強力なライバルの多いゲーム(エンタメ)業界において、着実に業績を伸ばし続けているプラットフォームがある。それがDMM GAMESだ。

 東京ゲームショウ2018の初日にあたる9月20日、DMM GAMESは自社ブースで事業戦略に関する発表会を開催。企画営業本部 本部長 林研一氏が登壇し、サービスやプロダクト、プラットフォームの概況を分析したうえで、注力しているビジネスプランについて解説した。

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企画営業本部 本部長 林 研一氏。

 林氏はサービスの概況を会員数や売上高といった5項目に分けて解説。スライドの写真中心でどうぞ。

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2017年度の会員数は2007万アカウントほど。
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デバイス別会員数の比率。DMM GAMESの強みはPCゲームということで、全体の6割近くがPCユーザー。この状況はそれほど大きく変わっていないそうだ。
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男女別の会員数の比率。予想通りというか何と言うか、男性ユーザーがとても多い。とはいえ、『刀剣乱舞-ONLINE-』のようにおもに女性から支持されるコンテンツも抱えている。
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年齢の分布図。男女ともに20~30代が多い。
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林氏「出せる範囲で売り上げも出します」。2015年の時点ではPCでの売り上げが7割を超えているが、最近はスマホユーザーの売り上げも伸びているのがわかる。
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PCユーザーの月平均の購入単価(上)と課金率(下)。安定して上昇傾向にある。
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事前登録数の推移についての資料。サービス開始前に10万アカウント以上の登録数を獲得したタイトルは2017年に18本あり、全体の28%にあたる。本数も比率も好調だ。
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2017年にリリースされたタイトルは、ダウンロード型PCゲーム、スマホアプリ、ブラウザゲームを合わせて116本(左のグラフ)。

 ここまでの発表内容をひと言でまとめると「DMM GAMESは好調です」。ここで重要となるのが、上記画像の右グラフ。

 2017年にDMM GAMESが提供する1st・2ndパーティー製タイトルは42本で、3rdパーティー製タイトルがおよそ6割を占めているのだ。2016年の数字から見ても20タイトルほど上乗せされているらしい。

 DMM GAMESはプラットフォームのオープン化を実施した。その結果(だけというわけでもないが)、日本国外、とくに中華圏から「DMM GAMESでPC版タイトルをリリースしたい」という問い合わせが増えているらしいのだ。加えて、以前よりスマホアプリのPC版配信を推進してきたことも要因のひとつ。

 さて、ここからがプロダクト概況の本題だ。カギを握るのが、ダウンロードコンテンツをプレイするためのランチャー“DMM GAME PLAYER”だという。

 スマホアプリをPC配信するうえで、もっともポピュラーな方法はEXE化(単独で実行可能なプログラムのこと)だ。言葉にするのは簡単だが、実現するにはノウハウが必要となる。

 そこで、アプリをPCでプレイするためのエミュレーター“BlueStacks”をDMM GAME PLAYERに導入。Androidアプリ用のプレイヤーみたいなものだ。

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開発言語に合わせたSDK(ソフトウェア開発キット)を組み込めばオーケー。移植の手間を大幅にカットできる。
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挙動が安定しない際はチューニングを施せば改善できる。とはいえ、ものによってはできないこともあるので、要相談とのこと。

 林氏は「PCタイトルを始めてみようと考えるパブリッシャーにとって最適なプロダクトになると思います」と語る。

 ここで、このエミュレーターを使ってPC版を展開するタイトルを紹介。同日に新作タイトルとして発表された『シノビマスター 閃乱カグラ NEW LINK』である。

 スマホアプリをPCでするとき、すぐに思いつくメリットは“大画面で遊べる”こと。『閃乱カグラ』シリーズのキャラを大きく見られるのは、ファンからしたらうれしいだろう。

 もうひとつのポイントは“App StoreやGoogle Playの規制に縛られない表現が可能”ということ。DMM GAMES用の差分のイラストを用意するなどして、IPの魅力を発揮できる。

 と、林氏は表現していたが、要はやや大人向けのビジュアルでもオーケーですよと言いたかったのだと思う。

 『シノビマスター 閃乱カグラ NEW LINK』と言えば、“最胸”のチームを編成するゲームだ。相性がいいわけである。なるほど! と、僕はヘッドバンキング並みのスピードでうなずいた。

“DMM GAMES遊び放題”で広がるプラットフォーム

 続いて、DMM GAME PLAYERを使った新サービスとして発表されたのが、“DMM GAMES遊び放題”だ。

 これは一般向けとR18向けのPCゲームがプレイできる定額制のサービス。30日980円で全年齢向けタイトルのみ、30日2980円でR18タイトルも含めて遊び放題になる(もちろん入り口は分けられている)。

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 現時点ではPCゲーム用の遊び放題サービスだ。だが、先ほど紹介したアプリプレイヤーを組み込み、有料カテゴリにあるようなAndroidアプリもラインナップに加える予定があるという。

 現在はこれを実現するためのSDKを開発中。2019年1月には実装できそうとのこと。

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こちらはDMM GAMES遊び放題の推移。サービス開始は2017年8月。タイトル数、会員数ともに伸びている。継続率も高い
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国内タイトルはもちろん、海外タイトルやインディーゲームにも目を向けていく。PCゲームが強い欧州などにも積極的にアプローチし、コンテンツの拡充を目指す。
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ゲームの起動回数に応じて、メーカーに分配金が支払われる。
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これまでのおさらい。PC版配信をフォローしつつ、遊び放題のタイトルを増やしていく。これらがうまくいけば、ユーザーにとっても悪い話ではない。

 DMM GAMES遊び放題はダウンロード型タイトルを対象としたサービスだが、クラウド化に向けても動いているそうだ。ダウンロード型ゲームをストリーミング配信すれば、ブラウザで気軽にプレイできる。

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クラウドゲーミングの実績豊富なUbitusと協議している。オンラインでのマルチプレイをサポートするマッチング機能の実装も検討中だ。

 東京ゲームショウ2017ではグローバル対応の強化を掲げており、そのときは現行のプラットフォームを多言語化する方針だった。

 だが、大胆に方向転換を図り、新たにゼロから作る決断をしたという。新プラットフォームはグローバル配信を前提に、ゲームのみに特化。ローンチは2019年5月予定で、対象デバイスはPC。基本無料のブラウザゲームと有料ダウンロードゲームが配信される。

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スピード感と柔軟性に満ちた投資ファンド“DMM GAMES Ventures”

 続いて、経営企画室 室長 上島尚久氏が登壇し、“DMM GAMES Ventures”の解説を行った。

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経営企画室 室長 上島尚久氏

 DMM GAMES Venturesとは、ゲーム関係のベンチャー企業を対象とした投資ファンド。出資総額は100億円で、規模は国内最大クラスとなる。

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 上島氏いわく、特徴は4点。1点目は100%単独出資のため、柔軟かつ迅速な対応な点。通常なら難しいと敬遠されるようなケースでも、事業シナジーが見込まれる限りは積極的に出資。また、成長ステージにこだわることなく、資金繰りやリソースの状況に応じて柔軟な契約を行うという。こういうスピード感はじつにDMM GAMESらしい。

 2点目は“ネットワークとノウハウを用いた事業支援”。昨今のオンラインゲームは開発コストが高騰している傾向にある。人材の獲得や維持が難しくなるため、事業の撤退を強いられることも。これに対して、財務支援にとどまらず、ビジネスパートナーを紹介するなどの事業支援も可能とのこと。

 3点目は“国内外への積極的な投資”。これは言葉の意味そのまま。ゲームプラットフォームを多言語化するなど、DMM GAMESは国際的なアプローチにも意欲を見せている。国外の優れたゲーム関連会社には積極的に投資するほか、国内企業の海外展開の支援も可能になっていくという。

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 最後の4点目は“新規IPの創出へのフォーカス”。長期に渡ってユーザーに楽しんでもらえるIPを作り出すことは、ゲームをヒットさせる要因のひとつだ。新規IPの創出に積極的な企業には、資金と事業展開の両面から支援を行っていくとのこと。

 DMM GAMES Venturesの公式サイトはオープンしたばかり。日本語、英語、中国語にも対応しているため、国外の企業も積極的に声をかけてほしいと、上島氏は述べた。

 今回の発表はユーザーに直接向けたものではないが、良質なゲームが増えれば、それはそれでうれしいもの。DMM GAMESの展開はまだまだ加速していきそうだ。