声優、アーティストとして活動する今井麻美さんの19thシングル『World-Line』が、2018年8月29日に発売された。表題曲である『World-Line』は、今井さんが牧瀬紅莉栖、アマデウス紅莉栖として出演するテレビアニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』の後期エンディングテーマとなっている。
そんなCDの発売を記念して、ファミ通.comでは今井さんにインタビューを実施。今井さんが長年携わっている『シュタインズ・ゲート』シリーズの主題歌を担当することに対する想いや、収録されている楽曲について伺った。
なお、今回は約2年振りのシングルの発売ということで、18thシングル発売からの約2年間のアーティスト活動について語っていただいた完全版も後日公開予定なので、そちらもお楽しみに!
[2018年9月18日12時30分 追記]
完全版を公開しました。

今井麻美(いまいあさみ)
今井麻美さん(文中は今井)。5月16日生まれ。山口県出身。『アイドルマスター』シリーズ(如月千早役)を始め、『閃乱カグラ』シリーズ(斑鳩役)、『超次元ゲイム ネプテューヌ』シリーズ(ノワール/ブラックハート役)など多数の作品に出演。また、歌手としての活動も精力的に行っている。
――ついに発売された19枚目のシングルですが、テレビアニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』の後期エンディング『World-Line』が表題曲になることが決まってから制作は始まったのでしょうか?
今井そうですね。これまでは休んだら死んでしまうというような感覚だったので、タイアップがなくても定期的にCDを作り続けていたのですが、昨年5月にコンプリートアルバム『rinascita』を発売してからは、必要があったら再始動するというようなイメージが強かったです。そういう意味では、『シュタインズ・ゲート ゼロ』のエンディング曲を歌うことが決まっていなかったら、おそらくこのタイミングでは19thシングルを出していなかったんじゃないかなと思います。今回は『シュタインズ・ゲート ゼロ』の楽曲ということで、最初にお話を聞いたときに「私で大丈夫ですか?」と何度も確認したことを覚えています。
――それは、長年携わっている『シュタインズ・ゲート』シリーズの楽曲だからですか?
今井そうですね。正直、最初は戸惑いました。というのも、役としての責任は負えるけど、歌の責任となってくると、また心持ちが少し変わってくるというか。やっぱり『シュタインズ・ゲート』は、すごく歴史のある作品なので、「キャラクターソングじゃないのに、エンディングで急にキャラクターの声優の歌を聞いても……」と思われないかなと心配でした。最初はそのあたりがすごく不安でしたが、「今井さんに歌ってほしい」と言ってくださる方がいるからにはがんばろうと決意しました。
――そんなお気持ちの中、『World-Line』を初めて聞いた印象はいかがでしたか?
今井「千代丸節やー」(※『World-Line』の作詞、作曲を担当した志倉千代丸氏のこと)と思いました。ただ、『World-Line』は、それでいてエキゾチックというか、ミステリアスな曲調なので、「どう歌ったらいいんだろう?」とすぐに制作のことを考えてしまいました。
――歌いかたという面では、歌詞に紅莉栖やアマデウスを連想されるような言葉が入っていたりしますが、歌うときには紅莉栖やアマデウスのことを意識されましたか?
今井そうですね。深層心理の中でピクッとなるような歌詞のときには、やっぱりどこか心を動かされていたと思います。歌詞が印象的な単語の羅列で始まっていて、感じる人が感じればいいという作りかたになっているからこそ、そこに急に感情の入ったセリフが出てくると無意識に感じざるを得なかったですね。
――ということは、紅莉栖やアマデウスの感情もありつつ、今井さん個人としての感情も入れているという感じでしょうか?
今井そうですね。作詞をされている志倉千代丸さんに直接お話を聞いたわけではないので、どこまで明確に分けていらっしゃったかはわかりませんが、私としてはその3つの視点と、『シュタインズ・ゲート』の世界を見守っているユーザー的なもうひとつの視点もあるのかなと思いながら歌っていました。
――アニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』のエンディングとして『World-Line』が流れている映像を観たときの印象はいかがでしたか?
今井歌い手の皆さんがどのような感覚をお持ちなのかわからないですが、私は冷静な気持ちでは一切観られませんでした。
――15thシングル『朝焼けのスターマイン』のインタビューでも、そのような話をされていましたよね。
今井そうですね。もうビクビクしながらオンエアを見て、「なるほど」と思いながらも、細かいところばかりが気になって仕方がないというか。見終わった後の達成感とかは一切なかったです。「皆さん的にありだったのか? なしだったのか? 私にはわからない……。よし寝よう」みたいな(笑)。そういうところが私の性格が出ているなと思いますね。
――個人名義では『It's a fine day』、『クロガネ』に続いて3曲目の志倉千代丸さんの楽曲ですが、歌ってみた感想を教えてください。志倉さんの楽曲は「難しい」というお話をよく耳にしたりしますが。
今井難しいというのとも表現が少し違っていて、志倉さんの楽曲は情報量が多いんですよね。音作りだったり、表現の方向性だったり、メッセージ性だったり、いろいろなものが多角的に表現されているので、その独特な世界観をどうやって歌い手が捉えるかということがきっと難しいんだと思います。私も『It's a fine day』のころにはその感覚がわからなかったんですけど、『World-Line』を歌って初めてそういうことかもって思ったんです。だから、今回もコツをつかむまでは、「どういう風に表現しようかな?」とけっこう悩んで、プロデューサーとも相談したりもしたのですが、「こういうことかな?」と思ってからは、気持ちが乗りやすくなりましたね。
――志倉さんの楽曲と言えば、“ポップカルチャーひろしま2018”では、『アマデウス』と『Hacking to the Gate』を歌われていましたね。
今井じつはそのイベントの直前に『World-Line』を収録しているんですよ。だから、『Hacking to the Gate』と『アマデウス』がめちゃくちゃ歌いやすかったです。コツと言ったらおかしいですけど、志倉さんの世界観に対して、「こういうアプローチをしていくと、楽曲とマッチングしていくんだな」と感覚的なものをつかめた気がします。
――そうなんですね。『World-Line』はMVも収録されていますが、見どころはどこでしょうか?
今井光の表現ですね。実際の光を使って模様を浮かび上がらせているのですが、そのことを知っている私ですら「CGなんじゃないか?」と思うくらい、綺麗な演出になっています。すごく細かいところまでセッティングしてくださって、そういうことを意識して見ていると、さらに深みが増すと思うので、光との一体感に注目してみてください。
――衣装も紅莉栖をイメージした雰囲気ですよね。
今井そうですね。今回はいつもお願いしている衣装さんに紅莉栖の特徴をメールで送りつつ、「コスプレにはしたくない」という想いを伝えて、あとはおまかせしました。
――確かにコスプレというより、紅莉栖の服装を今井さんがアレンジするとしたらという感じがしました。
今井そうなんですよ。コスプレだと少し違うかなと思ったので。
――アクセサリーのデザインも作品の世界観にピッタリでしたね。
今井じつは全部手作りなんですよ。見た瞬間にめちゃくちゃ感動しました。私の送りつけた資料の中にネジ巻きがたくさんあったので、それを表現してくれたんだと思います。
――続いて、カップリング曲についても伺っていければと思います。まず、『アメノアトニ~Brighter Days Ahead~』はどのような楽曲なのでしょうか?
今井私のファンクラブで実施した公開コンペ企画で、若いバンドメンバー3人が作った楽曲の中から、ファンクラブイベントに来てくださったお客さんの投票で選ばれた楽曲です。作詞作曲を担当してくれた、まこっちゃん(大津惇さん)は、アメリカ帰りの帰国子女なので、歌詞に英語がふんだんに散りばめられているんです。だから、レコーディングのときは、歌唱指導ではなく、まさかの発音指導をしていただきながら収録しました。
――曲調もいままでの今井さんの楽曲にはあまりなかったような雰囲気ですよね。
今井そうですね。若手のクリエイター3人に一切のやらせもなしのガチンコで勝負してもらったのですが、各々の個性が出ていて、どれを選ぶのかというのは好みの問題だと思ったほどでしたね。結局、私は選べずに投票を棄権しちゃったんですけど、皆さんが『アメノアトニ~Brighter Days Ahead~』を選んでくださった大きな理由のひとつが、いままで私があまり歌ったことのない曲調というが決め手になった方が多かったみたいで。そういう意味で、いままでの曲と比べると少し異質だと思います。雰囲気的には、80年代J-POPというような感じがあるので、いまの若い人たちにはこういうのが新しく感じるのかなと思いました。
――ほかの2曲も含めて、今井さんのことをよく知っている方たちだからこそ書ける楽曲だなという印象がしました。
今井確かにそうなんですよね。いまになってみると1曲しか制作しないのは惜しいので、ほかの2曲も作ればいいのにとプロデューサーに言っています。
――イベント中にもそのようなことを話されていましたよね。
今井でも、それだと選んでもらった意味がなくなってしまうので難しいところです。ただ、『World-Line』に収録されたのはすごく大きいことだと思うので、差別化はできたんじゃないかなという気もしますね。
――ファンの方は期待していると思いますよ。そして、もうひとつの『Blue Feather』についても聞かせてください。作詞は今井さんが担当されているとのことですが。
今井これは私の大好きな作曲家の濱田貴司さん(※今井さんの個人名義の楽曲では『サ・ヨ・ナ・ラ』や『AQUAMARINE』などの作曲や編曲を担当)の楽曲で、貴司さんが「この曲は今井さんに合うのでは?」と提供してくださいました。曲を聞いた瞬間に「やっぱり私は貴司さんの紡ぎ出すメロディーが好きなんだな」と実感しました。貴司さんの音楽は、どんなに爽やかであっても、どこか寂しさだったり、苦しみだったりが滲み出ているんですよね。メロディーラインから泣きの部分を感じるので、歌詞を書いていてもそういう世界観が浮かんできました。ちょうど紅莉栖を演じている最中に作詞していたこともあって、おそらく潜在意識の中にそういう前向きだけど、どこか寂しいみたいな感情があったんだと思います。また、西日本の洪水のタイミングとも重なっていたので、どうしてもその光景が目に浮かんできて、そのことも意識しながら作詞をしました。
――『World-Line』のDVD付盤には、牧瀬紅莉栖のモノローグ『星芒のアリア』が収録されていますが、こちらはどのような内容なのでしょうか?
今井テレビアニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』第8話の世界線がうっかり変わってしまって、まゆしぃが生きていた世界線から、紅莉栖が生き残ってお正月を迎えたころの心境を書き下ろしていただいたモノローグになっています。すごく刺さる内容だと思うので、アニメと合わせて聞いていただけるとうれしいです。
――『rinascita』以来の約1年ぶりとなる発売記念イベントが東名阪で開催されますが、意気込みなどはありますか?
今井今回は『シュタインズ・ゲート ゼロ』のエンディング曲ということもあり、私のイベントに初めて来るという方もいらっしゃると思うので、ラフに行き過ぎないように注意したいと思います。ただ、イベントが始まってしまうとテンションが上がって、いつもの私が出てしまうと思いますが(苦笑)。
――今後の活動についても伺えればと思います。10月8日には恵比寿ザ・ガーデンホールで“今井麻美 Live in Tokyo 2018”が開催されますが、9月に行われた山形でのライブとは違った内容になるのでしょうか?
今井山形とは編成がぜんぜん違います。ドラムやベースといったバンド寄りの編成なので、アコースティックライブではなく、いわゆる通常のライブのような雰囲気にはなると思います。
――最後にファンの方にメッセージをお願いします。
今井『シュタインズ・ゲート』にはたくさんの名曲がありますが、『World-Line』もその中に加えていただけるとうれしいです。また、私が『シュタインズ・ゲート』の楽曲を担当することを私以上に喜んでくださっているファンの方もいらっしゃると思うので、それが形になったということはとても感慨深いです。『シュタインズ・ゲート』がひと区切りということで、いろいろと思うところもありますが、ここまで辿り着けたのは多くの皆さんの応援のおかげだと思っています。『World-Line』は、私から皆さんへの「応援ありがとう」の勲章だと思っているので、ご購入という形にはなってしまいますが、ぜひ首から下げるくらいの勢いで聞いて、たくさん噛み締めていただけたらうれしいです。
商品情報
- 発売日:2018年8月29日発売(発売中)
- アーティスト:今井麻美
- タイトル:『World-Line』
- 価格:
通常盤(CD)1800円[税別]
DVD付盤(CD+DVD)2400円[税別] - 発売元:5pb.
- 販売元:MAGES.
【仕様】
- 通常盤:1枚組(アーティストジャケット)
- DVD付盤:2枚組(テレビアニメ描き下ろしイラストジャケット)
【CD収録曲】
<通常盤>
- World-Line(作詞、作曲:志倉千代丸、編曲:悠木真一)
- アメノアトニ〜Brighter Days Ahead〜(作詞、作曲、編曲:大津 惇)
- Blue Feather(作詞:今井麻美、作曲:濱田貴司、編曲:宮藤優矢)
- World-Line - off vocal -
- アメノアトニ〜Brighter Days Ahead〜 - off vocal -
- Blue Feather - off vocal -
<DVD付盤>
- World-Line
- アメノアトニ〜Brighter Days Ahead〜
- Blue Feather
- World-Line - off vocal -
- アメノアトニ〜Brighter Days Ahead〜 - off vocal -
- Blue Feather - off vocal -
- 牧瀬紅莉栖モノローグ『星芒のアリア』 ※DVD付盤のみ
【DVD収録内容】 ※DVD付盤のみ
- World-Line Music Video
- World-Line Music Video Making


ライブ情報
今井麻美 Live in Tokyo 2018
- 日程:2018年10月8日(祝・月)
- 会場:恵比寿ザ・ガーデンホール
- 開場 16:00/開演 17:00(予定)
- チケット価格:6264円[税込]+1Drink(500円)
※+1Drinkは当日会場にてお支払い下さい。 - 主催:+Amembers
- 問い合わせ先:+Amembers事務局(info@plusamembers.com)
チケットは各プレイガイドにて発売中(※なくなり次第終了)