2018年2月10日~11日、千葉・幕張メッセにて開催されている、ゲームファンとゲーム大会の祭典“闘会議2018”。本イベントを訪れた、国際eスポーツ連盟(International e-Sports Federation 通称IeSF)のレオポルド・チャン氏のインタビューをお届けする。
IeSFは、韓国・ソウルに本部を持つ、国際的なeスポーツ団体。2008年に設立され、世界48ヵ国・地域が加盟している。チャン氏は、同組織の中で国際関係業務の責任者を務めているほか、事務局長の立場でもある。
今回のインタビューでは、同組織の活動内容と、今後の展望、日本のeスポーツ産業に対する印象などをうかがった。
レオポルド・チャン氏
(文中はチャン)
――初めに、IeSFがどのような活動を行っている組織なのかを教えてください。
チャン私たちのミッションは4つあります。ひとつは、各国でのeスポーツの組織の設立、また、その国でeスポーツが育っていくための手助けをすること。ふたつ目は、eスポーツのプロを育てること。eスポーツに関わる人々の仕事を、職業として確立させることです。
――それは、プレイヤーのみならず、たとえば審判だったり、コーチだったりも含むということですね。
チャンはい。たとえばコーチなら、プレイヤーに1日16時間も練習させないように、スケジュールを管理することが求められます。そういった細かい規則や、環境を作ることが大事です。つぎに3つ目は、世界大会を開催すること。そして4つ目は、eスポーツの基準を作ること。それぞれの国で、eスポーツの基準が異なっている状況がありますが、確固たる国際的な基準を作ることが使命です。
――それらのミッションは、いずれもeスポーツの発展につながるものだと思いますが、eスポーツをより盛り上げるために重要なことは何だと考えていますか?
チャンもっとも大切なのはeスポーツのプレイヤーです。プレイヤーを守り、育てることが大事です。“楽しい”ことだけに終始してしまっているプレイヤーがいるので、彼らのパフォーマンスのクオリティーを上げることが必要だと思います。同様に、重要だと考えているのは、eスポーツのエコシステムです。
――エコシステム(生態系)ですか。
チャンふつうのスポーツは、まず草の根でプレイしている人たちがたくさんいて、その中の人たちがプロフェッショナルになりますよね。一方、eスポーツは、プロフェッショナルありきになっていて、下の層が薄いのです。これは、もし少数のプロがいなくなってしまったら、eスポーツも滅ぶということを意味します。ですので、現状のエコシステムを変えたいのです。
――プロ以外のプレイヤーにも働きかけていくことが重要になりますね。
チャンまた、プレイヤー全体の中で、プロの割合は1%ほど、しかもその1%になれたからといって成功しているというわけではありません。であれば、残りの99%のプレイヤーはどうなってしまうのか。彼らが職業を失う状況を防ぐためにも、教育、そして政府や社会によるサポートが必須です。だからこそ、eスポーツが公式なスポーツであると認知してもらいたい。それは簡単なことではないけれど、必要なことなのです。
――プレイヤーとのコミュニケーションは、どのように行っているのですか?
チャンIeSFには各国のeスポーツ組織が加盟していて、それぞれの国の組織が、その国のプレイヤーとやり取りを行っています。国によって文化や法律が異なるので、やりかたは各団体に委ね、我々は最小限のガイドラインを配布しています。
――IeSFに加盟している国の中で、とくにeスポーツが盛んな国は?
チャンさまざまな地域でムーブメントが起こっていますが、あえて挙げるならば、中国、韓国、ヨーロッパの国々です。
――日本のeスポーツ業界については、どのようにお考えですか?
チャン日本のeスポーツは、すぐにグローバルレベルに追い付くと思います。日本だけの特別な団体として、JeSU(日本eスポーツ連合)ができましたから。とても強固な構造の組織だと思います。
――最後に、IeSFが目指す未来を教えてください。
チャンゴールはとてもシンプルです。eスポーツを、世界に広めることです。eスポーツは、すでにアジア競技大会で採用されることが決まっていますが、オリンピックにも採用されるようにしたい。そして、世界中でもっともっと認知されて、当たり前のものになる。それが目標です。