貞本義行氏&形部一平氏『星と翼のパラドクス』インタビュー――キャラクターやエア・リアルに込めた想いとは?

2018年11月21日に稼動開始予定のスクウェア・エニックスとサンライズが贈る新作アーケードゲーム『星と翼のパラドクス』。本作のキャラクターデザインを担当した貞本義行氏、メカニックデザインを担当した形部一平氏のインタビューをお届けする。

 2018年11月21日に稼動開始予定のスクウェア・エニックスとサンライズが贈る新作アーケードゲーム『星と翼のパラドクス』。同作は、ゲームに合わせて可動するインパクト抜群の筺体はもちろんのこと、豪華スタッフ陣が集結していることも話題を呼んでいる作品だ。

 そんなスタッフ陣の中から、キャラクターデザインを担当した貞本義行氏、メカニックデザインを担当した形部一平氏にインタビューを実施。『星と翼のパラドクス』のキャラクターやエア・リアル(ロボット)に込めた想いや制作秘話などを伺った。

 なお、ファミ通.comでは、『星と翼のパラドクス』の特設サイトを公開中。すでに公開している、小松未可子さん&諏訪彩花さんを始めとするキャスト陣へのインタビューのほか、最新情報やスタッフインタビューなど、本作の魅力をたっぷりお届けします。

『星と翼のパラドクス』キャストインタビュー第1弾! 小松未可子さん&諏訪彩花さんが語る作品の魅力とは

2018年11月21日に稼動開始予定のスクウェア・エニックスとサンライズが贈る新作アーケードゲーム『星と翼のパラドクス』。同作でヒカリを演じる小松未可子さん、レイカを演じる諏訪彩花さんのインタビューをお届け。

『星と翼のパラドクス』の世界観やアニメーションはどのようにして作られたのかスタッフ陣に訊く

2018年11月21日に稼動開始予定のスクウェア・エニックスとサンライズが贈る新作アーケードゲーム『星と翼のパラドクス』。本作の制作に携わる小形尚弘氏、加藤陽一氏、関西リョウジ氏のインタビューをお届けする。

貞本義行氏

形部一平氏

プロフィール

貞本義行氏(さだもと よしゆき)

マンガ家、デザイナー、イラストレーター。代表作は『新世紀エヴァンゲリオン』、『ふしぎの海のナディア』、『.hack』など。

形部一平氏(ぎょうぶ いっぺい)

イラストレーター。代表作は『ガンダム Gのレコンギスタ』、『甲鉄城のカバネリ』など。また、2010年より東京ゲームショウのメインビジュアルを担当している。

プレイヤーはゲームセンターから世界を救う!?

――企画を聞いたときの第一印象はいかがでしたか?

形部これはすごくアーケードゲームに勢いがあったころの企画だなと(笑)。

一同 (笑)。

形部すごくビックリしました。「これで勝負を賭けるんだ!?」と。

――昔は可動筺体のゲームもたくさんありましたらかね。

形部そういったものを長らく見ていなかったので、喜び半分、不安半分という感じでした。

貞本僕も筺体についても聞いたときは、「VRが話題になっているときに、こういう大型の可動筺体はどうなのかな?」と少し不安でした。

――おふたりはそこからどのように関わっていくことになったのでしょうか?

貞本僕が制作に加わったタイミングでは、アニメの制作にサンライズさんが関わることが決まっていて、エア・リアルのデザインが進み始めた時期でした。ただ、世界設定がまだしっかりとは固まっていないという状況で、世界設定と並行しながら、デザインの方向性を決めていったという流れです。

――ベースの部分があって、そこから詳細を詰めていったという感じですね。

形部そうですね。貞本さんが入られた時点では、メカが先行していたもののキャラクターをどういう立ち位置にするのかということをみんなで検討していました。というのも、企画当初はエネルギーを採掘するという部分にスポットを当てたゲーム性だったので、キャラクターはもっとわかりやすい企業的ユニフォームや傭兵的なデザインがいいのではないかという意見があったりして。でも、メカの世界観が本作のメインターゲットとなる世代の方々が見てきたロボットアニメの感覚に近いものをということで、スーパーロボットに片足を突っ込んでいるような日本ならではのロボットデザインにしたこともあり、それに準じた世界観にしようとなっていきました。

貞本その後には、採掘場のフィールドを奪い合っているという設定の時期もあって、ちょうどその時期に、キャラクターたちがどこに属して、何のために戦っているのかをハッキリさせてほしいとお願いしました。やっぱり、国が雇っているのと、企業が雇っているのとでは、服飾のイメージも変わってくるんですよ。初期のころ設定では、もっと中世の騎士のようなイメージだったので、いまとは少しデザインの方向性も違っていました。

形部カズマはそのときの名残がありますよね。

貞本そうですね。マントを付けていて、ハードな騎士もののような感じで。

カズマ

形部貞本さんが入られたタイミングは、制作側からの発注としてキャラクターコンセプトはかなりその方向が強かったですね。エア・リアルのデザインはその時点ですでにいくつか出来上がっていたので、そこのギャップあってすごくデザインし辛らかったと思います。

貞本SFっぽい雰囲気もあったので、どちらの方向に振ればいいのかわからなくて。設定を聞いて「こういうイメージかな?」とデザインした後に、形部さんのデザインを見たら「んっ!? 違うな」となったり。

――その後に設定がしっかり決まり始めて、しっくりときた感じでしょうか?

貞本そうですね。アーケードのゲームということで、ストーリーが深く描かれるわけではないので、悲壮感を感じさせない、とにかく明るいキャラクターにしてほしいと言われたのですが、「それは俺がいちばん苦手なやつだ……」と(笑)。

――でも、アニメーションPVを見ると、それぞれのキャラクターたちが何かを抱えているようなシーンもありますよね。

貞本そうなんです。最初にPVを観たときは、僕が想像していたよりも、ぜんぜん重たそうな雰囲気で「暗いな」という印象でした。もしかしたら、キャラクターの内側の暗さが出てしまったのかもしれないですね(笑)。

一同 (笑)。

貞本とくにナギはそうかもしれないです。心の底から笑ってくれなさそうというか。やっぱり、全員が明るいだけということはできなくて。明るくても何か引きずっているものがあるというか。

ナギ

形部僕も「とにかく明るくしてほしい」ということを聞いていたので、キャラクターデザインはどういうノリになるのか想像できてなかったのですが、貞本さんのデザインを見て、キャラクターの立ち位置がハッキリしていきました。

貞本キャラクターの立ち位置については、ヒカリとレイカ、ナギとカズマというような関係性も含めて、ペア感があるようにしてほしいとオーダーがありました。そのほか、各キャラクターのイメージカラーと星血(ほしのち)をイメージする紫を全員に入れるというのが決まっていたのですが、これがかなり苦戦しました。

形部じつはソリディアも最初は真っ黒だったんです。でも、機体のメインカラーを白に変更することになって、ほかの部分の色を修正していたときに、直球でトリコロールを使ってみたら、某人気作品の機体に見えてしまって(笑)。そうして調整していく中で、現在の紫をメインとしたカラーリングに落ち着き、ソリディアの紫を作品のイメージカラーとして、筐体やロゴなど、さまざまな部分で使っていくことに決まりました。

ソリディア

貞本全キャラクターに共通の色を使うということは難しくて、いろいろ考えた末に通信機といった電気回路がある部分に使うようにしました。あと、最初に描いたときは、左右がすべて逆だったのですが、ゲーム画面上では現在の向きのほうがいいと感じたので、すべて描き直しました。

――設定画としては珍しい向きですよね。

貞本そうですね。描き慣れていないので、一度紙をひっくり返して描いたものを見ながら、清書しました。

――なるほど。形部さんがデザインされたタイミングでは、エア・リアルとキャラクターの組み合わせは決まっていなかったんですか?

形部ヒカリとソリディア、ナギとカーディナル以外は決まっていなかったです。だから、ゴールテン・ダーにシャーリーが乗っているのを知ったときはビックリしました。

スクウェア・エニックス広報(以下、広報) それは加藤陽一さん(※脚本担当)と関西リョウジさん(世界観考証担当)のリクエストですね。「小さい子をいちばん大きい機体に乗せよう」と。

シャリー

ゴールテン・ダー

貞本エア・リアル自体がすごく大きいという設定はまだ残っているんですか?

広報 サイズは40メートル級ですね。

貞本キャラクターたちは、エア・リアルの中に炊事や洗濯をしながら、生活しているという設定もありましたよね。運転席の後ろに小さな居住スペースがある長距離トラックのようなイメージで。でも、エア・リアルの中で生活していると聞いていたので、200メートルくらいあるかと思っていたのですが、40メートルほどなんですね(笑)。

一同 (笑)。

形部あと、この設定もそのままだと思うのですが、プレイヤーは地球のゲームセンターから操縦しているんですよね?

広報 そうですね。

形部プレイヤーは、巡星(めぐりぼし)にいるキャラクターたちからスカウトを受けて、いっしょに戦っていると。この設定はいちばん最初から変わっていないですね。

貞本地球人は、ふだんからゲームなどを通じてロボットの操縦をしているので、うまいんですよ(笑)。

――なるほど(笑)。

形部巡星では、科学技術は地球より遥かに進んでいるのですが、戦闘技術がないんですよ。だから、ロボットの操縦に慣れている地球のゲーマーに手助けを求めているという設定です。

――その設定はおもしろいですね。

形部「こんな僕でもヒーローになれる」という感じがしていいですよね。でも、開発初期のころには“彼女とデート”というコンセプトもありました。親密度が増していくにつれて、ぬいぐるみを始めとする思い出の品がコックピットにどんどん増えていくということを考えたり(笑)。

初プレイの感想は「シンジくんの気持ちがわかった」(貞本氏)

――貞本さんが参加されたタイミングでは、アニメの制作をサンライズが担当すると決まっていたということでしたが、デザインされるときに意識されたことはありますか?

貞本僕がデザインをしていたころは、アニメPVを作る際にキャラクターを手描きするのか、CGにするのか決まっておらず、どちらにも対応できるようにしてほしいとお願いされました。線を増やし過ぎると手描きが難しくなりますし、逆に線を減らすとCGになったときに間が抜けちゃうので、バランスの調整が難しく、ギリギリ手描きができる線の量にすることを心掛けました。ただ、本当にギリギリのラインを攻めて、最終的に手描きでやることになったので「たいへんだな」と思っていました。僕だったら、絶対に原画をやりたくないです(笑)。

一同 (笑)。

――形部さんはいかがでしたか?

形部僕はとにかくゲームにフィックスさせるということだったので、シンプルになり過ぎず、形を特徴付けて、現在の進んだゲームグラフィックでも間が持つようなデティールを意識しました。アニメでは、線の減らすことを考えながらデザインすることが多いので、今回はたがを外していいんだと(笑)。

一同 (笑)。

形部その結果、手描きでは描けないレベルになっていますが、アニメになるとしても、3DCGで登場だろうと割り切ってデザインしました。

広報 何度かイラストを描いていただいていますが、過去のものを確認しながら描いているんですか?

形部さすがに何もなしでは描けないですね。

――たがを外した結果、自分を苦しめる結果に。

形部でも、それはそれで楽しんでいます。あまりない貴重な機会なので。

――ゲーム画面で見た印象はいかがでしたか?

形部本当にそのままで驚きました。今回挑戦としてツノの部分がかなり特徴的な形をしているので、手描きアニメ設定としては少し形状把握が難しいのですが、3DCGでカッチリ作っていただくと決定版として形が固定化されるのでありがたいです。だから、今後もチャンスがあるときは、そういったおもしろいのに挑戦してみようと思いました。

――貞本さんはキービジュアルも描かれていますが、どういったイメージで描かれたのでしょうか?

貞本第2弾キービジュアルの打ち合わせでは、6人のキャラクターたちを均等に入れてほしいということだったのですが、そうすると締まらない絵になるなと思ったので、少しメリハリを付けて、いまの形になりました。

形部ソリディアもカッコよく描いていただいて、ありがとうございます!

貞本形部さんの絵をじっくり確認しながら進めていたのですが、すごく細かいところまで描かれているので、覚えて作業に戻どろうと一瞬目を離しただけなのに、その間に忘れてしまってたいへんでした(笑)。

一同 (笑)。

形部めちゃくちゃカッコよくて完璧です。

貞本氏が描いた『星と翼のパラドクス』キービジュアル第2弾

――先ほどゲームをプレイされたということでしたが、いかがでしたか?

形部もういい歳になって、昔のように遊んですぐに馴染むというような感じではなくなっているので、難しかったです。ただ、ワンプレイで満足感があるというか。毎回お金を入れてプレイするアーケードゲームなので、これで物足りなかったら嫌だなと思っていたのですが、1回遊ぶと心地いい疲労感がありました。本当にアトラクションに乗った感覚なので、皆さんがどのような反応をするのか楽しみですね。

――貞本さんもプレイされたんですよね?

貞本そもそもゲームをあまりやらない人間なので、1回だけ軽くプレイしました。

――いかがでしたか?

貞本おもしろかったですね。でも、やりこなすには時間が掛かりそうだなと。

広報 貞本さんは「シンジくんの気持ちがわかった」とおっしゃっていました(笑)。

一同 (笑)。

――キャラクターとタッチしたり、キャラクターが褒めてくれたりするのも楽しいですよね。

形部ヒカリ(※プレイヤーが選択しているパートナー)が目の前で話しかけてくれるじゃないです。もう、最高ですね(笑)。

貞本ゲームセンターにはふだんから行かれるんですか?

形部小、中、高のころはゲームセンターのゲームがいちばんクオリティーが高い時代だったので、通っていましたね。いまはゲームセンターと同じようなゲームが家庭でも楽しめるようになってきていますが、あのときはゲームセンターに行かないと遊べなかったので。

貞本時代ですね。僕たちの世代のゲームセンターというと、ピンボールとかがメインで、デジタルのゲームというと『インベーダー』ぐらいで。ただ、『インベーダー』もゲームセンターというより、喫茶店に置かれていることが多かったので、デジタルゲームは家でやるというイメージでした。

形部そういう意味では、『星と翼のパラドクス』はゲームセンターに行かないと体験できないので、稼動が楽しみです。巨大な筺体というと郷愁を誘うところもあるんですよね。当時は1プレイが高くて遊べなかったので、いまそれに関わっているというのは感慨深いです。

――では、デザインされるときは、ゲームセンターでプレイするユーザーのことを意識したのでしょうか?

形部そうですね。今回は3Dタイプのアクションシューティングということで、プレイヤーは機体の背中をずっと見続けることになると思ったので、背中に顔をデザインしました。ロボットはやっぱり顔が命なところがあるので、背中に顔を付けて、後ろ姿でも見分けがつかないといけないかなと。もちろん、見た目だけでなく、先ほどお話したように企画の初期は採掘がメインのゲーム性だったので、その顔の部分からエネルギーを吸収するという設定もありました。

――最後にファンの方にメッセージをお願いします。

形部メインメカを担当させていただいて、僕はこの企画に懸けているところがあります。アニメではできない表現もやらせてもらったので、皆さんの反応をすごく楽しみにしています。じつは、まだ公開されていないエア・リアルも何体か描き終えているのですが、もっともっと描きたいです。人気が出ればそういうチャンスもあると思いますし、テレビアニメ化なんてこともあれば最高なので、応援よろしくお願いします。

貞本ひさしぶりにかわいい子ちゃんをいっぱい描いたのですが、まさか50歳を過ぎても描いているとは思わなかったです(笑)。「こんな年齢の僕がデザインして大丈夫かな?」と思いながら、ひさしぶりにアイドル雑誌を買ってみたりして、気持ちを若くしてから自分の恥ずかしさみたいなものを棚に上げてやり切った感があります。色気の出しかたに少し中年っぽさが出ているかもしれませんが、「これ、おじいちゃんが描いているのか」とは思わずに、そこも含めて愛していただけるとうれしいです。