2018年10月26日(金)~28日(日)の3日間(現地時間)、アメリカ・サンノゼのマッケンナリーコンベンションセンターにて、Twitchユーザーのための祭典TwitchCon 2018が開催された。ここでは、会期中にインタビューした、Twitch Prime and Commerce バイスプレジデントであるイーサン・エバンズ氏とのやり取りをお届けしよう。

※TwitchCon 2018の会場リポートはこちら

 Amazonには、Amazonプライムという、年会費3900円[税込]または月会費400円[税込]で、ビデオや音楽のストリーミングサービス、お急ぎ便やお届け日時指定便などの配送特典が無料で使い放題のプレミアムサービスがあり、その特典のひとつとしてTwitch Primeというサービスがある。
 Amazonプライム会員でTwitchに登録をしていれば、Twitch Prime会員になることができ、会員は無料ゲームや限定のゲーム内アイテムがもらえたり、30日ごとのパートナーチャンネルもしくはアフィリエイトチャンネルの無料サブスクリプション、さらには限定スタンプ、チャットバッジなどが利用できる。
 Twitch Primeは、アメリカでは2016年に、日本では2017年12月にサービスをスタート。ただいま順調に会員数を伸ばしている。

 ゲームユーザーにも親和性の高いTwitch Primeだが、その戦略とは? イーサン・エバンズ氏に聞いた。

Twitch Prime and Commerce
バイスプレジデント
イーサン・エバンズ氏

Twitch Primeのバイスプレジデント イーサン・エバンズ氏に聞く 「すべてのゲーマーをTwitch Primeの会員に!」【TwitchCon 2018】_04

「将来日本のメーカーと大きなアナウンスができれば……」

――Twitch Primeの提供が2016年に開始されてから2年となりますが、この2年間の手応えをお教えください。

イーサン非常に満足しています。Twitch Primeはこの2年間で多くのお客様に好評いただいており急激に成功していまして、それは私たちが期待していた以上のものとなっています。Twitch Primeの会員数などの数字はお答えできませんが、相当な急成長を遂げていることは間違いありません。

――期待した以上に成長した要因はどの点にあると分析していますか?

イーサンいくつか要因があると思っています。まずはお客様がゲームコンテンツを熱狂的に支持してくださったことです。Twitch Primeでは、人気タイトルを中心に、数ヵ月間連続で、Twitch Prime独占のアイテムなどを無料で提供するという施策を行っています。タイトルごとに数ヵ月にわたって、毎月異なるコンセプトで無料アイテムをご提供しているんですね。たとえば、スポーツゲームだったら、毎月異なる選手キャラクターがゲットできるといった具合です。
 また、Twitch PrimeはAmazonプライムの特典・サービスのひとつなので、Twitch Primeだけでなく、Amazonプライムの迅速な配送サービスの利用やPrime Videoなどのエンターテインメントをお楽しみいただくことができる点に、お客様が価値を感じてくださっているようです。

――今回発表された、『League of Legends』の無料コンテンツ“サモナーズクラウン カプセル”は、毎月異なる無料アイテムを提供するという展開の一環によるものなのですね?

イーサンそうですね。Twitch Primeでの『League of Legends』の特典の提供はまさにスタートしたばかりなのですが、世界的に高い人気を誇るタイトルだけに、たくさんのお客様に支持していただけることを期待しています。ちなみにですが、3月15日にリリースされたカプコンさんの『デビル メイ クライ HDコレクション』の中の1作目のPC版をTwitch Prime会員を対象に無料でご提供したのですが、こちらもとても好評でした。

Twitch Primeのバイスプレジデント イーサン・エバンズ氏に聞く 「すべてのゲーマーをTwitch Primeの会員に!」【TwitchCon 2018】_02
TwitchCon 2018では“LAN”コーナーにて『League of Legends』も展開。Twitchでも絶大な人気を誇る同作だけに、多くの来場者が詰めかけていた。

――なるほど。ところで、Twitch PrimeはTwitchという巨大プラットフォームにおいてどのような位置づけにあたるのですか?

イーサンTwitch Primeのゴールは、Twitch上での体験を、Twitch Prime会員のお客様にとってよりよいものにすることです。Twitch Prime会員であれば、毎月5ドル分、ストリーマーの配信を見られるサブスクリプションを得ることができます。Twitch Prime会員になっていただくことで、Twitchでのよりよい体験がもたらされることになるわけです。

――ということは、最終的な理想像というのは、すべてのTwitchユーザーがTwitch Primeの会員になるということでしょうか?

イーサンそうなってくれればいいと思っています。さらに言えば、すべてのゲーマーにTwitch Prime会員になってほしいと考えています。いま現在Twitchでゲームをプレイしている方も、Twitchは使わずにゲームをプレイしている方も、Twitch Primeのメンバーになることでさまざまな特典を得ることができるんです。Twitchを必ずしも使わなくても、Twitch Primeのメンバーになっていただくことを目指しています。

――ゲーマーがすべてTwitch Primeの会員になることを目指すというのは、想像を絶する目標ですね。それくらい、Twitch Primeはゲーマーにとって魅力的なプラットフォーム足り得るということでしょうか?

イーサンそうであってほしいですね。Amazonプライム、その特典のひとつであるTwitch Primeはともに急成長を遂げています。Twitch Primeの特典だけでなく、そのほかのAmazonプライムの特典を、すべてのゲーマーにお届けしたいと思っています。Amazonは長期的な視野に立っての展開を考えています。たとえ時間がかかったとしても、大きなビジョンをもって、すべてのゲーマーにとって、すばらしいプログラムをご提供できるようになりたいです。

――Twitch Primeにおいても、esportsに注力しているとの印象がありますが、その理由を教えてください。

イーサンesportsをご覧になるファンはたくさんいます。ただ、Twtich全体から見て、esportsのコンテンツはあまり多くありません。esportsをする人たちよりも、ゲームをプレイする人たちのほうが遥かに多い。esportsも、もちろんコンテンツの中に含まれますが、それ以上に幅の広いものを、Twitch Primeとしては用意しています。

――たしかに、TwitchConの会場におけるesportsエリアは、さほど大きくはありませんでしたが、あれはTwitch Primeにおけるesportsの割合を象徴しているのかしら……。

※編集部体感で、総出展スペースの30分の1程度くらいだったかと。

イーサン面積がどれくらいかは、私も判断していませんが(笑)、毎年行われるTwitchConにおいて、esportsを見たいから……ということでいらっしゃるお客様は相当数いらっしゃいます。そして、その方たちは、ほかの方たちよりも熱狂的にesportsを支持していて、「ほかのコンテンツは興味ないけど、esportsは見る」という方が多いです。その方たちには、esportsの出展をとくに非常に喜んでいただいています。

――そこまでは、esportsにはフォーカスしていないのですね。少し意外です。

イーサン人は、何かを見たいと求めてTwitchにいらっしゃいます。すぐれたプレイを見たいという方もたくさんいらっしゃいますが、エンターテイナーとしてのストリーマーの性格やパーソナリティーに共感して、おもしろいと感じるから見るという方のほうが遥かに多いんです。

――『League of Legends』などはesportsでも絶大な人気を誇っていますが、必ずしもesportsとしての見地からコラボを展開したわけではないということですね?

イーサンそうですね。『League of Legends』は、これまで何年にもわたって、Twitchでもっとも視聴されていたプログラムでした。毎日毎日たくさんの方に視聴されていました。もちろん、esports人気の影響も大きかったとは思いますが……。最近になってじつは『フォートナイト』が一番になったのですが、いずれせよ毎日毎日100万人のビューワーがやってきます。コンテンツ人気に預かるところが大きいです。今回、『League of Legends』をプレイするTwitch Prime会員のお客様に、ゲーム内アイテムの“サモナーズクラウン カプセル”を無料プレゼントを開始しました。

――『League of Legends』とのコラボは、Twitch Primeの会員からの要望が大きかったから実現したという一面はある?

イーサンそうです。

――ユーザーさんからの要望が高いタイトルは、今後も実現していくという方針ですか?

イーサンもちろんです。

――となると、『League of Legends』が実現したあと、いま一番リクエストの多いタイトルは?

イーサンあははは(笑)。それについては言えません。私たちはつねに大きなタイトルとTwitch Primeとの取り組みについて話し合いを重ねています。もちろん、日本のメーカーさんとも話し合いはしていますよ。

Twitch Primeのバイスプレジデント イーサン・エバンズ氏に聞く 「すべてのゲーマーをTwitch Primeの会員に!」【TwitchCon 2018】_01
会場では、Twitch Prime主催によるesportsのエキシビションマッチも行われ大盛況だった。

――日本でのTwitch Primeの受け入れられ状況ってどんな感じなのですか? 東京ゲームショウ2018でのTwitch マイケル・アラゴン氏へのインタビューでは、「Twitchの視聴者数は世界でTOP3」との発言がありましたが、Twitch Primeはいかがですか?
(具体的な発言内容は以下のリンク先の記事を参照のこと)

イーサン非常に順調です。日本に限らず、Amazonプライムに占めるTwitch Prime会員の割合は、急速に大きくなっています。Amazonプライムは、アメリカでは2005年から始まったプログラムなんですね。それに対して、サービスを開始して2年のTwitch Primeが、重要なサービスになってきているということは、とても満足していますし、広く受け入れられている証拠だと思っています(日本では2007年にAmazonプライム、2017年12月にTwitch Primeがローンチされた)。

――実際のところ、日本でのTwitch Primeの会員はどれくらい伸びているのでしょうか? 具体的な数字は開示しないとのことですが、伸び率とか……。

イーサンあはは(笑)。ごめんなさい。ちょっと手元にデータはないですねえ。ただ、ひとつ言えるのは、私たちは多くの日本のメーカーさんとTwitch Primeの特典の取組を行っていきたいと思っています。そして、その点に関して、将来大きなアナウンスができればと思っています。

――――あら! それは楽しみです。この件はこれくらいにして……話題を変えますが、Twitch Primeの利用について地域ごとに違いなんてあったりします?

イーサンそうですね……。各国で異なるというよりも、世界で共通して好まれるコンテンツがあるということが興味深いかもしれません。たとえば、Twitch Prime会員のお客様に毎月無料でプレイできるゲームを提供しているのですが、それはとても受け入れられていますし、どの地域のお客様もストリーマーのことをもっと知りたい、関わりたいと思っているようです。それは、どの国でも共通ですね。

――ああ、なるほど。それは興味深いですね。では最後に今後のTwitch Primeで考えている施策や方向性を教えてください。

イーサン戦略は、とにかくお客様の声に耳を傾けること。Twitch Primeで言えば、とくにゲームをプレイしているお客様の声に耳を傾けることです。彼らの声を聞いて、彼らが何を欲しているのかを理解し、AmazonとTwitchのリソースを活用して、お客様のニーズに応えていくことが私たちの戦略です。Amazonは“地球上でもっともお客様を大切にする企業であること”という企業理念を掲げています。この企業理念の実現に向けて、Twitch Prime会員のお客様に満足いただけるように日々努力していきたいと考えています。

――となると、いまユーザーさんが何を欲しているのか知りたくなってしまいますが……。

イーサンそうですね……。お客様からは“よりよくゲームを楽しみたい”という希望があります。それはもっとコンテンツを出したり、無料でゲームを遊べるようになる状況も含みます。一方で、もっとインタラクティブにゲームを楽しみたいという要望もあります。また、ゲームがよりグローバルになり、コミュニティーベースのものになっていく中で、“友人みんなとゲームがプレイできるようになりたい”という要望もあります。TwitchConの初日に行われたキーノートでは、“コミュニティ”という言葉がたくさん出てきたかと思います。コミュニティをいかにゲームの中に取り込んで、みんなで遊んでいくか……。それがゲームのつぎの波だと思います。

Twitch Primeのバイスプレジデント イーサン・エバンズ氏に聞く 「すべてのゲーマーをTwitch Primeの会員に!」【TwitchCon 2018】_03
来場者を対象とした特典などもあり、連日多くのユーザーが詰めかけていたTwitch Primeブース。