松山社長に自社パブリッシングプロジェクト“C5”の進捗と、新プロジェクト“M5”、“世界人材補完計画”について聞く

 設立24年目を迎えたいまなお意欲的な活動を行い、新たなる高みを目指して走り続けるサイバーコネクトツー(以下、CC2)。昨年、自社パブリッシング企画“C5”とオリジナルアニメ企画“A5”を始動し、業界の内外で大きな話題を集めたが、これらに続く新たなプロジェクト、“M5”と“世界人材補完計画”が発表された。CC2は2019年、どこに向かっていくのか。松山洋社長に、現在絶賛開発が進められている“C5”プロジェクトの進捗状況とともに、新たに発表された“M5”、“世界人材補完計画”についてお話をうかがった。
 また、記事の後半では“C5”プロジェクト第1弾タイトル『戦場のフーガ』のディレクターに抜擢されたCC2所属のフランス人クリエイター、ヨアン・ゲリト氏のインタビューもあわせて紹介する。

 なお、松山氏が『戦場のフーガ』実機プレイの様子と、CC2の新たな展開を披露した特別番組の視聴はこちらから⇒【サイバーコネクトツー】『戦場のフーガ』実機プレイ&CC2世界戦略発表【ファミ通】

松山洋(まつやまひろし)

ゲーム制作会社サイバーコネクトツーを率いるクリエイター兼社長。『.hack』シリーズ、『NARUTO−ナルト− ナルティメット』シリーズなど、多くの人気作を輩出するいっぽう、自ら全国の学校や専門学校に赴き、クリエイター志望者への講演を行うなど、後進の育成にも力を注いでいる。

現在動いている“C5”プロジェクトの進捗状況は?

――まずは、現在手掛けられている“C5”プロジェクトについて教えてください。

松山いまから1年前、弊社の自社パブリッシングプロジェクトとして、社内で行った企画コンペで選出されたタイトルを短期間開発でリリースしようと“C5”プロジェクトを立ち上げ、最初に実施したコンペで選ばれた3タイトルを“復讐三部作”として開発スタートしました。第1弾タイトルとなる『戦場のフーガ』は“戦争×復讐×ケモノ”をテーマに掲げています。また、第2弾の『刀凶百鬼門(トーキョーヒャッキモン)』は“女学生×復讐×スチームパンク”、第3弾の『CECILE(セシル)』は“ゴスロリ×復讐×魔女”といったように、それぞれの作品のキーワードに、“復讐”があることから、“復讐三部作”と呼んでいます。

――そもそも、なぜ自社パブリッシングに着手されようと思ったのでしょうか。

松山CC2は、今年の2月で設立から丸23年が経ちまして、第24期に突入しました。いま、我々はつぎの10年に向けて、変化をしている最中になります。これまでも、デベロッパーという立場で受託開発を行ってきましたが、こちらの活動は従来から何も変えるつもりはありません。ただ、いまゲーム業界全体が慢性的に抱えている問題のひとつに、大規模開発によるジレンマというものがあります。現在、据え置き機向けのAAAタイトル向けの開発は、二桁億にもなる予算を投じる巨大プロジェクトになっており、数百人規模のスタッフが、3〜5年の長期間携わるという製作スタイルが当たり前になっています。しかも、その仕事の内容は、広大なオープンワールドの端から、ただひたすら植樹をしていくだけ……といったものまで細分化しています。つまり、20代でゲーム業界に入ったばかりのクリエイターが、10年間で携われるタイトルは3本程度ということで、さらにゲーム制作の経験という点においても、全体のほんの一部しか知ることができません。入社してからずっとそんな作業ばかりしていると「これがゲーム開発なの?」って疑問も出てきますよね。

――確かに、ビックプロジェクトに携われることは幸せなことなのに、あまりにも規模感が大きすぎると、なかなかその全貌を知ることってできないですね。

松山弊社に限らずですが、せっかく憧れて入ったゲーム業界なのに、自分が思っていた世界と違うと言って業界を去っていく人間も、少なくありません。でも、我々の時代を振り返ると、そんな若者の気持ちもよくわかるんです。いまから20年くらい前の現場では、20人程度のスタッフが膝をつき合わせ、1年程度の期間死にものぐるいになってゲームを作っていましたからね。そのプロジェクトが成功であろうと失敗であろうと、開発の全貌を経験した人間というのは、大きな経験値を積んで成長できるんです。例えるなら、死にかけたスーパーサイヤ人が強くなる。そんなイメージですね。初代プレイステーションの時代は、20代のクリエイターは30代になるまでに10本前後の開発経験を積むことができました。でも、いまの20代は、30代になってもまだ数本しか開発経験がなく、30代になってもまだまだ若手なんです。開発の全貌もわからず、手応えも感じていない。実際、いま現場で活躍しているトップクリエイターを見回してみても、その大半は40代後半〜50代の方たちが中心ですよね。こういった問題を、我々は変えていきたいと思っていました。

――そこで打ち出したのが、“C5”の施策というわけですね。

松山そうです。先ほど、巨大プロジェクトのお話をしましたが、いまのゲーム市場には、それとは対局にあるインディーゲームと呼ばれる小規模・短期間開発タイトルも育ってきています。つまり、ビッグバジェットを投入する重厚長大なゲーム制作と、最小限の予算と人員ながら、キラリと光るアイデアで勝負するインディー制作とに、二極化しているんです。そこで、若手クリエイターを育成するためにも、すべてを自社で賄うゲーム制作のラインを起ち上げさせてもらいました。

CC2が2018年2月に始動開始を発表した、自社企画・開発・パブリッシングプロジェクト。“C5”の文字の中には、創造、挑戦、競争といったテーマが掲げられている。
“C5”立ち上げで、社員から100本近く集まった企画の中から選出された3タイトルの“復讐三部作”。それぞれ“復讐”をテーマに掲げ、CC2らしさを盛り込みつつも手軽に遊べて満足度の高いタイトルとして、鋭意開発が行われている。

希望と絶望をリアルタッチで描くドラマティックシミュレーションRPG『戦場のフーガ』

――それでは、“復讐三部作”の第1弾タイトルとなる『戦場のフーガ』がどのような作品なのか、教えてください。

松山本作は、我々の処女作である『テイルコンチェルト』や『Solatorobo それからCODAへ』で描いてきた世界観、“リトルテイルブロンクス”(※)を引き継ぐ最新作です。物語は、ある辺境の村に、ベルマン帝国という侵略者が現れ、大人たちをさらっていってくところから始まります。残された子どもたちは、村にある遺跡の中で、タラニスという古代戦車を見つけ、大人たちを助けるために戦場に身を投じていく……。そんな子どもたちの活躍を描いた、シミュレーションRPG作品です。

※リトルテイルブロンクス……浮遊大陸を舞台に、そこで暮らすイヌヒト、ネコヒトと呼ばれる種族の物語を描いた、CC2独特の世界観設定。

松山タラニスは非常に巨大な戦車で、攻撃能力を有するだけでなく、車両の中には生活するための居住区や、武器開発や整備を行うための工房といった施設も備えています。この中で、子どもたちは共同生活をしながら、戦場を駈け抜けていくことになるのですが、ゲームは基本的に子どもたちのマネージメントや戦車の改良・メンテナンスを行う“運営”と、敵と戦闘を行う“バトル”のふたつのパートで構成されています。

多くの謎に包まれた古代文明の超兵器、タラニス。その内部には機関室や指揮室、寝台、食堂、工房など、生活と冒険に必要な設備が整っている。また、搭載されている最終兵器“ソウルキャノン”は、ヒトひとりの命を犠牲にすることで発動できると言われている。
画面上部に表示されているバーのように、スタート地点から順番にイベントをこなしながら、ゲームは進行していく。
バトルマスに止まると、戦闘開始。タラニスと子どもたちの能力を駆使して、襲いくるベルマン帝国を撃破しよう。
タラニスの兵装は基本的に同一ながら、どこに誰を配属したかによって、バトル時の戦略にも変化が現れてくる。
運営マスでは、キャラクターたちのコミュニケーションを取り合ったり、タラニスの補強など、バトルに向けた準備が行える。

――画面構成を拝見したところ、横方向に進んでいくようですが、どのようなゲームシステムが採用されているのでしょうか?

松山本作は全12章から成っており、基本的に各章は左から右方向に向かって進む双六のような作りになっています。スタート地点から順番に、運営を行うためのマスや、戦闘のためのバトルマス、何が起こるかわからないランダムマスなどがあり、これらのターンを順番にこなしていくことで、距離と時間が進行していきます。各章に用意されたマス(イベント)をひと通り終えるとその章が終わり、つぎの章へと物語が進んでいくというわけです。また、本作にはゲームオーバーになるといちばん最初からやり直しになるという、ローグライクな要素も盛り込んでいます。

――それは、各章の頭に戻るということではなく、第1章の最初に戻される……ということですか?

松山そうです。もちろん、パラメーターを一部引き継ぐなど、救済措置は用意していますので、2回目以降のプレイはある程度、有利に進められるはずです。ただ、やり直しで多少有利になるとはいえ、ゲームの後半になって1章に戻されるのってショックですよね。ですので、私は「せめて章の頭に戻る程度にできないか」って要望を出させてもらいました。すると、本作のディレクターを務めるヨアン(・ゲリト)から「それでは、死んでもやり直せばいいやって思いますよね」って言われたので、「もちろん、その通りだ」って返したら、「それでは、ゲームオーバー(=死)という考え方が軽くなってしまうのでダメです」って、NGをもらいました(笑)。

――その厳しさは、いまの時代からすると逆行しているともとれるゲームデザインですね。

松山ゲームの中で生きている子どもたちを、いかに“死なせたくない”ってプレイヤーに思わせられるか。そこが本作の肝でもあるので、このような仕様にしています。ただ、CC2が手掛ける作品ですので、パラメーターの引き継ぎなど、やり直しによる救済措置もきちんと用意していますし、やり直すことの意味や仕掛けもきちんとドラマの中に盛り込むように作り込んでいます。

――成長システムに関してお聞きしますが、これは戦車のレベルが上がっていくのですか? それとも、成長するのは子どもたちなんですか?

松山単純に攻撃力や防御力といった、感情のない兵器的な部分はタラニス内の工房で改造を行うことによって、パワーアップしていきます。ただ、それだけでは成長の仕方が画一的になるので、子どもたちの個性が感じられるような成長システムとして、“スキル”と“アビリティ”を用意しています。たとえば、すばやさのアビリティを持っている子どもが砲座の担当になれば、攻撃の順番が早く回ってきたり、根性のアビリティを持っている子どもがコックピットにいるとタラニスの耐久力が少しアップする……といった具合に、誰をどこに配属するかによって、タラニスの特徴に変化が現れます。また、覚えた“スキル”を誰にセットするかによって、子どもの成長の仕方も変わってくるなど、誰を育て、どこに配置するかといった楽しみかたができるはずです。

――タラニスには“ソウルキャノン”という、一撃必殺の武器が搭載されていますが、こちらはどのような使い方を想定されているのでしょうか?

松山“ソウルキャノン”は、一撃必殺の攻撃手段になりますが、使用するには子どもひとりの命を差し出さなければなりません。当然ですが、差し出された命は復活することはないので、使いどころは慎重に見極める必要があります。そのときはよくても、後々子どもの数が少なくて困ってしまう……なんて自体に陥ると、ゲームの進行にも支障をきたしかねません。でも、ゲームの終盤には「ここでやられたらゲームオーバーになって、最初に戻される」という絶体絶命の場面も出てくると思いますので、そんな場面で使うか、使わないかといった葛藤、ジレンマを感じていただきたいのです。

――本作を発表されてから約1年が経過しましたが、現在はどのような体勢で開発が進行しているのでしょうか?

松山ディレクターは、先ほども話に出た弊社のフランス人社員、ヨアンが務めています。ただ、彼はディレクションは未経験なので、弊社の起ち上げメンバーでもある新里(裕人氏)がサポートについています。開発チームとして携わっている人数は、20人から30人といったところですね。ヨアンを含め、開発の中心メンバーは福岡本社にいますが、グラフィックリソースの大半は弊社モントリオールスタジオで手掛けています。私と新里は東京にいますので、週に数回テレビ会議を行いながら、開発作業が進められています。

――短期間開発タイトルとはいえ、はじめてのディレクターというのは大変そうですね。

松山このプロジェクトに限ったことではありませんが、ゲーム開発では、最初に思い描いたとおりの仕様で完成することは滅多にありません。実際に作業を進めていく中で、何度も手直しを加えながらゲームはできあがっていくものです。ただ、手直しをすると言っても、できあがったものを全部手放していちから作り直すのか、それとも作っている最中に修正を加えて直していくのか。それまでに培ってきた経験値によって、手間や時間に大きな差が出てきます。ヨアンにはこの経験値がないので、その部分を我々がサポートしているというわけです。でも、反対にヨアンならではの利点もあるんですよ。先ほども話をしたモントリオールスタジオですが、こちらのスタジオがあるカナダの公用語はフランス語なので、フランス人であるヨアンは直接やり取りができるんですよね。本来であれば、日本人が作った仕様書を通訳スタッフが英語とフランス語に翻訳するという作業が発生してましたが、ヨアンの場合はその必要がありません。モントリオールスタジオと連携を取りながら手掛けるプロジェクトとしては、最適な人材だと思っています。

――そんな苦労とともに開発が進められている『戦場のフーガ』ですが、発売時期はいつごろになりそうですか? また、以前のお話ではダウンロード版だけでなく、パッケージ版も考えられていると言われていました。こちらもどのようになっているか教えてください。

松山発売に関しては、2019年秋を予定しています。また、パッケージ版に関してですが、我々はゲームソフトの開発はできますが、パッケージ版を作って販売するノウハウは持っていません。そこで、昨年は世界中の多くのパブリッシャーとお話をさせてもらっていたのですが、ひととおり遊べるビルドの用意ができましたので、来月から再度パブリッシャーの皆さまとお話をしていき、どのような販売スタイルにするか決定しようと思っています。

――パッケージ版の仕様は、あらためて報告いただけるということですね。“復讐三部作”では、同時にマンガでの展開もされると言われていましたが、こちらはどのように展開される予定ですか。

松山“復讐三部作”の各マンガ作品は、ゲームと合わせて読むことで、より世界観が広がるという作品になります。いま、欧米圏でもマンガファンが増えてきていますので、プロモーション展開の一環として、限定版に付けるなどといった施策を考えています。

『戦場のフーガ』を始めとする“復讐三部作”のコミカライズも同部に進行中。いずれも作品の世界観を補完する読み物として、CC2の社内で原案から執筆まで手掛けられている。

――“復讐三部作”の残り2本、『刀凶百鬼門』と『CECILE』の開発状況も教えてください。

松山この2タイトルに関しては、いま現在社内で手掛けている受託タイトルを優先して作業を行っているため、若干進行面で難航しています。無理をすれば、動かすこともできなくはないですが、結果としてどれも満足度の高い作品として仕上げられなければやる意味がありません。ですので、いまは受託タイトルと『戦場のフーガ』に注力しています。ただ、まったく動いていないかというとそうではなく、メインビジュアルや美術ボードといったアセット類を外部の会社に委託し、プログラマーがアサインされた瞬間からゲームが動かせるような下準備は進めています。もうしばらくお待ちいただきますが、期待してお待ちください。

『刀凶百鬼門』
妖術や呪術が一般的な日本の首都“刀凶”(トウキョウ)を舞台に、数奇な運命に巻き込まれた少女・陸奥十輪子(むつとわこ)の孤独な戦いを描いた、ハイスピードアクションゲーム。
『CECILE』
順風満帆な人生を謳歌していた4人の姉妹が、母親の策略により、命を賭けた血みどろの戦いに巻き込まれるという、2.5D横スクロールアクションゲーム。