学生たちが作り上げた対戦型アクションゲーム『BATTLLOON ‐バトルーン』。その開発の顛末に迫る。

 2019年2月28日に、Nintendo Switch、PC向けに『BATTLLOON ‐ バトルーン』が配信された。ソニー・ミュージックエンタテインメントのゲームレーベルUNTIESがパブリッシングを担当する同作は、風船になってぶつかりあって戦うという、シンプルながらもわいわい楽しめる対戦アクションゲーム。

 同作を開発しているのは、日本工学院専門学校の学生さんで構成されるnoname studio。そもそもは学校の授業の一環として制作されていたものを、UNTIESのスタッフがそのゲーム性に惚れ込んでパブリッシングを決意したという、いまのインディーゲームシーンらしい成り立ちを持っている。実際のところ、『BATTLLOON ‐ バトルーン』が出来上がるまでの過程は、なかなかにドラマチックだ。ここでは、同作のリリースを記念して、noname studioの皆さんへのインタビューをお届けしよう。

 ちなみに、noname studioに関しては、ファミ通ドットコムでも2018年8月にミル☆吉村が取材している。今回のインタビューはその内容と若干重なる部分もあるが、その後の進捗も含めて、『BATTLLOON ‐ バトルーン』が完成するまでの悪戦苦闘ぶりをご確認いただけると幸いである。

生高橋氏

ディレクター。さらにプランナーでもありプログラムも手掛け……と幅広い業務をこなす。 最近ハマっているものは筋肉体操。Twitterは@hyaku1128

河野渓氏

リードアーティスト。“はちのす”という名前でゲーム作者としても活躍中。 最近ハマっているものはSteamでゲームを積むこと。 Twitterは@HACHINOS_

高梨克也氏

メインプログラマー。最近ハマっているものはチョコボール。

――どのような経緯で『BATTLLOON ‐ バトルーン』の制作はスタートしたのですか?

生高橋そもそもは授業の課題からスタートしています。

河野当時の3年生と2年生を横断する感じでチームが組まれて、ゲーム作りに取り組んだんです。それが2017年9月ですね。

生高橋目的は、全国専門学校ゲームコンペティションと福岡ゲームコンテンスト“GFF AWARD”でした。最初は何も決まらなかったんです。そこで、カギになりそうな単語を……ということで、メチャクチャ出したんです。それをさらに絞って19個くらいにして、最終的にはサイコロを使って3つのワードを決めました。

――サイコロで決めるとは、なかなかに斬新ですね。僕がこのプロジェクトに関わっていたら不安しか感じなかったかも(笑)。

生高橋そして出たものが、“風船”と“タックル”と“相撲”でした。

河野そこで、4人でぶつかりあって外枠にある壁にぶつかったら脱落というアイデアが出まして。

生高橋そこから「どうしよう」ということでメンバーで話しあっていたら、高梨がプロトタイプを作っていたんですよ。「とりあえずできたよ」みたいな感じで。「早や!」という。

高梨話を聞きながら、どんな感じになるのかなということで作ってみたんです。ちょうど前に手掛けていたプロジェクトと少し似ていて、ある程度プログラムも流用できたということもあり、さくっとできました。

――高梨さんが天才という話しではありませんか!

生高橋そうですね。

河野まあ、そうですね。

生高橋ともかく、みんなで遊んでかなり盛り上がったんですよ。シンプルだけど楽しい。「あれ? これでいいんじゃない?」みたいな感じでした。

――なんか順調に進んだ感じですね。僕らが喜ぶ苦労話しはなさそうだ(笑)。

生高橋とんでもない! そこからが試行錯誤の連続で……。

――あら? 迷走の日々だったのですね?

河野最初にプロトタイプを作った段階では、いまのような壁はなくて、風船の動きだけだったんです。トゲがあって、画面の外にいたらダメという感じでした。だったら壁を作ろうということで、ぶつかってもいいところと、ダメなところを決めたんです。そのあとで、「どんなシステムにしようか」ということでいろいろ意見を出したんだよね。レースにしようか、みたいなアイデアもヘンなアイデアもありました(笑)。

生高橋どうしたら勝ちになるかということでもけっこう悩みましたね。最初はとにかく死にまくってもいいけど、コインを取り合うみたいなゲーム性にしたのですが、どうにもしっくりこなくて……。ポイント制にしようということは決めたのですが、せっかくだったらいろいろなポイントをつけようといことでいろいろ考えましたね。いちばんスピードが早かったプレイヤーがポイントを貰えるとか。

河野いちばん風船を膨らませた人が取れるポイントとかいろいろあったね。

生高橋ひとつへんな機能も考えていて、ボタンを押したらパンチが出るみたいな攻撃方法もあったよね。タックルじゃないけど。いま考えるとわけがわからないですが(苦笑)。

――どういう心の動きによるものだったんですかねえ……。欲が出たのかしら。

生高橋そんな感じです。シンプル過ぎて、逆に怖くなってしまったんですね。

河野「こんなのでいいかな」というのがあって。

――素材はいいけど、料理に手を入れすぎてしまったという感じなのかしら。

河野そうですね。

生高橋その期間はちょっと長かったですね。

――突破口になったのは?

生高橋担任の先生から「初心者上級者も楽しめるものを」というアドバイスをいただいたんですね。それを受けて、メンバーで集まって、「このゲームの何がおもしろいのか」ということを、みんなで話しあったんです。このゲームのよさを、しっかりとはわかっていなかったんですね。だから、何かひとつ大事なルールを決めようということにしたんです。

河野いちばん楽しいのは、「4人対戦でぶつかりあって、壁にぶつかったら終わり」というシンプルなゲーム性。ムダを削ぎ落として、最初に考えていたシンプルなものがいちばんだということに気づいたんですね。

――シンプル・イズ・ベストということですね。まあ、学生さんらしいスクラップ&ビルドがあったということかもしれませんね。その気付きがあったのは?

生高橋2017年11月です。

河野さきほどお話しした全国専門学校ゲームコンペティションの提出期限が12月くらいで、それに間に合うように仕上げたんですよ。

生高橋11月くらいまで迷走していて、12月に一気に完成した感じですね。

――ちなみに、開発はどのような感じで進められたのですか?

生高橋基本制作は授業中だけなんですよ。月曜日と金曜日がチームで制作する時間にあてられていて、制作はその時間で完結していました。

――週末開発者ならぬ、月金開発者ですね(笑)。

生高橋僕は、それまで個人でゲーム開発をしていたので、チームを組んでゲームを作ることがすごく不安でした。リーダーでもあったので。それが最初から順調に進みだして少しびっくりしたんですよ(笑)。みんなが真剣に考えているなかで、僕だけ騒いでいたりして。個人で開発していたときは、月曜日から金曜日までずっと開発していたのですが、チームでは月曜日と金曜日だけ。プログラムはプログラマーに任せておけばいいので、「めっちゃラクじゃん!」って(笑)。

河野それまでは全部ひとりでやっていましたからね。

生高橋チームメンバーに任せられるので、「これはうまく行きすぎじゃない?」みたいな感じで。

河野そこまでだったの?

生高橋楽過ぎて怖いみたいな。その反面物足りなさもあって。自分でやるところがほしいな、「プログラム書きたい」みたいな思いがあって。まあ、ゲーム的にすごくシンプルだったというのも大きいですね。