ベセスダ・ソフトワークスの人気オープンワールドアクションRPG、『フォールアウト』シリーズ。その最新作『Fallout 76』が、2018年11月15日にプレイステーション4/Xbox One/PCで発売予定だ。
本メディアでは10月頭にアメリカのウェストバージニア州で行われた試遊イベントに参加し、オンラインのマルチプレイゲームとなった本作を体験してきた。
すでにゲームの各システムについてリポートをお届けしているが、そちらには詰めこみきれなかったニッチネタや現地ネタ、合同インタビューの内容なども交えつつ、また違った角度から本作をご紹介しよう。
フォールアウトすぎる豪華リゾートホテル“グリーンブライアー”
イベントが行われたのは、ウェストバージニア州にある“グリーンブライアー”。かつて大統領たちが愛した由緒正しいリゾートホテルで、今でもちゃんとドレスコードが存在し、本当はTシャツ&ジーンズ(マシな場合でパーカー)で年中生きているゲーム媒体各誌記者や配信勢は入れない超ハイソな場所だ(泊まっている人々の年齢層も高め)。
そしてこのグリーンブライアーはゲーム中にも登場するのだが、それは単に当地の名所だからとか、本作のレトロフューチャーなテーマとオールドファッションな内装がマッチしてるからというだけではない。フォールアウト的に重要な意味があるのだ。
先に歴代大統領が泊まっていたことについて触れたが、冷戦時代に核戦争の緊張が高まっていた1962年、アイゼンハワー大統領が極秘の核シェルターをグリーンブライアーの地下に建設し、1992年に報道で発覚するまでフォールアウトシリーズのVaultさながらにひっそりと運営されてきたのだ。現在はツアーで内部を巡れるようになっている。
そのプランは、核攻撃を察知したら大統領や閣僚たちが首都ワシントンD.C.から専用機に乗ってグリーンブライアーに向かい、そこから指揮を執るというもの(現在の核ミサイルだったら多分間に合わないスピードだが、飛行機による核爆弾投下が想定されていた)。
そこで核シェルターには国民に向けた緊急放送を収録するための部屋なども用意されており、そこには視覚上安心してもらうために大統領の背景に置くホワイトハウスの写真なども存在。現代なら「さすがにわかるだろ」とツッコミを入れたくなるが、きっと1960年代のテレビならそれっぽく見えたことだろう。
というわけでグリーンブライアーは、フォールアウトシリーズの根底に流れる冷戦期の核への恐怖とリアルに関係した、この上なくフォールアウト的な施設なのだ。余談になるが、以前本誌でフォールアウト的観光スポットとしてラスベガスの核実験博物館を紹介しているので、気になる人はそちらもチェックしてみてほしい。
さて、大統領の秘密施設まであるこのグリーンブライアー。今回ベセスダ・ソフトワークスはイベントを行うにあたって連日大量に部屋を借り切り、我々が泊まる部屋のカードキーやら「起こさないでください」の札までフォールアウト仕様にしていたのだが、一体プロモーション予算をいくらつぎ込んだらそんなことが可能になるのか気が遠くなる。

「幅広い人がプレイできるように難度調整には気を使っている」合同インタビュー
会場ではプレイ後に合同インタビューを行うこともできた。特に流れがなく各自聞きたいことをバラバラに聞いているだけだが、参考のためにお届けしよう。

――核はゲームにどう影響するんでしょう。例えば地形が変わるとか?
Chris 地形は変わらないんですけど、その地域を大きく変えます。より強力なモンスターが登場するようになり、放射能がキツいのでパワーアーマーや防護スーツが必要になります。これはエンドゲームコンテンツ的なもので、そこに行くリスクを取って、よりハイエンドな報酬、ハイエンドな設計図、ハイエンドな素材などを狙うという感じです。

――敵対的だったり嫌がらせをしてくるプレイヤーがいたとして、どんなオプションがあるでしょうか。まずひとつには「撃ち返さないで賞金首にならせる」という方法がありますよね。Pacifist Flagというのもあると聞きました。
Jeff Pacifist Flagはちょっとトリッキーなので誤解されがちなのですが、あれをオンにしておくと(誤射などで)“自分が”間違ってPvPに突入するのを避けられるようになります。レベル5でPvPとともに解禁されるモードですね。
嫌なプレイヤーを避ける他の方法には、対象のプレイヤーをブロックしてしまう手もあります。そうすれば相手のマップには自分の場所が表示されなくなるので、ファストトラベルしてその場を離れてしまえば追跡は困難になるでしょう。
あとはゲームを一回繋ぎ直してワールドを変えるという手もあります。PvPの可能性はゲームに緊張感を与えますが、プレイヤーが嫌な思いをするのを避ける手段は十分に用意しようと考えています。
――あとはチャットで延々誰かが叫んでいたりする時はミュートできますか?
Jeff もちろん。もしかするとB.E.T.A.から、製品版では間違いなく地域ボイスチャットが入るのですが、うるさいなと思ったらミュートできます。まぁ変な人がいるのは、フォールアウト世界では時に面白いこともありますけども(笑)。
Emil 自分としてもそういう状況になったらまず最初にミュートですね。それと、場合によってはチャットシステムそのものをオフにすることもできます。

――Modを入れてシングルプレイのように遊びたいという人もいますけど、Modやプライベートサーバーについて話せることはありますか?
Chris ローンチ後、いつかやりたいと思っています。時期などについてはまだ言えませんが、プレイヤーがプライベートなワールドを運営できるようにしたいと考えています。
そしてそれはModとセットで導入されることになるでしょう。というのは、パブリックサーバーではなくプライベートワールドならばModを導入する際の課題がいくつか解消されるので。多分、プライベートワールドで遊んでから装備をやり直してパブリックワールドに戻る方法なども検討すると思いますね。
――生きている人間のNPCはいないんですよね? ということは収録音声は大分少ないのでは?
Jeff ロボットだけじゃなくてホロテープ用の音声などもあるので、例えば声優の人数なんかは今回の方が多いんじゃないかな?
Emil 収録したセリフの行数だけで言うと『フォールアウト4』の方が多いですけどね。というのは主人公のセリフが複数の選択肢に対応してるから、それだけで全体の半分ぐらいあって数は多いんです。だけど(単なる分岐違いではなく)ホロテープなどで語られる話そのもののバリエーションとしては、本作はものすごく多いです。

――サーバーリストなどはあるんですか? Pingや言語でソートできたりしますか?
Chris 今日メインメニューにあったのはデモ用の仕様で、実際のゲームにはサーバーリストはありません。ゲームをスタートすると、システムによって自動的にプレイに適したサーバーとワールドに割り当てられます。任意のワールドでプレイする方法としては、フレンドがプレイしているワールドに参加することはできます。友達と一緒に遊びたい時はソーシャルメニューから参加を選んでください。
――デスマッチアリーナのようなシステム的に対戦するためのゲームモードなどはありますか?
Emil “Hunter/Hunted”などのパブリックイベントが近いかな。これは“戦前のスパイ暗殺シミュレーター”というテイストのPvPタイプのイベントなんだけど、他にもそういったPvPのためのイベントがあります。
Chris ワークショップもそういったもの(PvPを刺激するシステム)のひとつと言えると思います。パブリックなワークショップを専有しようとすると、他のプレイヤーが取りに来るでしょう。

――ウェストバージニアの地元メディアですが、ワシントンからここらにかけて音楽は重要な文化です。ラジオはシリーズの重要な要素ですが、地元の音楽はありますか?
Emil ええ、とても。今回はアパラチアラジオというのがあるんですが、ウェストバージニアの音楽がたくさん入ってます。これは実際やりたかったことです。
それとこれはひとつ言っておきたいのですが、今回はウェストバージニアを扱う上で“レッドネック”(粗野な肉体労働者)や“ミュータントヒルビリー”などの悪いステレオタイプで描くのはナシです。ここの人々や文化を尊重した上で描写しようとしているんで、うまく受け入れられるといいなと思ってます。

――今回のVATSは時間停止しないという仕様ですが、シューティングがうまくない人はどうすればいいでしょう? これまでそういう人はVATSに頼っていたわけですが、何かイージーモードのようなものがあったり?
Jeff 今回は難易度設定はなくて、VATSもリアルタイムです。というのは……誰かのVATSのたびにワールド全体の時間を止めてたらひどいプレイ体験になっちゃうんで。
それでVATSはリアルタイムなんだけど、最初はシンプルに対象の全身を対象にして、レベルアップしてVATS関連のPerkカードをセットすれば(ハイライトする部位の)指定が細かくできるようになるといった形になってます。


Jeff 一方で難度調整にはとても気を使っています。……なので今日もプレイを見ていて「あープレイがわかってる人が集まると、やっぱレベル5でもスコーチビースト倒せちゃうね、どうしようかね」とか思ってたわけだけど(笑)。まぁそれは置いておくとしても、特に初期エリアでは“ユーザーフレンドリー”に幅広い人がプレイできるものにしたいと思っています。
リアルタイム性に合わせたことで言えば、Pip-Boyにクイックモードをつけたのもそうですね。覗き込むアニメーションなしで、視界も塞がず、早くメニューにアクセスできます。
Emil 初期のクリーチャーはそんなに強くなくても早くて小さかったりして見つけるのに混乱することもあるけど、VATSは依然として一種のパニックボタンとして機能できるんじゃないかな。とりあえず押して相手を視認して、撃ってなんとかするといった感じですね。

――サーバーやワールドは平均でどれぐらいの期間保持されるんですか?
Chris そういうことをプレイヤーが気にしなくていいように作っています。例えばプレイしてC.A.M.P.(以下キャンプ)をセットしてログオフして、翌日繋ぎ直すとすると多分まったく違うサーバーに繋ぐことになるでしょう。
でもキャンプは前のワールドに置きっぱなしになるんじゃなくて、基本的には新しいワールドでも同じ場所に置かれます。(新しいワールドの)他のプレイヤーが置いてあるキャンプと場所がかぶるようなケースではキャンプのキットがブループリントに戻るので、またどこかに置けばいいだけです。アイテムなんかも全部キャラクターに紐付いて移動します。
――プレイしていて、僕が建てたキャンプの土台の上にチームリーダーが階段を設置したのを見たんですが、誰がキャンプのエディット機能にアクセスできるんでしょう?
Chris そのキャンプを建てたプレイヤーのチームメートなら誰でもエディット機能にアクセスできて、協力してキャンプを作り込めるようになってます。もし望まないことをされるようだったらチームからキックしてください。
――プレイステーションプラットフォームのポリシーが最近変わったようですが、本作で将来的にクロスプラットフォームプレイを可能にする可能性は?
Chris もちろん今から発売に間に合うということはないですが、将来的に検討することはあると思います。
Chris Meyer(クリス・メイヤー)
本作の開発ディレクター。元はベセスダが発売しようとしていたオンラインアクションゲーム『BattleCry』のスタジオ(現Bethesda Game Studios Austin)所属。
Emil Pagliarulo(エミル・パグリアルーロ)
『Fallout 3』と『Fallout 4』のリードライターとリードデザイナー。本作ではデザインディレクターを務める。『Fallout 4』のクレジットカード男パーカー・クインのモデルでもあり、海外版では声優も担当。
Jeff Gardiner(ジェフ・ガーディナー)
『Fallout 3』からプロデューサー職などを担当してきた人物。本作ではプロジェクトリード。
細かいネタ20連発
というわけで『Fallout 4』のシステムをベースにしつつ、オンラインマルチプレイのための要素を入れて独自のプレイを生み出している本作。ここでは最初のリポート記事からは削った、ちょっと細かめのネタを紹介していこう。
1. 外見に関する有料アイテムがある
PRマーケティングを統括するピート・ハインズ氏によると、本作には有料ポイントを使うショップが存在し、外見に関するもの(コスメティックアイテム)だけが販売されるという。
2. やられても仲間が助けられる
HPがゼロになるとダウン状態になるが、仲間が近づいてスティムパックを消費することでその場で復活できる。
3. 無料でファストトラベルできる場所
行ったことがある場所にワープできるファストトラベル機能。今回は距離に応じて有料だが、Vault 76、自分のキャンプ、そしてチームメンバーのいる場所には無料でファストトラベルを使える。
4. 飢餓と渇きが存在する
サバイバル要素である飢餓と渇きの概念が本作でも存在。危険レベルに突入するとアクションポイントがガッツリ削られたりする。食料や飲料系アイテムで回復可能。

5. 敵やアイテムのリスポーンがある
敵やアイテムはある程度の時間が経つとリスポーン(復活)するという。ただしその間隔は「気づかないぐらいの(それなりに長い)時間」(スタッフ談)だそうで、探索中に気がついたらさっき倒した連中が復活してるとか、特定のアイテムを何度も取りに行くマラソンができたりはしないらしい。
6. チームのプレッシャーがあまりない
ソロプレイ専門のプレイヤーがマルチプレイゲームで時々困るのが、他人のペースに合わせないといけないこと。ゲームによってプレイ人数と敵の強さが連動していたり、同じエリアにいなければいけなかったりするとプレッシャーを感じがちだ。
だが本作はどちらも当てはまらず、まったく別々に行動可能。あくまで序盤をプレイした限りだが、気になった所に寄ってみたり、入念にアイテム漁りをしてから後でファストトラベルで追いつくというのが自然にできて快適だった(もちろん人やプレイするレベル帯によって違うだろうが)。
7. ソロプレイヤー用のPerkカードもある
カリスマにはチームプレイ時の獲得経験値にボーナスを与える“インスピレ―ショナル”や人数に応じてダメージと耐性ボーナスを得る“ボディガード”などチームプレイ用のPerkカードが揃っている。
逆にソロプレイヤー向けのPerkカードも存在し、プレイした感覚では(当然進行は遅くなるものの)ソロプレイは可能という印象。


8. ウェポンホイールだけでなくエモートホイールも
お気に入りに入れた武器をすばやく選択できるウェポンホイールにくわえ、今回は他プレイヤーに簡単な意思表示を行うためのエモートホイールも存在する。

9. 空間を超えて繋がるスタッシュ
キャンプにはアイテムをしまっておける“スタッシュボックス”があるのだが、実はNPCのキャンプや他プレイヤーのキャンプにあるスタッシュボックスからでも、自分のスタッシュボックスにアクセスできる。探索の途中で見つけたら邪魔な荷物をとっとと閉まっちゃってもいいかも。

10. みんな“ドラゴン”と呼んでいた新モンスター
試遊では空を舞う巨大クリーチャー“スコーチビースト”と遭遇するというくだりがあり、ちょっと『ザ エルダースクロールズ V: スカイリム』を思い起こさせるその姿に引っ張られ、みんな「あのドラゴン倒した?」といった感じにドラゴン扱いで呼んでいた。
なお記者のグループは2チーム分だか3チーム分のレベル5プレイヤーの群れでレベル50スコーチビーストの討伐に成功。完全に物量作戦で押し切った形。


11. ラジオDJがいない理由
インタビューでも触れられていた通りにラジオはあるのだが、今回はDJはおらず。というのも設定上、生きている人間がいないというのと、これまでDJは「Vault 101から出てきたアイツが~」といったようにプレイヤーの行動について喋っていたのだが、今回はプレイヤーだらけなのでちょっと微妙というのがひとつ。ちなみに「プレイヤーにDJをさせては?」という案もあったらしい。
12. フォトモードがある
ポーズや顔を作ってフィルターをかけてスクリーンショットを撮れるフォトモードが存在する。実はゲーム冒頭のキャラクタークリエイトのラストが、フォトモードで自撮りをするというもの。

13. 敵の強さは地域ベース
敵の強さなどはこれまで通り地域ベースで設定されており、プレイヤーの強さによってスケールしたりはしない。
14. ホロテープや手紙による物語
インタビューにもある通り、人間のNPCが出てこないため、従来のような会話によるストーリーテリングがなくなっている(もしかしたらロボットなどとあるかもしれないが)。一方でホロテープは各所に存在し、そこにいた人々の遺した録音を聞くことができる。手紙や文書などのテキスト系もあり、間接的なストーリーテリングを補助している。


15. 装備には装備可能レベルがある
忘れがちだが、本作でも装備には装備可能レベルがある。あまり気にせずに進められることも多いが、試遊では倒したMr.ハンディーから“タクティカルトゥルーダブルバレルショットガン”をゲットしたものの、結局試遊の範囲内ではレベルが足りずに試せず。

16. パーツの設計図の入手法
装備の改造パーツには設計図を入手する必要があり、ドロップアイテムとしてゲットするか、装備アイテムをワークベンチで解体していくことで入手できる。

17. 病気になることもある
いろんな意味で汚染された食べ物や飲み物を摂取することも多いこの世界。まれに病気にかかることもある。治療薬はキャンプの焚き火で作成可能。もちろん病気のかかりにくさに関連したPerkカードもある。


18. プレイヤー間トレードも可能
試し損ねてしまったが、他プレイヤーに近づいてボタン一発でトレードモードに入れる。ちなみにエモートホイールの中にトレードを持ちかけるエモートも存在する。
19. 雑誌やボブルヘッドも登場
過去作でステータスアップに欠かせなかった雑誌やボブルヘッド。プレイした範囲で見当たらなかったのでスタッフに聞いたところ、どちらも登場するとのこと。ただし雑誌は永久効果ではなく一定時間のみの効果になるとか。
20. キャラクタースロットは5
現状の仕様では、1アカウントあたりのキャラクタースロットは5スロット。種族やジョブを選ぶようなゲームではないので、まぁこんなものかも。

おまけ:フォールアウト的フォトリポート
今回の取材ツアー、小物まで『Fallout 76』ネタが仕込まれていたり、ベセスダ・ソフトワークスの並々ならぬ気合が感じられる内容だった。その一部は本誌公式Twitterアカウントでもお見せしたが、最後におまけとして放出しておこう。














