2018年10月1日付で新たに設立されることが発表されたバンダイナムコアミューズメントラボ。その目的と展望について、同社で取締役に就任予定の堀内美康氏に聞いた。

そこでしか体験できない“リアルエンターテインメント”を強化

 2018年7月1日、VR(仮想現実)や最新アーケードゲームなど、各種アミューズメント機器の研究と企画開発を専門に行うための目的とした新会社、バンダイナムコアミューズメントラボ(以下、BNAL)が10月1日付で設立されることが発表された。このBNALは、バンダイナムコグループのアミューズメント機器開発機能を再構築し、同グループが提供する“リアルエンターテインメント事業”の進化と強化を図る目的で設立。VRやAR(拡張現実)など、最新技術を使った開発も注目されるところだ。そこで今回は、BNALにて取締役に就任予定の堀内美康氏に、今後の展望について話を聞いた。

“リアルエンターテインメント構想”から生まれたバンダイナムコアミューズメントラボ

堀内 美康(ほりうち よしやす)

バンダイナムコアミューズメント 取締役。 2018年10月1日付で設立されるバンダイナムコアミューズメントラボでも、取締役に就任予定。

バンダイナムコアミューズメント 取締役
堀内 美康氏

――今回、BNALが設立に至った経緯を教えてください。
堀内BNALを語る前に、まずはバンダイナムコグループが推し進めている“リアルエンターテインメント事業”について話したほうがわかりやすいかもしれません。簡単に言うと、アミューズメント事業における価値の連鎖を強化し、リアルな場を活用したバンダイナムコグループだからこそ実現できる“リアルエンターテインメント”をワールドワイドで提供していくものです。今年の4月にバンダイナムコアミューズメントという会社が設立になりました。その会社は、ロケーション事業をやっている旧ナムコと、バンダイナムコエンターテインメントのAM事業部、AM機器の開発・販売をしていた部門をひとつにした会社です。“いま、ここにしかないエンターテインメント体験を世界中に生み出す”というビジョンのもと、“リアルエンターテインメント事業”構想の第一歩になっています。

――スタートとして、バンダイナムコアミューズメントができた、と。
堀内バンダイナムコグループも、近年ネットワークコンテンツ事業が大きく伸びてきています。一方、我々はアミューズメント施設を約250店舗持っているのですが、そこではネットワークエンターテインメントではなく、“リアルエンターテインメント”を提供する場所として、もっとさまざまなことができるのではないかと以前から考えていました。それを実現するために設立されたのがバンダイナムコアミューズメントなのです。そして、グループの開発部門であるバンダイナムコスタジオの中にも、AM事業に特化したチームがあり、彼らは筐体の開発だけでなく、最近では“VS PARK”という施設の開発などにも携わっています。

――大阪府吹田市に4月にオープンした、スポーツを題材にしたアミューズメント施設(→公式サイト)ですね。超短距離を実際に走って猛獣から逃げ切るアクティビティ“ニゲキル”とか。
堀内はい。彼らはフォーマットにとらわれない開発をしているチームで、恐らく皆さんにもっとも知られているのが、“VR ZONE”で展開しているVR機器かと思います。アーケード機器などを開発するチームやロケーション運営を中心に考えるチームが、それぞれ得意なことを持ち寄ると、思いもかけないような新しいことができる経験を得ました。それならば、アーケードゲーム向けのタイトルを作るだけに留まらず、ロケーション、アーケードビジネス、それらすべてに可能性を持った開発ができる環境を作りたい。ゲームセンターありきの開発ではなく、どんな場所でもおもしろいものを実現できるということを前提に、より突っ込んだ、他社にはできない開発を目指してもらおうと。そこで今回は、バンダイナムコスタジオのアミューズメント部門を独立させて、バンダイナムコアミューズメントラボという会社にしました。

――バンダイナムコグループのアミューズメント事業に関わってきたスタッフがひとつにまとまったわけですね。
堀内はい。その解釈で問題ありません。

――今年4月にバンダイナムコアミューズメントが設立され、あまり間を置かずにBNALが設立されたのは、数年前から中長期的に考えられてきたことなのでしょうか? それとも、最近のアミューズメント業界やVR技術の発展に鑑み、新たに計画されたものなのでしょうか?
堀内どちらかといえば、前者になります。アミューズメント市場がこのまま成長していくのもなかなか難しくなってきました。しかし我々には店舗もあり、同時にコンテンツ開発力もあります。これまでのゲームセンターの枠を越えた方法で、リアルエンターテインメント事業をおもしろくできないかという議論があり、それらが徐々に形になり始めたということですね。

――リアルな場所で、“リアルエンターテインメント”に特化したコンテンツ事業を行う、と。
堀内そうです。たとえば“VR ZONE”も、“そこでしか体験できない”ことを重視して作っています。

バンダイナムコグループならではの新しいエンターテインメント

――BNALは設立前ですが、旧来の部署ではどのようなコンテンツを手掛けてきたかや、今後手掛ける予定のコンテンツなどを教えてください。
堀内筐体とソフトのわかりやすい組み合わせでいうと、『湾岸ミッドナイト マキシマムチューン』シリーズなどがあります。絶賛稼動中の『太鼓の達人 ブルーVer.』もそうですね。それから、“VR ZONE”。あのように可動する筐体を含めてコンテンツを開発する会社は、世界でもあまり例がないのではないでしょうか。

――従来の体制でもそれらのコンテンツを手掛けてきたなかで、会社として新たに設立する理由やメリットは何ですか?
堀内ゲームセンターで稼動するゲームを作ることが基本的なミッションですが、決まったフォーマットがあまりない業界とはいえ、セオリーからはみ出していくのは、開発現場だけでは難しい部分があります。しかし、たとえば“VS PARK”では、ロケーションを出店するチームから「こんなお店があればおもしろいね」というアイデアが出てきて、それをバンダイナムコスタジオといっしょに作っていったという経緯があります。“VR ZONE”にしても、たとえばあの機器をゲームセンター向けの簡単なオペレーションにして作り直していくと、間違いなくおもしろい部分を縮小させてしまうことになる。それにお金と時間をかけるのはナンセンスですよね。「じゃあ、お店ごとやっちゃえ」という発想やアイデアが、アミューズメント部門グループがいっしょになって仕事をすることで、生まれていくと思っています。

――確かに、“VR ZONE”は挑戦的、実験的で、コンテンツも最初から採算を意識していたら実現しないものが多いように感じます。
堀内そうですね。“VR ZONE”を最初にお台場でオープンしたときは、「とにかく実験しようよ」というコンセプトでしたし、そうしたチャレンジは、開発のアイデアやビジネスの視点だけではなく、「こんなお店があったらいいね」というロケーションとしての意見から生まれることもあるわけです。

――当然、VRには以前からアプローチしてきたと思いますが、リアルエンターテインメントとの相性がよさそうですね。
堀内現時点で私たちが持っている答えのひとつは、家庭にはない施設や機器による特別な体験を提供することなのです。自宅でプレイする楽しみもあると思いますが、自宅では設置するのが難しい大型の設備や、限られたプレイ時間でこそ味わえる“凝縮された楽しみ”を提供できると考えています。家庭用のVR対応ゲームですと、どうしても視覚的なおもしろさが強調されます。一方で、BNALが手掛けるVRタイトルは、“五感で体験するおもしろさ”が大事だと思っています。

――VRなどの最新技術に対して、非常に積極的に取り組んできたわけですが、その姿勢は今後さらに強化されるのでしょうか。
堀内バンダイナムコアミューズメントとして、フラッグシップとして考えられるような施設を、つねに数店舗は展開したいと考えています。現時点では、その代表的なものが“VR ZONE”になるでしょう。昨年、“VR ZONE SHINJUKU”を作ったときは、多くの人にとっていままでにない新しいエンターテインメント施設だったと思いますが、おかげさまでかなり浸透してきたので、つぎの展開が必要になってきました。お客様には、「そう来たか」と思っていただけるような、新しいフラッグシップとなるべき店舗を試していきたいですね。

――バンダイナムコグループは、魅力的なIP(知的財産)を多く持っているという強みがあると思います。そうしたIPとリアルエンターテインメントとの融合にもいろいろな可能性を感じます。
堀内正直なところ、IPを軸にしたアミューズメントの施策については、できていないことがまだまだたくさんあります。「このキャラクターをこういった遊びに使えたら、おもしろいのではないか」と思うことがたくさんあります。とりあえず実験してみたけど、うまくいくこともいかなかったことも多々あります(笑)。また、家庭用ゲームではタイトルやIPを名指しでお求めになる方が多いと思いますが、アミューズメントの場合は、遊びたいゲームがある方もいれば、「さて、何を遊ぼうか」と決めずに来店されるお客様もたくさんいらっしゃいます。そうした“お客様の質”が異なる中で、ゲームセンターでIPをどうやって活用していくのかは、まだまだこれからのことかなと個人的には思っています。

――5年後、10年後のアミューズメント業界についての展望など、将来的なビジョンをお聞かせください。
堀内現在のアミューズメント業界は、ビジネス的には簡単ではない状況にあります。だからこそ、“リアルエンターテインメント”という考えを改めて中心に据えました。いまゲームセンターに来てくださっているお客様を大事にしながらも、新しい施策を仕掛けていく必要があります。離れていった層を呼び戻し、また、さらに新しいお客様にも来ていただくには、ゲームセンターという施設だけにとらわれず、お客様に満足していただける“リアルエンターテインメント”を作ることが、結果的に新しいアミューズメント業界を作っていくことにつながるのではないかと。我々が何もしなければ、10年後のアミューズメント業界はきびしくなっていくかもしれません。そうならないように、さまざまなチャレンジをしていきたいと思います。もちろん既存のゲームセンターでも、喜んでいただけるようなコンテンツをたくさん用意しています。『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2』は今秋稼動開始しますし、お客様にも施設を運営している方々にも喜んでもらえるようなコンテンツをたくさん用意しています。そのほか、現在のゲームセンターを活性化するような新しい製品も今後準備していますので、そちらにも期待してほしいですね。キッズ向けの“屋内・砂浜 海の子”や“屋内・冒険の島 ドコドコ”といった新機軸のコンテンツも作っているので、今後の展開に期待してください。

BNALが手掛ける、アミューズメント関連コンテンツは?

 BNALは、現在のバンダイナムコグループのアミューズメント開発機能が再構築された会社。従って、『湾岸ミッドナイト マキシマムチューン』シリーズを始めとした、現在アーケードで稼動中のゲームタイトルも、必然的に同社の管轄となる。さらに“VR ZONE”などに代表される、体感型のアミューズメント施設も同様だ。そして、堀内氏の発言にあるように、アーケードにおける“リアルエンターテインメント事業”の提供の場として、新たな施設の展開やアミューズメント向けの新機軸のタイトルも開発を手掛けることとなる。

『湾岸ミッドナイト マキシマムチューン 6』
『太鼓の達人 ブルーVer.』
屋内砂浜 海の子
屋内・冒険の島 ドコドコ