エピック・ゲームズCEOのティム・スウィーニー氏に聞く、Unreal Engineの未来図や『フォートナイト』の今後など

“Unreal Fest West 2018”に合わせて久しぶりの来日を果たしたエピック・ゲームズのファンダーにしてCEO、ティム・スウィーニー氏にインタビューを実施。Unreal Engineの今後の戦略などを聞いた。

Unreal Engine 5への言及も

 2018年4月21日、京都コンピュータ学院にて“Unreal Fest West 2018”が行われた。

 Unreal Engineを提供するエピック・ゲームズが、自社のゲームエンジンのテクノロジーのノウハウをレクチャーする情報共有の場を積極的に設けていることはご存じの通りで、GDCやCEDECなどでも積極的に講演を行っている。“Unreal Fest”は、日本におけるUnreal Engine最大のカンファレンスであり、ここ数年は毎年4月には関西圏で、10月には関東圏で実施されてきた。

 今年の“Unreal Fest West 2018”では、内外のデベロッパーによる8セッションが組まれたわけだが、もっとも注目を集めたのはエピック・ゲームズのファウンダー&CEOであるティム・スウィーニーの登壇だろう。2012年以来、6年振りの来日となるティム・スウィーニー氏は、“State of Unreal”とのタイトルで、Unreal Engineのいまと今後の戦略を日本のデベロッパーに向けて語りかけた。その内容は、タイトルも共通していることから想像がつくとおり、先日のGDC 2018でのキーノートをベースにしたものだが、改めてティム・スウィーニー氏の口から聞くと、気付かされるところも多かったのでは。デジタルヒューマンの“Siren”や俳優であるアンディ・サーキスのリアルタイムレンダリングの映像は、何度見ても衝撃的だ。

講演時のティム・スウィーニー氏。

Unreal Engine 4の最新事例を紹介する“State of Unreal”詳報、ゲーム開発の未来を拓く最新技術を駆使した映像の数々に来場者も驚嘆【GDC 2018】

GDC 2018会期3日目の3月21日には、ここ数年のGDCでおなじみとなったエピック・ゲームズによる講演“State of Unreal(Unrealの現状)”が開催。例年通り、てんこ盛りの内容で新情報が公開された。以下、その内容を見ていこう。

 記者も、日本語同時通訳つきの講演を聞いて改めて気付かされたことがある。GDC時での講演では、どうしても派手な映像や目新しいトピックに注目が行きがちであったが、エピック・ゲームズにとって、『フォートナイト』のモバイル版は、けっこう大きな意味があったのだなということだ。そもそもティム・スウィーニー氏は講演の冒頭でモバイル版のことを語っているので、その重要性は明らかだったわけだが、「いまやモバイル端末の性能が向上して、コンソールに引けを取らないハイクオリティーのゲームの配信が可能になった。PC、コンソール、モバイルと異なる端末にひとつのゲームを供給可能になり、異なるデバイスでクロスプラットフォームでゲームを遊べる時代が来る」。その先行例が『フォートナイト』であり、その開発の仲立ちをしてくれるのが、Unreal Engineであるということだ。

 “Unreal Fest West 2018”のタイミングに合わせて行ったティム・スウィーニー氏へのインタビューは、エピック・ゲームズやUnreal Engineの今後の戦略を改めて理解させてくれる、貴重な機会となった。何よりも、ティム・スウィーニー氏の静かな語り口から紡がれる言葉の数々は、深い知見と明確なビジョンに溢れていて、とても刺激的なものであった。

京都は初めてというティム・スウィーニー氏。「伝統的な街並みと新しいビルが共存する、おもしろい都市ですね」とのこと。

『フォートナイト』のesportへの関わりは、いまはユーザーに任せている

――まずは『フォートナイト』のことから聞かせてください。『フォートナイト』が大ヒットしました。バトルロイヤルのジャンルが人気ですが、これについてはどう思いますか?

ティム シューターの進化系かなと思っています。そもそもバトルロイヤルというものが注目を集めたのは日本の映画である深作欣二監督の映画『バトル・ロワイアル』(2000年)です。そのおよそ10年後に、『ARMA 2』用のMODとして『DayZ』が発表されたり、『H1Z1: King of the Kill』が出てきました。そして、『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』の大ブレイクや『フォートナイト』の登場などにより、韓国、中国、日本、アメリカへと広がっていったというわけです。

――『フォートナイト』は人気を博した理由はどう分析していますか?

ティム エピック・ゲームズでは、『フォートナイト』を7年間にわたって、協力プレイのゲームとして開発してきました。その間、ハイクオリティーのアートやアセットを作り上げ、キャラクターも魅力的なものとしてきました。一方で、エピック・ゲームズの中にもバトルロイヤルスタイルに興味を持つスタッフがいて、ずっと研究を続けていたんですね。その別チームの提案により、『フォートナイト』にバトルロイヤルモードを実装することにしました。実際のところ、それまでの研究の蓄積があったので、実装まで2ヵ月しかかかっていないのです。
 ご質問にお答えしますと、『フォートナイト』が人気を得た理由のひとつは、まずはトゥーンタッチのキャラクターの魅力。そしてクラフト要素にあると思います。クラフト要素がバトルロイヤルという形式にマッチしたんですね。ほかのバトルロイヤル形式のゲームだと、隠れるか、隠密行動を取るか、敵を倒すか……に終始してしまう。敵に倒されるときも、相手がどこにいるかわからない状態のままで倒されることが多い。その点、『フォートナイト』はクラフト要素があるので、オープンなゲームプレイを実現しているんです。複数でのプレイになると、いかに城壁を作るかのやり取りが重要になるわけです。そこに新たなダイナミックが生まれるんです。

――従来からあった要素とバトルロイヤルという形式がマッチしたということですね。

ティム 一方で、『フォートナイト』では、バトルロイヤルのほかにも、いろいろな取り組みをしています。4人向けのモード“ブリッツ!”や“リミテッドタイムモード”、“50vs50”を期間限定でお届けするなど、いろいろなことを試しています。さらに、ゲームプレイが楽しくなるように拡張しようと思っています。こういったことができるのも、継続的にゲームが改善できるような開発スタイルになっているからです。いまでも1週間ペースでアップデートを重ねています。マルチプラットフォームへの対応も、注力ポイントのひとつですね。

――iOS版も配信されましたが、マルチプラットフォームへの対応には力を入れているようですね。

ティム マルチプラットフォームに関しては、ここ10年来の取り組みとなります。2007年にiOSがリリースされた直後に、Unreal Engineで動くようにしていました。そのころすでに、将来的に、iOS端末を含むのすべてのプラットフォームで、ひとつのコンテンツが動くようになるときが来ることが、容易に想像できたんですね。まあ、そこから実現までに時間がかかりましたけれども。AndroidもiOSも、いまやGPUのスペックが高いので、プレイステーション4などのコンソールゲーム機向けタイトルも、遊べるようになりました。Unreal Engineのすぐれている点はそこにあります。実際のところ、『フォートナイト』は異なるプラットフォームのプレイヤーがいっしょにゲームを楽しめる、数少ないタイトルの1本です。大人にしても子どもにしても、自分の好きなデバイスでゲームを遊んでいますよね。彼らがいっしょに遊べるような状況を作るためには、Unreal Engineが最適です。

――『フォートナイト』のesportsについての可能性に関してはどう思っていますか?

ティム すでにユーザーのみなさんが自分たちでイベントを開催したりする動きがどんどん出てきているので、いまの私たちとしてはユーザーさんの自発的なコミュニティーにゆだねて、それを見守っているという状況です。それを通じて私たち自身もesportsと『フォートナイト』のいい関係性を学んでいければと思っています。いまの段階では、ユーザーさんが自分たちで楽しむのに任せています。

――esports向けのコンテンツを具体的に投入するといったことは、いまは考えていない?

ティム いろいろなアイデアはあるのですが、まだ具体的に何をするかというところは決まっていません。プレイヤーさんが自分たちで遊べるようなツールを、どんどん追加していければと思っています。『フォートナイト』用にエンジン側で実装した機能というのは、すべてのUnreal Engineユーザーが使用可能な形で公開されていますので、たとえば先日発表したリプレイ機能も、同じものをUnreal Engineで作ったご自身たちのゲームで使うことができます。ちなみに、リプレイ機能には注目しています。これによって、映画みたいなドラマが再現できるわけで、いままでにない新たなクリエィティブが世に放たれることになるのではないかと、期待しています。

エピック・ゲームズの講演で、Nintendo Switch版『ARK:Survival Evolved』と、『フォートナイト』へのリプレイ機能の実装が発表【GDC 2018】

会期3日目の3月21日には、エピック・ゲームズによる講演“State of Unreal(Unrealの現状)”が開催。Nintendo Switch版『ARK:Survival Evolved』と、『フォートナイト』へのリプレイ機能の実装が発表された。

――たとえば、『フォートナイト』以外に、esportsにフォーカスした新しいゲームを開発することは考えていますか?

ティム エピック・ゲームズは、新しいゲームの開発に取り掛かるには、少し忙しいかもしれません(笑)。ただ、私たちのパートナーが、esports向けのゲームを開発することには期待しています。

――ゲームでいうと、『Paragon』の高精細のアセットを無料で公開しましたね。

ティム 『Paragon』はトリプルA クオリティーの美しいグラフィックのゲームです。1200万ドルの価値があります。これほどまでのレベルのアセットが、フリーで公開されたことはいままでになかったと思いますね。

EPIC GAMES、1200万ドル相当の『Paragon』高精細アセットを無料で公開

2018年1月にサービス終了が発表された、EPIC GAMESのMOBAタイトル『Paragon』について、開発に使用された1200万ドル相当の高精細アセットを無料で公開することが発表された。

――コミュニティーからの反響はいかがですか?

ティム とても、大きかったです。いくつかの開発例を見たのですが、とあるチームは格闘ゲームを作っていましたね。それはすばらしいアイデアだと思います。『Paragon』はMOBAなのですが、キャラクターは格闘ゲームに近い動きをするので、とてもいいアイデアだと思いました。いま10万以上ダウンロードされているので、1200億ドル分を無償提供していることになりますね(笑)。

デジタルヒューマンでは、AIへの取り組みが必須になる

――ここ1、2年におけるUnreal Engineの注力している領域を教えてください。

ティム いちばんプライオリティーが高いのがデジタルヒューマンです。モーションやフェイシャルやアニメーションなど、いかに本物と同じクオリティーで、人間をデジタルヒューマンで再現するかということが非常に重要だと思っています。なぜかといいますと、ゲームにしろ映画にしろ、テレビ番組にしろ、人間というのはいちばん重要なファクターですし、一方でいちばん違和感を抱きやすく、いちばん難しい領域でもあるので、そこで完璧なデジタルヒューマンを作るというのは、いま最重要テーマです。
 あともうひとつは、すべてのプラットフォームのサポートをいかに簡単にできるようにするかというところにも注力しています。『フォートナイト』ではすでに実現しているのですが、Unreal Engineを使っているデベロッパーがもっと簡単にマルチプラットフォームのサポートであったり、マルチプラットフォームでリリースするだけではなくて、プラットフォーム間のクロスプレイも実現するというのが、非常に重要だと思っています。SNSを例にとって考えるとわかりやすいかと思うのですが、仮にいまFacebookやTwitterがプラットフォームごとに分断されていて、iPhoneのユーザーはiPhoneユーザーとしかFacebookでつながれないとか、TwitterもPCで見ている人はPCでしか見られないという世界を想像してみると、いかに不便であるかが、すごくわかると思います。じつはそれがここ20年間にゲーム業界で起こっていたことであって、それを取り払おうとしているのが『フォートナイト』なのですが、これからはそれがもっと当たり前になってくると思います。

――デジタルヒューマンに関していうと、GDCのキーノートでの“Siren”はインパクトが強くて、いわゆる“不気味の谷”も超えかけているという実感があるのですが、まだまだ足りない?

ティム たしかに、“Siren”はいままでのデジタルヒューマンと比べると進化していますし、ある部分ではすごくすぐれていると思うのですが、とくにあらかじめ作られているアニメーションを載せたりすると、見栄えがいい感じはあります。ただ、まだまだ足りないところはあります。たとえば、ふたりの人間が拡張現実(AR・オーグメンテッドリアリティ)の仕組みを使って、デジタルヒューマンどうしでコミュニケーションを取るといったシチュエーションを想像してみてください。そのときに目と目を見交わしてアイコンタクトである程度意思が通じるといったレベルまで達するには、まだまだ足りていないと思っています。いまの“Siren”は、あくまでアクターの演技をスキャンして、それをCGに流し込んで再現しているだけなので、実在している人間の動きをCGでいかに自然に表現するかで止まっているのですが、最終的な目標としてはAIが人間の動きをシミュレートするところまでいかないと意味がないと考えています。つまり、実在しない人間があたかも本当の人間であるかのようにAIが作れて初めて本当のデジタルヒューマンなので、ゴールはそこになると思っています。

――つまり、ゆくゆくはAIの領域にも踏み込んでいくということですか?

ティム そうです。AIはまさにこれから手掛けていきたいと思っているところです。いままでのゲームAIというのは、“AI”とは言っていますが、厳密にはそうではなくて、“パスファインディング”をしているだけです。つまり経路計算をしてアニメーションを流し込んでいるだけです。本当の人間のシミュレーションをする“人工知能”というレベルにはぜんぜん達していません。今後10年くらいはかかるかもしれませんが、最終的には人間の思考を再現してシミュレートするようなAIにたどり着きたいと思っています。その意味で、エピック・ゲームズにとってデジタルヒューマンプロジェクトは始まったばかりで、ようやく見た目の部分だけ少し、現実に近づけたかなという段階なので、まだまだこれからたくさんの作業が必要になると判断しています。

AR/MRは、今後10年のあいだに世界を変える技術になり得る

――さきほど、ARのお話がありましたが、GDCのキーノートでは、『リーグ・オブ・レジェンド』の大会でのARを駆使しての演出の紹介も印象的でした。ARやMRに関してはどのような可能性を感じていますか?

ティム 今後10年のあいだに世界を変えるような技術になり得ると思っています。といいますのも、10年後にはおそらくふつうのメガネに、ARやMRの技術が搭載されたものを付けているという時代がくると想定しているからです。いま私たちがこうして集まって話しているのと同じくらいの説得力を持った映像を、私はアメリカにいて、みなさんは日本にいて、という感じで別々の地域にいても、現実と違わない体感できるような技術が出くるのではないでしょうか。そのためには、3Dのモデルを一端キャプチャーして、それをまたリプロジェクションして……といった技術が必要になってきますし、それだけの技術になれば、いま現在のスマートフォンやPC以上のインパクトを社会や文明に対して与えられるものになると思います。そういう技術を実現するためには、いまのスマートフォンのように2Dではなくて、すべてのUIも3Dでコントロールされないといけないので、そういう意味で、MRやARにおける3Dレンダリングの技術は非常に重要な位置を占めることになるのではないかと。

――一方で、VRに関してはいかがでしょうか?

ティム VRは一時期言われたほどには大きくはなっていないですが、それでも産業としては育っていると思っています。ゆくゆくはVRで培われた技術やVRのプレイヤーは、ARやMRにシフトしていくのだろうなとは思います。VRで出てきたコンテンツのなかで、いちばん印象的だったのは、いわゆるトラディショナルなゲームではなくて、もっと体験型のものです。いまアメリカのディズニーランドにUnreal Engineを使った『スター・ウォーズ』のコンテンツ、『Star Wars Secret of the Empire』があるのですが、それはVRのヘッドセットをかぶって、映像を見ながら実際に触ることもできるし、においもあるし、爆発が起これば爆風も感じるんです。完全に別の世界にトリップするような体験を提供しているんですね。そういう部分でのVRの可能性は、まだまだあるのではないでしょうか。

世界のもっともすぐれた開発チームの多くは日本にある

――日本のスタジオの開発力についてはどう思っていますか?

ティム 世界の中でも、もっともすぐれた開発チームの多くは日本にあると考えています。とくに、一定のジャンルに対してはすごい強みを持っていると思います。世界でも、ほかにはあまり見られないような大規模な開発を行っているチームもありますし、全般的に言って、すごくすぐれた開発者が揃っていますね。非常に経験豊かな開発者たちがコンソール向けにゲームを作っている一方で、そういう中から出てきた人たちが、インディーとして、ユニークはクリエイティブを持ったタイトルを作り始めているのを見るのも、“ゲーム制作”という意味では、おもしろい実験になっていると思います。そういうレンジの広さを含めて、日本のゲーム開発シーンは非常に健全で、成功していると感じています。

――Unreal Engineを使っている日本の開発スタジオで、とくに印象的な仕事をしているところは?

ティム とくに印象的なのは、スクウェア・エニックスやバンダイナムコエンターテインメントですね。Unreal Engineを使って、非常にクオリティーの高いゲームをたくさんリリースされています。日本に開発スタジオが特徴的なのは、アジアの国々が多くあるなかで、世界中に通用するゲームを開発して出せているところです。それをできている、おそらく唯一の国です。とくにコンソールには強みを持っていますし、文化的な障壁に阻まれることなく世界中でファンを獲得できるようなゲームを出しているので、その点がとても印象的ですね。今後も日本のデベロッパーさんとは積極的に協力して、すばらしいタイトルを生み出す手助けをしたいです。

――たくさんのインディースタジオがUnreal Engineを使っているとのことですが、それについてはどう思いますか?

ティム インディーゲームスタジオは、ゲーム産業にいい影響を及ぼしていると思います。過去30年のゲームの歴史をご覧になればわかるとおり、ゲームの開発規模はどんどん大きくなっていって、いまでは100人以上の体制で開発するのがあたりまえになっています。小さいスタジオが、大きな開発体制では決してできないような斬新なアイデアのタイトルを作ることは、いいことです。Unreal Engine 4はそれに寄与していると思います。たとえば、『ASTRONEER』というタイトルは、アメリカの開発スタジオであるSystem Era Softworksが、6人のスタッフでプレイステーション4やPCなどでリリースしたのですが、100万本を超えるセールスを記録しています。

――Unreal Engine自体も、小規模なインディーゲームの開発体制に最適化されてきている?

ティム そうですね。インターフェースなどをシンプルにすることで、アーティストの意見を反映しやすいような仕組みにしています。従来のように、プログラマーとアーティストのあいだで何度もやり取りする必要はないんです。

――いま、Unreal Engineの利用が増えているのは、世界でどの国になるのですか?

ティム 韓国は興味深いですね。韓国はずっとハイエンドのPCゲームが人気のある市場でした。それが6年くらい前から、PCから一気にモバイルに主戦場が移ったんですね。それにともない、モバイルでプレイするカジュアルなゲームが主流になったので、一時期はUnreal Engineを使用するスタジオも減っていたんです。それが最近になって“モバイルでハイエンド”に主軸が変わってきました。とくに、『リネージュ2 レボリューション』や『HIT』などのモバイルのハイエンドの成功例が出てきたあとは、モバイルでハイエンドを出すことが主流になってきていますので、そこでUnreal Engineを使っていただけるケースが増えてきています。その移り変わりは特徴的でユニークですね。
 私は、コンソール並のクオリティーをもったモバイルゲームが、これからのメインになると思っています。カジュアルなモバイルゲームは徐々に廃れていくんだろうなと感じています。歴史を見ると、アーケードでも長い時間をかけて同じようなことが起こっていて、カジュアルなアーケードゲームは減っていきました。そう考えると、日本のデベロッパーにとっては、これはすごくいいチャンスになり得るのではないでしょうか。というのは、もともと日本のデベロッパーというのはコンソールに強いですし、ハイクオリティーで世界に通用するようなコンソールのタイトルをたくさん開発してきました。今後はそういうタイトルをモバイルで出す機会が訪れると考えると、日本のデベロッパーにとっては、すごくいいチャンスが開けているのではないでしょうか。

――中国市場に関してはいかがですか?

ティム いま中国ではUnreal Engineを採用するところが増えています。だいたい韓国で起きた変化が2年後に中国で起きています。つまりカジュアルなモバイルゲームが、ハイエンドのモバイルゲームになるということですね。PCからモバイルにスイッチしている。中国でハイエンドのモバイルゲームを開発するスタジオが増えるので、Unreal Engineも広がっていくものと期待しています。

――ティムさんとしては、将来的にはPCやコンソールもモバイルに収斂されると考えているのですか?

ティム デバイス自体は、異なったデバイスが共存するという状況は続くとは思います。ただし、同じゲームを複数のデバイスで、いつでもどこでもプレイできるという未来は、確実にやってくると思います。『フォートナイト』ではすでに実現していますが、同じひとりのプレイヤーが、家にいるときは大型画面でひとりでプレイして、外にいるときはモバイル端末でプレイするということが、もっともっと一般的になってくると思いますし、いまのモバイル端末はコンソール並のクオリティーのゲームを動かせるパワーがあるので、逆に私たちゲーム制作者としても、自分たちのゲームをひとつのデバイスに限って考えるようなことはすべきではないと思っています。

――せっかくの機会なのであえて聞いてしまいますが、Unreal Engine 5のプランはあるのでしょうか?

ティム これまでのエンジンの切り替わりの時期は、がらりと環境が変わっていました。また、ゼロからのスタートになるという大きな変化を伴うものでした。今後のエンジンの世代の切り替わりかたというのは、もっと、延長線上になると思っています。Unreal Engine 3からUnreal Engine 4に切り替わるときは、いままでのものは全部使えなくなって、またゼロからUnreal Engine 4を覚えないといけないという変化でした。仮にUnreal Engine 5があるとすると、Unreal Engine 4からUnreal Engine 5への変化というのは、Unreal Engine 4の発展線上にあるものになると思っていて、これまでのように大きな混乱を伴うものではないと思います。たとえば、『フォートナイト』はいまUnreal Engine 4で作られていますが、Unreal Engine 5が出てきても、『フォートナイト』はそのまま動くくらいの距離感になると考えています。その最大の理由は、これまでのようなくっきりとしたコンソールの世代の切り替わり、サイクルというのが、おそらく今後は発生しないだろうと考えているからです。プレイステーション2からプレイステーション3とか、プレイステーション3からプレイステーション4というのは、ハードウェアががらりと変わってしまったので、エンジンとしてもそれくらいの大きな変化が発生しましたが、今後はそういった大きな変化は必要ないと思っています。それは、ゲーム制作に関わるすべての人たちにとって、非常に大きなメリットになるでしょう。

ティム・スウィーニー氏はゲーム実況の人気の高まりにも言及。「まったく新しいエンターテイメントだと思っている」と評価。リプレイ機能はゲーム実況のニーズにも合致したものだという。