『GRIS』声を失った少女の喪失と再生の物語が、圧倒的なビジュアルの力で感情に突き刺さる。Switch/PCで本日配信

Nomada Studiosのアクションゲーム『GRIS』がNintendo Switchで配信開始。追ってPC版も配信予定。

 インディーパブリッシャーのDevolver Digitalが、Nomada Studiosのアクションゲーム『GRIS』をNintendo Switchで配信開始。続いて13日深夜にSteamでのPC版も配信される予定だ。なおSwitch版の価格は1780円で、PC版の価格は1730円。

 さて、昨年9月に本作のデモのプレイリポートをお届けした時、「これまで見た中でもっとも美しいゲーム」と書いた。その思いは製品版をプレイした今でも変わらない。いやむしろ、それは確信に変わった。

 スクリーンショットや動画を見て何か感じる所があれば、ぜひ今すぐその世界に飛び込み、そのビジュアルの力に圧倒されて欲しい。そしてこの物語はなんなのか、時間をかけてゆっくり噛み締めて欲しい。これはそういう類の作品だと思う。

『GRIS』セリフなしの情景だけで感情が持っていかれる、これまで見た中でもっとも美しいゲーム【PAX WEST】

日本でもNintendo Switch/PCでのリリースが予定されているアクションゲーム『GRIS』を紹介。

“声”を喪った少女Grisの再生の物語

 『GRIS』は、主人公の少女Grisが高らかに歌う場面から始まる、喪失と再生の物語だ。突如“声”を喪ってしまい嘆き悲しむ彼女は、逆風を耐えて進み、高みを目指して跳躍し、さまざまな出会いと発見を重ねながら、壮大な世界を歩んでいく。

 ゲームとしては2Dのプラットフォームアクションゲームとなっており、基本的にはマップの各所にある“星”を必要数手に入れることで“星の橋”がかかって先に進めるようになったり、GRISが新たなアクションを習得して、同じくこれまで行けなかった場所にたどり着けるようになるといった感じ。

Grisが習得する能力のひとつ。ドレスを立方体のように変形させ、重さで突風を耐えたり、飛び降りでヒビの入った床を割ったりできるようになる。

 戦闘要素はなく、マップとアクション双方のギミックを駆使して“星”を集めて先に進むというのがメインで、どちらかと言えばパズルアクション的な内容。ただしボス的なキャラクターに襲われる場面もいくつかあり、大仕掛けな演出とサウンドで緊迫したシーンを体験できる。通常クリアーまでは2時間程度で、ダレることもなくギュッと詰まった内容だ。

スペインのアーティストとゲーム開発者のタッグによる結晶

 以前もご紹介したように、本作の開発はスペインのアーティストConrad Roset氏の「自分のアートをゲームにしてみたい」という思いに、同じくスペイン出身のふたりのゲーム開発者が共鳴し、意気投合したことから始まっている。

 当時UbisoftのモントリオールスタジオにいたというAdrian Cuevas氏とRoger Mendoza氏のふたりは、その情熱につき動かされて同スタジオを退職。そしてRoset氏をクリエイティブ・ディレクターとして迎えて設立されたのがNomada Studiosとなる。

 だから、と言うべきか、『GRIS』はRoset氏のイラストを元にしたアニメーションを全面的に押し出した内容だ。時に可愛く時にどこか寂しさを感じさせるキャラクターたちが動き回り、美しい背景が多重スクロールし、カラフルなインクエフェクトがブワッと広がり、カメラが自在に寄っては引いて情景を形作っていく。

 そして欠かせないのが、これまたスペインのバンドである“Berlinist”によるサウンドだ。できるだけいいヘッドフォンかサウンドシステムでプレイするのをオススメしたい。Grisが再び歌声を取り戻した時、哀しみも喜びもすべてを包み込むような感情の爆発が待っている。

 このようにして本作では、背景を含めたアート、音楽、演出、そしてアクションと連動したアニメーション、そのすべてがビデオゲームとしてひとつの美しい作品として昇華され、一切のセリフなしにひとつの物語を奏でる。単にビジュアル的に綺麗だったり、シーン演出で感傷的にさせられる作品はいくつも見てきたが、ここまですべてが噛み合っているのはそうお目にかかれない。

 なので、筆者も含めてプレイした人々の間ではしばしば「何やら感動しているのに理由がわからない」という現象が起こる(実際に何人かと話して、自分だけでないのを確認した)。優れた映画や絵画を見た時のように、言葉を超えて感情がまずつき動かされる、後から意味がやってくる。これはそういう作品だ。