China Joy 2018の前日にあたる2018年8月2日に行われた“2018 PlayStation Press Conference in China”。中国のプレイステーションフォーマットの今後のラインアップをお披露目する場において、大きくフィーチャーされていたトピックのひとつがChina Hero Project。中国のクリエイターを支援することを目的として、2016年にスタートした本プロジェクトだが、すでに2タイトルがリリース済みで、本カンファレンスでは5タイトルの進捗が明らかにされた。
カンファレンス終了後、その5タイトルのプロデューサーが出席しての質疑応答の機会が設けられたのは、China Hero Projectに対する期待値の高さの現れといっていいだろう。質疑応答では、各取材陣が、自身の気になるタイトルの進捗な詳細について聞くというスタイルで行われた。ここでは、そのコメントを交えつつ、ゲーム内容をかいつまんでご紹介していこう。
『Kill X』(2018年冬発売予定)
登壇者:VIVA GAMES CEO ヤオ・クン氏
「ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)さんにチャンスをいただけて感謝しています。China Hero Projectに参加して、中国はもちろん海外のユーザーさんを失望させまいと思いゲームを作ってきました。ハイクオリティーで質の高いゲームを提供したいと思っています」
プレイステーション VR向けに開発中の本作は、元傭兵のタイヤと神秘的な女性・刹那が、自身の秘密と不思議な島の謎を探っていくホラーアクション。2016年時からは、「シューティングと謎解きの要素がさらに向上している」とのこと。ちなみに、本作の中国タイトル“除夕(じょせき)”は大晦日の意味。英語名の『Kill X』とのギャップが何ともだが、タイトルの意味を問われると、「中国には年を越える前に、たくさんの買い物をしますが……」とも、何とも含みのある返事。「基本的に20分に1回は最低でもサプライズを提供していきたい」というから、サプライズを重視しているようだ。
『Project Boundary』(2019年発売予定)
登壇者:Studio Surgical Scalpels CEO フランク・ミンボウ・リ氏
「China Hero Projectに参加して、ゲームの質の向上に心を砕いてきました。昨年12月のPlayStation Experience 2017、そして今回のChina Joy 2018と、試遊の機会を与えていただけたことをSIEさんに感謝しています」
無重力の宇宙空間を舞台にしたFPSで、プレイステーション VRにも対応。マルチプレイでは協力しながら敵に対する模様。記者からの「いまはやりのバトルロイヤルモードはあるのか?」との質問には、「ありません!」ときっぱり、「ただし、将来的に可能性がないとは言えませんが」と付け足し会場を笑わせた。まあ、無重力でバトルロイヤルは難儀な気がする。開発スタッフは13人とのこと。
『HARDCORE MECHA』(2019年発売予定)
登壇者:Rocket Punch Games CEO ムー・フェイ氏
「この1年、China Hero Projectでたくさんのサポートをいただきました。どのように立ち上げていくか、マーケティングなど、いろいろな領域でアドバイスをいただきました。そしてプレイヤーさんに接する機会もいただきました。この1年、ゲームの完成度は向上したと思います」
タイトルが以前まで紹介していた『Code:Hardcore』から変更。“メカ”という直接的な名称になった。明らかに日本のロボットアニメの影響を受けたことがわかるビジュアルの2Dアクション。社名の“Rocket Punch”も何とも言えず、いい感じ(笑)。カンファレンスでは主題歌を影山ヒロノブが担当することも明らかにされており、相当趣味に突っ走ったんだろうなあ……という潔さがうかがえる。質疑応答では、「ストーリーにも力を入れています。ひとり用のゲームプレイは10時間くらいになると思います」とコメント。
『Pervader』
登壇者:Beijing Light & Digital Technology プロデューサー プー・アン氏
「本日最新PVを公開できたのですが、これからも力を入れていきたいと思っています。SIEさんの協力を得て、ゲームの魅力を訴求していきたいと思っています」
PVが初めて公開されたということもあり、中国のメディアからもっとも質問が多かったタイトル。「舞台設定は架空のものですが、東欧のオリエンタルな世界観をモチーフにしています。主人公が何かを助けていく……というサバイバルゲームです」と、詳細は明かしてもらえなかった。いろいろな角度から危機を描くために、チャプターにわけてリリースする予定らしい。
『Lost Soul Aside』
登壇者:Ultizero Games CEO ヤン・ビン氏
「PVの公開から、実機でもデモ披露と、ゲームの完成度を上げてきました。SIEさんやほかの提携しているパートナーさんにたくさんのご協力をいただきました。ひとりで立ち上げたプロジェクトが、複数人メンバーの参加を経て 、会社として立ち上げることができ、成長することができました。ありがとうございます」
『ファイナルファンタジーXV』 のビジュアルに影響を受けたアクションゲームで、そのPVは日本でも話題になった。China Hero Project第二期への応募を検討しているクリエイターにアドバイスを求められたヤン・ビン氏は、「自分は、タイトルを作っているときにソニーSIEさんから声をかけてもらいました。プレイステーションプラットフォームは高品質なゲームが開発しやすいです。よりオリジナリティーを駆使すべきです」と語った。
さて、各開発陣のコメントを聞いていてうかがえるのは、サポートをしているSIEに対する感謝の思いと、何よりも“China Hero Projectに選ばれたからには、クオリティーの低いものは出せない”という、断固たる意思。開発陣の強いプライドを感じることができた。それは、“China Hero Project”と銘打たれたプロジェクトの、べつの意味での意義と言えるのかもしれない。
最後に、SIE上海 プレジデント 添田武人氏から以下のコメントが、来合わせた取材陣に向かって発された。それは、China Hero Projectに参加したクリエイターたちへのエールでもあり、「中国の開発者の質はここまで来ている」という自信の表れでもあり、さらには「彼らをよろしくお願いします」という、思いやりのコメントとも思われた。果たして、China Hero Projectのタイトルが、どのような評価を受けるのか……。
「各ゲームそれぞれに特色がありますが、一歩ずつ地道なプロセスのうえに、試行錯誤して生み出されたものです。私は、China Hero Projectのラインアップに、1本も似たようなゲームがないことをうれしく思います。これは、中国のゲームにとってこれから重要になるであろう“いかに自分の特色を出していくか”ということをしっかりと追求した成果だと思っています。彼らはいずれも革新的なことを実現できる、優秀な人材ばかりです」(添田氏)