声優、アーティストとして活動する今井麻美さんの19thシングル『World-Line』が、2018年8月29日に発売された。本記事では、CDの発売を記念して実施したインタビューの完全版をお届けする。

 声優、アーティストとして活動する今井麻美さんの19thシングル『World-Line』が、2018年8月29日に発売された。表題曲となる『World-Line』は、今井さんが牧瀬紅莉栖、アマデウス紅莉栖として出演するテレビアニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』の後期エンディングテーマとなっている。

 そんなCDの発売を記念して、ファミ通.comでは今井さんにインタビューを実施。収録されている楽曲についてはもちろんのこと、今回は約2年振りのシングルの発売ということで、18thシングル発売からの約2年間のアーティスト活動についても伺った。

今井麻美(いまいあさみ)

今井麻美さん(文中は今井)。5月16日生まれ。山口県出身。『アイドルマスター』シリーズ(如月千早役)を始め、『閃乱カグラ』シリーズ(斑鳩役)、『超次元ゲイム ネプテューヌ』シリーズ(ノワール/ブラックハート役)など多数の作品に出演。また、そのほか歌手としても活動を精力的に行っている。

――今回の『World-Line』は、約2年振りのシングルということで、まずはこれまでの2年間の活動について伺っていければと。やはり、いちばん大きな出来事というと『rinascita』の発売だと思いますが、100曲入りのコンプリートアルバムを発売すると聞いたときの心境はいかがでしたか?

今井じつはこれまで、いわゆるベストアルバムのようなものの発売を、私が「嫌だ」と固辞してきていたんですよ。というのも、発売するとしても10周年というような、しかるべきタイミングに発売したいという気持ちが強くて。そんな状況の中、『rinascita』の制作に入る時期というのが、年齢的に節目の歳を迎えるときで、「これから先、どれほど音楽活動を続けられるのかな?」と感じ始めていたタイミングだったんです。ここまではお仕事が確約されているけれど、それから先は決まっていないと考えたときに、「今回のタイミングはいい区切りかもなのかもしれない」と思って、珍しくすんなりOKを出したら、「えっー、いいの!?」とスタッフに驚かれました(笑)。そこから、「どうせ出すならベストと言わず、全部入れてもらったほうが気持ちいいです」と提案をしたら、受け入れてくださって、100曲入りのコンプリートアルバムという形になりました。その後に2年間シングルを出さなかったのは偶然なんですけど、ある意味、覚悟めいたものがあったのかなといまは思いますね。

――なるほど。『rinascita』に収録されている新曲の『rinascita』と『限界突破レベル・・・・』は、今井さんが作詞を担当されていますが、どのような想いを込めたのでしょうか?

今井私は楽曲を制作するときに、詞を決める会議には参加することが多いのですが、曲はプロデューサーまかせな部分が多くて。私が選ぶとどうしても偏りが強くなってしまうので、私に合うものをわかっている方に選んでもらったり、作詞家や作曲家の方に「私に合う楽曲を作ってください」とお願いするほうがいいのかなと。でも、『rinascita』は珍しく私も曲選びに参加させてもらった楽曲で、メロディーラインが「すごく好き!」と思ったんですよね。『rinascita』はいわゆる、1A→1B→1サビ→2A→2B→2サビというようなふつうの感じではなく、少し変わった構成になっているのですが、それは私のアイデアで。形式ばった感じにしたくないという想いが強かったので、「変わった構成にしてみたら、おもしろいんじゃないかな?」と提案したんですけど、ラフが出来上がって聞いたときに「しまった。作詞は私が担当だった……」と気付きました(苦笑)。やっぱり、セオリー通りではない曲の作詞をするのは、至難の技だなと痛感しました。でも、『rinascita』はメロディーがすごく言葉を語りかけてきてくれて、自分的にも「いい歌詞が書けたな」とすごく満足している曲になりました。

――2番サビの“歌いたいよ”から始まる歌詞が今井さんらしい感じですごく印象的だったのですが、この部分には先ほどお話にもあったように、いつまで活動できるかわからないけど、応援してくれる人がいるなら歌いたいという素直な気持ちを込めているのでしょうか?

今井そうですね。趣味で歌うとなるときっと違うんでしょうけど、音楽は歌いたくても聞いてくれる人がいなかったら成立しにくいと思うんです。私が歌を歌う理由として、もちろん仕事という感覚もあるんですけど、自分の活動を応援してくれる人への恩返しの想いが強くて。声優活動では「あなたが必要です」と言っていただけないと作品にならないんですけど、音楽活動はプロデューサーから三行半を突きつけられたり、自分が「辞めます」と言ったりしない限りは、「つぎは○○をやりたいです」とポジティブに発信することができるので。自分が歌いたいだけでは成立しなくて、誰か待っていてくれたり、望んでくれるからこそ、作品として形にできる。そういう想いを言葉にしていったら『rinascita』が完成しました。

 ちなみにもう1曲の『限界突破レベル・・・・』は、レベル4を迎えて「限界と思っていたんですけど、限界を突破しちゃったので、もう少しがんばります」という、わりと赤裸々な気持ちを込めた楽曲になっています。

――この2年間はシングルこそ発売していないものの、ライブなど音楽活動自体は精力的に行われていた印象がありますが、昨年5月から7月にかけて行われた『rinascita』を引っ提げてのツアーはいかがでしたか?

今井じつはスタッフのあいだでは温泉ツアーと呼ばれていたんです(笑)。

――確かに、大分県、岩手県、長野県は温泉地ですね(笑)。そこには今井さんの意見が反映されていたりするのでしょうか?

今井いや、まったくないです。昔はけっこう細かいところまで企画会議に参加して「私はこう思います」と意見を伝えていたのですが、長く続けていると、ひとりのアイデアではどうしても偏りが出てきてしまって。そういう意味で、活動を長く続けるには場所決めだったりをプロの方におまかせしたほうがいいのかなと思ったんです。だから、写真チェックとかもほとんどしないので、皆さんと同じタイミングに「あっ、この写真が使われたんだ」と知るということがよくあります(笑)。もちろん、「この写真でどうですか?」とメールは送られてきているのですが、とくに見もしません。でも、それはスタッフの皆さんを信じているからというのもありますし、見ちゃうと気になっちゃうからというのもあるんですけど。

――信頼しているからこそということですね。

今井だから、ライブ会場も制作のスタッフの方が探してきてくださって、そこにプロデューサーが希望を伝えて、ツアーが組まれていくという感じです。そうして決まったのが、大分県、山形県、長野県、山口県のツアーだったのですが、どうやらプロデューサーたちは本当に全会場で温泉に行ったらしいです。山口の会場は周南だったので、近くに温泉はなかったのですが、わざわざ湯田まで行ったみたいで、すごい根性だなと(笑)(※クルマで約1時間の距離)。でも、私も大分県と岩手県ではわざわざ少し遠回りして、温泉に入ったり裏テーマも満喫させてもらいました。

――楽しいツアーだったんですね。ライブのほうはいかがでしたか?

今井会場の環境が全部違ったんですよね。いわゆるライブハウスだったり、すごく不思議なホールだったり。同じテーマでライブをやっているのに、その土地によって印象が違っていて。rinascitaツアーは初めて訪れる地も多くて、いままでお手紙やメールをいただいた方の住んでいるところに行けたのがうれしかったですね。

 私の音楽活動は声を掛けていただいて「歌うことが好きだし、ちょっとやってみようかな」と始めましたが、やっぱりどこかで「声優だけど、こんなに歌の活動ばかりでいいのかな?」と悩んだ時期もありました。それが東日本大震災をキッカケに、音楽活動に本腰を入れようと決意したんです。あのときは、被災されたファンの方が元気でいるのかを確認するすべがなくて。もちろん、お手紙やメールで知らせてくださる方もいましたけど、それができないような状況の方もいらっしゃって。そうなったときに「私がもっと発信していくしかないんだ」と思ったんです。「どこかで誰かが私の歌を聴いてくれているかもしれない」ということが、私の音楽活動の根源にあるいちばんの原動力なので、いままで行ったことのない土地でライブをやらせてもらうと、そのことを実感できて「やっててよかった」とすごく思います。ただ、初めての地でライブをするときは、「人が来てくれるかな?」と毎回不安でもあるんですけどね。

――rinascitaツアーでは、今井さんの地元である山口県での初の凱旋ライブも行われましたが、ほかの公演と心境などに違いはありましたか?

今井会場のRISING HALは、私が子どものころは映画館だったんです。それが潰れてしまってライブハウスになっていたということを、私は知らなかったのですが、映画というエンターテインメントから、ライブという音楽のエンターテインメントに移り変わっていったという時代の変化を噛み締めてしまいました。あと、私が連絡無精ということもあって、いま連絡取れる友だちは限られてしまっているので、みんながどんな風に過ごしているかは風の噂でしか聞いたことがなくて。だから、「みんな私のことなんか覚えてないだろうな」と思っていたのですが、ライブが終わった後にファンの方が私のライブTシャツを着てご飯を食べに行ったらお店の人に「僕、今井さんと同級生なんですよ」と言われたらしくて。私は目立たずに生きてきたと思っていたので、私がそういう活動をしていることを知ってくれている人が地元にいるというのは、不思議な感じがしました。すごく誇らしかったのですが、恥ずかしくもあり、ムズ痒かった気持にもなりました(笑)。

――ライブと言えば、初のツアー形式で行われたアコースティックライブもありましたね。

今井私は古都巡りと呼んでいて、軽井沢、京都、鎌倉でライブを行ったのですが、いわゆる本筋と言われる東名阪を全部避けるというのが私らしいのかなと(笑)。ただ、アコースティックライブになると、会場がライブハウスというよりもホールになることが多くて、ホールは地方のほうが充実していたりすることも影響しているとは思います。

――以前、インタビューなどで今井さんは「アコースティックライブは私を成長させてくれる場所」と話されていましたが、今回のアコースティックライブはいかがでしたか?

今井軽井沢のときが直前に体調を崩してしまって、乗り越えるので必死でした。でも、私は楽観的なところがあるので、当日は「苦しい。歌えない」と思っていたのですが、録音していたものを聞いてみたら「意外と歌えているじゃん」と(笑)。そんなこんなで乗り越えた後の京都公演と鎌倉公演が人生でこんなに調子がいいことがあるのかと思ってしまうくらい調子がよくて。会場の音を調節してくれるPAさんも「いいよ! 覚醒してるね」と言っていたのがすごく印象的でした。私はパワフルボイスなので、パワーに頼りがちだったところがあったのですが、アコースティックライブでは、空間把握を強く意識しないとうまく歌えなかったりするので、その感覚が研ぎ澄まされていたような気がします。あと、衣装については、和風をテーマに自分で選んだんですけど、京都公演と鎌倉公演の着物は、3000円で買ったとは思えないほど大活躍で満足しています。

――軽井沢公演では、ミュージカルのような『Words of GRACE~冬のダリア~』が印象的でしたが、会場ごとに表現を変えようと意識されていたのでしょうか?

今井とくに意識はしていなくて、そのときの雰囲気で決めました。ただ、軽井沢公演はそれまで綺麗にお届けしていたので、どこかで跳ねるタイミングを狙っていたのかなと。私は形から入るタイプなので、軽井沢公演は衣装も相まって合唱団にいたころのような綺麗な歌いかたになっていたんです。それが『Words of GRACE~冬のダリア~』が掛かった瞬間に「ドラマチックに歌ってみよう!」という気持ちが自然と湧いてきて。

 『Words of GRACE~冬のダリア~』の詞は私が書かせていただいていて、『シュタインズ・ゲート ゼロ』で(牧瀬)紅莉栖を自分で殺してしまったことを自覚したオカリン(岡部倫太郎)の気持ちを歌詞にしていたので、そんな雰囲気を表現できたかなと。ちょうど、アニメの放送が近づいてきていた時期ということもあって、スイッチが入ったのかもしれないですね。

――同じような話では、京都公演の『Dear Darling』は演歌風に歌われていましたが、こちらも意識的ではなかったのですか?

今井逆にこちらは狙ってやりました。というのも京都公演では、遊べる曲が『Dear Darling』くらいしかなかったので、着物を着ていたこともあり、「演歌風に歌ったらおもしろいかな?」とリハーサルのときに思いつきました。そういう意味で、個人的には満足していたのですが、スタッフや演奏家の皆さんには「ふつうに聞きたかった人もいたんじゃないの?」と言われてしまいました(苦笑)。

――今回のアコースティックライブツアーでは、朗読やカバー曲といったいままでの今井さんのライブではなかった試みも行われていましたが、これは今井さんの希望だったりしたのでしょうか? また、朗読する作品やカバー曲の選曲には、今井さんの意見が反映されているのでしょうか?

今井私は一切のノータッチです。音楽活動を始めたころは、「表現者なんだから、細かいところまで自分で決めないと」と思っていたのですが、どうしてもアイデアが思い浮かばなくて、考え過ぎちゃうことがあったんです。とくに私のツアーの場合は、公演によってバンドメンバーや楽器の編成も変わるので、「この公演は○○(楽器)がいて、○○のような曲が合うから、朗読の作品は○○だ」ということまで考えないといけないのですが、私はそこまでわからなくて。だから、「どちらがいいですか?」と質問されれば、私も意見を言わせてもらうこともありますけど、基本的には包括的に見られるプロデューサーにおまかせしています。そして、セットリストなどが決まったら、私が衣装をいそいそと買いに行くという感じです。

――それぞれの得意分野を活かされているということですね。

今井そうですね。「軽井沢公演で『Ave Maria』を歌うんだったら、マリア様っぽくしてみようかな?」とか。じつは軽井沢公演で髪に付けていたリボンは違う使いかたをしようと思って買っていたのですが、まさかのマリア様っぽい雰囲気になってラッキーでした。そういう出来事を「これはきっと神様が私に買えという指令を出していて、必然だったんだ」と考えたりして、楽しんでいます(笑)。

――アコースティックライブツアーでの印象的な出来事というと、鎌倉公演での『虹』の初披露もあったと思いますが、こちらがどういう楽曲なのか改めて説明をお願いできますか?

今井『虹』は、2012年に発売した8thシングル『Hasta La Vista』のカップリングとして収録された『クレッシェンド』の別バージョンです。それこそ、当時は先ほどお話したように自分で何でもやりたかった時代で、いろいろなことに首を突っ込んでいました。もちろん、それは“自分は何かやりたいのか?”ということを見定めるある種の修行でもあったと思います。

 そして、8thシングルの制作を進めていく中で、もう1曲のカップリング曲『ガーベラ~今年の花』が先に完成しているという状況でした。この曲は、昔からお世話になっている森由里子先生(※今井さんの個人名義の楽曲では、『花の咲く場所』や『AQUAMARINE』の作詞を担当)が東日本大震災の感情を歌詞にしたためてくださった楽曲だったんです。その後に『虹』のデモがあがってきたのですが、こちらも命をテーマにした楽曲で、カップリングの2曲ともが同じテーマなのはバランスが悪いかなと感じちゃったんです。それで『虹』の作詞と作曲をしたプロデューサーの濱田さん(※今井さんの音楽活動のプロデューサーの濱田智之さん)に「テーマを変えたほうがいいんじゃないですか?」と相談したら、私の意見を尊重してくださって。そこが濱田さんの尊敬すべきところだなと思います。もし、私が作詞をしていたら絶対に「せっかく書いたのに!」と絶対に思っちゃいますから。

 そうして曲の方向性を変更することになってときに、酒井陽一さん(※今井さんの個人名義の楽曲では『COLOR SANCTUARY』や『ほんの少しの幸せ』の編曲を担当)にお会いして、作詞もされるということを伺ったので、“卒業”をテーマに新たに詞を書いていただいて、『クレッシェンド』が生まれました。

――では、なぜお蔵入りになっていた『虹』が披露されることになったのでしょうか?

今井8thシングルの発売から少し時間が過ぎて、3rdアルバム『Precious Sounds』の発売のタイミングに合わせて、全曲紹介映像というものを公開したんです。映像は『Precious Sounds』に収録されているすべての楽曲を制作に関わったスタッフの方々のコメントとともに紹介するという内容で、その中で濱田さんが『クレッシェンド』について、ご自身が飼っていたワンちゃんが亡くなったことを想いながら書いた曲だったと告白されていて。私は動画を見るまで、そんな強い想いを込めた楽曲だったと知らなかったので衝撃を受けました。その後に、ペットが亡くなったときに虹の橋を渡るというお話があるらしく、それをモチーフに『虹』というタイトルを付けていたことを聞きました。プロデューサーはけっこう作詞もされていて、私が作詞をする予定の楽曲でも、「もし、今井さんが書けなかったら、僕が書くよ」というようなことを言ってくださるので、『虹』もそういうライトな感じで作った楽曲なのかなと思っていて。それがまさか大事なワンちゃんの歌だったなんて思いもしていなかったので、ずっと心残りだったんです。

※『クレッシェンド』の紹介は20:45ごろから

今井そこからさらにときが経って、私のファンクラブ向けのラジオ番組に、『クレッシェンド』の編曲を担当した太郎さ(牧戸太郎さん。※今井さんの個人名義の楽曲では『little legacy』の編曲などを担当)が来てくださったときに、「僕は『虹』の歌詞をイメージして編曲をしたのに、発売されたら違う曲(『クレッシェンド』)に変わっていたんですよ」と暴露話をされて。太郎さは、『虹』の歌詞が大好きで、「この歌詞のタイミングで、(音楽で)虹を架けよう」と明確なイメージがあったことを熱弁されていて、その流れで「『虹』も作っちゃう?」という話をしていたら本当に実現しました。それで鎌倉公演では、太郎さに演奏とともに初披露させていただきました。

――そういう経緯があったんですね。

今井正直にお話すると、『クレッシェンド』を作ったときは、そういう気持ちはあまり実感できなかったんです。でも、いまは猫を飼っているので、家族同然の動物が亡くなったときの悲しみや、亡くなるかもしれないということを身近に感じられるようになったので、本当に悪いことをしたなと反省しています。

――そんな『虹』を収録したCDがファンクラブ会員向けに発売されるんですよね?

今井そうなんです! ファンクラブ限定ではありますが、プロデューサー孝行ができたかなとホッとしています。『クレッシェンド』の歌詞もすごく好きですし、『虹』もとてもいい歌詞なので、どちらもたくさん聞いてほしいです。

 CDジャケットもめちゃくちゃよくて。私の大好きな『Beyond the Bounds』(プレイステーション2用ソフト『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS』のテーマ曲)の作曲を担当された桐岡麻季さん(※今井さんの個人名義の楽曲では『ほんの少しの幸せ』や『Promised Land』の作曲を担当)が、作曲以外に絵の活動も精力的に行われているということで、私と虹の絵を描いてくださって。そういう意味でも『虹』は、「私は本当にいろいろな方々に救われているんだな」と思えるくらい、素敵な出会いがたくさんあった1曲になりました。

『虹』ジャケットイラスト

――出会いと別れという意味では、同じレーベルで活動されていた原由実さんのラストライブに出演されていましたが、いかがでしたか?

今井何かを始めて、何かを終わられることというのは、勇気やエネルギーが必要なことだと思います。私は未練がましいタイプなのですが、逆に由実さんはそういうところがしっかりしていて、強い意思や想いを持って活動を決めていく姿を目の当たりにしたときに、すごくカッコいいなと思いました。由実さんの活動には、デビュー曲のコーラスだけでなく、ラストアルバムの表題曲の作詞にも関わらせてもらいましたが、我ながらいい歌詞が書けたかなと。本当に気に入り過ぎて、譜割などの確認用に送ってもらった由実さんではなく、別の方が歌っていた仮歌のバージョンを死ぬほど聞いていました(笑)。

 由実さんの活動を知らない人にとっては、ふつうの出会いと別れの歌に聞こえるかもしれませんが、由実さんの独特な活動を目の当たりにしてきた人にとってみると、「この歌詞はこういう意味なのかも」と走馬灯のように思い起こしてもらえるものになっているのではないかなと思います。

――少し話は変わりまして、先日の“桜庭統 椎名豪 The History 2018 ライブ”では、『旅人』に加えて、『テイルズ オブ レジェンディア』の挿入歌『蛍火』を披露されましたが、どのようにして歌うことが決まったのでしょうか? 今井さんは週刊ファミ通2016年6月23日号のゲームクリエイター&著名人が選ぶ思い出の10本という特集の中で、『テイルズ オブ レジェンディア』を挙げられているほど思い入れの強い作品の楽曲だと思いますが。

今井私が『テイルズ オブ レジェンディア』をめちゃくちゃプレイして、『蛍火』が好きだということを椎名さんにもお伝えしたことがあって。おそらく、そのことを椎名さんも覚えてくださっていて、私に合う曲として必然的な感じで決まりました。歌うことが決まってからめちゃくちゃ練習に行ったのですが、改めて「いい曲だな」と。

 ただ、私はゲストという立場だったので、全貌を把握していなくて、前々日くらいにトリだと聞いて、死ぬほどギョッとしました。私のほかにも名立たる方々が出演されていて、しかも、それまでは桜庭さんと椎名さんは別々だったのに、『蛍火』だけはおふたりともが演奏に参加されるということで、すごいプレッシャーでしたね。

――アーティストの活動以外では、テレビアニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』の前期エンディング曲である、Zweiさんの『LAST GAME』のカップリング曲『Don't Cry!』の作詞を担当されていますが、どういう経緯があったのでしょうか? また、歌詞に込めた想いを聞かせてください。

今井『LAST GAME』を収録するCDのジャケットが紅莉栖ということと、私が紅莉栖やオカリンの気持ちを歌詞にした非公式ソングを作っていていたこともあり、スタッフさんにお声掛けいただきました。歌詞は“紅莉栖の気持ちそのままではなく、想いがある人が聞くとそう聞こえるみたいな汎用性があるようなものにしてほしい”というリクエストで、曲を聞いているうちに「紅莉栖が聞いていそうだな」と感じて、英語をたくさん入れたいと思ったんです。ただ、私は英語が得意ではないので、知り合いの方に添削をしてもらいながら、がんばってひねり出しました。1番は紅莉栖、2番はアマデウスという設定で作ったのですが、細かいところはわざとぼかすようにしています。いわゆるふつうの女の子として、「時間が経ったら気持ちは変わるものよ」ということを感じてもらいつつ、『シュタインズ・ゲート』を知っている人にとっては、「ここは紅莉栖で、こっちはアマデウスだ!」と気付いてもらえたらうれしいなと思って作詞をしたら、ドンピシャでハマったので、こちらも作詞家としていい仕事をしたなと(笑)。私もすごく気に入っていて自分の曲より聞いているほどなのですが、何よりZweiのおふたりがめちゃくちゃ喜んでくださって、お会いした瞬間に「ありがとーーー!」とすごく力強い握手をされました。