“空の革新”をテーマに、あらゆる面が大幅な進化を遂げた人気フライトシューティングの最新作『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』。本作のプレイステーション4版には、シリーズ初の試みとなる“VRモード”が搭載されており、プレイヤーはキャンペーンモードとは異なる専用のミッションにチャレンジしたり、VRハンガーで愛機をじっくり眺めたりできる。このVRモードの魅力を凝縮した最新のトレーラーが、2018年9月10日に公開された。そこで、ブランドディレクターの河野一聡氏、プロデューサーの下元学氏、VRプロデューサーの玉置絢氏にインタビューを実施。VRモードにかける想いや、最新のトレーラーの見どころなどをうかがった。
河野一聡氏(こうのかずとき)
『エースコンバット』シリーズ ブランドディレクター
下元 学氏(しももとまなぶ)
『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』プロデューサー
玉置 絢氏(たまおき じゅん)
『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』VRプロデューサー
VRモードで実現する本物のパイロット体験
――まずは、gamescom 2018(8月22日~25日に開催)の反響をお聞かせください。
河野 イベントで公開したトレーラーはもちろん、発売日を発表したことに多くの反響をいただきました。ファンの方たちの期待が一気に高まったのを感じたので、皆さんの期待に答えなければいけないと、よりいっそう気を引き締めました。
「ACE COMBAT(TM) 7: SKIES UNKNOWN」Gamescom2018 ストーリーTRAILER(Dark Blue)
下元 プロデューサーの立場としては、トレーラーにどんどんと未公開情報を盛り込む河野を止めないといけないのですが(苦笑)、今回は思い切って情報を詰め込んだことで、手前味噌ですが素晴らしいトレーラーが完成したと思っています。日本のクリエイターが制作する日本のゲームとして、開発スタッフの想いが海外のユーザーにどこまで響くのか、不安もありましたが、世界中の方からご好評をいただけてホッとしました。最後の「Can you hear me?」というセリフは海外でも流行っているようです。
――gamescom 2018のトレーラーは激アツでしたね。何回もくり返し再生しているファンも多いと思います。
下元 『エースコンバット』のトレーラーはベストショットが撮れるまで、ゲーム映像を何度も何度も撮影します。1日撮影して1秒尺も採用されないこともよくあります。ふだんに増して情報を詰め込んでいたので、今回の撮影はいつになく地獄絵図でした。お客様からいただけている今回の評価に撮影チームも報われると思います(笑)
――2018年8月26日には、松島基地の航空祭2018で本作の試遊出展が行われましたね。こちらのイベントでの手応えもお聞きしたいです。
河野 多くの方が足を運んでくれてうれしかったのですが、イベント当日、下元が「F-2をプレイアブルにしたいです!」と言い出したときは、大丈夫かなと思いました(苦笑)。
――gamescom 2018では、ヨーロッパの機体(Rafale M、Typhoon)をプレイアブルにしていましたよね。それを急遽変えたのですか?
下元 そうなんです。というのも、航空祭では実機のF-2の横にブースを置かせていただくことになり、「これはプレイアブルをF-2にしないとダメだ!」と。
河野 F-2のプレイアブルは、東京ゲームショウで公開する予定だったんです。それなのに、本物のF-2を見て下元のテンションが上がってしまって、かたくなに「F-2にしたいです」と譲らなくて……。
玉置 ちゃんと動作するかという不安はありましたが、F-2をプレイアブルにしてよかったと思いますよ。試遊に並んでいる方々に「本物の横でF-2を操作できるなんて!」と、感動していただけましたから(笑)。
――それはそうでしょうね。ファンにとって夢のコラボだと思います。
下元 『エースコンバット』シリーズのファンの中には、もともと戦闘機が好きだった方はもちろん、ゲームに影響を受けて戦闘機が好きになった方や航空自衛隊を目指されたされた方もいるという話を聞いています。いつか航空機のイベントに出展したいと考えていたので、航空祭での試遊を実現させていただいた松島基地の皆様には大変感謝しています。
――新たな発表がつぎつぎと続いていますが、2018年9月10日にソニー・インタラクティブエンタテインメントが開催したPlayStation LineUp Tourでは、VRモードの最新トレーラーが公開されました。VRモードは、どのように制作していったのですか?
河野 VRモードの制作は、『サマーレッスン』と『エースコンバット インフィニティ』の経験がある玉置に任せています。VRモードを開発するにあたって、とにかく一貫して玉置に守るよう伝えたのは、最初から最後まで“プレイヤー目線以外の視点を入れないようにすること”でした。
玉置 「エースコンバット」シリーズのキャンペーンモードの魅力といえば、重厚なストーリーや映画的なカット割り、演出を通して伝えられる、エースパイロットとしての物語と体験ですよね。しかし、VRモードでそのまま同じ道を辿ることはできないんです。考えてみれば当然の話なのですが、たとえば主人公と敵のエースパイロットの会話を第三者目線のカメラで見せる映画的カットシーンなんかをVRに適用すると、即おかしなことになります。VRだと、プレイヤーは「空中に浮いた謎の第三者視点の存在」としてそのシーンをただ眺めることになるからです。これでは意味がわからないし、エースパイロットとしての体験に集中することもできません。単純なVR化ではそういった問題が数多くあり、『エースコンバット』らしい、『エースコンバット』のコアの良さを活かしたVRモードをどのような方向性で作るか、かなり悩みました。そんなときに河野に言われた“本物のパイロット体験”という言葉があり、このキーワードをVRモード開発の軸にしていったんです。
河野 VRモードには、ファンに向けて未来の『エースコンバット』の可能性のをプレゼンする意味合いがあります。ただの無思考なVR化よりハードルが高いことは認識していますが、可能性のひとつを明確に示すためにも、“本物のパイロット体験”を全部入れて欲しいと伝えました。
玉置 VRって本当は、実際に体験してもらわないとその魅力がなかなか伝わりにくいのですが、9月10日に公開したトレーラーでは、“本物のパイロット体験”の一端を感じてもらえると思います。VRモード担当のディレクターと話し合い、プレイヤーが実際に体験しそうな動きをシミュレートして、目線の動きやカメラワークを考えましたので、ぜひご覧になってみてください。
「ACE COMBAT(TM) 7: SKIES UNKNOWN」PlayStation(R) LineUp Tour VRモードTRAILER
――確かに、これまでVRモードで試遊したとき、離陸のときに誘導係を見たり、墜落する敵機を目で追ったりと、自分がパイロットになった視点で楽しめました。VRモードのミッションは、どのように考えているのですか?
玉置 戦闘機に乗ったらどんな体験ができるのか。プレイヤーの気持ちが動く演出やギミックのアイデアを出していき、これらを総合体験としてひとつにまとめてVRモードのミッションを作っています。このやりかたは、『サマーレッスン』のときと似ていたので効率的に進みましたね。『サマーレッスン』は、キャラクターを使ったらどんな体験ができるのか、というところからアイデアを膨らませました。
――『サマーレッスン』の経験が活きているのですね。
玉置 さらに重要だったのは、私自身が『エースコンバット』シリーズのファンとしての感情、プレイヤーとして純粋に楽しんでいたときの記憶です。長年のファンとして『エースコンバット』シリーズの新作が出るたび、くり返し遊んでいると、新しいストーリーやミッションの内容ばかりに気が行きがちですが、初めて遊んだときは、地表スレスレを飛んで体が震えるとか、「戦闘機を操縦する」というだけでもう純粋に楽しかった。VRモードをプレイしていると、当時の興奮はもちろん、心地よい慌ただしさも思い出すんです。
――慌ただしさと言いますと?
玉置 初めて『エースコンバット』を遊んだときのことを思い出してみてください。ハイスピードで迫りくる地形を避けつつ、敵を追いかけて飛びながら、チラチラと画面端のレーダーや兵装も確認しなきゃいけない……そういったゲーム性を慌ただしく感じた方が多いと思います。そして、遊んでいるうちにその忙しさが心地よく感じられてくる。今回のVRモードは、その原初体験を思い出すようなプレイ感覚になっているんですよ。というのも、VRモードは“本物のパイロット体験”ですから、レーダーや残弾数などの表示も空中に浮いているのではなく、本当に自分の膝もとの計器画面に埋め込まれているんです。なので、敵機を目で追いながらコックピットのレーダーを確認しないといけません。この慌ただしさ、いろんな表示を見回しながら戦闘機というマシンを操作して戦っているという満足感は、VRだからこそ強化された体験です。こういった瞬間にこそ、単純にキャンペーンモードをVR化できない課題を乗り越えるための糸口があるなと思い、「初めて『エースコンバット』に触れたときの感動や感情を拡大したような体験」ということを意識してゲームデザインを進めました。そういった立ち位置の総合体験として、今回のVRモードは今後の『エースコンバット』の世界や遊びかたを広げていくのに役立つと思います。
河野 久しぶりのナンバリングタイトルとして、キャンペーンモードで自分たちがいまできることをしっかりと示しながら、VRモードでは『エースコンバット』のひとつの未来の可能性をアピールさせていただきました。
下元 そうですね。さらに、VRモードには、新しく“エアショーモード”も追加しています。
――エアショーモードは、トレーラーの最後に収録されていた要素でしょうか? どんなモードになるのか気になります。
河野 これは、VRでしか体験できないモードです。
玉置 VRモードには、『エースコンバット』とVRを組み合わせた要素で、おもしろそうなネタはできるだけ実装するようにしています。エアショーモードもそのひとつで、内容はエアショーという名前の通りなのですが、詳細は続報にご期待ください。
――楽しみにしておきます! トレーラーでは、機体から出火しているようなシチュエーションも気になります。VRでパイロットになりきっているので、かなりの恐怖体験になりそうですね。
河野 『サマーレッスン』で新城ちさとに剣をさされるイベントは怖かったよ。
玉置 あれはマジックの練習ですから。
一同 (笑)。
玉置 『エースコンバット』をVRにしてみて発見したことのひとつに、戦うということの恐怖や当事者感を生の感覚で再現できるということがあります。これは『サマーレッスン』ではありえなかった感覚ですね。『エースコンバット』は空の戦いですから、こちらが敵を攻撃するからには、向こうからも撃たれるし、自分が墜落する可能性もある……その事実の恐ろしさをVRモードでは再発見することができます。『エースコンバット』では当然のことだった、この“空から墜ちる恐怖”を最大限感じてもらうにはどうすればいいかを考えて、被弾・撃墜のシチュエーションは力を入れてじっくり演出しました。VRでは、プレイヤーの近くにあるものほど存在感を強く感じます。コックピット内が出火して煙で覆われることで、かつてないほどの息苦しさと「やられる」という焦燥感を味わえるようになっています。
――トレーラーでは、送電線の下をくぐるシーンを見たときに思わず汗が噴き出しました。「自分の操縦でも墜落せずにうまく飛べるのか?」と……。
玉置 あのシーンでも、地表スレスレを飛ぶ緊張感を感じていただけると思います。
東京ゲームショウ2018では驚きの施策も!?
――新たなPS VR専用ミッションの見どころについてお聞かせください。今回公開されたミッションでは空母ではなく、地上の滑走路からの出撃のようですが……。
玉置 今回は、敵の攻撃を受けている中を出撃するシチュエーションのミッションです。『5』にも似たような状況下でのミッションがあったので、ファンの方は想像しやすいかもしれません。
下元 不利な状況下での出撃を成功させると、出撃しただけなのにエースパイロットになった気分をさっそく感じてもらえると思います。
玉置 それに自分を必死で出撃させようと尽力する、仲間のありがたみも感じてもらえるのではないでしょうか。このシーンでは、ほかにも衝撃の体験を用意しています。近いうちに公開できると思いますので、こちらもお楽しみに。
――新たなPS VR専用ミッションは、敵のSAM(地対空ミサイル)を回避しつつ地上を攻撃するシーンも印象的でした。
玉置 地上を攻撃するのは、めちゃくちゃ楽しいですよ。先ほどお話したように、VRは近くのものほど存在感が増します。自分に向かって飛んでくる地対空ミサイルは迫力満点で、とにかく恐い。緊迫感が強調されるなか、とっさにミサイルを回避して地上を攻撃できると達成感もひとしおです。
下元 空の革新として雲をはじめとしたビジュアル表現に力を入れていますので、キャンペーンモードはもちろん、VRモードも乗って飛んでいるだけで楽しいです。
河野 それを言ったら、飛ばずにハンガーで機体を眺めているだけでも時間を忘れられる。
――ハンガーで実物大の機体を鑑賞するのはワクワクしますね。VRならではと言うか。
玉置 航空祭へ行ったことがある方は、実機を間近で眺める興奮をご存知かと思いますが、VRモードのハンガーでは、自宅にいながら同じスケール感のリアルな機体を細部までじっくり鑑賞できますからね。
河野 そのために、戦闘機はコックピットの内部まですべて作り直す必要があったけど(苦笑)。
玉置 VRモードは、パイロットになった気がしないと言われたら終わりなので、ディテールはとことん追求しています。
河野 プレイヤーが興醒めしないように、完成していたところも直すべきところは直して、切るべきところはバッサリと切りました。で、あれだと思うんだよね。VRモードって“和風懐石料理”だと思ってるんですよ。エースコンバット懐石コース。
下元 なんですかその例えは……。
河野 いや、ほら、エースコンバットで、戦闘機という素晴らしい素材が用意されていて、料理人の腕で最大限に素材のよさを引き出すという。
下元 全然わかりません(笑)。
河野 え?「こちら手前より『04』産のハンガーとなっております。どうぞそのまま愛機を十分にお楽しみください。」とか、「レーダーとステータスは当店の職人が丁寧にMFD(多機能ディスプレイ)に埋め込んでおります」みたいな。つまり、戦闘機の素材のよさをすごく繊細な仕事で最大限に引き出して、少しずつ、お客様にお楽しみいただくという。ガッツリいただくより、一品一品の質の高さをご堪能いただくということです!(笑)
下元 あー。もともと河野は、プレイヤーに惰性でダラダラと間延びした体験をさせることを嫌ってます。僕らスタッフもその意見に賛同していて、VRモードに限らずゲーム全編を通して、作ったものをカットしてでも、作品の質をさらに高めて体験を凝縮させようとしています。そういうことですよね?
河野 そうです(笑)。
――(笑)。細部までこだわっているのですね。VRのゲームと言えば “3D酔い”が気になる方も多いと思いますが、どのように対策されているのでしょうか?
河野 戦闘機に乗って飛び回る『エースコンバット』は、“3D酔い”になりやすいと誤解されやすいのですが、じつは“3D酔い”しにくいタイトルなんです。
玉置 そもそも“3D酔い”は、地面に近い場所で、急に向きが変わるなどすると起きやすいと言われています。『エースコンバット』は地面から距離が離れていますし、基本的にはターゲットを中央に捉えて飛行するので、“3D酔い”を起こしにくいんです。もちろん絶対に酔わないわけではないので、当社でバーチャル系の技術に知見のあるスタッフを集めた、いわば“ドリームチーム”で何度も検証を行い、技術的にも酔いにくいように調整しています。
河野 ゲームに慣れている人ほど酔いにくいので、心配な方はキャンペーンモードで腕を磨いてエースパイロットになってから、VRモードを遊んでいただくのがいいかもしれません。
下元 もちろん、最初からVRモードをプレイすることもできるので、興味がある方は、先にVRモードにチャレンジしていただいても大丈夫です。
――好きなモードから遊べるのはうれしいですね。公開済みのVRモードのミッションは、以前はF/A-18のみ選択できたと記憶していますが、新たにF-22にも搭乗できるようになりました。こちらのコックピットの見どころをお聞きしたいです。
玉置 F-22のような新しい機体はモニターが多いぶん、得られる情報も増えます。古い機体もまた金属の無骨さを体験できて楽しいです。それぞれ違うよさがあるので、いろいろな機体に乗って欲しいですね。
河野 古い機体と言えば、●●●のコックピットも味があるよね。
――えっ、●●●もVRモードで? 気持ちよさそう!
下元 その機体は、まだ公表してはダメです!
――(笑)。ちなみに、VRモードの世界設定はどんな感じなのでしょうか? 垂直尾翼に描かれたアレが気になるのですが……。
玉置 キャンペーンモードと同じ世界ですが、時代は異なります。ただ、ファンの方がニヤリとする体験を用意しています。
河野 気付かれている方も多いと思いますが、VRモードは、“メビウス1”の体験をプレイできるんですよ。
――「メビウス1 エンゲージ!」でおなじみの、『エースコンバット04』のプレイヤーキャラクターですね。
玉置 はい。VRモードでは、『04』の主人公“メビウス1”として新しいミッションを飛んでもらいます。ファンはもちろん、『04』を遊んだことがない方でも楽しめる作りなのでご安心を。
――再びメビウス1になれると聞いて、ますますテンションが高まってきました。ところで、いよいよ開催が迫ってきた東京ゲームショウ2018では、どのような出展を行うのですか?
河野 『エースコンバット』では初めて、ステージでの出展を企画しています。2018年9月23日(日)11時半から開催予定なので、ぜひ会場のBNEブースへ遊びに来てください。
下元 ステージのほかにも、最新の試遊を出展する予定です。これまでのイベントで試遊できたミッションに加えて、初公開となる“嵐の中のドッグファイト”のミッションにも挑めるバージョンになります。
――本作の発売が楽しみです!
下元 玉置がVRモードはドリームチームで作っていると言いましたが、キャンペーンモードも『04』と『5』のスタッフが集結して開発しています。プロデューサーやディレクターを担当できるほどのベテランメンバーがみずから手を動かし、より凝縮したクオリティの高いものを目指してブラッシュアップを続けているので、ぜひご期待ください。
玉置 VRという新しい体験で、ナンバリングタイトルの『7』に華を添えられることをうれしく思っています。発売まで気を抜かずに、作り込むべきところを作り込んでファンの方たちの手に届けたいと思います。
河野 本編の「あの『エースコンバット』だっ!」という確かさはもちろん、VRはみなさんといっしょに未来に想いを馳せるためのVRモード、VR専用コンテンツです。下元と玉置が、ファンのことを第一に考えてくれるプロデューサーに育ってくれたので、非常に頼もしく感じています。このふたりを中心に、多くのスタッフががんばってくれているので、ファンの皆様の期待に応えられるいい作品になると信じています。