2018年4月6日にいよいよ全国劇場公開される、映画『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』。ファミ通.comでも何度かお伝えしているとおり、本作は、ビデオゲーム“ジュマンジ”の世界に吸い込まれてしまった4人の学生が、ゲームを進めながら脱出のために奮闘していくという、ゲームファンも注目の1作だ。作中には、ゲーム好きなら思わずにやりとさせられる場面や、ゲームのあるある要素がふんだんに盛りこまれている。そんなゲームファンの心をもくすぐる本作は、どのようにして生まれたのだろうか? 本作の監督を務めるジェイク・カスダン氏へのインタビューが実現したので、さまざまな疑問に答えてもらった。
ゲームファン必見の『ジュマンジ』のこだわりとは?
''――『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』の魅力は何でしょうか?
ジェイク 『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』のような、ゲーム的な要素を映画化するという企画は、なじみ深いぶん、実現に向けてのハードルは高いと言えます。それに、ゲームで“楽しい”と思える要素を詰め込んでしまうと、逆に映画的な要素が足りなくなってしまい、結果的に映画ファンとゲームファンのどちらも満足できない作品になってしまうという危険性もあります。そのため、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』では誰にでも満足していただける映画にするために、基本は映画のフォーマットに準拠しながらも、“ビデオゲームのルールやディティールをうまく使う”、という方法論を取りました。もちろん、おもしろいストーリーが最優先されるわけですが、物語を進めたり、ドラマやコメディの要素を入れるために、ゲームのルールなどの要素を盛り込んでいくという手法で制作していったというわけです。
――前作(『ジュマンジ』、1996年公開)はボードゲームの中の世界が舞台になっていますが、そもそもなぜ、今回はビデオゲームをモチーフにした作品を作ろうと思われたのですか?
ジェイク まず、本作のタイトルにもなっている『ジュマンジ』は超自然的な力を持ったゲームで、プレイヤーに無理やりゲームをプレイさせようと惹き込む力があります。そして、それは時代の変遷とともに、より子どもたちになじむような形に変容していったんです。いまの時代の子どもたちは、ボードゲームよりもビデオゲームに親しんでいますから。つぎに、これがおもな理由なのですが、本作は10代の子どもたちが、自身の選んだ大人のアバターでアドベンチャーゲームに参加することになってしまう、というのがコンセプトになっています。そのため、コンセプトを成立させられるゲームの形式となると、ビデオゲームが唯一適しているだろうということで、本作はビデオゲームがモチーフになっているんです。
――それは、彼らの成長物語を描きたかったということでもある?
ジェイク その通りです。さらに言えば、仲間といっしょに冒険をするという要素も重要です。『ジュマンジ』はひとりだけでは脱出が困難なゲームで、チームで協力しなくてはいけないというコンセプトがおもしろいと思うんです。長期間ゲームの中にいなければいけないし、人によっては永遠に閉じ込められる恐れがある危険なゲームですし。加えて、メインキャラクターの4人はゲームの中盤に、自分たちのミッションのひとつが『ジュマンジ』に閉じ込められたプレイヤーを助けることだというのに気づくのが、とてもいいんです。
――本作に出てくるゲーム機は何かモチーフがあるのですか?
ジェイク ジュマンジのコンソールはオリジナルで、20年ぐらい前にアレックスがプレイしていたという設定になっています。そのため、美術スタッフと当時のコンソールを勉強し、そのなかでもいいなと思ったものをいくつか合成してオリジナルを作りました。たとえば、アタリのゲーム機のデザインがちょっとだけ入っていますし、前作のボードゲーム版『ジュマンジ』の雰囲気も出したかったので、木のような質感も持たせています。
――本作には、ゲームファンなら思わずニヤリとしてしまうような要素がふんだんに盛り込まれていますね。
ジェイク 『ジュマンジ』は実在するゲームではなく、既存のルールや環境というのもあるわけではなかったので、物語に合わせて自由にデザインできました。一方で、本作はゲーム好きの方に観ていただいて「あるある!」とうなずいてもらえるような、リアリティーと没入感がある世界観作りも重要だったので、制作現場にはゲーマーの方もたくさん入ってもらいました。彼らの話を聞きながら、プロデューサーや脚本家とディティールを盛り込んでいくというのは、かなり苦労したところではあります。あと、私の幼なじみがたまたま20年間ゲームライターをやっていたので、撮影に入る前に、本作によりリアル感を出すためにはどんなことしたらいいか、相談をしました。
――あら! どんなアドバイスをもらったのですか?
ジェイク 最初にあったゲームのディティールの部分について、「それは都合がよすぎるんじゃないか?」というアドバイスをもらいましたね。そのため、ボツにしたアイデアがいくつかありました。あとは、『ジュマンジ』のようなゲームのレベルデザインや進行具合はどのようにしたほうがいいのか、シングルプレイとマルチプレイはそれぞれどの程度行うのか、などを相談しました。
――映画監督であるジェイク氏から見たゲームの魅力とはどんなものなのでしょうか?
ジェイク ゲームはとても進歩していて、デザインもどんどん美しくなっています。ときには映像作品との差を区別できなくなってきているような気もするのですが、とくにストーリーテリングは発達しているなという印象です。
――では、最後に本作を楽しみにしているゲームファンに向けて、メッセージをお願いします。
ジェイク もともと私は、『ジュマンジ』が日本の観客にも響くような映画であってほしいと願っていました。本作のユーモアセンスやアドベンチャーの部分は、日本のゲーマーにも楽しんでもらえるのではないかと思っているので、ぜひ日本のゲームファンの皆さんも本作を楽しんでください。
■ジェイク・カスダン監督
1998年『ゼロ・エフェクト』で監督デビュー(プロデューサー、脚本兼任)。『ウォーク・ハードロックへの階段』(2007年)、『バッド・ティーチャー』(2011年)などを手掛ける。記者世代だと、ローレンス・カスダン(『スター・ウォーズ』シリーズや『レイダース/失われた聖櫃』の脚本、『白いドレスの女』の監督・脚本を務める)の息子ということで、「おおっ」という感じ。お父さんが監督・脚本を担当した『偶然の旅行者』(1988年)に、ジェイク・カスダンは出演しているようだ。
■撮影/堀内剛、協力/カナダ長田