2019年3月30日、逆転裁判オーケストラコンサート2019が開催。トークゲストとして、成歩堂 龍一役の近藤孝行さん、御剣 怜侍役の竹本英史さん、成歩堂 龍ノ介役の下野 紘さんらキャストや、カプコンの開発陣も登場した。

『逆転』コンサートが今年も開催! いいぞこのまま毎年恒例になれ(願望)

 桜も見ごろを迎えた2019年3月30日、『逆転』シリーズの楽曲をフルオーケストラで堪能できるコンサートがBunkamura オーチャードホールにて開催された。

 演奏は東京フィルハーモニー交響楽団、指揮は栗田博文氏が担当する。また、ゲストによるトークコーナーでは、声優の近藤孝行さん(成歩堂 龍一役)、竹本英史さん(御剣 怜侍役)、下野 紘さん(成歩堂 龍ノ介役)、そして作編曲家の岩垂徳行氏が登壇。カプコンの巧舟氏、江城元秀氏、児玉真佑氏、北川保昌氏も駆けつけ、開発秘話やうれしい新情報も発表された。

 今回は新アレンジ曲も含まれた演奏プログラムとなっており、昼夜2公演で一部楽曲が異なる仕組み。本稿では、昼公演をリポートする。セットリストは記事の最後に掲載する。

いきなりクライマックス! 『逆転』シリーズの名曲で開廷

 『逆転裁判』シリーズ15周年を記念して2017年に復活し、3年連続で開催された逆転裁判オーケストラコンサート。シリーズファンには毎年恒例となりつつある催しだが、今年も客席は満員。こうしたイベント事は、女性ファンの割合が多いものだが、今年は男性ファンの姿も増えてきたように見える。

 開演ももう間近というころ、場内に御剣怜侍の声が流れてくる。逆転コンサートではおなじみの注意事項を伝える影アナウンスだが、初っ端に飛び出した「御剣怜侍主宰のコンサート」という言葉に会場もザワつく。名門・東京フィルハーモニー交響楽団でコンサートを開けるとは、さすがは検事局のトップといったところか。

 淀みなくアナウンスを続ける御剣だったが、そこへなるほどくんこと成歩堂龍一が「異議あり!」、「待った!」と声を張り上げて絡んでくる。どうやら、やることがなくて手持ち無沙汰らしい。

 対する御剣は、容赦なく華麗になるほどくんを返り討ちにする。このふたりの息の合った掛け合いに、会場からは温かい拍手が送られた。

 そうして高まる期待のなか、演奏者の皆さん、そして指揮の栗田博文氏が登場。初めて逆転裁判オーケストラコンサートが行われた2008年以来、ずっと指揮を務めているだけあり、栗田氏の後ろ姿からは絶対的な安心感が漂っていた。

 そんな栗田氏がタクトを上げると、ヴァイオリンを始めとするストリングスが静かに弓を滑らせていく。曲名としても幕開けにふさわしい『逆転裁判・開廷』だ。ホール全体に、ふわーっと『逆転裁判』の世界が広がり、そして滑らかに『尋問~アレグロ2001』につながっていく。

 ステージ上のスクリーンには、『逆転裁判』の第1話の証人・山野星雄とのやり取りが。さらにゲーム中でクライマックスに流れる『追求~追いつめられて』へと畳みかける、いきなり激アツな盛り上がり。その勢いのまま『逆転裁判2・開廷』へとなだれ込む。スクリーンに映し出される狩魔 冥の姿と相まってか、法廷の重厚な空気を肌で感じるようだった。

 そこからスッと潮が引くように、『尋問~モデラート』へ。オーボエとヴィブラフォンの掛け合いが、深い推理の世界へ誘うよう。その静けさを破ったのは『追求~問いつめたくて』。ティンパニ、シンバルがジャンジャン鳴る豪華な出だしに、金管楽器が続く。それを追いかけるストリングスに「キター!」と熱くならずにはいられない。またそこから、一気にクールダウンして『逆転裁判3・開廷』、そして『尋問~モデラート』へ。

 『逆転裁判』3部作の開廷、尋問、追求を順序を守りつつも、この見事なつなぎ。改めて、この『逆転裁判1~3 法廷組曲』を編曲された岩垂さん、そして指揮を執る栗田氏の手腕に惚れ惚れしてしまう。組曲の最後は『追求~とっつかまえて』。演奏者の皆さんのフルパワー、音の厚みに圧倒されながらのフィニッシュとなった。

 ここで、MCの竹本英史さんと、近藤孝行さんがステージへ。竹本さんは御剣を思わせる赤いスーツ姿で、ファンの皆さんからも驚きとうれしさが混じった声があがる。竹本さんは「この服は仕事着」、「コンサートのために裁判を速攻で勝ってきた」などと、ファンサービス溢れるジョークで会場を沸かせていた。

 つぎのパートは新アレンジの『逆転検事 推理と追求の組曲』、『王泥喜法介 ~新章開廷!~』の2曲。

 まずは、『逆転検事2』の楽曲『追憶~SS-5号事件』から。『狼士龍~狼子、曰く!』でガラリとロックな雰囲気に。サックスの主旋律が何ともクール。勢いそのままに、ミクモちゃんのテーマ『一条美雲~真実を盗む大ドロボウ』で、一気にお祭り気分に。続く『葛氷見子~クールに笑わせて』は軽やかなジャズテイスト。『カーネイジ・オンレッド~法を超える敵』では、打って変わって重苦しい空気が漂う。

 そこへ満を持したかのように『追求~つきとめたくて』のフレーズが駆け抜ける。もうこの疾走感、爽快感は病みつきになってしまう。スクリーンにも、ロジックチェスなど、真相へ1歩1歩近づくシーンが映し出され、盛り上がりを後押しした。一方で、ホラーハウスのなかで御剣に迫る、マスコットのタイホくんという緊迫かつ、笑わせてくれる名場面も流れていた。

 『王泥喜法介 ~新章開廷!~』は『逆転裁判4・開廷』で静かに始まったと思いきや、『王泥喜法介 ~新章開廷!』でグッとハートを鷲掴みにされる。この楽曲は、『逆転』シリーズのなかでも1、2を争うオーケストラ映えする曲のように思う。また、おどろきくんの奮闘するシーンが重なってか、ストリングスの揃った音が胸に迫って、なぜか目頭が熱くなった。

巧さんから岩垂さんにクエスチョン!? 自由すぎる質問コーナー

 ここで、『逆転』シリーズの生みの親・巧舟氏と、作編曲家の岩垂徳行氏がステージに呼びこまれる。岩垂さんによると、新アレンジされた『逆転検事 推理と追求の組曲』は当初、17分もある大曲になったのだそう。それでは長すぎるということで、大幅に削ることになったが、それでも狼士龍のテーマは入れたかったとのこと。ライバル関係にある御剣側として、竹本さんは「若干嫉妬した」とも。

 そして、ここで巧さんの質問コーナーへ。なんでも、この機会に岩垂さんに聞きたいことがあるのだとかで、メモしたスマートフォンを取り出す巧さん。「作曲に苦労した曲は?」という質問に、岩垂さんは「どのタイトルでも尋問の曲が苦労した」と明かす。無機質に作るというオーダーが難しいのだそう。

 逆に「自信のある曲は?」という問いには、「さっとOKが出たのはゴドーのテーマ」とのこと。今回の昼公演では残念ながらプログラムにないが、この『ゴドー ~コーヒーは闇色の薫り』を東京ゲームショウ2018の特別法廷で、歌詞付きで歌った近藤さんが、一節を披露してくれた。

 ちなみに、岩垂さんは散歩しているときにメロディーが降りてくることが多いとのことで、忘れないように歌いながら帰宅し、楽譜に書き留めたり、楽器で弾いたりするのだそうだ。
 

可憐なるヒロインたちと、忘れがたき悪漢のメロディー

 プログラム前半の締めくくりはキャラクターのテーマを集めた組曲。

 『逆転裁判1~6 麗しの組曲』は、シリーズの女性キャラクターのテーマで組まれている。最初はやっぱりこの曲、『逆転姉妹のテーマ』から。真宵ちゃん、千尋さんを象徴する澄んだ音色に、心が洗われる思いだ。

 続けて『みぬきのテーマ ~魔術の子』、『綾里春美 ~はみちゃんいっしょ』も。かわいらしくも心地よい調べにほのぼのしてしまう。と、そこから一変、『美柳ちなみ ~遠い面影』が差し込まれる。『逆転裁判3』経験者ならおわかりいただけると思うが、スクリーンで優雅に微笑むちなみちゃんに、スーッと背筋が凍るような気がした。

 彼女の切ない調べから、ラミロアさんの歌『恋するギターのセレナード』へ。瞬間移動のイリュージョンのシーンが映し出されていたが、ここは何度見ても見入ってしまう。金管楽器が情緒たっぷりに聴かせたその後に、何やら調子のよいマーチが流れてきたかと思えば、なんと『逆転裁判5』のダウンロードコンテンツで登場したシャチのエルのテーマだった。たしかに、エルも女の子だった……! そして忘れちゃいけない元気娘たち、『レイファ・パドマ・クライン ~勝気な姫巫女さま』、『希月心音 ~Let's do this!』も。改めて『逆転』シリーズのヒロインたちはみんな魅力的だと再確認できた。

 もう1曲『悪漢組曲 2019』は、クセの強すぎる男性キャラクターがテーマ。

 真っ先に思い浮かぶのは、そうナニワのゼニトラこと、芝九蔵(シバクゾウ)。『芝九蔵虎ノ助 ~スウィンギン・ゼニトラ』はゴージャスかつ大迫力で、コンサートでもおなじみのナンバーだ。意外なところで、『逆転裁判 蘇る逆転』に登場した、ガント警察局長の『巌徒海慈 ~みんな、泳いでる?』も。オーケストラだと余計に荘厳かつ、圧を感じる……。

 また、コロシヤの『虎狼死家佐々右エ門 ~殺人的紳士の愉しみ』も静かだが怪しさが滲む。『怪人☆仮面マスク ~ 聞いてくださーーーい!』は、バイオリンのソロとカスタネットが異国情緒を誘うパートもありつつ、派手に、派手に盛り上げる。最後はいかにも悪の華咲くといった締めくくりだった。

下野 紘さんがあの名場面を生アフレコ!

 後半は、成歩堂 龍ノ介役の下野 紘さん、『大逆転裁判』シリーズを手掛けたカプコンの児玉真佑氏、北川保昌氏を迎えてのトークから再開。

 事前の打ち合わせもバッチリな様子の児玉氏と北川氏は、まるで漫才のようなやり取りで賑わせていた。『大逆転』シリーズの楽曲を担当した北川氏によると、ゲーム制作時、最初に作ったのは“共同推理”の楽曲だったそう。そのとき作られたバージョン違いは400にも及んだそうで、会場ではそのひとつを聴くことができた。

 耳を澄ませてみると、シンセサイザーのような音が多く使われていて、ゲームで使われているものとはかなり違うのがわかる。こちらもいいが、やはりゲームの使用曲のほうがカッコよく、選ばれたのもうなずける。このバージョン違いは、今後公開される予定もあるとか。ぜひじっくり聴き比べてみたい。

 また、児玉氏からはボイス収録時のエピソードも飛び出した。現場で、下野さんがグレグソン警部のとある事情を聞いてショックを受けていたのを見た児玉氏は「下野さん、めっちゃゲームしてくれてるんやあ」と感動したのだとか。下野さんはゲームファンでもあり、もともと『逆転』シリーズをプレイされていたそう。最近では某ラクーンシティを舞台にしたあのゲームを楽しまれているとか。

 ここで脱線しかけたトークを竹本さんが名司会で軌道修正しつつ、話題はこのあと演奏される『続・大逆転裁判組曲 2019』と、『復活の相棒』へ。この『復活の相棒』では、『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』の重要なシーンを映像シンクロ演奏で再現。しかも、下野さんが龍ノ介のセリフを生アフレコするという。

 期待に胸が膨らむなか、まずは『続・大逆転裁判組曲 2019』。『相棒~The game is afoot!』のアコーディオンが切なく響くかと思えば、『亜双義一真 ~使命のサムライ』で和の調べが心に沁みる。そしてもうひとりの相棒、スサトさんのテーマ『御琴羽寿沙都 ~新世界に咲く花』では、清らかなフルートの音色が温かい。そんな夢見心地も束の間、『シャーロック・ホームズ ~霧の街の大探偵』で再び倫敦に引き戻される。そしてホームズといえば、かわいらしい同居人アイリスの『アイリス・ワトソン ~小さな伝記作家』。弾むようなリズムに思わず体も動きそうになる。そしてクライマックスは『終幕組曲【冒險の終わり】』。スクリーンの映像も併せて、倫敦の日々が蘇るようだった。

 そしていよいよ生アフレコ! 下野さんが登場し、マイクの前に静かに立つ。演じるシーンは、“あの彼”の正体が明かされる場面だ。下野さん演じる龍ノ介以外のキャラクターのセリフは、元の映像に収録されたもの。ムービーだけを観ていると、龍ノ介だけ生アフレコとは思えないシンクロっぷりで、唇の動きもピッタリだった。

 また、オーケストラの演奏もセリフの間に合わせてミュートされるので、緊張感がありありと伝わってくる。

 そして、感動の瞬間、楽曲が大いに盛り上げるところでは、ホールの音響のおかげもあってムービーのなかに奥行きを感じられた。美しい場面はあっと言う間に過ぎてしまったが、なんて贅沢な体験なのだろうと余韻をしみじみと噛みしめてしまった。それは客席の皆さんも同じようで、大きな拍手が送られた。

 パートの最後は『逆転裁判 革命と継承の組曲』。『逆転裁判6』のドゥルク、『逆転裁判5』のユガミ検事などを始めとする、よき師、よきライバルにして革命児たちのテーマで構成されている。渋く、熱い、カッコイイ男たちの背中が見えるようだった。もちろん、そのなかには『逆転裁判4』から『逆転裁判6』で成長を遂げたおどろきくんも含まれている。再びの王泥喜法介のテーマに、胸がすくような思いになった。

朗報! 逆転ライブが7月に開催決定!!

 ステージにはまたもやゲストが登場。下野さんはやはり本番はとても緊張したのだそう。そして、同じく登壇した江城プロデューサーからは、岩垂さん率いるバンド・ジャスティスによる“逆転裁判LIVE ~OBJECTION!!2019~“が、7月14日に開催されることが告知された。昨年も大盛況だったライブが再び、ということで客席からは喜びの悲鳴があがった。なお、ライブのチケットは4月1日より、公式ファンクラブの逆転通信で先行抽選が開始される。

 後半プログラム最後の曲は、『逆転裁判3 終幕』。マヨイちゃんのセリフに続く形で、スクリーンには『逆転』シリーズのキャラクターが総出演。並みいるキャラクターが立ち絵とともに、ちょっとしたひと言を残していくのだが、これがまたヒネりが効いていて、さすがは『逆転』シリーズ。客席からは何度も笑い声がこぼれていた。楽曲が『綾里姉妹のテーマ』ということもあって、最後はじーんと心に残る結びとなった。これは終演後に聞こえてきた声だが、「あれはズルイ!」と、にこやかに語っていた来場者の方も。ファンならグッと来てしまうのは納得の演出だった。

 さて、ここからはアンコール。影アナウンスで御剣があの曲が演奏されていないと、異議を申し立てる。あの曲とは、もちろん『大いなる復活 ~御剣怜侍』だ。

 こちらもオーケストラコンサートでは欠かせない曲のひとつ。御剣がタイトルコールをすると、トランペットが高らかに鳴り響き、ティンパニがリズムを刻む。そしてストリングスの分厚い音の壁が迫って来る。そこには、気高く晴れ晴れと立つ御剣の姿が見えるようだった。

 アンコールはまだ続く。指揮台の上で、栗田さんが懐から何やら取り出したのは……日の丸が描かれた扇子。指揮棒ではなく、この扇子を振ろうというのだ。楽曲はもちろん、みんな大好き『大江戸戦士トノサマン』。

 やっぱりこの曲を聴かないと締まらない! ということで、観客も手拍子で参加。途中、栗田さんが扇子で客席を煽る場面も。そうして大盛り上がりのなか、コンサートはフィナーレを迎えた。最後はゲストの皆さんがステージに集結し、これまた恒例である会場全員での「異議あり!」で、閉廷となった。

【昼公演のセットリスト】

  • 1 逆転裁判1~3 法廷組曲
  • 2 逆転検事 推理と追求の組曲
  • 3 王泥喜 法介 ~新章開廷!~
  • 4 逆転裁判1~6 麗しの組曲
  • 5 悪漢組曲 2019
  • 6 続・大逆転裁判組曲 2019
  • 7 復活の相棒
  • 8 逆転裁判 革命と継承の組曲
  • 9 逆転裁判3 終幕
  • アンコール1 大いなる復活~御剣怜侍
  • アンコール2 大江戸戦士トノサマン

【夜公演のセットリスト】

  • 1 逆転裁判4 法廷組曲
  • 2 逆転検事 推理と追求の組曲
  • 3 ゴドー ~コーヒーは闇色の薫り
  • 4 逆転裁判1~6 麗しの組曲
  • 5 悪漢組曲 2019
  • 6 大逆転裁判組曲
  • 7 復活の相棒
  • 8 逆転裁判 革命と継承の組曲
  • 9 逆転裁判3 終幕
  • アンコール1 成歩堂龍一 ~異議あり!
  • アンコール2 大江戸戦士トノサマン