『SEKIRO』を共同で作るフロム・ソフトウェアとアクティビジョンのキーパーソンに聞く、両社のコラボがもたらす大いなる化学反応

2019年3月22日に発売が予定されている、フロム・ソフトウェアの戦国死にゲー『SEKIRO SHADOWS DIE TEICE』。東京ゲームショウ2018の会期中に、同作を共同で手掛けるフロム・ソフトウェアの北尾泰大氏とアクティビジョンのプロデューサー、ロバート・コンキー氏にインタビューを実施。その模様をお届けする。

 2019年3月22日に発売が予定されている、フロム・ソフトウェアの戦国死にゲー『SEKIRO SHADOWS DIE TEICE』(PS4/Xbox One)。同社の人気シリーズ『DARK SOULS(ダークソウル)』とは趣の一変した“完全新作”として売り出される本作だが、開発体制の面での新たなチャレンジも話題になった。

 というのも、本作は『コール・オブ・デューティー』シリーズや『Destiny』シリーズで知られるアメリカの大手ゲーム会社アクティビジョンと共同で作られているのだ。

 E3 2018で『SEKIRO』が発表されるやいなや、世界中で驚きの声が上がった。大きなシェアを誇るアクティビジョンが引き起こす化学反応に期待が高まる一方で、フロム・ソフトウェアの世界観を愛する熱狂的ファンの中には不安を示す者もいたように思う。

 では、実際のところ両社はお互いをどう思っているのか。フロム・ソフトウェアよりプロモーターの北尾泰大氏、アクティビジョンよりプロデューサーのロバート・コンキー氏にインタビューを実施した。

フロム・ソフトウェア プロモーター 北尾泰大氏(左)
アクティビジョン プロデューサー ロバート・コンキー氏(右)

――さっそくですが、アクティビジョンは本作『SEKIRO』にどのように関わっていらっしゃるのでしょうか。

ロバートおもに日本とアジア地域以外でのパブリッシングや、QA(Quality Assurance/品質保証)というゲームの品質テストのような役割を請け負っています。

ーーQAというのは、テストプレイで得られた反応をもとにアドバイスするようなイメージでしょうか。

ロバートアドバイスというよりも「ここで多くのユーザーが困っていました」、「こういうチュートリアルを実装するといいかもしれません」という形で結果をフィードバックします。最終的にどうするか決めるのはフロム・ソフトウェアさんですね。

北尾ゲームの内容と、諸々の最終判断は、こちらに任せてもらっています。アクティビジョンさんから「こういうゲームを作ってください」と強要されることはなく、むしろ「こういうゲームを作りたい」という我々のクリエイティブを理解していただけています。

ロバート弊社の中にもフロム・ソフトウェアさんのファンは多いですし、私個人も昔から尊敬していますから。

北尾我々が目指しているゲームへの没入感や緊張感などを妨げない形での、快適性の向上や適切なオンボーディング方法を提案してくださるので、とても助かっていますね。

ーーなるほど。フロム・ソフトウェアらしい雰囲気や語り口は残したうえで、アクティビジョンのノウハウを取り入れて間口を広げたんですね。

北尾SEKIRO』は『DARK SOULS』や『BloodBorne』と、システムや操作方法が大きく変わっている部分もあるので、弊社のゲームを初めてプレイする方はもちろん、従来のユーザーさんであっても、適切なオンボーディング無しでは戸惑われる方が多いかなと。

ロバートDARK SOULS』と同じ考えかたやプレイスタイルは絶対に通用しませんからね(笑)

ーーアクティビジョンは、『SEKIRO』に限らずこうしたユーザーテストを大切にされている社風なのでしょうか?

ロバートそうですね。ゲームを作っている当人は、制作の過程で同じレベルを100回以上プレイするわけですから、だんだんと客観的な判断がしづらくなってくるんです。初めて体験する人の反応は大切な情報源だと思います。

ーーでは、プロモーション展開についてはいっしょに仕事をしてみていかがですか。たとえばE3で公開された映像は、これまでのフロム・ソフトウェア作品のデビュートレーラーと作りが違いましたよね。いきなりプレイ映像を流したりですとか。

上は『SEKIRO』、下は『DARK SOULS III』のデビュートレーラー。『DARK SOULS III』の映像は世界観を紹介するコンセプトムービーに留まっているのに対して、『SEKIRO』ではゲームプレイの様子やキャラクターの台詞までがっつり描かれている。


北尾海外向けのプロモーションはアクティビジョンが考えて、日本向けのプロモーションはフロム・ソフトウェアが考える……といった分けかたはしていません。アクティビジョンのプロモーションチームとは毎週ミーティングを行っていて、お互いの意見を率直に伝えながら、どうすればひとりでも多くのユーザーさんに本作の魅力を伝えられるかということをいっしょに考えています。アクティビジョンのメンバーも皆、『SEKIRO』に真剣に向き合っていて、同じような熱量や気持ちで話し会えるので、いっしょに仕事していてすごく楽しいですね。また、欧米のトレンドの移り変わりはとても早いので、アクティビジョンの経験豊かなメンバーとの仕事は、とても勉強になります。べつにインタビューだから持ち上げているわけじゃないですよ(笑)。

ロバートそれにしても、E3楽しかったですね。ゲームの発表や、取材対応など目まぐるしかったですけど、すごくエキサイティングでした。

北尾そうですね。僕とロバートさんは会期中ずっと会議室でメディア向けにプレゼンテーションをしていましたし、ディレクターの宮崎もずっとインタビューを受けていたりと、我々がE3のイベント自体を楽しんだわけではないのですが……。長い期間をかけてアクティビジョンといっしょに準備をしてきたものをやっと発表して、それに対して国内外のメディアやユーザーさんから期待の声をいただけたのは嬉しかったですね。

ーーあえて聞いてしまいますが、大変なことはありませんでしたか。スケジュール感が合わないですとか。

北尾こちらで制作するプロモーション素材の納品がギリギリになってしまうということもあったりするのですが……。そういうときも「クオリティーを優先しよう」と理解して、スケジュールを調整してくれたりと、助かっていますよ。

ロバートいい関係です(笑)。

ーーそれは何よりです。逆にアクティビジョン側はフロム・ソフトウェアの開発体制にどのような印象を受けましたか。

ロバートおもしろいですね。どこまで話していいか分からないのですが、とにかくおもしろいです。

ーーたとえばどのようなところが?

ロバートそもそも、日本とアメリカでは開発スタイルが全体的に違うんですよ。僕の私見では、ウェスタン(アメリカ西部)の開発現場は仕様書がとても重要なんですね。ゲームの内容は最初から最後まで仕様書に載っている必要がある、といった感覚です。一方で日本の場合は、作りながらいろいろと試してアイデアを膨らませていくような場合が多いです。

ーー日本は効率が悪いとよく言われますね(笑)。

ロバートたしかに効率はよくないのかもしれませんが、個人的には好きなんです。日本では、制作が始まってから新しく生まれたアイデアでも「おもしろいから実装しましょう!」と言える雰囲気があるので。

ーー海外ではそういうことはないんですか?

ロバートないわけではないんですけど、「この人はこの部分を作る」という個人のやるべき仕事がきっちり決まっていますから。

――では、フロム・ソフトウェアさんは、好き勝手に作る極北のような存在といった感じですか(笑)。

ロバートいや、そういうことではないです(笑)。

北尾(笑)。

ロバート日本国内の現場と比較しても、フロム・ソフトウェアさんには独特の作りかたがあると思います。クリエイティビティですね。本当に感動します。敵のデザインですとか、送られてくる画像が全部すごいんですもん。『SEKIRO』ではとくに、日本的な美しさと、フロム・ソフトウェアらしいミステリアスさが融合した独特の世界観がとても新鮮ですね。

――現状の感想と今後への期待を教えていただけますか?

ロバートgamescom 2018でも、TGS2018でも、実際にプレイしたユーザーさんの反応がとてもよくてうれしいです。また、日本を舞台にした『SEKIRO』を長年作ってきて、それをやっとこのTGSで日本のユーザーさんにお披露目できたことも大変うれしかったです。今後のプロモーションも盛り上がっていただけると思うので、楽しみにしていてください。

――ちなみにTGS会場のスタチューはgamescom 2018で使われたものですか?

北尾あれは違います。日本に運ぶのも結構な郵送費がかかるので、TGS用に日本で作りました。アクティビジョンが海外で作ったスタチューのクオリティーが高かっただけに「負けてられないな」と思いながら(笑)。

――サイズはこちらの方が大きいんですか?

北尾 ポーズがついているぶん、やや大きく見えますね。どちらも等身大で、身長はだいたい3メートルです。

画面奥で薙刀を構えた“彼女”のスタチューは、TGS会場でもフォトスポットとして大盛況だった。

ちなみにこちらがgamescom 2018で設置されていたスタチュー。

――では最後に、世界中で愛されるであろう『SEKIRO』の魅力を教えてください。

ロバートSEKIRO』だからこそ得られる体験があります。『DARK SOULS』とも『BloodBorne』ともまた一味違った満足感が味わえるはずなので、ぜひ挑戦していただきたいですね。

北尾戦国末期の日本を再解釈して作り上げたオリジナルの世界観や、忍びならではの多彩なアクションなど、新鮮な体験をお届けできればと思いますので、ご期待いただければ幸いです。