Wattam』というゲームをどう説明すればいいか……“手をつないでみんな集まって、メイヤー(町長)の爆弾を爆発させてみんなが笑ってクリアー”というイメージが強いんですが、それでは進まないこともありますね。高橋 別に爆発だけが条件じゃないんですよ。それはいろんなシナリオによって違ってきます。彼らにはバックストーリーがあって、あの世界では大昔に戦争のようなものがあって、大爆発が起こってすべてが失われたんです。だからメイヤーはひとりでぽつんとして、もちろん太陽もないから暗闇の中で寂しく生きてる。でも、ふとしたきっかけで石がいることを見つけて。

メイヤーが引き起こす“爆発”でみんなが吹っ飛んで笑うシーンは、『Wattam』のキーとなる部分。

――はい、ゲームで最初に石ころが出てきて、友達になろうとしますね。高橋 そう、それで次に岩が見つかって、メイヤーなので上品に挨拶したら、彼自身も気付いてなかったけど爆弾がコロッと落ちてきて、爆発する。そして、ひとりぼっちで暮らしていた彼らにとってはそれが楽しいものと感じられたんです。

――全部を吹き飛ばした爆弾が、彼らを繋ぐものに変わると。高橋 爆発する時に、音が出るし、みんなそれで笑うじゃないですか。その音とか声が伝染して、今まで遠くに行ってたモノたちが帰ってくるという話なんです。例えば震災とか戦争で何もなくなった時に、ひとつ娯楽が戻ってきた時の喜びとか。「うわ、やった、楽しい!」というあの感じが他の人に伝染していくという感じです。

PAXでの展示に描かれたメイヤー。高橋氏の直筆で『塊魂』の王子や『のびのびBOY』のBOYの姿も。

言葉の違いをあえてありのままに残す理由

――キャラクターそれぞれに名前があって、ゲーム中に挨拶とかも交わしてたりしますけど、時々それがいろんな国の言葉で書いてありますよね。「Hello」以外に「こんにちは」と出てる時、僕らは日本人なんでわかるけど、会場の他の人は多分読めない人がほとんどじゃないですか。ああいった辺りも面白いですね。高橋 気付く人は気づくかなと思ってテストで入れているんですけど、あのデモは春の世界なんです。それをクリアーすると夏の世界が入ってきて、秋の世界、冬の世界とあるんですけど。それで、そこに住んでる人達はみんな違う言葉を喋るんです。

――おっと、言語ネタにもっと仕込みがあるんですね。高橋 春の世界はプレイヤーの設定の言語で、僕らだったら日本語で、アメリカ人だったら英語。次(夏)はアメリカの人の場合だったらロシア語で、その次は日本語だったっけかな? それでコリアン(韓国語)。言語をピックアップする基準は、字面というか、絵的にどれだけ違うんだろうという所から選んでいます。タイ語とかタミル語も考えたんだけど。
――あー、タイは字面が面白いですよね。高橋 そうなんですよ。かわいいんだけど、コリアンとちょっと被ってるんですよね。コリアンと平仮名もまた似ていたりする中で、最終的にその4つを選んだんですけど。それをやったのは……僕らの世界にいろんな言葉があるんだから、ゲームでもそれをやればいいじゃんというか。
――字面優先というのは、それを読めなかったりすることも織り込み済みだと思うんですが、わからなくてもそれはそれでいいという感じでしょうか。高橋 僕は(わからなくても)いいと思ってますね。一応、重要なセリフは字幕をつけようかなと思っていますけど、基本的にはナシで。普通だったら全部その人達の母国語にローカライズするじゃないですか。僕は「なんでそんなことするんだろう?」と思っていて。(外国語のテキストのセリフを)ローカライズしないでそこにさらに字幕を載せるというのは、まぁすごく贅沢なやり方だし遠回りしてるけど、なんかいいなと思っていて。

――いろんな言葉を喋るモノがやってきて、なに言ってるかたまにわかんないけど、いろんなきっかけで友達になるっていうのは、すごくいいですね。それができたら最強というか。高橋 名前も、その国の名前なんですよね。コリアンだったらコリアンの名前で、ロシアンだったらロシアの名前。
――あぁ、本当は“なんとかフスキー”ってキリル文字かなんかで書いてあるんだけど、僕らは読めないと。高橋 そう(笑)。それはそれでいいかなぁと思っていて。一応“コレクションビュー”というのを用意していて、そこに行くと、プレイヤーの母国語ではなんと読むかというのを見られるように設定しようと思っているんだけど。
――そこを読むと「あぁ、あいつこういう名前だったんだ!」とわかるわけですね。高橋 そう。どうでもいいかもしれないけど、結構大事かなと。

『Wattam』では、さまざまな個性を持ったキャラクターが同時に複数登場し、プレイヤーは操作キャラクターを自由に切り替え可能。また各キャラは手を繋ぐことができ、それを連ねていける。

――あぁ、それはすごい面白いですね。高橋 そこの面白さにどれだけ人が気づくかはわからないですよ。でもこれって、現実の世界で起こっていることをそのままゲームで再現しているだけなんですけど、それが面白いと思うこと自体がちょっと……不思議ですよねコレ。どれだけゲームの世界は普段凝り固まってるんだというか。
――そういう感覚に、いろんな国の人がいるサンフランシスコに住んでいることからの影響はありますか?高橋 サンフランシスコよりも、まず日本からバンクーバーに引っ越したことですね。そこで生活していたこと自体が、ひとつの『Wattam』のアイデアの源になっているんで。

 日本に住んでいると住んでる人は大抵日本人じゃないですか。でもバンクーバーに行ったら本当にいろんな人種がいて、もちろんスペイン語とか、フランス、中国、インド、ベトナム……本当にいろんな国の人がいて、それがみんなどっかの会社に行って英語話して一緒に何かをやろうとしていて、それは本当にすごいなと思って。

 それは英語喋れるからすごいとかじゃなくて、英語というツールを使って生まれた国の違いを乗り越えて何かを成し遂げようとしているのが、日本人の自分にとってそれは感動的な行為をしているなと。それが一番『Wattam』のアイデアの源かな。

例えばこのシーンでは、プレイヤーは小さな“ライアン”(花の左側で手を繋いでいる)を操作中。

「自分が長けている部分があるとすれば、“世界”を作ること」

――何かこの『Wattam』の世界に流れるものが少しわかってきた気がします。高橋 もうひとつのきっかけなんだけど、子供と一緒に木製の積み木で遊んでて、子供がバッと壊してケラケラ笑ってるっていう光景。むかつくこともあるんだけど、面白さはわかるじゃないですか。モノを積んで、それを繋げて、爆発させてケラケラ笑ってるのって、理由はわからないけど、響くものがあるなと。そこで爆発というのと、さっき話したツールとしての英語をすり替えて『Wattam』にしたという感じですね。

 そのふたつに、大昔に何かあって、爆発してみんないなくなって……っていう話を混ぜて。だからその(メイヤーの)爆発は悲しい爆発じゃなくて、楽しい面白い行為としての爆発にならなきゃいけない。それで「なんか楽しいことやってるぞ」ってみんな戻ってきて、どんどんそれを大きくしていくっていう……ゲームデザインというわけじゃないですけど。
――ゲームデザインでもあるんでしょうけど、そういう“世界”をデザインしたんだなという感じがしますね。今の説明を文章にして「こういうゲームデザインのゲームです」って言われても「うん?」となると思うんですよ。でも「そういう世界です」って言われたら、多分その方が「あぁそうなんだ」って感じると思うんですよね。高橋 確かにそれはおっしゃる通りで、僕自身、あまり新しいゲームメカニクスを考えるのが得意とは思っていなくて、自分の何がうまいかと考えた時に、世界を作るのがうまいなと思っていて。自分で言うのもなんですけど、それはまぁまぁ長けているかもなと。なんでもできちゃう世界を……それは『のびのびBOY』だったり、『塊魂』だったり。“世界観”と言うとやだけど。

PAXでのサイン会で一番乗りだった人は、縛りがゆるゆるだったので、iPadに描いてもらうという秘技を敢行。「こうするとタイムラプスで描いてる様子を見られるんだぜ」あったまいい!

――まぁ世界観ってよりは、やっぱり“世界”ですよね。高橋 一旦土台を作っちゃって、そこに何を詰め込んでも結局“それ”になっちゃうというようなものを作るのは、自分は得意かもなと。後はそれをどれだけブラッシュアップしていけるか。『のびのびBOY』の時はもうちょっと時間が欲しかったんですけど。『Wattam』もあと少しという感じなので、頑張りたいなと思っていますね。

「インタラクションは数少ないビデオゲームの特別な部分」

――高橋さんのゲームは、いつも触感に繋がってくるのも面白いですね。転がす、伸ばす、今回は手を繋ぐとか、爆発も皮膚の触感として繋がってくる何かがあるし。高橋 それはもう、コントローラーを使ってるからしょうがないんじゃないですかね。

――上田文人さんとかもそうだと思うんですけど、芸術系の出身と聞いて、門外漢の僕らは絵作りのことだけイメージしがちですけど、実際はコントローラーを使ったインタラクション表現に力を入れていたりするじゃないですか。高橋 逆に言うと、そこに行かないでどうすんだという感じですけどね。そこがゲームの一番の得意分野というか。ビデオゲームってなんだという定義は僕にはまだわからないですけど、少なくともインタラクションは数少ないビデオゲームの特別な部分だと思うので、そこを使わないともったいないですよ。

PAXでの試遊コーナーの様子。2人プレイも可能。

――パブリッシャーのAnnapurna Interactiveのゲームは日本で出たり出なかったりですが、『Wattam』はどうでしょう?高橋 出ると思いますよ。少なくともSteamは出るんじゃないかと思います。あとはローカライズがどうなるか。プレイステーション4はどういう流れになっているかちょっとわからないですけど。
――今は開発の進み具合はどれぐらいの感じですか?高橋 気持ち的には50%だけど、(本来の構想の)100%になる前に終わらせなければいけなさそうな感じです。
――時期的にはいつごろになりそうですか?高橋 予算的にはあと3~4ヶ月、5ヶ月とかそれぐらいですかね、頑張らなきゃいけない所です。