2018年3月19日~23日に、アメリカ・サンフランシスコにあるモスコーニセンターにて開催されていた、ゲーム開発者のための世界最大のセッションGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス) 2018。会期中のGDC Playエリアでは、世界各国から注目作が出展を果たしていたわけであるが、記者が会場をふらふらしていると、ひときわ黒山の人だかりがするブースに突き当たった。見ると、『No Heroes Here(ノーヒーローズ・ヒア)』のブースであった。

『No Heroes Here(ノーヒーローズ・ヒア)』は協力プレイがとにかく楽しい、ブラジル発のタワーディフェンス型お城防衛ゲーム【GDC 2018】_02

 『No Heroes Here(ノーヒーローズ・ヒア)』は、2017年10月にSteam版が配信された、最大4人による協力プレイが可能なタワーディフェンス型のゲーム。リリース前から各種イベントなどで同作の前評判は高く、数々の賞を受賞。その高評価を受ける形で、日本でも5月29日にNintendo Switch版とプレイステーション4版、PC版がコーラス・ワールドワイドから発売されることがつい先日発表されたばかりだ。

 開発を手掛けるのがブラジルのスタジオMad Mimicということで、記者も気になっていた1作だ。これは好機! とばかりに、開発元であるMad Mimicのアーティスト、ギリェルメ・モレイラ・グレク氏(仲間内ではギリと呼ばれているらしい)に話を聞いた。

――『No Heroes Here(ノーヒーローズ・ヒア)』の開発経緯を教えてください。

ギリ 私たちは『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』(1973年)という映画が好きで、その映画がインスピレーションの源になっています。映画自体はとてもコミカルで楽しい映画なのですが、劇中に部屋の中に人が入ってくるのを防ぐために、野菜や鶏などを入り口に向かってたくさん投げるシーンがあるんですよ。それを見て、「これだ!」と思いまして。あと、『Overcooked』 にも影響を受けています。同作のスピード感とテキパキといろいろなことをこなしていくところが、ゲームメカニズムの点でインスパイアされています。それが城を守るという内容になったのは、開発スタッフ全員が城好きだったからです。

――最初から4人プレイ前提で?

ギリ そうです。最初から4人プレイで考えていて、その後バランス調整をしながら3人やふたりでも遊べるようにしようと考えていました。ブラジルはもちろん、ほかの国でもそうかもしれないですが、4人揃えるのはやっぱり難しいので、その延長線上でオンラインプレイも実装することにしました。そうこうするうちに日本でのパブリッシングの話が持ち上がってきて、コーラス・ワールドワイドの晋太郎さん(金親晋太郎氏)から、「ひとりで遊べるゲームモードを作ったほうが絶対にいい」というアドバイスをもらったんですね。そこで、ふたりのキャラクターをひとりで切り替えて操作するというアイデアが生まれたんです。まあ、ゲームとしては、人数がいたほうがより楽しめる1作ではありますね。とくにローカルプレイは、ワイワイ話ながら盛り上がりますよ。

――「ここは注目してほしい!」といったポイントは?

ギリ 3つの世界で54ステージという、けっこうなボリュームで、じっくり遊べるゲームになっています。進めるにあたっては、ちゃんと事前に戦略を練らないと後々詰まってしまうという要素がありますね。途中で役割変更をしたりすることもできますし、敵を攻撃する弾についても、移動を妨害する効果を持つ弾とか、さまざまな種類が用意されているんです。戦略を考える楽しさがありますよ。もちろん、ボスファイトもありますし、とにかく盛りだくさん!

――Nintendo Switch版も、晋太郎さんのアドバイスだったとか?

ギリ 『No Heroes Here(ノーヒーローズ・ヒア)』にとって、Nintendo Switchは完璧にマッチするプラットフォームですね。開発は極めてスムーズでした。

――ちなみに、開発は何人くらいで?

ギリ 基本は、私を含むふたりのアーティストとデザイナー、プロダクトマネージャー兼レベルデザイナーの計5人です。それに、外部のサウンド担当や、さらにプロジェクトの終わりのほうには、ローカライズのお手伝いや広報業務の方にも入ってもらい……と、マックスで8人ですね。

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――せっかくの機会なので、ブラジルのゲーム業界の現状を教えてください。

ギリ いまブラジルのゲーム産業は急成長を遂げています。どんどん質のいいゲームが出てくるようになっていまし、GDCなどでも声をかけていただいて、チャンスが広がってきています。これからもますます伸びていくと思いますよ。

――プラットフォーム的には?

ギリ PCとコンソールです。必ずしもPCばかりというわけではありませんよ。関税などの兼ね合いもあり、コンソールを購入するのは敷居が高いという事情がありますが……。コンソールで人気なのは、僕の周りではXbox Oneですね。プレイステーション4も引けを取らないかなあ。

――最後に、日本のゲームユーザーに向けてひと言お願いします!

ギリ 『No Heroes Here(ノーヒーローズ・ヒア)』に興味を持っていただけたとしたら感謝します。本作は協力プレイがとても盛り上がるゲームなので、ぜひみんなで楽しんでもらいたいです。とっつきやすいけど、極めるのは難しいゲームになっていますよ。そして、今後ブラジルからはどんどんいいものが出てくるので、注目していてください!

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Mad Mimicのスタッフの皆さん。右端がアーティスト、ギリェルメ・モレイラ・グレク氏。

■取材協力/矢澤竜太