日本ゲーム大賞の優秀賞を受賞したタイトルは、海外でも評価が高い! ということで、クリエイターに日本ゲーム大賞を受賞した感想や、海外で賞をもらっての感想などを聞いてみた。

 ゲームファンの投票などで、年間ナンバーワンタイトルを決める、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)主催による“日本ゲーム大賞”。今年で22回目(!)という歴史も長い同賞は、日本でもっとも影響力が大きいゲーム関連の賞ということで、当然のこと注目度も高い。

 で、2017年の“優秀賞”を見ていて思わされたのが、世界で賞を受賞したタイトルが多かったこと。それは、日本で受賞したタイトルが海外でも高い評価を受けるというのは、ある意味では当たり前とも言えるが、“日本産ゲームの復権”が伝えられる昨今、これはひとつの象徴と言えはしまいか? 

 というわけで、海外で賞を受賞した、日本ゲーム大賞の優秀賞受賞作品のクリエイターにお話をうかがい、“日本ゲーム大賞”を入り口に、いま日本のゲームが海外で復権している理由などを聞いてみた。今回お届けするのは、『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の開発を担当した、ディレクターのヨコオタロウ氏とスクウェア・エニックスのプロデューサー・齊藤陽介氏、そしてプラチナゲームズのデザイナー・田浦貴久氏。スケジュールの都合で、書面でのインタビューとなったが、そこはサービス精神旺盛な皆さんのこと(!)。楽しいコメントを寄せていただきました。

 ちなみに、記者が印象深かったのは、“18th Annual Game Developers Choice Awards”(いわゆる“GDCアワード”)での“Audience Award”の受賞。同賞では、“Game of the Year”や“Best Design”、“Best Audio”などにノミネートされ、開発者からの評価も極めて高かった『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』だが、オーディエンスが選ぶ“Audience Award”を受賞し、うれしそうに壇上に姿を見せたヨコオ氏と田浦氏にほっこりとしてしまった。

 なお、日本ゲーム大賞では、ただいま2018年の“年間作品部門”の一般投票を受付中(投票期間は2018年7月20日まで!)。お気に入りのタイトルがある方は、ぜひとも応援してあげてくださいまし。

ヨコオタロウ氏

NieR:Automata』ディレクター

賞というのは「楽しかったよ」というお褒めの言葉

2018年2月撮影

――昨年(2017年)、日本ゲーム大賞で“優秀賞”を受賞したことに対する感想を教えてください。

ヨコオ これまで一度も日本ゲーム大賞を受賞できないダメなディレクター人生を送ってきましたが、プラチナゲームズさんの素晴らしい開発と、それを率いるゲームデザイナー田浦氏のセクシーボディ人気に乗っかることができ、このような賞をいただくに至りました。人生、何が起こるかわからないな、と感じております。

――さらに 海外でも賞を受賞したことについてのご感想をお教えください。海外でも授賞されたということで、喜びもひときわといった感じでしょうか?

ヨコオ 『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』が出た2017年は、『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』、『バイオハザード7 レジデント イービル』、『ポケットモンスター サン・ムーン』などの超巨大シリーズや、『Horizon Zero Dawn(ホライゾン ゼロ・ドーン)』などの海外AAAタイトルも数多くリリースをされた年でした。そんな地獄の戦場の中でたくさんの賞をいただけたのは、一重に支えてくださったメディアの方々、そして、発売後長期に渡り声を上げてくださったファンの皆さまによるサポートによるモノだったと思っております。これらの賞は我々チームの栄誉というよりは、皆さまが獲得したモノだったんだな、と痛感しております。支えてくださって、ありがとうございました。

――近年、日本タイトルが一層海外で注目を集めている印象がありますが、この状況をどう分析しますか?

ヨコオ イロイロな事情があって2017年付近の日本タイトルは、“AAAタイトルとインディータイトルの中間”にすっぽりハマるような製品が多かったように思います。ちょうど欧米のマーケットでその部分が空白になっていたこともあり、日本タイトルの特異性が目立ったのではないでしょうか。ただ、欧米からもこの市場に向けた製品が準備されているので、じきにこのゾーンも激戦区になると思います。早く逃げたいですが、どこに逃げたらいいのかよくわかりません……。

――日本のユーザーと海外ユーザーの嗜好の違いはどのへんにあると分析していらっしゃいますか? また、海外ユーザーの嗜好を考慮して、ゲーム開発に取り組まれていますか?

ヨコオ 日本のユーザーと海外ユーザーの嗜好の違い、が簡単にわかる才能があれば、もっとビッグなディレクターになれたんだろうなと思います。つまり、何もわかりません。でも、クライアントさんの前でディレクターである自分は、あたかも「俺は日本も世界市場もわかっている人間ですよ!」と虚勢を張る必要があります。大人って辛いですね。

――海外で賞を獲ると、日本で何か影響があったりしますか?

ヨコオ 自分にはよくわかりませんが、賞を受賞した後に『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の宣伝担当、高野さんの目が「これでセールでも打って最後のひと儲けができる。そうすれば、スクウェア・エニックス内での俺の地位もウナギ登りに上昇、いまは齊藤Pが持っている取締役の椅子もいずれは俺のモノに……ククク」という感じで光ったような気がしました。(※『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』宣伝担当注:ヨコオディレクター個人のご意見です)

――最後に、日本のユーザー様に向けて、メッセージをお願いします。

ヨコオ 賞というのは「楽しかったよ」というお褒めの言葉だと思っております。メディアさんからいただく賞もそうなのですが、SNSなどでいただくコメントなども大変にありがたいモノが多く、感謝しております。人生でこんなに褒められることはもうないと思うので、この楽しい思い出を、残りの人生の間、ゆっくりとスルメのように噛み締めながら「俺はあのとき受賞したんだ……受賞したんだ……」とブツブツ壁に向かってつぶやきながら過ごしたいと思います。ありがとうございました。

齊藤陽介氏

『NieR:Automata』プロデューサー(スクウェア・エニックス)

シンプルに、おもしろいものは万国共通でおもしろい

2018年2月撮影

――昨年、日本ゲーム大賞で“優秀賞”を受賞したことに対する感想を教えてください。

齊藤 なんだか場違い感満載だった記憶があります。

――さらに 海外でも賞を受賞したことについてのご感想をお教えください。海外でも授賞されたということで、喜びもひときわといった感じでしょうか?

齊藤 いろいろな賞をいただけましたが、『ゼルダの伝説』一色だと思っていたので、あるアワードの授賞式で、『ニーア』関係者がひとりもいないという失態をしたのはいまとなってはいい思い出です。

――近年、日本タイトルが一層海外で注目を集めている印象がありますが、この状況をどう分析しますか?

齊藤 『ペルソナ5』をきっかけに日本のタイトルが一気に注目されることになったと思っています。世界を見据えてということではなく、日本のクリエイターが一番作りたいものを作り、それが世界に認められた結果かなと。それは本当に素晴らしいことだと思っています。

――日本のユーザーと海外ユーザーの嗜好の違いはどのへんにあると分析していらっしゃいますか? また、海外ユーザーの嗜好を考慮して、ゲーム開発に取り組まれていますか?

齊藤 スポーツゲームなどでは国ごとに嗜好の違いは顕著にある気がします。ただ、現在のFPS人気を考えると、以前よりも日本と世界の嗜好の違いは少なくなってきているのではないかと考えます。シンプルにおもしろいものは万国共通でおもしろいんだ、ということでしょうか。ゲーム開発への取り組みかたに関しても、前述したとおり、海外からのアドバイスはさほど気にせず、おもしろいかどうかを大前提に開発すべきですし、そうしているつもりです。

――海外で賞を獲ると、日本で何か影響があったりしますか?

齊藤 どうでしょうか。あんまりないのかも? トークのネタが増えてよかったとは思っています(笑)。

―― 最後に、日本のユーザー様に向けて、メッセージをお願いします。

齊藤 これからの人生、授賞式で年に何回も登壇するようなこともそうそうないと思いますが、そう考えると海外の授賞式に一回くらいは行っておけばよかったなと、今更ながらに後悔しています。また、そんなチャンスが来るようであれば、そのときは改めて応援よろしくお願いいたします!

日本ゲーム大賞 2017授賞式から。授賞式でも息がばっちりの模様。

田浦貴久氏

『NieR:Automata』ゲームデザイナー(プラチナゲームズ)

シリーズファンに受け入れてもらえたような嬉しさと……

2018年2月撮影

――昨年、日本ゲーム大賞で“優秀賞”を受賞したことに対する感想を教えてください。

田浦 もう一年も経つのか……という絶望とともに、受賞当時は、シリーズファンに受け入れてもらえたような嬉しさと、遊んでくれたすべての方々への感謝の思いが強かったです。授賞式は、各社の素晴らしいクリエイターの方々に圧倒された結果、緊張のあまり記憶が飛んでいますが、華やかで楽しい、非現実的なひと時でした。

――さらに 海外でも賞を受賞したことについてのご感想をお教えください。海外でも授賞されたということで、喜びもひときわといった感じでしょうか?

田浦 とくに海外を意識して制作していたわけではなかったので、日本同様に海外でも受け入れてもらえたことは、喜びよりも、驚きのほうが大きかったです。さすが世界のヨコオタロウというところを実感しました。

――近年、日本タイトルが一層海外で注目を集めている印象がありますが、この状況をどう分析しますか?

田浦 クセのあるディレクターやアートによる独特な雰囲気の作品が、日本独特のカラーを出しているのかな、と薄っすら感じています。規模間で言うと、インディーとAAAのあいだの空いたところにうまくハマっているような印象を受けました。

――日本のユーザーと海外ユーザーの嗜好の違いはどのへんにあると分析していらっしゃいますか? また、海外ユーザーの嗜好を考慮して、ゲーム開発に取り組まれていますか?

田浦 けっきょくは個人の好みの問題が大きいかなと思っているので、自発的に、想像の及ばない人物像を考慮して作ることはほとんどないです。

―― 最後に、日本のユーザー様に向けて、メッセージをお願いします。

田浦 まずは、『NieR:Automata』を支持していただけたことを大変嬉しく思います。そして、ユーザーの皆さま同様、シリーズのいちファンとして今後の展開を期待しています。