2018年12月27日よりNintendo Switchで配信が開始されたアドベンチャーゲーム『2064: Read Only Memories INTEGRAL』(開発元:MidBoss、販売元:PLAYISM)のプレイレビューをお届けする。

見た目はレトロテイスト、しかし本作の本質は……

 「ロボットが人間と同じ、あるいは人間以上の知能を持ったときどうなるのか?」。そんな疑問は、もはやSFファンと科学者だけが心配する問題ではなくなった。

 止まらない科学の進歩と、それに適合しきれない人間の衝突――このゲームの舞台は2064年の未来だが、語ろうとしているのは紛れもなく現代の問題だ。

 本稿ではゲームライター脳間寺院が、2018年12月27日よりNintendo Switchで配信が開始されたアドベンチャーゲーム『2064: Read Only Memories INTEGRAL』(開発元:MidBoss、販売元:PLAYISM)のプレイレビューをお届けする。
※『2064: Read Only Memories』はPS4、PS Vita、Steamでも配信中。Switch版での追加要素は後述。

あらすじ~ネコ型でもタヌキ型でもないロボット・チューリングとの出会い~

 このゲームの主人公は西暦2064年を生きるしながいジャーナリスト。彼の部屋は狭くて、汚くて、埃っぽく、彼はそこで時代遅れのノートPCを使い新製品のヘッドセットのレビューを書いている。

 書き上げた原稿を編集部に送ったところでメールの受信箱を確認すると、そこには大量のスパムメールに家賃と電気代支払いの催促、それに無報酬の原稿依頼メールが届いていた。

 メールを開く気も失せてベッドに倒れこんだ彼は、翌朝机の上に1体の見知らぬロボットが腰掛けているのに気がついた。

 小さな体に青い電球をくっつけたようなこのロボットの名前は“チューリング”。彼は2064年の最先端テクノロジーによって生まれた存在で、本物の人工知能を持っている。

 SiriやAlexaがいくら便利だからといって、そこに意思や思考はない。だがチューリングには意思も思考もある。そんなロボットは『2064』の世界でもまだチューリングぐらいしか存在しない。

壁に書かれた“TOUGH BOY”の落書きに反応できるぐらいに高性能。

チューリング誕生の裏に潜む陰謀を解き明かせ

 チューリングをたった1人で開発したプログラマー・ヘイデンは、何者かによって誘拐された。チューリングの目的は生みの親であるヘイデンを救出することで、そのために彼は主人公のもとを訪ねたのだ。

 捜査が進むにつれ、ヘイデン失踪の裏に隠された陰謀が徐々に明らかにされていく。ふたりは雪だるま式に膨らんでいく事件を解決できるのか……?

古き良き探偵モノ+現代的なテーマを取り入れたSF

 『2064: Read Only Memories INTEGRAL』はポイントクリック型のアドベンチャーゲームであり、基本的には昔からあるタイプの探偵モノだ。『ポートピア連続殺人事件』や『逆転裁判』の探偵パートと同じように、気になるオブジェクトを調べることでゲームは進んでいく。

画面上の気になるオブジェクトに“見る”、“触る”、“話しかける”、“アイテムを使う”の4つの手段でインタラクトできる。

 謎解き・推理要素はオマケ程度なので、テキストを読み飛ばしさえしなければ、謎解きで詰まってしまうことはないだろう。

 ストーリーも、舞台が未来世界であることを除けば、オーソドックスな探偵モノで、何の組織にも属していない主人公たちが、利権の絡んだ巨大な陰謀に立ち向かうお話だ。

 とはいえ本作は現代性のあるテーマを多分に取り入れており、遺伝子操作・AI・サイバネティクスのような既に現実でも実現されつつあるテクノロジーが、シナリオに深く関わってくる。それについてはつぎの項で詳しく説明しよう。

ゲームでマイノリティをどう描くか

 『2064: Read Only Memories INTEGRAL』にはさまざまなタイプのマイノリティが登場する。たとえば遺伝子治療の結果、猫や犬のような体毛や耳を獲得した“ハイブリッド”。体の一部、あるいは脳以外のすべてを機械に置き換えたサイボーグ。そして世界に1体しか存在しない自立思考するロボット・チューリングもまた、れっきとしたマイノリティだろう。

 2064年のネオ・サンフランシスコには、テクノロジーによって生まれた新人類を歓迎しない者たちもいる。保守団体"ヒューマンレボリューション"は、テクノロジーの過剰な利用に反発する組織で、街中でデモ活動を行っている。この組織も一枚岩ではなく、穏健派もいればハイブリッドを徹底して嫌う差別主義者もいるようだ。

 このような差別・被差別の関係性は、明らかに現実に存在する人種・国籍・セクシャリティなどによる差別の換喩として表現されている。『2064: Read Only Memories INTEGRAL』は、現実の差別問題を未来世界の別種の差別によって言い換えているのだ。

 この点について筆者が「うまいな」と感じたのは、差別問題をSFに託して表現しつつも、LGBTはゲーム内に“当たり前にいる存在”として表現していること。本作には何人ものセクシャルマイノリティが登場するが、登場人物は誰もそれについて指摘したり難色を示したりはしない。

 LGBT差別について直接的に描くのでなく、差別問題は差別問題として別の場所で描いて、LGBTは“いて当然”という立ち位置に置く。この絶妙なバランスの取りかたのおかげで、プレイヤーは押しつけがましさを感じずにふんわりと制作者のメッセージを受け取れる。

 私は本作を体験した1人のプレイヤーとして、売り上げや評価に影響が出るリスクを承知しながらも作品にLGBTを登場させた開発元のMidBoss、そして日本での販売元であるPLAYISMを賞賛したい。

Swtich版の追加要素

 『2064: Read Only Memories』は2015年にSteamで配信開始され、PS Vita向けにローカライズ版が配信されていたが、今回タイトルに“INTEGRAL”が付き日本でもNintendo Switch版が配信されるにあたって、いくつかの追加要素がある

 ひとつがストーリーで重要な役割を担う若者ふたり組、チャドとオリバーが主人公の番外編“PUNKS”。この番外編をプレイすれば、本編で主人公たちが捜査を進めているあいだに、彼らが何をしていたのかが明らかになる。

 また、プレイ中に流れるBGMや宣伝用トレーラームービーを視聴できるモードのほか、設定資料や広告ポスターが55ページにも及び収録されているデジタルアートブックも同梱。こちらはクリア後に眺めてストーリーを振り返るのに丁度よさそうだ。

インディーゲームとは思えないほどの完成度

 アドベンチャーゲームやSFとして革新的な部分があるわけではないが、『2064: Read Only Memories INTEGRAL』はインディーゲームとは思えないほどの完成度に仕上がっている。

 サイバーパンクらしい色彩とレトロな味のあるピクセルアートは最後まで見飽きることはなく、ローカライズもとくに違和感はない。ところどころで差し挟まれるミニゲームもテキストアドベンチャー特有の単調さを打ち消すのにぴったりだった。

 AIをはじめとしたテクノロジーが急速な発展を遂げ、中国では遺伝子操作実験が行われたことがニュースになっているいまこそが、本作をプレイする絶好のタイミングだ。

 テーマが難解に思えるかもしれないが、本作は決してややこしいゲームではない。むしろとっつきやすいぐらいだ。この年末年始に気軽な気持ちで2064年のネオ・サンフランシスコに飛びこんでほしい。

 ああ、このレビューを書いた独り者の私のところにもチューリングでもド○えもんでもいいから来てくれないだろうか……。

■脳間 寺院(のうま・じいん)京都生まれポケモン育ち、ボンクラオタクはだいたい友達。「ゲームをもっと面白く」をモットーに記事を書くゲームライター。Twitterにてゲームにまつわる情報を発信中。
Twitter:@noomagame