2000年にビスコからアーケード向けにリリースされるや、その独特の世界観がファンの心を鷲掴みにした縦スクロールシューティングゲーム『婆裟羅』。これまで一度もほかのプラットフォームに移植されることのなかった同作が、ブラジルの開発会社であるQUByte Interactiveの手により復活。『婆裟羅』と続編『婆裟羅2』とのカップリングソフトとして、Nintendo Switchとプレイステーション4、そしてXbox One向けに2019年春に配信されることになった。

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 ブラジルの開発会社が、なぜこの“知る人ぞ知る”の日本のIP(知的財産)を手掛けることになったのか? 秘蔵資料をふんだんに交えつつ、地球の裏側からメールインタビューにて答えていただいた!

インタビューに答えてくれたQUByte Interactiveのスタッフの皆さん

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前列左からLeonardo Hirano氏、Fábio Attard氏、 Guilherme Maia氏、Mariana Souza氏。後列左からMarcel Bernardi氏、Bruno Carvalho、Marivaldo Cabral氏。

――まずは、日本のゲームファンに、QUByte Interactiveさんがどのようなスタジオなのかお教えください。

QUByte QUByte Interactiveはブラジルのゲームスタジオで、設立から10年以上モバイルからPCやコンソールゲーム機まで多様なプラットフォームでゲーム開発や移植に従事している。自分たちが熱心なゲーマーだから世界中のゲーマーに敬意を払う最高の経験を届けようと奮起しているんだ。

――なぜ『婆裟羅』シリーズをコンソールで出そうと思ったのですか? そもそも『婆裟羅』シリーズはブラジルで遊ばれていたのでしょうか? あの独特な世界観が海外ゲームファンに受け入れられているのかどうか、気になるところではあります。また、これまで、『婆裟羅』シリーズがコンソールに移植されていないことは知っていましたか?

QUByte シューティングゲームの大ファンとして、なぜ『婆裟羅』が国内外のゲーム市場にいつまで経っても出て来ないんだろうっていつも不思議に思っていた。
 アーケード基板の輸入品を取り扱っている、ブラジルのとある店で『婆裟羅』の基板を見つけたんだ。当時はすごく印象的だったよ。それからあっという間に数年経って、新しいプロジェクトの可能性を探しているときに、『婆裟羅』が思い浮かんだのはごく自然なことだったな。だって、このタイトルを気に入っているし、日本でもごく一部の限られたゲームセンターやマニア以外はお目にプレイできないタイトルだったからね。
 だから、自分たちでゲーム機用の『婆裟羅』を世界に送り出そうと決めたんだ。そうしたら日本や海外の新しい世代のプレイヤーが、この隠れたお宝を楽しむことができるからね。

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――版権元のビスコから権利を獲得するにあたって、どのようなプロセスを踏んだのですか? 権利を取得した際のご苦労話などありましたら、教えてください。

QUByte 最初ビスコさんにアプローチをしたときは、当然、知的財産の保護についてとても重視していて、その大切なタイトルから期待される品質を確実にゲームファンへ届けることを求めていた。ビスコさんとは何度も打ち合わせをしたよ。
 我々の過去の作品を提示して、我々がすべてのプロジェクトに込めてきた情熱とプロの根性を見せたよ。
 結果的に、ビスコさんは我々がプロジェクトに対して本当に真剣であること、私たちが世界中の市場でPCとコンソールの両方でゲームを出すことで『婆裟羅』シリーズが、そのゲーム内容にふさわしい注目をシューティングゲームファンから集めるようにしたいという意図を理解してくれたので、『婆裟羅コレクション』のリリースと、私たちとの協業について賛成してくれたんだ。

――『婆裟羅』シリーズのどのような点を魅力に感じていますか?

QUByte 『婆裟羅』にはほかのシューティングゲームにはない独特な魅力がふたつあると思う。
 まずはゲームプレイ。斬る、薙ぐといった相手に直接斬り込んでいく乱戦に焦点を置いている。もちろん『婆裟羅』はシューティングゲームなんだけど、乱戦の要素をうまく使えるようにマスターするとプレイヤーがつぎのレベルに進める。
 この攻撃方法は、攻守共に『婆裟羅』では欠かせないゲームプレイメカニックといえる。ゲームのペースをまったく変えるんだ。
 2番目は『婆裟羅』がSFと日本の戦国時代を融合させた何とも不思議な世界観を持っていること。ゲームはかなり封建時代の日本の歴史に影響されている。みんなも知っている有名な戦国武将やサムライたちが登場し、彼らは技術的に遥かに未来の兵器……戦闘機や艦船、そしてロボットや要塞を使いこなしているのが、すごくユニークなんだ。豊かな日本の歴史文化に空飛ぶオートバイや巨大ロボ、戦車が共存しているなんてほかにないよ!

――移植作業はどのようにして行われているのですか?

QUByte ゲームはもともと日本のアーケードだけでリリースされていたから、ソースコードへのアクセスはかなり限定されていた。だからゲームを新しいプラットフォームで動かすためには、コードをいちから書いて、各機種用の『婆裟羅』をまったく新しく作らなければならなかった。でもこの作業は最終的にゲームをもっと理解するのに役立ったし、さまざまな改良や調整を施したり、オリジナルコンテンツへの道を開くこともできたんだ。

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――オリジナルモードを制作する際に重視したことを教えてください。

QUByte 『婆裟羅コレクション』を何か特別なもの、オリジナル版からのファンと新しく参入してくるファンの両方に応えるコンテンツにしたかった。だからひとつのパッケージに『婆裟羅』と『婆裟羅2』のオリジナルを収録して、コレクターズ要素を持たせること以外に“決定版”として何か新しい『婆裟羅』体験を導きたかった。
 私たちはこの新しいゲームモードを“タイムレスモード”と呼んでいる。オリジナルの『婆裟羅』を唯一無二の存在にしているすべての要素を保持したまま、いくつかのひねりを加えた新しい試みを導入している。
 重要な要素として“タイムレスモード”では、フルHDのワイドスクリーンに仕様を変更した。このおかげで4人同時プレイをサポートしたり新しい挙動を追加している。新モードでは『婆裟羅』および『婆裟羅2』両作に登場する主人公たちを組み合わせてプレイできるよ。プレイヤーに襲いかかる悪の軍団や戦場となるフィールドもポリゴンで完全にいちから構築しているんだ。

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『婆裟羅コレクション』では、フルHDで描かれる新規ゲームモードを追加。グラフィックが3D化されたほかに横長画面での4人同時プレイが可能に。

――日本でリリースされることが決定したときの、率直なご感想をお聞かせください。

QUByte 最初に『婆裟羅』の移植についてビスコさんと話し始めてから、そのルーツを完全に認識して『婆裟羅』を世界に送り出す、すばらしい責任について理解した。
 でも、フランチャイズをとても大事にしている日本のゲーム市場にゲームを再投入することは、もっと大きな責任であるということも理解した。私たちは『婆裟羅コレクション』を日本を含めた世界同時発売できるようにしたいと思っていた。
 でも、『婆裟羅』をブラジルから祖国・日本に戻すということには相当な努力が必要であるということが分かっていたんだ。商習慣も違うしね。だから実現できるように正しいパートナーを選択しなければならなかった。そこでコーラス・ワールドワイドが活動を始めてくれた。私たちが『婆娑羅コレクション』を待ち望んでくれている日本のゲームファンへ届けることができるように、ローカライズと国内販売の支援をしてくれている。日本のすべてのゲームファンが本作に触れることができる機会を作っているんだ。

――最後に、リリースを楽しみにしている日本のゲームファンにメッセージをお願いします。

QUByte 日本のすべての『婆裟羅』ファンの皆さん、献身的なサポートと『婆裟羅』に夢中でいてくれてありがとう。皆さんがこの作品に対して熱心なのと同じように、我々も『婆裟羅』フランチャイズに情熱を持っていて、その価値を最大限に尊重していることに安心してもらいたいと思っている。我々同様、皆さん全員が『婆裟羅コレクション』にワクワクしてもらえることを願っているよ。ぜひ発売を楽しみに待っていてほしい。本当にありがとう!

 最後に余録として……。オリジナルの『婆裟羅』1作目には、バグがあり、ハイスコアチャレンジなどはきびしかったという。これに対してQUByteでは、「オリジナルは尊重したいものの、バグはバグなので修正する」とのことだ。

秘蔵イラストを紹介!

 最後に、『婆裟羅』のイラストを紹介する。こちらは、一部加工しているものはあるが、基本全部オリジナルの素材とのこと!

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『婆裟羅』のプレイヤーキャラクター真田幸村。
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同じく雑賀孫市。
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同じく島左近。
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『婆裟羅2』のプレイヤーキャラクター、百地三太夫。
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同じく清龍坊。
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同じく武田信勝。
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同じく明智光秀。
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同じく雑賀孫一。
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プレイヤーキャラクターたちが駆使するバイク。戦国時代をモチーフにしつつ、バイクを駆使するというのも斬新。
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魅力的なボスもずらり。