2018年9月20日(木)から9月23日(日)まで、千葉・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ2018(20日・21日はビジネスデイ)。ホール8には、ゲームに特化したライブ配信サービスTwitchもブースを出展している。

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 これに伴い、シニア・ヴァイス・プレジデントのマイケル・アラゴン氏と、グローバルチームのチェイス氏、ケンドラ・ジョンソン氏が来日。Twitch日本支社のジョン・アンダーソン氏も加わり、複数のメディアによる合同インタビューが実現した。

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左からジョン・アンダーソン氏、ケンドラ・ジョンソン氏、マイケル・アラゴン氏、チェイス氏。

 最初に、日本支社でAD SALES(広告営業)ディレクターを担当するアンダーソン氏から、日本でのTwitchの現状について説明があった。日本では、1日あたりの平均視聴分数は100分ほどに伸びていて、視聴者数は全世界でトップ3に入る急成長を見せているという。また、コンテンツを配信する側の成長率も高く、昨年から導入されたアフィリエイトプログラム(幅広い配信者が収益を得られるシステム)の参加者は、当初200人の参加だったのが2000人にまで増加。パートナープログラム(人気の配信者が収益を得られるシステム)の参加者も80%増えたそうだ。アラゴン氏も「アジア地域で一番の成長率」と付け加え、これらの数字を公開したのは「日本を大切な市場と考え、Twitchの可能性を強く感じている」からとした。ユーザーの比率としては、先行して成長していたアメリカやヨーロッパのほうが大きいが、日本の成長率の高さに注目しているとのことだ。

 Twitchが日本にオフィスを開設したのは2017年。アンダーソン氏のほか、アカウントマネージャー(法人向け宣伝担当)や事業開発マネージャーも入社したとのことで、今後は日本のゲームメーカーにTwitchのサービスを紹介し、一緒にビジネスに取り組んでいきたいと考えているとのこと。

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日本での認知度をアップし、ビジネスを拡大するために

 ここからは記者からの質問に答えていく形でインタビューが進行。「日本での認知度を高めるため、どんな施策を考えているか」という質問に対し、アラゴン氏はスタッフの増強や宣伝が重要なのはもちろん、ゲーム以外のコンテンツの充実をはかりたいとした。9月15日~17日まで行われたダンスミュージックイベント“ULTRA JAPAN”のライブストリーミング配信もその一環とし、ゲーマーが好きなコンテンツ、ゲームと似たコンテンツを配信することによって、いままでTwitchを知らなかった人を呼び込み、好きなコンテンツを見つけてユーザーになってもらえると考えているそうだ。

 ゲーム以外のコンテンツについては、各国でどんなものが望まれているか調査を行なっており、たとえばアメリカではスポーツやアニメ、最近ではSFドラマ『ドクター・フー』を配信。日本での調査はまだこれからとのことだった。ただ、すでに展開中のIRL(ストリーマーによるゲーム以外の雑談配信)は人気で、視聴分数もこの1年間で倍になっているとの話である。

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 「日本に本格参入して1年、ユーザー数が伸びているのはわかったが、Twitch社のビジネスとしてはどうか?」との質問には、“クリエイターファースト”という理念を持ち出したジョンソン氏。広告、ビッツ(投げ銭)、サブスクライブ(視聴者によるスポンサー登録)など、いろいろな収益化の手段をクリエイターに提供していることを説明した。つまり、クリエイターの収入が増えればコンテンツの数も増え、それに伴って視聴者や視聴分数も増えれば広告も増加し、Twitch 日本支社も伸びていくという、よい循環につながるとの考えだ。

 日本での広告のクライアントは、やはりゲームや周辺機器のメーカーが中心。クライアントからは、インフルエンサーマーケティングの問い合わせもあるのだとか。たとえば、人気のストリーマーにゲームをプレイしてもらって配信したいというメーカーのリクエストに対し、Twitch側は企画に最適な配信者をマッチングするビジネスを行なっているそう。

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アメリカではスポーツ専門誌の表紙にeスポーツ選手が抜擢

 続いて、esports関連の質問にチェイス氏が回答。8月に行われたEvo 2018のライブ配信は、海外からの視聴者がたいへん多く、日本からの出場者が多かったこともあって、日本での反響も高かったとの説明がなされた。また、ゲームのトレーラーなどが流れたこともあり、これまでのTwitchのコンテンツのなかでもトップを争うほど、かなりたくさんの人に視聴されたことも明かされた。

 ちなみに、「esportsはスポーツじゃない」との考えかたが根強いのは、日本特有の現象ではなく、海外でも同じような状況のだとか。ただし、esportsの認知度自体は、海外のほうが高いのは確か。アメリカでは、スポーツ専門誌ESPNマガジンの今月の表紙に、『フォートナイト』で有名なNINJAさんが抜擢されたほどだ。これによってまた、非ゲーマーのesportsへの理解度が高まるのではないかという期待もあるが、まだまだこれからというのが本当のところのよう。

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 Twitchのesportsへのスタンスとしては、プロゲーマーの大会を開催するよりも、Twitchのストリーマーを中心とするイベントを大事にしたい意向。先日も、日本での『PUBG』の有名配信者2名を、アメリカの大会PAXへ送り出すというイベントが盛り上がったことが例に挙げられた。日本のesportsのエコシステムのなかで大事なパートナーになれるようにがんばっている、との言葉もあった。

試合を観るだけに終わらない、インタラクティブな観戦体験

 話題は変わり、視聴分数を伸ばすための工夫について。サイトのデザインを変えることで、視聴者にはコンテンツを探しやすく、配信者にはサブスクライブが増えやすくなるといった調整は、常時行っているとのこと。また、すでに提供中のエクステンション(拡張機能)も、インタラクティブな体験を配信者と視聴者の双方に提供し、視聴分数を伸ばすのに役立っているという。

 エクステンションはサードパーティーが開発していて、チャット機能を発展させたものから、いっしょにゲームを楽しむものまで、さまざまなものが提供されている。たとえば、日本のディベロッパーActEvolveによるVR対戦ゲーム『Blitz Freak』のトーナメントがTwitchでストリーミングされた際には、genvid technologiesが開発したエクステンションを利用。エクステンションにより、視聴者が画面上に表示される“いいね”ボタンを押すとプレイヤーに声援が聞こえたり、ボムボタンを押すとリアルタイムで試合に爆弾が投下されるなど、これまでにない観戦体験が提供された。

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 ほか、新機能については、国際商品開発の担当者がTGSに来場中で、日本のストリーマーから機能についての意見や要望をヒアリングしており、その結果からも検討したいとの説明が。これまでに、日本のユーザーからの声で絵文字が商品化された例があり、今後の展開も期待される。

広告はストリーマーの大事な収入源のひとつ

 最後にAmazonプライム会員が無料で利用できる、Twitch Primeについて質問が出た。Twitch Primeの特典のひとつに広告の非表示があったが、これがなくなったことについては「もともと広告の非表示よりも、無料ゲームやゲーム内コンテンツの配布などへのユーザーの反応がよかった」ことを理由のひとつに挙げたアラゴン氏。逆に、広告を表示する意図としては、ストリーマーの収入源のひとつとして大事だとの考えから、と説明があった。

 ただ、ストリーマーのほうで「サブスクライバーには広告を表示しない」設定をすることも可能だという。また、視聴者側としては有料のTwitch Turboへ加入することで、広告を非表示にする選択肢もある。日本の環境では、ストリーマーが収益を上げることがなかなか難しく、そこを助けるためのツールとして広告はあったほうがいいというのがTwitchの考え。“クリエイターファースト”の理念が徹底されていることがうかがえるインタビューとなった。

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