2018年8月2日、中国国内に向けたプレイステーションフォーマットに関する最新情報を発表“2018 PlayStation Press Conference in China”が、上海商城劇場(Shanghai Centre Theatre)にて行われた。ここでは、イベント後に催された、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)シニアバイスプレジデント 兼 日本ビジネスオペレーション部門 部門長の織田博之氏への囲み取材の模様をお届けしよう。

SIE織田博之氏に聞く、「ソニーのゲームで遊ぶとほかとは違う」中国のゲームファンにコンソールの魅力を訴求したい【ChinaJoy 2018】_04

esportsやオンラインマルチプレイに対する取り組みは?

――今回“遊索不同”というテーマを打ち出されましたが、この意味と狙いを教えてください。

織田 これは当て字で、もともとは“有所不同”という中国の四字熟語からきています。“有所不同”は“ちょっとほかとは違う”という意味なのですが、“有”を“遊”に、“所”を中国語のソニーの漢字の縮め字である“索”に変えて、読みかたは同じなのですが、“ソニーのゲームで遊ぶと、ほかとは違うよ”という意味をもたせているんです。

――中国のユーザーに向けて、より明確にメッセージとして打ち出していきたいということですね?

織田 そうですね。コンソールゲームは、PCやスマートフォンとは違うことをどう伝えるかというところで、“ちょっと違うよ”ということを中国らしい感じでお伝えして興味を持ってもらいたかったんです。

[2018年8月10日午後3時15分]一部表記に誤りがあったため修正しました。

SIE織田博之氏に聞く、「ソニーのゲームで遊ぶとほかとは違う」中国のゲームファンにコンソールの魅力を訴求したい【ChinaJoy 2018】_01

――日本のメーカーさんの中国市場に対するスタンスはいかがですか? 今回も『モンスターハンター:ワールド』が披露されて、大歓声を集めていましたが、そのほかのタイトルの展開などでも進捗がありましたら。

織田 『モンスターハンター:ワールド』はあくまで今回ご参考として紹介しておりますが、China Joyの会場でも遊べるようになっており、「こういった取り組みをしていますよ」ということで、ご紹介させていただきました。中国は世界最大のゲーミングマーケットで、国内外問わず、非常にたくさんのパブリッシャーさんが期待されています。一方で、中国固有のセンサーシップのハードルは依然として残っていますが、私たちとしてもコンソールビジネスを初めて4年目に入りますので、管理している行政部門とのやりとりが、かなりわかってきたところもあります。そういった意味で、ビジネスに対する敷居が下がってきているということは、皆さんにお伝えしています。
 それでも世界同時発売というのは難しいのですが、がんばっていろいろなタイトルを中国市場に持ってきたいと思っています。

――日本のメーカーさんも熱心に?

織田 そうですね。まだ、今日は具体的なお話はできませんが……。

SIE織田博之氏に聞く、「ソニーのゲームで遊ぶとほかとは違う」中国のゲームファンにコンソールの魅力を訴求したい【ChinaJoy 2018】_02

――SIEさんのセレクトするタイトルが、中国展開するうえで受け入れられやすくなっているとの印象があるのですが、そのへんは特別な取り組みをしているのですか?

織田 はい。つねにゲームユーザーのみなさんの意見を聞いています。添田(添田武人氏。ソニー・インタラクティブエンタテインメント上海 プレジデント)はWeibo(中国のSNS)のフォロワーが80000人を超えていて、あだ名がつくほど中国のゲームユーザーのあいだでは有名な存在で、どういうゲームを遊びたいか、どういうゲームが流行っているか、といったことをお伺いしながら、私たちも提案すべきことをつねに考えています。

――China Hero Projectのことについて聞かせてください。このプロジェクトは、“2016 PlayStation Press Conference in China”のお披露目時には10タイトルくらい発表されたかと思うのですが、今回改めて5タイトルをプレゼンしたその意図は?

織田 10タイトルのうち2タイトルがすでに発売され、今回の5タイトルはアップデートということで改めてご紹介させていただきました。今年中に発売されるタイトル、来年の早いタイミングで発売されるタイトル、そして新しいトレーラーが解禁になったタイトルなどですね。

――中国の方からの反響が大きかったのには驚きました。

織田 こういうプロジェクトをSIEが行っていることに対して、おしなべて前向きなコメントをいただいておりまして、非常に期待していただいております。今日ご覧になっておわかりいただけたと思うのですが、とにかくクオリティーの高いタイトルが並んでいて、ゲーマーのみなさんや、ゲームを作る人も含めて“サポートしよう”という熱い気持ちがあるようです。このプロジェクトに取り組んで本当によかったなと思っています。

――China Hero Projectは、もともとはインディー系のプロジェクトだったかと思うのですが、それをSIEさんがバックアップするという活動ですよね?

織田 インディーゲームが対象というよりも、このプロジェクトそのものは、Unreal EngineさんやCRI・ミドルウェアさん、ハーツユナイテッドグループさんなど、いろいろな会社さんといっしょになって、クラウドファンディングのサポートもいただきながら、中国のコンテンツ産業に一石を投じようということで展開しています。インディーゲーム特定でというよりも、応募作品の中でコンテストをして「これはぜひ、前にすすめたい」というタイトルに関しては、出資者の皆さんにサポートいただくという座組なんです。ゲームエンジンをお貸しするとか。技術サポートをするとか。そういう仕組みで動いている状況です。

――China Hero Projectの国外での展開が気になりますが……。

織田 中国ではコンソールゲームがまだは、目新しいものですので、コンソール向けにまずはゲームを作ってもらうためのプラットフォームということで、このようなプロジェクトを考えました。皆さん積極的に参加していただいて、今日第2回目の募集をご案内しましたが、当然開発されている方たちが希望されているのは、プレイステーションのプラットフォームで、中国国内だけではなくて海外でも、パブリッシュしてくれることです。それが大きなモチベーションになっており、「海外でも自分たちのタイトルが売れる」ことに、非常に期待していただいています。

――たしかに、個々のゲームの内容を見ると、海外を意識したタイトルが多いように思いますね。あとやはりクオリティーが高い。

織田 そうですね。彼らはつねにどういうタイトルが好まれるかなど世の中のタイトルのトレンドに対するアンテナが高いので、そのうえで、自分のゲームをどれだけ作りこむかということで、時間をかけてやっていらっしゃいます。そういった意味ではゲームに対する意識は鋭いと思います。

SIE織田博之氏に聞く、「ソニーのゲームで遊ぶとほかとは違う」中国のゲームファンにコンソールの魅力を訴求したい【ChinaJoy 2018】_03

――中国のコンソールが解禁されて数年経ちますが、現在の課題と、それに対する解決方法は?

織田 課題は最初から変わっておらず、コンソールゲームの知名度はまだまだ中国では低いことです。10数年以上中国では、コンソールは売ってはいけない時期がありましたので、少しずつお客様にコンソールゲームの楽しさを知ってもらうための活動が大切だと思っています。時間もかかりますし大変ですが、この活動を続けることによって少しずつお客様が増えていますので、粘り強くやっていきたいなと思っています。

――今回のChina Joyへの出展も、啓発活動の一環でもある?

織田 そうですね。『Marvel's Spider-Man(スパイダーマン)』や『モンスターハンター:ワールド』の試遊もありますし、China Hero Projectもあります。『Monkey King Hero is Back』も、もちろんあります。私は『Monkey King Hero is Back』推しなんですけど(笑)、2019年早々にも発売されるということで、China Joyの会場では、初めての試遊が可能になっています。中国で大ヒットを記録したアニメのゲーム化ということで、中国でこれからプレイステーションを知ってもらうためには、中国の方に親しみやすい映画のIPをゲームにもってきて、より幅広い方に遊んでもらいたいという気持ちでやっています。

――中国はesports大国ですが、SIEさんの中国でのesportsに対する方針は?

織田 中国のesportsでどういう取り組みをするかは、いまのところ具体的には発表させていただいておりませんが、日本で行なっているように、いろいろな大会のスポンサーやサポートなどは、機会があれば考えていきたいと思っています。

――中国でのオンラインサービスの有料登録者が5.6億人を超えて、オンライン大国といった声も聞きますが、そんななかSIEさんの中国におけるオンライン戦略を教えてください。

織田 そうですね。私たちにとっていちばん大きなチャンスであり、どのように取り組むかは課題だと思っています。プレイステーションのオンラインマルチプレイに対する取り組みについては、またお話しできるタイミングになりましたら、お伝えさせていただきたいと思っています。