イギリスのeスポーツ団体eGamesのキーパーソンに聞く、「eスポーツさらなる普及のためには教育がカギを握る」【闘会議2018】

会期中に、イギリスのeスポーツ団体、eGames GroupのCEO(チーフ・エグゼクティブ・オフィサー)であるチェスター・キング氏とソニア・バイス・プレジデントのジェームス・シェラストン-ベーカー氏に取材する機会を得た。

 2018年2月10日~11日、千葉・幕張メッセにて開催されている、ゲームファンとゲーム大会の祭典“闘会議2018”。会期中に、イギリスのeスポーツ団体、eGames GroupのCEO(チーフ・エグゼクティブ・オフィサー)であるチェスター・キング氏とソニア・バイス・プレジデントのジェームス・シェラストン-ベーカー氏に取材する機会を得た。eGames Groupは、2016年にブラジル・リオデジャネイロで、オリンピックと同時期に開催されたeスポーツイベント“Rio de Janeiro eGames Showcase 2016”を主催した団体としてもおなじみ。同団体が展開する大会であるeGamesは、“名誉のために戦う”という、オリンピックの理念に近い大会となっている。ファミ通ドットコムでは、以前チェスター・キング氏にインタビューをしたことがあるが、キング氏が来日した2016年12月以降、日本のeスポーツシーンは大きく様変わりしている。そんな点も踏まえ、おふたりに話を聞いた。

“eスポーツのオリンピックを目指す” eGamesのキーパーソン、チェスター・キング氏を直撃

近年注目を集めているeスポーツ。今年産声をあげた注目のイベントの詳細に迫る。

CEO(チーフ・エグゼクティブ・オフィサー)
チェスター・キング氏(左)

シニア・バイス・プレジデント
ジェームス・シェラストン-ベーカー氏(右)

――2016年12月にお話をうかがって以降、eGamesの活動はいかがですか?

ジェームス 私どもは、2016年にオリンピックに合わせて“Rio de Janeiro eGames Showcase 2016”を実施したのですが、リオでは本当にいろいろな教訓を得られました。まずは、誰もが国際大会を求めているということを実感できました。一方で、eスポーツの大会を運営するのは、本当にたいへんだということもわかりました。私たちは、いま世界で盛んなeスポーツタイトルは30~35タイトルだと認識しているのですが、それらのタイトルを揃えて、世界で予選を実施して……というのは、本当に難しそうだということがわかって、少しスタンスを変えることにしました。

――具体的にはどのような形でです?

ジェームス eGamesとしては、これからはメインストリーム層に訴求できるような活動をしていきたいという思いがあります。そのためにタイトルをセレクトするということです。具体的に言えば、競技性があって、人対人であるようなサッカーゲームやレースゲーム、そしてある種の格闘ゲームです。従来からあるeスポーツタイトルは含めていません。アマチュアの選手が多数参加していて、最終的に国の代表としてプレイするというところまで、持っていきたいと思っています。

――なぜ、従来のeスポーツタイトルは含めないことにしたのですか?

ジェームス いまeスポーツは、急成長を遂げているのですが、ひとつの弊害として、選手のキャリアの短さがあります。“短いあいだにどれだけ稼げるか”というのがあるのですが、それを考えると国代表といった形で、特定のゲームに対してメダルを賭けた名誉の戦いを……となると、たいへんなことになります。

チェスター 従来からあるeスポーツだと、たとえばFPSとかだと、暴力性が少し高い側面もあります。とくにヨーロッパでは、健全にシーンを成長させるためには、暴力性は敬遠されがちな傾向があります。地道にeスポーツを育てていくためになにができるか……というときに、暴力性は少し抑えたほうがいいだろうという結論にたどり着きました、

――それで、サッカーゲームやレースゲームのようなスポーツ系が中心になるのですね?

ジェームス そうです。ゲーマーではない人に見ていただくということがすごく大事なことです。eスポーツを健全に育てていくには、それがすごく大事です。ゲームによっては、親子で見ても、お母さんにはなにがなんだかわからないことも多いと思いますが、レースゲームやサッカーゲームであれば、ルールさえわかっていればゲーマーではない人でも見てわかりますよね。

チェスター もちろん、だからといって、従来のeスポーツタイトルをスパッと切ってしまうというわけではありません。まずは、eスポーツをメインストリームに、受け入れられるようなものにしないといけないということです。まずはそこに注力して、ある程度普及したあとで、タイトルの広がりを持たせていくということを考えています。これは。すごく長い旅路だと個人的には思っています。プロの選手が少ないということでいうと、日本と英国はけっこう似ていると思うのですが、ここから旅が始まっていくのではないでしょうか。

――なかなか興味深いアプローチであるように思います。では、eGamesでは、プレイヤーとはどのような感じで連携を取っているのですか?

チェスター eGamesとしては、プロに対して熱心にアプローチするよりも、アマチュアがたくさんいるタイトルに着目して、たとえば、アマチュアが100万人いるとしたら、いかに彼らをつぎのステージに持っていけるか……ということに注力しています。つまり、明日のプロゲーマーを育てるということが、eGamesの大きな目標ですね。

――そのためには具体的にどのような取り組みをしているのですか?

ジェームス まずは、先ほどもお話したとおり、eスポーツを盛り上げるために有効なタイトルは何かということを見極めること。そして、パブリッシャーに対して「大会を開きたいのですが」ということで、積極的に働きかけています。その点は、各パブリッシャーさんも大会を開くことの商業的価値を徐々に理解してくれつつあります。あとは、放送ですね。民放テレビやストリーミング番組で、eスポーツ番組の企画も進めています。

――eスポーツの普及に必要なものは何だと思いますか?

チェスター やはり、お金(笑)。キャリアというものが形成されてくるようにならないと、プロプレイヤーは出てくるようにはならないと思います。続けていけるようにならないといけない。それには賞金もありますし、スポンサーもあります。どちらもしっかりと入ってこないと、大きなお金にはならない。もうひとつは教育です。両親や政府に、“eスポーツってこんなにいいものなんだよ”ということをしっかり伝えていかないといけないんです。私たちは、これについてはしっかりと取り組んでいます。

――ほう、たとえばどのような取り組みを?

チェスター メンタルヘルスからの見地をとても大事にしています。eスポーツというのはメンタルヘルスにとても役立つんですね。つねに相手がいることなので、社交性が鍛えられる。

――なるほど。それは、おもしろい見地ですね。

チェスター もうひとつは、スクリーンタイムからのアプローチです。スクリーンタイムというのは、“画面を見ている時間”のことを指すのですが、おもしろくないテレビ番組を見るよりも、eスポーツを見ているほうがいいということです。要はバランスです。eスポーツばかりをやるのではなくて、従来のスポーツもあるし、仕事や学校にいきつつも、eスポーツがあります、というバランスの取れた生活が、メンタルヘルスにもいいということです。とはいえ、「では、FPSがそんなにメンタルヘルスにいいのか?」という議論もあるかとは思うのですが、ゲームにはレーティングがありますよね。そこでeスポーツをしっかりとリスト化しておいて、年齢に合致したタイトルを遊んでいただれば、健全にeスポーツが遊べるというふうに考えています。

――eスポーツの教育という面では、イギリスは日本よりも遥かに進んでいますね。

チェスター eGamesはJeSUさんと良好な関係を築いていますので、私たちのノウハウをお教えできるのではないかと考えています。

――いま、eスポーツが盛り上がっている国はどこだと思いますか?

チェスター いろいろな考えかたがあると思うのですが、すごく難しくて、タイトルによりますね。ポーランドでは、『カウンターストライク』が大人気で、配信番組もたくさんの視聴者を集めるのですが、イギリスではそれほどでもなかったりします。いま私たちが把握しているeスポーツが盛り上がっている30~35タイトルで、なにが人気かは国によって異なります。どの国もeスポーツを普及させたいと思っているのですが、じつはどの国も広げたいタイトルが異なるので、大きくするときにそこが障害になっています。

――日本のeスポーツシーンに対する印象を教えてください。

チェスター JeSUの座組として、パブリッシャーさんが入っているのはすごくいいなと思います。プロライセンスについてもすばらしいなと。正しいアプローチだと思います。これからeスポーツを成功させるための体制は整ったのではないでしょうか。

――日本のeスポーツが発展する下地は整ったということですね?

チェスター そうですね。すごくいい状態にあると思っています。パブリッシャーと協会が連携しているというのは、世界的に見て非常に稀なので、うらやましいです。

――最後にeGamesの今後の目標を聞かせてください。

ジェームス 国際的なゲームカルチャーのホームになること。

チェスター まさに、それがすべてですね。

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