イギリスのゲームメーカーKongregateより、Nintendo Switch用ソフト『ザ・トレイル:フロンティアチャレンジ』 が配信中だ。
同作を手掛けるのは、『ポピュラス』や『ダンジョンキーパー』など、数々の名作を開発したことで知られる、あのピーター・モリニュー氏。記者にとっても、ピーター・モリニュー氏は、思い入れのあるクリエイターのひとりだ。何よりも心惹かれるのはそのソフトな語り口で、イギリス人ならではの(と記者はすっかり思い込んでいる)しっとりとした声音に、記者はインタビューする度に聞き惚れていたものだ。
記者も『Fable』シリーズがリリースされていたときは、ちょいちょいピーター・モリニュー氏にインタビューしていたものだが、自身が設立したライオンヘッドスタジオから離脱した2012年以降は取材する機会もめっきりなくなり(ちなみに、その後ライオンヘッドスタジオは閉鎖)、その後立ち上げた22Canという会社でスマートフォン向けタイトルをリリースするときに、たまにその名前を耳にするばかりとなった。
そんなピーター・モリニュー氏の最新作である『The Trail』がスマートフォン向けにリリースされたのが2016年11月。記者がふと手にしてしまったのは、「ピーター・モリニュー氏だから……」という理由が大半を占めていたのだが、いざ遊んでみるとすっかり惹きつけられてしまった。ジャンルは……と説明しようとするとこれがなかなかに難しく、シミュレーションのようなアドベンチャーのような……。ゲーム的には、道に転がっているアイテムやら食べ物やらを拾って、新天地を目指すというもの。アイテムは合成して強化できるけど、それを入れていくカバンには容量の限界があり……と、まあ、マネジメントが楽しい1作ではある。
そんなふうに親しんだ『The Trail』だったので、「日本でもNintendo Switch版が発売される!」と聞いたときは驚喜。週刊ファミ通で記事紹介をするときに、「せめてメールインタビューでいいからピーター・モリニュー氏に話を聞きたい」と思ってしまったのは、人情というものだろう。配信元であるKongregateの国内におけるプロモーションを担当するコーラス・ワールドワイドさんに無理を言って、ピーター・モリニュー氏へのメールインタビューを実施させてもらったのだ。記事を作っていたときにピーター・モリニュー氏からの返事が到着したときは欣喜雀躍。ピーター・モリニュー氏の声音を思い出しながら、コメントを編集していたものだ。
今回『ザ・トレイル:フロンティアチャレンジ』がリリースされたということで、そのやり取りを紹介させていただこう。実際のところ、ピーター・モリニュー氏らしい味わいのあるコメントであると思う。というわけで、すっかり前置きが長くなりましたが、どうぞ。
――まずは、オリジナルの『The Trail』を開発するに至った経緯をお教えください。
ピーター 私たちの目的は、数多くのプレイヤーがひとつの世界をいっしょに探検して、好きなところでにみんなで町作りをできるゲームでした。このシンプルなアイデアを現実にするのは複雑です。ひとつになっている世界を実現するためのサーバーインフラだけでも大変です。
アメリカの開拓史がビジュアルのイメージでしたので、開発当初からアートスタイルは決めていました。チームといっしょに新しいゲームを作るのはいつでも素晴らしい経験です。『The Trail』はシンプルで、奥深いゲームを作れたのが楽しかったですね。
――これまでのピーターさんのスタイルからすると、少し作風が違うかなという印象があるのですが、どのようにして『The Trail』を発想したのですか?
ピーター 3年前にシンプルなアイデアで開発を始めました。大きい世界の中で、どうすればプレイヤーに探検の好奇心を浮かばせることができるかが課題でした。
制作スタッフを崖と森の中のハイキングに連れて行き、そこで感じた情感、探検とアドベンチャーの気持ちをゲーム化するようにしました。その後ゲームデザインを考えるとき、アイテムを探して、拾って、トレードするという一連の要素は自然に出てきました。
いろいろな土地をトレッキングするにあたり、ほかのプレイヤーも存在し、彼らとトレードを行うことによって、自分の服や道具をアップグレードを施しゲームの進行を早め、最高の冒険家になることができます。
――『The Trail』を開発するにあたって、とくに注力したポイントをお教えください。
ピーター リュックの中身を楽しく整理する要素には集中しました。アイテム集めは美しい景色を見ながら楽しく、チャーミングにしたかった。リュックの整理はとてもフィジカルな感覚です。アイテムをきちんと中に入れないと、リュックの中から外にあふれて、ほかのプレイヤーに持っていかれてしまいます。
そのほか、歩いている最中にもっと競争を感じさせるために入れたチャレンジ要素や、ひとりひとりのプレイヤーがエデンフォールを目指してトレッキングを継続させるための戦略要素としてのスキルツリーに力を注いでいます。
――これまでのピーターさんの作品と比較すると、ビジュアルがさわやかな印象を受けますが(とくに風景)、今回このビジュアルアートを採用した理由をお教えください。
ピーター このアートスタイルを確定させるまで、多くの実験をおこないました。うち(22Cans)のアートディレクターのPaul McLaughlin (ポール・マクラフリン)は実物の背景とモデルを作り、それをデジタルのコンセプトベースとして使うことが多いのですが、それに加えてシルクスクリーン、ビンテージの旅行ポスターなどの色遣いがインスピレーションとなり、それらを昇華させることでこのゲームならではの美しく高品質なアートに仕上がりました。
――『The Trail』の風景は極めて魅力的ですが、モチーフにした実際の風景はあるのですか?
ピーター 世界中の風景からインスピレーションをもらいました。アメリカの開拓地をベースにしたエリアもあれば熱帯地帯、北極地方や竹林を元にしたエリアもあります。ゲームを作り始めたときはちょうど春だったので、イギリスの綺麗な丘の風景も大いに参考になりました。
――エデンフォールに着くとゲーム性がからりと変わってびっくりしたのですが、このような二部構成にした理由を教えてください。
ピーター 永遠と旅ができるという感覚は好きでしたが、プレイヤーには明確な目標や目的を与えることが重要でした。故郷と呼べる場所、ほかの人たちと時間を過ごせる町が重要です。町はゲームの中心になり、各プレイヤーは自分の家を構え、フレンドたちといっしょに町を発展させていく要素をつくりました。
――『The Trail』で、ピーターさんがとくにお気に入りのポイントをお教えください。
ピーター 個人的には競争好きなので町で一番の家を持ちたい。それを達成するための多くの家具や装飾品をゲームには用意しています。
――今回、Nintendo Switchでリリースすることにした理由をお教えください。
ピーター Nintendo Switchは大好きです。『The Trail』はもともと自分が旅をしているときに遊べるゲームとして考えていました。コンソール化にあたってゲーム内容をより充実・洗練させることで、いつでもどこでも楽しめるNintendo Switchにふさわしいゲームに進化したと思います。
――Nintendo Switchに移植するにあたって、心掛けた点などありましたらお教えください。
ピーター おもに操作性。Joy-Conとタッチスクリーンどちらでも快適に遊べて、プレイヤーの状況に応じて自由に切り替えができることを目指しました。
――Nintendo Switchというハードに対する率直な印象をお教えください。
ピーター すばらしいハードだと思います。最近遊んだゲームで最高におもしろいひとときを過ごせたのはNintendo Switch用タイトルが多かった。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は本当に特別なゲームで大好きでした。多くのインディゲーム開発者がNintendo Switchでゲームをリリースすることはすばらしいことです。これは開発者やパブリッシャーに大きな未来をもたらし、結果としてますます技術革新が増えると確信しています。
――ずばり続編の予定はありますか?
ピーター 続編のポテンシャルは高いと思います。モバイル版の開発とアップデート、その後PCとNintendo Switch版のユーザーに向けてデザインを再設計することで得られることがたくさんありました。私はいつもゲームとゲーマーを新しい経験と技術を結びつける方法を模索しています。将来に何があるかは誰にもわかりません(笑)。
――日本のゲームファンにとって、『ザ・トレイル:フロンティアチャレンジ』はピーターさんの久しぶりのコンソール向けタイトルとなるのですが、発売を心待ちにしているファンにメッセージをお願いします。
ピーター 『ザ・トレイル:フロンティアチャレンジ』に興味を持っていただきありがとうございます。心から楽しんでもらいたいです。良い旅を!